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第十一章 神への叛逆
6-1 ルーンメッセの街
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リュセルとジュリナが漆黒の馬車にて運ばれ、レオンハルトとティアラがディエラ王都を出発した時刻とほぼ同時刻。
王都より三~四日も馬を飛ばせば到着する場所に位置する、葡萄酒(ワイン)が名産の豊かな地。
ルーンメッセの街。
遡れば信じられない程に古い家系の一つ。祖先が、かつてこの国を建国した勇者、ディエラに仕えたとも言われるナイト侯爵家が代々領主を務める地にある街である。
ナイト家は、ディエラ王家より侯爵の地位と領地を預かる有力貴族の中でも力のある家だ。
ナイト侯爵家の屋敷がこのルーンメッセにある為、その夜も、屋敷の主であるナイト侯爵家当主、クラウン・ナイトは、領地で収穫された葡萄酒(ワイン)の味を楽しんでいた。
「今年の葡萄酒(ワイン)も、なかなかの味ですね」
上質なソファに優雅に腰かける、貴族的な雰囲気の二十代後半程と思われる青年。
彼はグラスの中のワインの香りを楽しみながらも、向かいに座る難しい顔をした男に自慢の酒を勧める。
「ワトスンもどうですか? とてもおいしいですよ」
「よくも、そう、のん気にしていられるな」
対するは、よく鍛えられた体躯が印象的な、四十代半ば程の男。
ワトスン・ノーベル。
アシェイラ国出身の傭兵である。
「マーリンの奴が獲物を連れてくるまで、俺は気が休まらんぞ。失敗すれば、ナイト侯爵家とて無事に済むはずないだろうに」
「でも、だからといって、ここで気を揉んでいても仕方ないでしょう? それにマーリンなら、きっとこの大役を無事果たしてくれると、私は信じていますから」
「だと、いいがな」
ワトスンは吐き捨てるようにそう言うと立ち上がり、乱暴に部屋の扉を荒々しく開けて出て行った。
「おやおや」
青年……、クラウンは、「まったく仕方のない人ですねぇ」と言いながら肩をすくめ、視線を窓の方へと移した。
「おや、こちらは珍しい」
そう言うと窓際へと移動し、大きく窓を開け放つ。
クラウンが窓を開けるのを待っていたかのように、すぐに室内に飛び込んできたのは、一羽の小鳥。
翠緑をした羽が美しくも愛らしい、掌に乗る程の大きさの小鳥が自分が差し出した右手人差し指に止まるのを見てとると、クラウンはにっこりと笑った。
「やあ、セフィラン。お久しぶりですね、お元気でしたか?」
人懐っこく笑ったクラウンに向かい、その小鳥は小さな嘴を使って言葉を返す。
「そっちこそ相変わらずだな、サイレン」
小鳥の言葉を聞いたクラウンは、面白そうにクスクスと笑いながら小首を傾げた。
「どうかしましたか? あなたには、剣鍵の監視をお願いしていたはずですよ」
「監視対象がそちらに向かっている」
ぼそぼそと聞きとりずらい声で話す小鳥の言葉を器用に聞き取ったクラウンは、その顔から穏やかな笑みを消す。
「手違いで、鏡鍵ではなく、剣鍵と鏡主を捕え、そちらに向かっているのさ」
「それはそれは……、嬉しい誤算ですね」
「では、俺は監視を続行する」
報告をするだけして、すぐにまた窓から飛び立っていく小鳥を見送りながら、クラウンはその顔に邪悪な笑みを浮かべていたのだった。
*****
三回ばかり夜を超えた頃になり、ようやく捕らえた女神の子供二人を乗せた馬車は、ルーンメッセの街へと到着していた。
「出ろ」
馬車の扉を開け放った者の言葉を聞き、ジュリナは自分の肩に頭を預けていた妹の婚約者を優しく揺り起した。
「リュセル、大丈夫かい?」
「………………ああ」
くぐもったような声で返事が返され、肩から重みが消える。
「…………」
顔を上げたリュセルの憔悴の色を隠せない白皙の美貌を見つめながら、ジュリナは心配そうに眉をひそめた。
白いというよりも、青い。この移動期間中で落ち着いたようだが、リュセルの具合の悪さは下降の一途を辿っているようだった。
ジュリナに支えられながら、ふらふらとした足取りで馬車から降りたリュセルは、自分達を囲む襲撃者達に急き立てられるがままに、大きな邸宅の中へと連れて行かれる。
(ここは、一体どこなんだ? ディエラ国内から出ていないのは確かのようだが)
それにしても。
(暗い)
夜だからという訳ではない。この屋敷自体が、暗く重苦しい空気に包まれているのだ。
ジュリナは油断なく、目の動きだけで周りの様子を見回しながらそう思った。
「ナイトサマっ!」
