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送葬のコンサート③(東弥side)
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__どうして。
舞台袖で静留の演奏を聴きながら、東弥は腿に肘を置き手を強く組んだ。
静留の演奏を聴いていると、亡くなった兄との記憶がどんどん呼び起こされていく。
東弥が兄と暮らしていたのは4歳までで、そのあとは年に一度年末に会うくらいだった。
だから東弥にとって西弥がいることは日常ではなくて、彼が亡くなってから今までは、何かが欠けた感じがしながらも変わらない日常を過ごしていて。
なのに、静留の演奏が、幼い頃西弥に遊んでもらった記憶や、ごくたまに会うといつでも東弥の心配をしてくれた彼の姿を思い出させてくるのだ。
“東弥はもっと、肩の力を脱いていいんだよ。”
そう言って、彼はいつだって東弥の悩みをいつだって真剣に聞いてくれた。
思っていたよりずっと自分の中の彼との記憶が大切だったことに気が付き、やるせない気持ちが募る。
“今日は皆様、僕の演奏を聴きに来てくださり、ありがとうございます。それでは、次で最後の曲になります。”
あどけなさは残るものの普段よりしっかりとした静留の声がホールに響き、そのまま会場を静寂が支配した。
静留が鍵盤に手を乗せ、ゆっくりと腕をしならせる。
奏でられた、最初のたった一音で東弥は息を呑んだ。
__なんて優しくて温かい、
…それでいて寂しい音色。
まるで誰かを悼みながら、優しくあの世まで送り届けるような。
西弥を思って弾いているとしか考えられない。
ふと、生温かい液体が頬を伝ったのを感じた。
それは曲が終わりに近づくにつれ、勢いを増していく。
彼の死で涙を流すのは初めてだった。彼がもうとっくに届かないところにいるということを、本当の意味では多分、東弥は理解していなかったのだ。
そして同時に、この曲が終わったら西弥がもう会えないところへ行ってしまうような、そんな気がしていた。
寂しさと優しさを乗せて、曲は儚く進んでいく。
__兄さん、今までありがとう。静留にだけは、俺が兄さんの代わりになるからね。
曲が終わる頃、東弥は思い出の中の兄に別れを告げた。
彼の遺体に花を添えても、焼けた骨を拾っても、どこか理解できなかった喪失を、曲を通して痛いほどに感じる。
__さよなら。
暗い舞台袖の中で声に出さずに放った言葉は、曲の後の静寂に紛れ、拍手の音でかき消された。
舞台袖で静留の演奏を聴きながら、東弥は腿に肘を置き手を強く組んだ。
静留の演奏を聴いていると、亡くなった兄との記憶がどんどん呼び起こされていく。
東弥が兄と暮らしていたのは4歳までで、そのあとは年に一度年末に会うくらいだった。
だから東弥にとって西弥がいることは日常ではなくて、彼が亡くなってから今までは、何かが欠けた感じがしながらも変わらない日常を過ごしていて。
なのに、静留の演奏が、幼い頃西弥に遊んでもらった記憶や、ごくたまに会うといつでも東弥の心配をしてくれた彼の姿を思い出させてくるのだ。
“東弥はもっと、肩の力を脱いていいんだよ。”
そう言って、彼はいつだって東弥の悩みをいつだって真剣に聞いてくれた。
思っていたよりずっと自分の中の彼との記憶が大切だったことに気が付き、やるせない気持ちが募る。
“今日は皆様、僕の演奏を聴きに来てくださり、ありがとうございます。それでは、次で最後の曲になります。”
あどけなさは残るものの普段よりしっかりとした静留の声がホールに響き、そのまま会場を静寂が支配した。
静留が鍵盤に手を乗せ、ゆっくりと腕をしならせる。
奏でられた、最初のたった一音で東弥は息を呑んだ。
__なんて優しくて温かい、
…それでいて寂しい音色。
まるで誰かを悼みながら、優しくあの世まで送り届けるような。
西弥を思って弾いているとしか考えられない。
ふと、生温かい液体が頬を伝ったのを感じた。
それは曲が終わりに近づくにつれ、勢いを増していく。
彼の死で涙を流すのは初めてだった。彼がもうとっくに届かないところにいるということを、本当の意味では多分、東弥は理解していなかったのだ。
そして同時に、この曲が終わったら西弥がもう会えないところへ行ってしまうような、そんな気がしていた。
寂しさと優しさを乗せて、曲は儚く進んでいく。
__兄さん、今までありがとう。静留にだけは、俺が兄さんの代わりになるからね。
曲が終わる頃、東弥は思い出の中の兄に別れを告げた。
彼の遺体に花を添えても、焼けた骨を拾っても、どこか理解できなかった喪失を、曲を通して痛いほどに感じる。
__さよなら。
暗い舞台袖の中で声に出さずに放った言葉は、曲の後の静寂に紛れ、拍手の音でかき消された。
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