日英同盟不滅なり

竹本田重朗

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第19話 コマンド部隊を送り込め

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「コマンド部隊?」



 ウラジオストクとナホトカを筆頭に沿海州の奪還は入念な準備を必要とする。基地航空隊のバックアップと中露国境線の大兵力、日英艦隊の支援攻撃があって成立した。しかし、強襲上陸は困難と考えられる。沿海州は要塞化されていて一般的な部隊では橋頭保すら確保できずに叩き出される恐れが呈された。港湾施設に精鋭部隊を送り込んで揚陸地点を確保する。さらに、別働隊を砂浜から送り込んで増援ないし救援を遮断した。後者は日本陸海軍が得意とすることで心配はない。前者の港湾施設の強襲が難しくイギリス軍から知恵を拝借した。



「そうです。精鋭部隊は変わりませんが施設の制圧に特化しました。それを送り込むのです」



「しかし、港湾施設でも要塞化されている。カノン砲や高射砲で武装されている中に突っ込むのは…」



「揚陸船を拵えてもですな」



「事前に砲撃と爆撃もやり辛い。そのまま使いたい」



 港湾施設の強襲は簡単そうで意外と難しい。要塞化されている中へ突っ込むため攻撃は欠かせなかった。しかし、やり過ぎても復旧が面倒になって海上輸送が滞る。丁度いい塩梅が求められた。イギリス軍のコマンド部隊みたいな精鋭部隊を投じて迅速な制圧を試みたい。ウラジオストクは極東最大規模の拠点である以上は制圧よりかは揚陸船(輸送船)が突っ込む下地を確保するが精一杯だ。ここの問題はコマンド部隊をどうやって送り込むかである。



「駆逐艦を突っ込ませては?」



「確かに素早いが装甲が脆い。コマンド部隊を守れないぞ」



「巡洋艦は無いか」



「何か良い艦がないもんかの」



「練習艦はいかがでしょうか」



「練習艦? あれは…」



「そうか、わかった。あれだな?」



 攻撃を行ってもカノン砲と野砲、高射砲、機関銃は健在と考えた。この中を非装甲の揚陸船で突っ込ませる。あまりにも危険だ。イギリス軍より軍艦に便乗させる案が出たが駆逐艦は非装甲に等しい。巡洋艦以上は余剰がなくて用意することができなかった。揚陸船を危険を招致で突っ込ませる以外に無いと思われたが若手の作戦担当が妙案を提示する。



「富士と敷島、朝日があります。ただの浮船とするには惜しいです。武装は取り外して弾薬庫も広げれば兵士を詰め込むことができます。腐っても戦艦ですので装甲はあります。速力はどうにもなりませんが輸送船ぐらいは出せます」



「面白い! しかも大英帝国の生まれだ! これはヒットするぞ!」



「ヒ、ヒット?」



「受けが良いと言うことです」



「あぁ、なるほど」



「これでも怖い場合は駆潜艇と掃海艇を進出させる。ゼロ距離からの砲撃を行えば良いかと」



「掃海作業の延長だな。そうだ、機雷だけは気を付けなければならない」



 練習艦を特別攻撃に転用した。日露戦争における日本海海戦で大戦果を挙げた殊勲の富士と敷島、朝日の3隻を再び動員する。現在は練習艦を経て各地で係留されていた。なにせ古いため使い道がなく倉庫の扱い。これを輸送船に改造してウラジオストクに突っ込ませるではどうかだ。



 明治期の戦艦でも重装甲を張っている。装甲強度の問題はあれど部分的には長門型を上回る厚さを有した。152mmカノン砲の直撃に耐える装甲があれば強引に接岸できる。弾薬庫の壁を取り払ってスペースを増やしてコマンド部隊を詰め込んだ。鈍足でも自力で航行できる。風と波に曝されることなく、砲撃と銃撃も受けることなく、安全に突入できるのだ。これを名案と言わずしてどうする。



