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第四章 朱金の姫君
7-2 さあ、浄化の時間だ②
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この世で最も愛していた娘。妻が亡くなってから、唯一の生き甲斐にしていた。……そして、己の手で殺してしまった、哀れな子供。
ー許しておくれ、リーナ。馬鹿な父を許してくれ-
ーお父様、大好き-
次の瞬間、少女の魂とウィリア卿の魂は完全に重なった。
「今です、リュセル様!」
ティアラの合図に、リュセルは二人の魂を強引に邪鬼から引き離した。
左手で何かを引っ張るようにして引くと、ウィリア卿とその愛娘の魂は抱き合いながらこの世界から消えるのを感じた。
女神の御許へと旅立ったのだ。彼らの魂は、女神の涙に洗い清められ、また新たなる生を受ける事になる。
きっと今度も互いに近しい者として産まれてくる事だろう。そう信じたい。
四人は、同時に安堵のため息を洩らす、(正確には同化している為二人だが)だが、すぐにリュセルが、ウィリア卿の魂が離れても尚、肖像画の影響で彼の姿を模写したままの邪鬼を睨みつけた。
「ふふっ、さすがはグレン・ケイファスタンの絵を媒介にしているだけあるねぇ」
ジュリナは感心しながらも、鏡の力を強める。
ーぎゃああああああああっー
苦痛の叫びをあげる邪鬼を金の瞳で見つめたまま、リュセルは口端をわずかに上げて笑った。
「浄化の時間だ」
弟の、その言葉と共に、レオンハルトは言った。
「行くぞ、リュセル」
そして恐怖の表情を浮かべたままの邪鬼を、一刀両断に切り裂いた。
ー~~~~~~~~~ッッッー
切り裂かれた邪鬼は邪気に戻り、断末魔の叫びもあげられぬまま、剣が放つ白銀の光によって浄化される。
「どうか安らかに、ウィリア卿」
キラキラとした浄化の光に包まれて、リュセルはそう呟いた。
そして、次の瞬間、剣から自分の体が弾かれるのを感じる。
(戻らなくては……)
兄と同化している感覚は、体は軽いし、とても気持ちがいいのだが。
「戻りなさいリュセル、同じ体では抱き合う事も出来ぬ」
レオンハルトの優しい声に導かれるようにして、リュセルは目の前にある自分の体へと戻った。そして、途端に呻き声を上げる。
「うう……」
前の時もそうだったが、戻った瞬間、ものすごく体が重く感じるのは何故だ?そんな自分の体を片手で支えてくれているレオンハルトの肩に額を預けると、体と意識が馴染むのを待った。
「どうした?」
「リュセル様?」
同じように同化を解いたジュリナとティアラが、心配して駆け寄ってきた。
「気持ちが悪い」
そう呟いて、ずるずるとレオンハルトに身を預けたまま座り込んでしまったリュセルは、前回はこんなにひどくなかった事を思い出した。
すぐにレオンハルトと話をする事が出来た前回に比べ、自分の体に馴染むのが遅いというか何と言うか……。
ぐったりとした様子のリュセルを見たジュリナは、心配そうに眉をひそめる。
「同化率が高すぎるんじゃないのか? お前達」
「同化率?」
リュセルが問い返すと、レオンハルトは跪いたままの状態でリュセルを支えながら、その金の瞳を上げてジュリナを見る。
「魂と体の相性が良すぎると同化率が高くなり、同化を解いた後に自分の体に違和感を感じるんだ。今回、結構長い間同化していたからねぇ……」
「私は大丈夫だが」
「お前のような、化け物じみた体力の男と、剣もまともに扱う事も出来ない奴を一緒にするな」
リュセルもレオンハルトもひどい言われようである。
「少し休めば大丈夫さ」
ジュリナの言葉にレオンハルトは小さく頷くと、弟の肩と膝裏に両腕を回し、その体をおもむろに横抱きに抱き上げた。
「お、お、おおおお、降ろせッ」
婚約者の前で、兄に軽々と抱き上げられるという、あまりといえばあまりな事態に、リュセルは気分が悪い事を忘れて叫び声を上げる。
「おとなしくしていなさい。今夜は、この街に宿をとるぞ」
前半の言葉はリュセルに、後半はジュリナに向けてそう言うと、レオンハルトはスタスタと歩き始めた。
「わかったよ。行くよ、ティア」
「はい」
にやにやしているジュリナの言葉に返事をすると、ティアラは早足でレオンハルトの横に並んだ。
「リュセル様」
心配そうに曇った緑の瞳が、純粋にリュセルの身を案じていた。
(本当にいい子だな)
リュセルは感動しながらも、ジュリナの次の言葉を聞いて、またレオンハルトの腕から逃れようとした。
「お姫様抱っことはやるねぇ」
(姫はお前達だろうが!)