ジュリナが警戒している横で、例の装置を両手に持ったまま、自分達の元を決して離れなかった子供が、喜声を上げて、出迎えに現れた人物に飛びついて行った。
「ご苦労でしたね、マーリン」
マーリンという名だったのか。その子供の頭を撫でながら穏やかにそう告げた青年の顔を見て、ジュリナは目を見張った。
「ナイト侯爵。まさか、お前が反女神組織、ヒューマンの親玉だったとはな」
「これはこれは、ジュリナ姫。お久しぶりでございます。姫様におかれましては、ご機嫌麗しゅう」
「麗しいわけあるか、こんな状態!」
ジュリナの怒鳴り声を耳にしたクラウンは、小さく微笑む。
「それもそうですね。旅の間、ご不便おかけして申し訳ありませんでした。お部屋の方をご用意しておりますので、どうぞごゆっくりとおくつろぎ下さい」
丁寧に案内するつもりらしいが、実質的にはその部屋に監禁するつもりなのだろう。
「何が目的だい? 女神の子供の皆殺しか?」
ジュリナの深紅の瞳に射抜かれたクラウンは、わざとらしく体を震わせた。
「そんな恐ろしい事、考えてもおりませんよ。私達の望みはただ一つ。創世神話を失くし、女神への信仰を皆が捨て、あなた方に女神の力を手放して欲しいのです。つまりは、三国に伝わる神宝を……」
「この大地は人のモノ! 汚れた神の力など、いらナイっ」
クラウンの言葉を引き継いで忌々しげにそう吐き捨てるマーリンに向かい、ジュリナは静かに尋ねる。
「じゃあ、今だ世界各地に残る邪気の浄化はどうするつもりだい?」
「邪気…………。それも、この大地から女神の力が消えれば、自然に消滅するのでは?」
なんの根拠もないそれを、この屋敷に集うヒューマンのメンバー達は信じて疑っていないようだった。
「それに、邪気などというたわいもないもの、人間の力だけでも打ち倒せるわっ」
「まあまあ、ワトスン」
クラウンが宥めるが、聞こえたワトスンの言葉に対して、ジュリナは呆れたように両手を広げる。
「馬鹿か?」
「なんだと、貴様」
ワトスンは嫌いな女神の子供を前にして一気に頭に血が昇ったのか、ジュリナの肩を掴んだ。
「誰に手を触れていると思ってるんだよ、下朗」
その、人では持ち得ないような迫力ある美貌の中、血のように紅い瞳が間近で鈍く光るのを見たワトスンは圧倒され、弾かれたように彼女のなめらかな肌から手を放す。
情けない様子の同胞の様子を見たマーリンは眦をきつく上げると、ジュリナを睨みつけた。
「ソんな口、聞ける立場かっ!?」
「ッ!」
持っていた小箱のネジにマーリンが手を伸ばす。そして、それを視界に入れたリュセルの瞳が恐怖に見開かれた。
「壊れてシマエ」
ニタリと笑ってマーリンが小箱の蓋を開くのを、最後まで見ている事が出来なかった。
「ーーーーーーっ、ううああああああああぁぁぁッッ」
「リュセルッ!」
崩れ落ちる体を支える為、腕を伸ばしたジュリナよりも早く、リュセルはその腕に抱かれていた。
「止めなさい、マーリン」
「ナイトサマ。な、なんで?」
クラウンの制止を促す言葉を聞いたマーリンは、動揺に瞳を揺らしながらも渋々装置を止める。
「……はっ、はっ、はぁはぁ」
その美貌に大量の汗をにじませ、肩で荒い息を吐くリュセルの、弱々しくも背筋がゾクリとする程の壮絶なる色香に、マーリンとクラウン以外のヒューマンメンバーは、金縛りにあったかのように動きを止める。
「大丈夫ですか? リュセル王子殿下」
その場に跪いたクラウンは、座り込むリュセルを腕に捕えながら優しく微笑む。
「ああ……、反女神主義たる我らを魅了してしまうとは、本当に罪な方だ」
そう言うと、そのままリュセルの顔を仰向かせて、苦悶に歪んでも尚美しい月の美貌を覗きこむ。
「これが、女神の子供が女神から授かった美の恩恵ですか。それにしても……、ふふふ、娘たるジュリナ姫よりも艶っぽいのは何故でしょうね」
元の顔立ちは男性的で凛々しいのに、かすかに漏れ出る色香は何なのか。彼特有のものか。それとも、彼の半身が開花させたのか。
息も絶え絶えにぐったりしている、クラウンの腕に抱かれたままのリュセルをどうにか助けられないかとジュリナは唇を噛むが、あの子供が例の装置を持っている以上、それは不可能に近い。それに、リュセルの体調は、ジュリナが思っていた以上に悪いようだった。
「おや? 熱があるようですね。可哀そうに。早く休ませた方が良いようです」
そう言うと、クラウンはワトスンに目くばせする。
「チッ」
ワトスンは軽く舌打ちをし、クラウンの求めに応じてリュセルの腕を掴み、肩に回すと、ふらつくその体を支えて立ち上がった。
「ほら、行くぞ。ふらふらすんな」
「リュセル! お前達っ」