「ソ連海軍が磁気反応式機雷を使っているとは思いませんが念のためです。木造の掃海艇にしましょう」



「消磁処理は面倒ですからな。数年単位の使い捨てで構わない。我々の掃海技術は世界一だ」



「本国では大活躍と聞いている。改めて感謝申し上げます」



「いえいえ、我々を鍛え上げてくれた。恩師のためなら」



「教えた側が教わる側になった。嬉しい事です」



 名案で決まりかけたが機雷対策を怠ってはならずと引き締まった。日清戦争や日露戦争でも古典的な機雷は猛威を振るう。貴重な戦艦を触雷から失った経験を有した。日本が島国で海運に頼っている中で機雷戦を重視しないわけもない。さらに、ドイツ海軍がUボートを用いた機雷敷設を行った。イギリス本国の河口部で磁気反応式機雷を確認できて民間の船舶から軍艦まで被害が出ている。



 ソ連海軍が磁気反応式機雷を使っているかは不明だが対策をして損はなかった。磁気を帯びない木造の戦時量産型の掃海艇を動員する。金属製と比べて耐久性に劣るが戦時限定と見れば十分だった。金属資源を消費しないことも歓迎される。そして、日本海軍の掃海技術は世界一まで磨いた。日英同盟に基づく支援の一環で掃海部隊が派遣される。ウラジオストクとナホトカの制圧でも活躍してもらうつもりだ。



「そうと決まれば動きましょう。早ければ早い方がいいに決まっている」



「紅茶を飲んでいる暇はありませんな」



「よろしいので?」



「私はイギリス人ですが同時に軍人です。我らの勝利のためならば我慢できます」



「申し訳ない」



「何を謝られる。あとでビールでも」



「是非とも」



 早速であるが準備に取り掛かる。日本海海戦の大勝利の立役者たちは散り散りになっていた。彼女たちを呼び寄せた上で弾薬庫の改造など余計な設備を撤去する。コマンド部隊が円滑に乗り降りできる設備を追加した。そっくりそのまま用いることは無茶が過ぎる。しかし、ウラジオストクとナホトカの港湾施設の強襲作戦は着実に前進を始めた。



 そんな中で沿海州の奪還に際する陽動作戦が本命に先行して開始される。ソ連軍の目をノモンハンに釘付けにすべく大規模な越境攻撃を展開した。地上は防戦を強いられているが空中は真反対である。日英の航空隊が戦闘機を駆逐すると爆撃機が悠々と飛行できた。双発の爆撃機は機動力の高さを活かして辻斬りが如く爆弾を落とす。全体的な数量は不足気味で戦線を崩すには至らなかった。元栓を閉めるために真なる重爆撃機を投じる。



「全機へ通達! 絨毯爆撃だ! 貨物駅と線路を吹き飛ばす! 高射砲は届かん!」



「針路固定! このままぁ!」



「爆弾倉開け!」



「爆弾倉開きます!」



「九七式とは比べ物にならない。イギリスと日本の融合だ」



 ついにシベリア鉄道支線に対する戦略爆撃が始まった。シベリア鉄道本線ではなく支線だが全面衝突を象徴しよう。ソ連軍は極東南下にシベリア鉄道をフル回転した。あまりにも国土が広いため至極当然である。それは同時に致命的な弱点となり得る以上は日本軍の攻撃を想定して予備の線路を敷いた。いたちごっこかもしれないが潰しておくに越したことはない。陽動作戦として注意を引くには十分な出来事になった。それも本格的な戦略爆撃機を用いている。



 日の丸とイギリス空軍の丸を並列した四発機が沿うように飛行した。眼下には貨物駅と線路が伸びている。これらに沿うよう絨毯爆撃を行った。ソ連軍も85mm高射砲を動員して編隊を対空砲弾の炸裂が包み込む。ハリファックス(日本仕様)はこの程度では落とされなかった。火星エンジンの1800馬力を轟かせて最大武装である合計6トンの爆弾を投下していく。



「なんせ時間を要する。戦闘機がいないから良いですが、まぁ迎撃を受けたら怖いもん」



「6トンだからな。100kgなら60発だぞ」



「60kgだったら100発ですか…」



「今日は250kgを24発だがそれでもか。いかに素早く正確に落とせるか研究だな」



 この陽動作戦が与えた影響は大きいこと間違いなしだ。シベリア鉄道が爆撃を受けた事実はソ連政府を動揺させる。航空戦がダメならば地上戦で取り返すのだ。ジューコフを投じて一気に掌握を計画する。地上戦の悪魔が牙を剥こうとする時に猛将が立ち向かった。



「モースヘッド。ただいま着任した。これより指揮を執る!」



続く
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