そう心の中で突っ込むと、ジタバタと暴れて地面に降ろしてもらおうとする。……が。
「リュセル」
叱責するような、静かだが厳しい声を聞いて、リュセルは動きを止めて縮こまった。それも、暴れた所為で気分は余計悪くなったようだ。……馬鹿である。
すっかりおとなしくなったリュセルに満足すると、レオンハルトはジュリナに言った。
「宿に着いたら、お前に聞きたい事がある」
「なんだい?」
ティアラの肩を抱きながら、のん気にそう聞いてきたジュリナに、冷たくも恐ろしい視線を向けると、レオンハルトは低い声で尋ねた。
「リュセルの首の、この痣はなんだ?」
「あ……ああ~、それか」
まるで、首を絞められた跡のような痣に、ジュリナは目線を泳がせる。
「それと、リュセルを連れ去った事に対しての弁明でも聞こうか?」
その凍るような声に、自分に非がある事を自覚しているジュリナは、さすがにやばいと感じた。
「ティ……、ティア」
妹に助けを求めるが、ティアラはにっこりと聖母のような微笑を浮かべて言った。
「しっかりと、弁明なさって下さいね」
ー許しておくれ、リーナ。馬鹿な父を許してくれ-
ーお父様、大好き-
次の瞬間、少女の魂とウィリア卿の魂は完全に重なった。
「今です、リュセル様!」
ティアラの合図に、リュセルは二人の魂を強引に邪鬼から引き離した。
左手で何かを引っ張るようにして引くと、ウィリア卿とその愛娘の魂は抱き合いながらこの世界から消えるのを感じた。
女神の御許へと旅立ったのだ。彼らの魂は、女神の涙に洗い清められ、また新たなる生を受ける事になる。
きっと今度も互いに近しい者として産まれてくる事だろう。そう信じたい。
四人は、同時に安堵のため息を洩らす、(正確には同化している為二人だが)だが、すぐにリュセルが、ウィリア卿の魂が離れても尚、肖像画の影響で彼の姿を模写したままの邪鬼を睨みつけた。
「ふふっ、さすがはグレン・ケイファスタンの絵を媒介にしているだけあるねぇ」
ジュリナは感心しながらも、鏡の力を強める。
ーぎゃああああああああっー
苦痛の叫びをあげる邪鬼を金の瞳で見つめたまま、リュセルは口端をわずかに上げて笑った。
「浄化の時間だ」
弟の、その言葉と共に、レオンハルトは言った。
「行くぞ、リュセル」
そして恐怖の表情を浮かべたままの邪鬼を、一刀両断に切り裂いた。
ー~~~~~~~~~ッッッー
切り裂かれた邪鬼は邪気に戻り、断末魔の叫びもあげられぬまま、剣が放つ白銀の光によって浄化される。
「どうか安らかに、ウィリア卿」
キラキラとした浄化の光に包まれて、リュセルはそう呟いた。
そして、次の瞬間、剣から自分の体が弾かれるのを感じる。
(戻らなくては……)
兄と同化している感覚は、体は軽いし、とても気持ちがいいのだが。
「戻りなさいリュセル、同じ体では抱き合う事も出来ぬ」
レオンハルトの優しい声に導かれるようにして、リュセルは目の前にある自分の体へと戻った。そして、途端に呻き声を上げる。
「うう……」
前の時もそうだったが、戻った瞬間、ものすごく体が重く感じるのは何故だ?そんな自分の体を片手で支えてくれているレオンハルトの肩に額を預けると、体と意識が馴染むのを待った。
「どうした?」
「リュセル様?」
同じように同化を解いたジュリナとティアラが、心配して駆け寄ってきた。
「気持ちが悪い」
そう呟いて、ずるずるとレオンハルトに身を預けたまま座り込んでしまったリュセルは、前回はこんなにひどくなかった事を思い出した。
すぐにレオンハルトと話をする事が出来た前回に比べ、自分の体に馴染むのが遅いというか何と言うか……。
ぐったりとした様子のリュセルを見たジュリナは、心配そうに眉をひそめる。
「同化率が高すぎるんじゃないのか? お前達」
「同化率?」
リュセルが問い返すと、レオンハルトは跪いたままの状態でリュセルを支えながら、その金の瞳を上げてジュリナを見る。
「魂と体の相性が良すぎると同化率が高くなり、同化を解いた後に自分の体に違和感を感じるんだ。今回、結構長い間同化していたからねぇ……」
「私は大丈夫だが」
「お前のような、化け物じみた体力の男と、剣もまともに扱う事も出来ない奴を一緒にするな」
リュセルもレオンハルトもひどい言われようである。
「少し休めば大丈夫さ」
ジュリナの言葉にレオンハルトは小さく頷くと、弟の肩と膝裏に両腕を回し、その体をおもむろに横抱きに抱き上げた。
「お、お、おおおお、降ろせッ」
婚約者の前で、兄に軽々と抱き上げられるという、あまりといえばあまりな事態に、リュセルは気分が悪い事を忘れて叫び声を上げる。
「おとなしくしていなさい。今夜は、この街に宿をとるぞ」
前半の言葉はリュセルに、後半はジュリナに向けてそう言うと、レオンハルトはスタスタと歩き始めた。
「わかったよ。行くよ、ティア」
「はい」
にやにやしているジュリナの言葉に返事をすると、ティアラは早足でレオンハルトの横に並んだ。
「リュセル様」
心配そうに曇った緑の瞳が、純粋にリュセルの身を案じていた。
(本当にいい子だな)
リュセルは感動しながらも、ジュリナの次の言葉を聞いて、またレオンハルトの腕から逃れようとした。
「お姫様抱っことはやるねぇ」
(姫はお前達だろうが!)
そう心の中で突っ込むと、ジタバタと暴れて地面に降ろしてもらおうとする。……が。
「リュセル」
叱責するような、静かだが厳しい声を聞いて、リュセルは動きを止めて縮こまった。それも、暴れた所為で気分は余計悪くなったようだ。……馬鹿である。
すっかりおとなしくなったリュセルに満足すると、レオンハルトはジュリナに言った。
「宿に着いたら、お前に聞きたい事がある」
「なんだい?」
ティアラの肩を抱きながら、のん気にそう聞いてきたジュリナに、冷たくも恐ろしい視線を向けると、レオンハルトは低い声で尋ねた。
「リュセルの首の、この痣はなんだ?」
「あ……ああ~、それか」
まるで、首を絞められた跡のような痣に、ジュリナは目線を泳がせる。
「それと、リュセルを連れ去った事に対しての弁明でも聞こうか?」
その凍るような声に、自分に非がある事を自覚しているジュリナは、さすがにやばいと感じた。
「ティ……、ティア」
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