日英同盟不滅なり

竹本田重朗

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第17話 英国面?

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ノモンハンに端を発した日英対ソ連の衝突は国境紛争を超えて国家単位に変わる。スターリンは早期終結の勝利を要求した。これはフィンランドの制圧を予定して二正面の戦いを回避したいから。極東方面軍司令官は数量による力押しで解決を試みた。制空権がなく航空攻撃を受けるが上回る規模で押せば勝てると言う。



 ソ連兵の唸り声が聞こえれば突撃の合図だった。砲撃と銃撃の中を果敢に突っ込んでくる。その突撃を受け止め切れずに後退を繰り返した。防御線でがっしりと受け切ると反撃を開始しようではないか。航空支援の傘の下で日英合体の奇抜な車両が走行した。



「ソ連の団体さんだ。良い獲物だ。弾種は榴弾のみ。ポンポンと撃ち出せ」



「了解」



「向こうの40mmに負けるなよ。あっちも優秀だが単装に過ぎない。こっちは4連装だ」



「はい。砲弾の投射量で差別化します。ソ連兵なんてひき肉にもなりません」



「大地に還してやろう」



 一見して中戦車と軽戦車の群れである。砲塔は異様に大きかった。中戦車は主砲こそ40mmクラスだが短砲身だが四連装と長砲身だが単装と分かれている。軽戦車は機関砲なのか連装と三連装と分かれていた。戦車にしてはチグハグが否めない。なんだこれはと言いたくなるがソ連兵は今も突っ込んできていた。



「対空戦車なんですが結局のところ対地で使ってますが…」



「しょうがないだろう。敵機がいないんだ。味方の戦闘機と爆撃機しか飛んでない」



「良い事です。楽な仕事ができますから」



「雑談は終わりだ。やるぞ」



「全車一斉射撃! 合図があるまで撃つな!」



「一歩でも入ってみろ。死ぬがな」



 ソ連兵の大群に対してヘンテコ戦車隊の数は少ない。歩兵が戦車に勝てるはずがないと言うが肉弾攻撃を受ける恐れがあった。ソ連兵は対戦車手榴弾や火炎瓶を手に原始的な対戦車戦闘を展開する。野砲か速射砲があれば戦えるのだが前線に展開すれば日本機から爆撃を受けて消失した。前線へ移動する時点で爆撃を受けている。したがって、前線の兵士たちは古典的な対戦車ライフルを持ち出す始末だ。司令官は前線の兵士の命を何とも思わずに数量で押す。スターリンに良い報告をするために数万の犠牲は尊かった。



 日英軍はソ連軍の前線の火砲不足を知るや否や戦車隊を前面に出している。一応は自衛権の行使と説明した。イギリス政府の事実上の沿海州の奪還承認を受けて越境攻撃の用意を整えているもの。諸外国への説明も終わって国内外問わず支持を得ると第二次日露戦争を本格的に進めた。その一環が対空戦車の投入である。



 主に日本軍はソ連軍よりも早く襲撃機の運用を開始した。ドイツのスツーカ急降下爆撃機も襲撃機の性質を帯びるが厳密には異なる。低空から侵入して爆撃と銃撃を行うことは地味だが明確な脅威になった。自軍が行っている以上は対抗策を練らないはずがない。制空権を保持することは至極の当然であるが、移動可能な対空砲火と開発を進めていった。最初は旧型化した中戦車と軽戦車の車体を流用して高射機関砲を搭載する。



「撃ち方始め!」



「撃てぇ!」



「ポンポン~ポンポン~」



「弾が尽きないってのは良い事だ!」



「イギリスから数十万発を貰って聞きますし!」



「なんだ! 聞こえん!」



「うるさいんじゃい!」



 対空戦車の本来の出番はなかった。日英同盟空軍はソ連人民空軍を圧倒している。高速爆撃機の侵入を危惧したが戦闘機隊が駆逐した。敵の空軍基地と飛行場を自衛権の行使と主張しながら越境攻撃である。敵機が飛び立つ前に地上で撃破してしまえば戦場に来ることは起こり得なかった。敵戦闘機も同様で制空権を取り返すことが精一杯である。対地攻撃に訪れることは両手で数えられた。



