【宝の鍵~金の王子と銀の王子~】本編 元平凡女性のイケメン王子は執着心強めな兄に溺愛される

月城はな

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第五章 陰の日

3-3 ディエラの三つ子の末姫達

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 そして、レオンハルト不在の、実に五日目の朝、ジュリナとティアラは任務に赴く事になった。街道で発生した、邪気の浄化である。

「場所も近いし、邪気も小規模だから、二~三日で帰ってくるよ。」

 ジュリナの言葉に頷いたリュセルは、昨日、目の前で泣いてしまった手前、ティアラの方を見づらかった。

 ティアラは、自分の歌にそんなに感動してくれるなんてと、嬉しそうだったが、婚約者の愛らしい姫君に泣き顔など、男として見られたくなかったリュセルである。

「行って参りますわね。リュセル様」

 態度のおかしいリュセルに首を傾げながらも、ティアラは優しく微笑んだ。

「うるさいお兄様も、私達というお目付け役もいないからって……。いいかい、リュセル。羽目を外すんじゃないよ。お前の面倒は、ある者達にまかせたからね」

(面倒って……)

 この数日のジュリナとの付き合いで、もう突っ込む気力すら残されていない。

 そうして任務地へと旅立って行った二人を見送り、リュセルはある目的を達成する為、城の奥のある部屋に赴く事にする。

 案内がいない為、少々迷いながら辿り着いた、その部屋の壁一面には、ディエラ王家の家系図と王族の肖像画が飾られている。
 シルヴィア女王の絵を筆頭に、ジュリナ、ティアラ、三つ子の末姫達と、亡くなったらしい、姉妹の両親。

 順番に絵を見ていき、そして幼い姫君と、十代前半位の姫君が描かれた絵の前で足を止めた。

 朱金の髪の幼い姫君二人と、彼女達の横に立つ冷たい瞳の少女……

「……男か?」

 着ている王子の正装から、少女ではなく少年である事がわかった。

 しかし、その肩先まである胡桃色の髪といい、可憐な唇といい、つぶらな瞳といい、現在のティアラと張るか、それ以上の絶世の美少女である。

「レオン!?」

 その時、ようやく、絶世の美少女というフレーズで、リュセルはその絵の美少女が自分の実兄だという事に気づく。

 目的のものを、ようやく見つけた!

 ジュリナが言っていた通りである。現在のレオンハルトですら、なまじの美女よりも美しいのだ。成長期を迎える前の彼の姿は、もはや男には見えなかった。

 うっかりと、リュセルは、その肖像画の兄に見惚れてしまい、そこから動き出す事が出来なくなってしまう。

 そうして、穴が開く程、ずっと、兄の少年時代の絵を見ていると、後ろでクスクスとした可愛らしい笑い声が響いた。

「リュセル様、ずっとあの絵を見てるわよ」

「あの絵って、そんなにおもしろかったかしら?」

「お姉様達のお小さい頃の絵よ。確か……」

 同じ顔の少女が三人、扉から部屋の中を覗き込んでいた。祖母譲りの赤茶の髪と、はしばみ色の瞳をした、今年十歳になる三つ子の末姫達である。

 彼女達は、末姫であると同時に、このディエラの王位継承者でもあった。

「何をしているのですか? 小さな姫君達」

 ヒソヒソと、自分達の会話に夢中になっていた為、次の瞬間、近くで響いた声に驚き、三人は跳ね上がる。

 驚きに目を見張る彼女達の目線に合わせるよう、片膝をついたリュセルは、内心唸った。

 三人が三人とも、まったく同じ顔である。

「ルイ姫、ルカ姫、ルナ姫でしたよね?」

 どれがどれだか、まったく分からないが……

「「「はい!」」」

 ずっと話してみたかった、美貌の客人に話しかけられて、三人は耳まで赤くして、口をそろえて返事をした。

「私達」

「リュセル様のご面倒を見るように、って」

「ジュリナ姉様に頼まれたんです」

 順番にそう言った三人の言葉を聞いたリュセルは、朝のジュリナの言葉を思い出して、顔を引きつらせる

(俺の面倒をみる相手って、この子達か!?)

 あきらかに、立場が逆である。

 少女達のうっとりとした三対の目に、同時に見つめられて、リュセルは遠い目になった。

 「お会いできて光栄ですよ、小さな姫君達」

 ようやく立ち直り、そう言ったリュセルは、少女達3人の手の甲に、一人ずつ口づけた。それに応えるように、三人共、一人前のレディらしくドレスの裾を持ってお辞儀をするのが、また可愛らしい。

「リュセル様、わたくし達のお部屋にいらして!」

「わたくし達の髪も、結ってくださいません?」

「お願いします」

 そんな風に一斉にせがまれて、リュセルは結局、この三つ子姫の部屋に案内してもらう事になった。
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