朝日に捧ぐセレナーデ 〜天使なSubの育て方〜

沈丁花

文字の大きさ
68 / 92
第二部

お礼と初夜の準備④(東弥side)

しおりを挟む
「疲れた?静留。」

「…ちょっと、だけ…。」

腹部に飛んだ白濁をタオルで拭いながら尋ねると、静留は眠たげに唇を開いた。

まだ東弥にもたれかかったまま、彼はぐったりとしている。

「歯磨きして寝ようか。」

「…うん…。」

ふわふわと夢現ゆめうつつな状態の静留を、ベッドから抱き上げ洗面所まで連れていく。

東弥が静留の歯ブラシに子供用の歯磨き粉をつけて渡せば、彼はそれを受け取り口の中に入れた。

夜鏡の前で一緒に歯磨きをするのは付き合い始めてからの日課で、静留が普通の歯磨き粉を嫌がるため今は一緒に子供用の味付き歯磨き粉を使っている。

自らの歯を磨きながら東弥は横にいる静留に目をやった。

小さな口に歯ブラシを入れ柔らかい頬が突っ張っている様子や、頑張って磨こうと大きな目を見開いてじっと鏡を見ている姿がとても愛らしい。

しかししばらく磨いていると彼の手の動きはだんだんとゆっくりになり、東弥が歯を磨き終えた頃には彼はぼうっと鏡を見ながら同じ場所ばかりを永遠に左右に擦っていた。

まぶたがとても重たそうだ。

「静留、貸してごらん。Open口を開いて. 」

あまりの可愛らしさに頬を綻ばせながら、彼の手から歯ブラシを奪いglareを放ち口を開かせる。

そのまま並びの良い白い歯を一つ一つ丁寧に磨き、コップを口元に持っていきうがいもさせて。

うがいを終えると静留はすがるようにぎゅっとこちらに抱きついてきた。

「…シーツを洗…いや、静留の部屋で寝ようか。」

「ん…。」

再び抱き上げた静留の身体は眠たいせいか普段より温かい。

いつものように隣り合って横になり静留の首の下に腕を入れると、すぐに隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。

心地よいその呼吸に耳を傾けながら東弥は先ほどの行為を反芻する。

__幸せだった…。

もちろん今までの相手と静留では全く違うとわかっていた。

しかし、その幸せは東弥が予想していた以上に大きくて。

特に静留が自らも余裕がない中で東弥の幸せを望んだとき、今まで味わったどの経験に対するものよりも大きな喜びを覚えた。

前戯すら全て終わっていない段階でこんなにも幸せだなんて、本当に不思議だ。

「ありがとう、静留。」

起こさないように気をつけながら彼の耳元で小さくささやく。

たおやかな髪をそっとかきあげ白い額に唇を重ねれば、眠り姫の桜色の唇がふわりと柔らかな弧を描いた。





「ん…。」

窓から差し込む日差しに眩しさを覚えぼんやりと目蓋を開けたあとで、東弥は昨夜の情事を思い出しそっと視線を隣に移動した。

慣れないことで疲れたのだろうか。いつも早起きの静留がまだ東弥の隣でじっと眠っている。

「…かわい。」

彼の白い頬に人差し指でそっと触れ、わずかに眉が震えた様子が可愛らしく東弥は思わず笑みを溢した。

しっとりとした滑らかな肌は無防備に男の指を受け入れ、それがまたたまらなく愛しい。

美しい寝顔を眺めながら、初めて自分に性的な感情を許して静留に触れた昨夜の行為を反芻する。

静留の身体は小さな頭から長い手足の爪先までどこをとっても綺麗だった。

普段のあどけない様子も好きだが、まだ誰にも開かれたことのない純白の身体を東弥に差し出しながら頬を染め恥じらう姿にもまた別の魅力があって。

そのまましばらく頬や唇をなぞっているとぱっちりと大きな目が開かれ、不思議そうにぱちぱちと瞬いた。

「おはよ、静留。」

言いながらたまらずその唇に自分の唇を重ねる。

「!!」

静留は一旦目を見開き固まった後でなぜか頭まで布団を被り隠れてしまった。

「どうしたの?寒かった?」

布団を剥ぐことはせず、後ろから彼の身体を抱きしめ尋ねてみる。

「あの、ね…。

東弥さんが格好良すぎて、…どきどき、するの…。」

__どきどき?静留が俺に…?

意外な返答に驚く一方で可愛くてつい意地悪をしたくなってしまった。

今までずっと我慢してきたから、少しだけDom性が暴走しても許してほしい。

「じゃあもっとどきどきして見せて。」

彼の身体をくるりとこちらの方へ反転させ弱いglareを発しながらじっと瞳を覗けば、濡羽色の瞳が戸惑うように揺らぐ。

長い髪をかき分け頭をそっと撫で、東弥はもう一度彼の唇に自らの唇を落とした。

「…いじわる、しないで…。」

「ごめん、泣かないで。嫌だった…?」

「…嫌じゃない、けど…。」

「けど?」

「…うぅっ…はずかしい、から…。」

__可愛いけど、これ以上したら嫌われちゃうかな…。

もう少し悪戯したいのを必死で堪え、彼の華奢な身体を手離す。

「リボン、結ぼうか。」

「うん!」

東弥がベッドに座り優しく囁けば、彼はふわりと微笑んで。

彼もまたベッドから出てちょこんと正座をし、目を閉じじっと印が結ばれるのを待った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

Dom/Subユニバース読み切り【嘉島天馬×雨ケ谷颯太】

朝比奈*文字書き
BL
🖤 Dom/Subユニバース 毎週日曜日21時更新! 嘉島天馬(クーデレ・執着Dom)× 雨ケ谷颯太(ワンコ系・甘えんぼSubよりSwitch) 読み切り単話シリーズ。命令に溺れ、甘やかされ、とろけてゆく。 支配と愛情が交錯する、ふたりだけの濃密な関係を描いています。 あらすじは各小説に記載してあります。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...