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嘘で固めた(静留side)
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朝食後、念入りに基礎練習をしたあとで、静留は2日前に梨花から渡されたコンサートの選曲を恐る恐る開いた。
「よかった…。」
ホッとため息が漏れる。
選曲リストの中に弾いたことのない曲は一曲だけで、それ以外の曲は弾いたことがあった。それどころか他の曲は西弥のお気に入りで、よく弾いているから暗譜する必要すらない。
未習の曲ばかりだったらどうしようと不安だったが、これなら大丈夫そうだ。
ひとまず弾いたことのない曲の楽譜を探し出し、ゆっくりと弾いてみる。
しかし4小節奏でたところで、静留の脳裏にある疑問が浮かんできた。
__あれ、この曲、知ってる…。
でも、何で知ってるんだっけ。
なんとなく、CDではなく生で聞いたことがある気がする。
西弥がよく連れて行ってくれる誰かのコンサートで聞いたのだろうかとも思うが、コンサートなんかよりももっと近くで聞いたことがあるような気がして。
さらに不思議なことに、静留の中ではすでに、その曲をどう奏でればいいかの答えが定まっているのだ。
普通なら何度か弾いてその曲の情景が見えてくるはずなのに。
まっさらな土地に、白百合の花が一輪揺れている。
そしてその花は優しい風に誘われてだんだんと舞い上がって、最後にはたくさんの花が咲く優しい場所に行き着く。
幸せなはずなのに、その場所にその花が行ってしまうことが少し寂しいような、悲しいような、そんな印象。
静留はすでに定まっているその情景を思いながらしばらくその曲を練習し、そのあと他の曲を一通り弾き始めた。
「和泉くん、そろそろシャワーの時間。」
切れ目のいいところを見計らって梨花が練習を止め、いつものようにシャワーを浴びるよう言ってきた。
シャワーとご飯をしっかりするのが西弥との約束なので、静留はしぶしぶバスルームへと向かう。
この個室の中が、静留はあまり好きではない。この中では、いつもそばに感じられる西弥と話をすることすらできないからだ。
__さみしい…。
昨日まで数日間顔を合わせていなかったせいだろうか。
いつもより強くその感情が込み上げてきて、静留はぎゅっとシャワーの柄を握りしめる。
__だめ、楽しいこと考えなくちゃ。
ぐだぐだ寂しさに浸って固まっていては、いつまで経ってもここから出れない。
楽しいこと、と考えてすぐに浮かんだのは昨夜の記憶で、静留はそれを丁寧に辿ることにした。
西弥は静留の指から血が出ているのを優しく拭ってくれ、さらにピアノを弾こうとしたのを止めソファーに座らせ、お気に入りのぬいぐるみを抱かせてくれた。
そのあと、じっと静留の瞳を覗き込んできて…。
__そういえば、あれ、とっても気持ちよかった…。
彼の瞳が静留の瞳を覗き込んだ瞬間、少しぞくりとしたあとに気持ち良さと多幸感に包まれた、あれはなんだったのだろう。
ここから出たらもう一度ねだってみよう、と思ったら前向きな気持ちになって、静留はシャワーを浴び終え、身体を雑に拭いて西弥のもとへと向かった。
そしてそこで西弥と梨花が至近距離で見つめ合っているのを発見し、静留の語彙では表すことができないもやもやとした気持ちに陥り、たまらず西弥の袖を引いたのだった。
「よかった…。」
ホッとため息が漏れる。
選曲リストの中に弾いたことのない曲は一曲だけで、それ以外の曲は弾いたことがあった。それどころか他の曲は西弥のお気に入りで、よく弾いているから暗譜する必要すらない。
未習の曲ばかりだったらどうしようと不安だったが、これなら大丈夫そうだ。
ひとまず弾いたことのない曲の楽譜を探し出し、ゆっくりと弾いてみる。
しかし4小節奏でたところで、静留の脳裏にある疑問が浮かんできた。
__あれ、この曲、知ってる…。
でも、何で知ってるんだっけ。
なんとなく、CDではなく生で聞いたことがある気がする。
西弥がよく連れて行ってくれる誰かのコンサートで聞いたのだろうかとも思うが、コンサートなんかよりももっと近くで聞いたことがあるような気がして。
さらに不思議なことに、静留の中ではすでに、その曲をどう奏でればいいかの答えが定まっているのだ。
普通なら何度か弾いてその曲の情景が見えてくるはずなのに。
まっさらな土地に、白百合の花が一輪揺れている。
そしてその花は優しい風に誘われてだんだんと舞い上がって、最後にはたくさんの花が咲く優しい場所に行き着く。
幸せなはずなのに、その場所にその花が行ってしまうことが少し寂しいような、悲しいような、そんな印象。
静留はすでに定まっているその情景を思いながらしばらくその曲を練習し、そのあと他の曲を一通り弾き始めた。
「和泉くん、そろそろシャワーの時間。」
切れ目のいいところを見計らって梨花が練習を止め、いつものようにシャワーを浴びるよう言ってきた。
シャワーとご飯をしっかりするのが西弥との約束なので、静留はしぶしぶバスルームへと向かう。
この個室の中が、静留はあまり好きではない。この中では、いつもそばに感じられる西弥と話をすることすらできないからだ。
__さみしい…。
昨日まで数日間顔を合わせていなかったせいだろうか。
いつもより強くその感情が込み上げてきて、静留はぎゅっとシャワーの柄を握りしめる。
__だめ、楽しいこと考えなくちゃ。
ぐだぐだ寂しさに浸って固まっていては、いつまで経ってもここから出れない。
楽しいこと、と考えてすぐに浮かんだのは昨夜の記憶で、静留はそれを丁寧に辿ることにした。
西弥は静留の指から血が出ているのを優しく拭ってくれ、さらにピアノを弾こうとしたのを止めソファーに座らせ、お気に入りのぬいぐるみを抱かせてくれた。
そのあと、じっと静留の瞳を覗き込んできて…。
__そういえば、あれ、とっても気持ちよかった…。
彼の瞳が静留の瞳を覗き込んだ瞬間、少しぞくりとしたあとに気持ち良さと多幸感に包まれた、あれはなんだったのだろう。
ここから出たらもう一度ねだってみよう、と思ったら前向きな気持ちになって、静留はシャワーを浴び終え、身体を雑に拭いて西弥のもとへと向かった。
そしてそこで西弥と梨花が至近距離で見つめ合っているのを発見し、静留の語彙では表すことができないもやもやとした気持ちに陥り、たまらず西弥の袖を引いたのだった。
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