今、この瞬間を走りゆく

佐々森りろ

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第十章 飛ぶ決意

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 キラキラと草木の上を滴る雨粒が光っている。ちょうど、橋の向こう側、線路がかかっているのが見えて、そのまた向こうに大きくてはっきりとした虹が浮かび上がっている。
 まるで、七色の色鉛筆で力強く描いたように色鮮やかで、みんなで空を見上げたまま幻想的な風景にしばらく無言になってしまった。
 ちょうど、線路が続いているのかいないのかわからない森の中に、虹の端っこが降りている。
 あそこが「未来へ続く道だよ」と言われたら、疑うことなく信じてしまうくらいに、美しい。
 思わず傘を閉じると、あたしはポケットに入れていたスマホを取り出して、写真を撮った。

「あ! いいなー、虹、うまく撮れてる?」

 閉じた傘の水滴を払いながら、アオイくんが隣から覗き込んでくる。

「うん、ほら……」

 あたしがスマホからアオイくんへと顔を上げると、至近距離で目が合ってお互いに驚いてしまう。
 アオイくんのパッチリとした二重の瞳は綺麗に澄んでいて吸い込まれそうになる。
 すぐに写真を見ることなく離れて行ってしまったアオイくんの頬が、赤くなっているのが見えた。今朝からなんだか、アオイくんの態度がおかしい気がする。

「なんかアオイ今日変じゃね?」

 キカくんもアオイくんの反応に首を傾げている。
 そうだよね? そう思うよね? 本当にどうしちゃったんだろう。
 ハヅキくんにこっそりなにかを耳打ちされて、アオイくんがますます顔を真っ赤にして困ったように怒りだした。
 だけど、ハヅキくんが何を言ったのかは教えてくれなかった。

「よし、じゃあ、雨も上がったことだし線路の近くまで行ってみますか」

 キカくんが傘を閉じて前を行く。
 その後ろから、あたし、ハヅキくん、アオイくんと続いて、みんなで縦一列に堤防沿いをゆっくり歩く。
 時折、車が通り過ぎるけれど、あたし達のほかに歩いている人はいない。きっと雨のせいなんだろう。線路に近づくにつれて、ドキドキしてきた。

 鉄橋は思ったよりも高さがあって、線路の始まりは半分ほどが道路に整備されていた。
 草が生えているし、もう線路としてはもうずいぶんの年月使われていないのが目に見えて分かった。川にかかる橋だっておんなじで、姿形は線路だけど、もう何年もそこにただあるだけなんだろう。堤防沿いから伸びた草が、蔦を張って絡みついていた。

 視線をその奥へと向けると、向こう側はこちら側よりも、もっと多くの蔦が絡みついているし、なんならその先に線路が続いているかを確かめるまでもなく、森と一体化してしまっているように見えた。
 ここに走って行って、突っ込む勇気は、ないかもしれない。
 その前に、この低い頼りない柵と劣化している鉄の橋の上を走るとか、想像しなくても無理な話な気がする。線路だから、今歩いてきた道のように平らなアスファルトではないし、ゴロゴロと大きめの石が積まれた道。足をひねったり踏み外そうものなら、川へと真っ逆様で間違いない。
 なにこれ。罰ゲームにも程がある。
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