【宝の鍵~金の王子と銀の王子~】本編 元平凡女性のイケメン王子は執着心強めな兄に溺愛される

月城はな

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第三章 王族

3-3 半身同士の依存

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 一方、中庭でボーっと日向ぼっこをしながら、色々な考え事をしていたリュセルは、王族や剣鍵というシリアスな事柄の考え事から、何故だかレオンハルトの事に移っていた。

(レオンはなんであんな事をしたんだろう)

 昨夜味わった、淫猥な熱。少しでも思い出すと、羞恥と後ろめたさで顔が熱くなる。今まで、普通に交わしていた口づけといい、やはり、この世界の兄弟では普通な事柄なのか?

 しかし、同じ兄弟であるレオンハルトとカイルーズが、昨夜の自分達のような事を行っている所は……。

(いや、想像出来ん!!)

 というか、想像するだけで二人の怒りの鉄拳が落ちてきそうだ。

(後、考えられるのは、主と鍵の関係がそんな関係って事か)

 確か、カイルーズが会ったばかりの頃、そんなような事を言っていたような気がする。

 女だった時、そんな恋愛めいた悩みなどなかったのに、男になった途端、(なんだか誤解を招くような表現だが)こんな事になろうとは。しかも、お相手は実の兄。

 笑い話にもならん。

(もしかして、レオンは俺の事が好きなのか?)

 今更何を言うんだ。とレオンハルトが聞いたら脱力しそうな事を考えた瞬間、リュセルの脳裏を一人の美少女がよぎった。

 金朱の髪に暖かい緑の瞳の、類稀な美少女。一度しか会った事はないが……。

(あれ? だが、俺には、確か婚約者がいなかったか?)

 意味が分からない。

 しかし、重要なのは自分の気持ちだ。もし、万が一、弟としてではなく、レオンハルトが自分の事を好きなのだとする。自分は、レオンハルトの事をどう思っているのか。

 今のところ、レオンハルトについての自分の認識は、”口うるさいが頼りになる兄”というようなものなのだ。確かに、時たまものすごくレオンハルトを愛しく感じるのだが、何故、急にそう思うのかもわからない。

 女たらしの百戦錬磨、ユージンあたりが聞いたら、「うわっリュセル殿下、超鈍っ!!」とあきれられる事請け合いだ。

 そうして、少し考えた後、リュセルは、傍に咲いていたピンク色の可愛らしい花を摘むと、ぼそぼそと呟き始めた。

「俺はレオンの事が好き、嫌い、好き、嫌い」

 おもむろに、背も高く、体格もいい美貌の王子が花占いを始めたのを誰かが見たら、うっとりとその様子を見るか軽く引くかどちらかだろうが、幸いここには誰もいなかった。

「好き、嫌い、好き、嫌い、好き、嫌い……す、すすす好き?」

 最後の一枚になった花びらを、血走った目で睨みながら、リュセルがカタカタと奮えているのを、ずいぶん前から黙って見学していたレオンハルトは、感情のわからぬ目で弟の姿を見つめながら小さく首を傾げた。

「何をしているんだ?」

「ぎゃあああああああ!!」

 声をかけた瞬間、叫び声を上げたリュセルに、レオンハルトはのん気に父王と叫び方が似ているな。と考えていた。

「レ、レオン」

 恐る恐る振り返った、リュセルの目に飛び込んできた長身の美青年に、心拍数が一瞬上がった。

「……?花の花弁などをむしって、何のつもりだい?」

 そう言って、リュセルの隣に腰を下ろすレオンハルトに、リュセルは気まずそうに視線を逸らした。

「別に、何でもないさ。そっちこそ、忙しいんじゃないのか?」

 持っていた花弁のない花を放り投げ、そう言ったリュセルにレオンハルトは答えた。

「カイルーズに大方の引継ぎは終わったからね。後は、騎士団総帥の仕事を適任な者に引き継げば、私も肩の荷が降りるよ」

 そんな事までしていたのか。

(こいつは、普通の人間の十人分を一人でこなしていたんじゃないか?)

 ば、化け物。

 レオンハルトに対してかなり失礼な事を考えながら、リュセルは兄の横顔を見た。

 自分の事を棚に上げつつ、つくづく美麗な男だと思う。

 腰まで伸ばされた胡桃色の髪は、クセはなくサラサラとしており、つい手を伸ばしたくなってしまう衝動に駆られる事がある。リュセルの容貌が世の女性達を虜にするような美貌なら、レオンハルトの容貌は女性達が羨むような美貌をしている。

 背がもっと低く、体つきも華奢だったなら、女性に間違われた事だろう。

 リュセルよりも上背があり、騎士団総帥として体も鍛えられている為、どんなに美麗でも男にしか見えなかったが。

「どうした?」

 じっと、穴が開いてしまうと思われる程、熱い視線を向けてくる弟に、レオンハルトは顔を向け、その視線を受け止めた。

「いや」

 こちらが見てないと視線を向けてくるくせに、視線を向けると逸らす。それを不思議に思いながら、レオンハルトは構わず話した。

「この庭園は、母上が愛した庭園だ。ここには母上の温もりが残っている」

「……」

 この弟は、実の母親の事をなにも知らずに、この先生きていく事になる。それが少し哀れだと思う。

 レオンハルトのその考えを読んだように、リュセルは言った。

「俺は、向こうの世界では両親健在だったし、いつも部屋でゲームしかしてないようなニートで引きこもり気味の弟と、ペットのミーコもいて、結構幸せだったんだ。こっちの母親の事を知らなくても、別に何てことないさ。それに」

 リュセルは言葉を切ると、レオンハルトに視線を戻した。

「俺は、お前がいてくれれば、それでいいんだ」

 おそらく何も考えずに口にしただろう言葉に、レオンハルトは小さく微笑んだ。そのままリュセルの肩を引き寄せ、触れるだけの口づけを交わした。

 珍しく抵抗一つせずに、レオンハルトの口づけを受けたリュセルは、自分を抱きしめてきた兄の抱擁に安らぎを感じながらも、かすかな恐れを感じていた。
 直系の王族でありながら、その責を負わぬ自分達は邪気の浄化と共に、互いへの依存を強めてしまうんじゃないかと思ったからだ。

 他の国の宝主と宝鍵も、こんな感じなのだろうか?

 そして、そんなリュセルの疑問は、意外にもすぐ解決する事になるのだった。
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