 こうなると暇と言うこともなく最前線に引っ張り出される。大口径から小口径まで機関砲ないし機関銃は弾幕の形成に欠かせなかった。しかし、大重量は機動力低下を招いて歩兵による運用は7.7mmが限界である。20mm以上の大口径は突撃を食い止めるに最適なのだが前線まで引っ張ることは困難だった。牽引式を運用しても面倒が多い。そこで、日英合体対空戦車の出番なのだ。



「タポ号を舐めるなよ。榴弾は腐るほどある」



「前進! 弾幕を形成しつつ進むのだ!」



「ほいほい、ほいほい」



「弾薬だ! 弾薬をくれ!」



「今行く!」



 タポは通称であって正式名称は試製毘式四十粍搭載型対空戦車である。少数生産に終わった九七式中戦車(前期型)の車体だけ継続の上で新たに開放式大型砲塔を置いた。海軍がライセンス生産を取得したヴィッカース社2ポンド機関砲を与える。40mm機関砲を上下連装の恰好で四連装だった。とても強力に聞こえる。実は高射機関砲としては低弾速で弾道も良くなかった。投射量だけは立派だが高速化に対応できない。艦載用や拠点用には不足が顕著だった。



 一方で地上部隊が襲撃機や戦闘機の低空侵入に牽制するには悪くない。ボフォース社40mm機関砲よりも軽量なため車載化が試みられた。対空には不足していると言うが投射量の多さは対地に向いている。40mmの軽量榴弾を大量に叩きつけた。今日は対歩兵であるが一層も威力を発揮して敵兵が面白いように斃れていく。しかし、精密な弾幕を形成することはできなかった。真なる弾幕を張るには強力過ぎる。まさに隅から隅まで覆い尽くすにはサイズダウンが求められた。



「タセが負けちゃならんぞ。俺たちは20mmだからな。丁寧に丁寧に刈り取る」



「斃れたフリをしている奴がいるかもですね」



「そうだ。軽量級の対空戦車らしく驕らずに地道に進む」



「ソ連兵ごときに20mmを使うのは勿体ない気もしますが…」



「たしかに、ポンポン砲は在庫処分だもんなぁ…」



 すでに楽勝の雰囲気が漂っている。それもそのはず、ソ連兵を哀れに思いながら引き金を引くだけだ。確固たる制空権に守られて小銃と機関銃、対戦車ライフルの歩兵を一方的に嬲る。愉快で痛快だった。タポ号が忙しないと反対にタセ号は同じ動作の繰り返しである。こちらは九五式軽戦車の車体に開放式砲塔を与えて20mm高射機関砲を連装に備えた。40mmの威力はないが人体を真っ二つするぐらいはあり、丁寧に丁寧に狙うことで補っており、地面に突っ伏した兵士も逃さない。



「あぁ、面倒くさい。ベルト式にできないんですか」



「20mmはデッカイからな。戦闘機や爆撃機はできるが車両にゃ無理だろ」



「これなら12.7mmの方がいいんじゃ」



「それじゃ敵機を落とせない。なんとも難しい話だな」



「あっちは元気がいいですよ」



 20mm機関砲は20発の箱型弾倉のため持続性では劣っていた。再装填作業は戦車砲ほどでないが面倒である。ベルト式の開発が求められたが航空機用を優先した。車載は後回しされてもおかしくない。したがって、最適化と称して12.7mmを推す声が聞かれた。実際に何両かは20mm連装ではなく12.7mm単装と7.7mm連装を束ねた三連装タイプがタセⅡと運用されている。こちらは航空機用を流用することでベルト式のため絶え間なく射撃ができた。



 もちろん、過熱対策と目標変更に伴い小休止をすることはある。弾倉形成の一点に絞れば中口径が好ましいが、いざ対空を含めると威力不足であり、20mmの大口径機関砲が丁度いいところだった。ポンポン砲は在庫処分という例外に該当する。すでにボフォース社40mm機関砲に切り替えが行われていた。



「進むぞ。一時休止せよ」



「止めます」



「アッツアツですよ。パンが焼けます」



「今度やってみるか」



 そんな冗談を吐く先でソ連兵の屍が積み重なっている。



続く
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