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第七章 黄昏往く国
11-2 黄昏を憂う者達
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どちらにしろ、メルティス前王は人である事を止めたその時から、落ちるところまで落ちるしかなかったのだ。
女神の息子であるローウェンとアルティスを邪気の木の結び目の設定になど出来るはずもないから、正確には十八人の孫の内の誰かという事になる。
「結び目になった者に特徴はないらしい」
「って事は、直接触れて俺が探るしかないな」
レオンハルトの言葉を聞くと同時にリュセルは目を伏せた。
ディエラ滞在時に行った、ティアラとの特訓の成果が存分に発揮できそうで、嬉しい限りである。
「無理するんじゃない。今回の事の精神的打撃はまだ残っているのだろう?」
言い含めるようにそう告げたレオンハルトは、感知能力が高いというよりも、高過ぎるリュセルの精神への負担を危惧していた。
「それでも、やらなければ。時間がないんだろう?」
「…………」
頑固な所のあるリュセルにこれ以上何を言っても駄目だろう。レオンハルトはため息をつくと、本を閉じた。
「もし、辞めた方がいいと私が判断したら、その場で気絶させてでも辞めさせるからな」
あきらめのにじんだようなその声に、リュセルは笑った。
「すまない、レオン」
普段は厳しいが、こんな時に見せるレオンハルトの甘さが自分は好きだった。
「あの、王族達の調査か……」
そう考えると気が重い。
幼い下の子供達や、大人しい姫君達はともかく。
「あいつら、濃いからなあ」
そんなリュセルの言葉にレオンハルトは無言で同意したのだった。
メルティス、ローウェン、アルティス、リュセル、レオンハルト。
それぞれがそれぞれの思惑を抱いている頃、一人の女性が、日の暮れ往くサンジェイラの街並みを城の窓から思いつめた表情で見つめていた。
いつも三つ編みにしていた黒髪を解き、吹き付ける風に遊ばせるユリエは、背後に近づいて来たすぐ上の異母兄に告げた。
「レインがどこにもいないわ。きっと、リュセル王子達が行方を知っていると思うけれど……。どうする? 私達だけで計画を進めるの?」
その言葉に青年は頷いた。
「それしかないね。元々レインを巻き込むつもりじゃなかったのだから……」
「ええ。あの子には、大きな役目を担ってもらわなければならないものね」
妹の言葉を聞いた青年は、同意するように目を閉じる。
「明日にでも、街の様子を見てくるわ」
「……気をつけるんだよ。知っている通り、今、王都の街は治安が非常に悪い。出来れば代わりに行きたいのだけれど」
憂うように吐き出された青年の言葉にユリエは首を振った。
「お兄様は自分の役目を全うして下さい。これは私の役目だわ」
もうずっと、自分の同志として傍らに在り続ける妹の気丈な表情を見つめ、せつなくなる。
本当なら、もっと幸せな人生を歩みたかった。歩ませてやりたかった。
「どうして、こんな国に産まれてしまったんだろうね」
瞳に悲哀の色をにじませる異母兄に向かって、ユリエは笑いかけた。
「それでも、この国を愛しているわ」
その万感の思いを乗せた言葉に、青年は痛みを堪えるような表情のまま、ユリエの後ろに広がる、黄昏往くサンジェイラの国の街並みを見つめ続けたのだった。
女神の息子であるローウェンとアルティスを邪気の木の結び目の設定になど出来るはずもないから、正確には十八人の孫の内の誰かという事になる。
「結び目になった者に特徴はないらしい」
「って事は、直接触れて俺が探るしかないな」
レオンハルトの言葉を聞くと同時にリュセルは目を伏せた。
ディエラ滞在時に行った、ティアラとの特訓の成果が存分に発揮できそうで、嬉しい限りである。
「無理するんじゃない。今回の事の精神的打撃はまだ残っているのだろう?」
言い含めるようにそう告げたレオンハルトは、感知能力が高いというよりも、高過ぎるリュセルの精神への負担を危惧していた。
「それでも、やらなければ。時間がないんだろう?」
「…………」
頑固な所のあるリュセルにこれ以上何を言っても駄目だろう。レオンハルトはため息をつくと、本を閉じた。
「もし、辞めた方がいいと私が判断したら、その場で気絶させてでも辞めさせるからな」
あきらめのにじんだようなその声に、リュセルは笑った。
「すまない、レオン」
普段は厳しいが、こんな時に見せるレオンハルトの甘さが自分は好きだった。
「あの、王族達の調査か……」
そう考えると気が重い。
幼い下の子供達や、大人しい姫君達はともかく。
「あいつら、濃いからなあ」
そんなリュセルの言葉にレオンハルトは無言で同意したのだった。
メルティス、ローウェン、アルティス、リュセル、レオンハルト。
それぞれがそれぞれの思惑を抱いている頃、一人の女性が、日の暮れ往くサンジェイラの街並みを城の窓から思いつめた表情で見つめていた。
いつも三つ編みにしていた黒髪を解き、吹き付ける風に遊ばせるユリエは、背後に近づいて来たすぐ上の異母兄に告げた。
「レインがどこにもいないわ。きっと、リュセル王子達が行方を知っていると思うけれど……。どうする? 私達だけで計画を進めるの?」
その言葉に青年は頷いた。
「それしかないね。元々レインを巻き込むつもりじゃなかったのだから……」
「ええ。あの子には、大きな役目を担ってもらわなければならないものね」
妹の言葉を聞いた青年は、同意するように目を閉じる。
「明日にでも、街の様子を見てくるわ」
「……気をつけるんだよ。知っている通り、今、王都の街は治安が非常に悪い。出来れば代わりに行きたいのだけれど」
憂うように吐き出された青年の言葉にユリエは首を振った。
「お兄様は自分の役目を全うして下さい。これは私の役目だわ」
もうずっと、自分の同志として傍らに在り続ける妹の気丈な表情を見つめ、せつなくなる。
本当なら、もっと幸せな人生を歩みたかった。歩ませてやりたかった。
「どうして、こんな国に産まれてしまったんだろうね」
瞳に悲哀の色をにじませる異母兄に向かって、ユリエは笑いかけた。
「それでも、この国を愛しているわ」
その万感の思いを乗せた言葉に、青年は痛みを堪えるような表情のまま、ユリエの後ろに広がる、黄昏往くサンジェイラの国の街並みを見つめ続けたのだった。
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