リュセルを支え、歩きながら遠ざかるワトスンの後姿を忌々しげに見送ったジュリナは、クラウンを睨みつける。
「あの王子は、あなたに対する牽制です。もし、何かしようものなら、王子の身の保障は致しかねますよ」
「…………」
怒りに燃える深紅の瞳を平然と見返しながら、クラウンはにっこりと笑った。
「だから大人しくしていて下さいね? これから来るであろう、他の女神の子供達が揃うまで」
王都より三~四日も馬を飛ばせば到着する場所に位置する、葡萄酒(ワイン)が名産の豊かな地。
ルーンメッセの街。
遡れば信じられない程に古い家系の一つ。祖先が、かつてこの国を建国した勇者、ディエラに仕えたとも言われるナイト侯爵家が代々領主を務める地にある街である。
ナイト家は、ディエラ王家より侯爵の地位と領地を預かる有力貴族の中でも力のある家だ。
ナイト侯爵家の屋敷がこのルーンメッセにある為、その夜も、屋敷の主であるナイト侯爵家当主、クラウン・ナイトは、領地で収穫された葡萄酒(ワイン)の味を楽しんでいた。
「今年の葡萄酒(ワイン)も、なかなかの味ですね」
上質なソファに優雅に腰かける、貴族的な雰囲気の二十代後半程と思われる青年。
彼はグラスの中のワインの香りを楽しみながらも、向かいに座る難しい顔をした男に自慢の酒を勧める。
「ワトスンもどうですか? とてもおいしいですよ」
「よくも、そう、のん気にしていられるな」
対するは、よく鍛えられた体躯が印象的な、四十代半ば程の男。
ワトスン・ノーベル。
アシェイラ国出身の傭兵である。
「マーリンの奴が獲物を連れてくるまで、俺は気が休まらんぞ。失敗すれば、ナイト侯爵家とて無事に済むはずないだろうに」
「でも、だからといって、ここで気を揉んでいても仕方ないでしょう? それにマーリンなら、きっとこの大役を無事果たしてくれると、私は信じていますから」
「だと、いいがな」
ワトスンは吐き捨てるようにそう言うと立ち上がり、乱暴に部屋の扉を荒々しく開けて出て行った。
「おやおや」
青年……、クラウンは、「まったく仕方のない人ですねぇ」と言いながら肩をすくめ、視線を窓の方へと移した。
「おや、こちらは珍しい」
そう言うと窓際へと移動し、大きく窓を開け放つ。
クラウンが窓を開けるのを待っていたかのように、すぐに室内に飛び込んできたのは、一羽の小鳥。
翠緑をした羽が美しくも愛らしい、掌に乗る程の大きさの小鳥が自分が差し出した右手人差し指に止まるのを見てとると、クラウンはにっこりと笑った。
「やあ、セフィラン。お久しぶりですね、お元気でしたか?」
人懐っこく笑ったクラウンに向かい、その小鳥は小さな嘴を使って言葉を返す。
「そっちこそ相変わらずだな、サイレン」
小鳥の言葉を聞いたクラウンは、面白そうにクスクスと笑いながら小首を傾げた。
「どうかしましたか? あなたには、剣鍵の監視をお願いしていたはずですよ」
「監視対象がそちらに向かっている」
ぼそぼそと聞きとりずらい声で話す小鳥の言葉を器用に聞き取ったクラウンは、その顔から穏やかな笑みを消す。
「手違いで、鏡鍵ではなく、剣鍵と鏡主を捕え、そちらに向かっているのさ」
「それはそれは……、嬉しい誤算ですね」
「では、俺は監視を続行する」
報告をするだけして、すぐにまた窓から飛び立っていく小鳥を見送りながら、クラウンはその顔に邪悪な笑みを浮かべていたのだった。
*****
三回ばかり夜を超えた頃になり、ようやく捕らえた女神の子供二人を乗せた馬車は、ルーンメッセの街へと到着していた。
「出ろ」
馬車の扉を開け放った者の言葉を聞き、ジュリナは自分の肩に頭を預けていた妹の婚約者を優しく揺り起した。
「リュセル、大丈夫かい?」
「………………ああ」
くぐもったような声で返事が返され、肩から重みが消える。
「…………」
顔を上げたリュセルの憔悴の色を隠せない白皙の美貌を見つめながら、ジュリナは心配そうに眉をひそめた。
白いというよりも、青い。この移動期間中で落ち着いたようだが、リュセルの具合の悪さは下降の一途を辿っているようだった。
ジュリナに支えられながら、ふらふらとした足取りで馬車から降りたリュセルは、自分達を囲む襲撃者達に急き立てられるがままに、大きな邸宅の中へと連れて行かれる。
(ここは、一体どこなんだ? ディエラ国内から出ていないのは確かのようだが)
それにしても。
(暗い)
夜だからという訳ではない。この屋敷自体が、暗く重苦しい空気に包まれているのだ。
ジュリナは油断なく、目の動きだけで周りの様子を見回しながらそう思った。
「ナイトサマっ!」
ジュリナが警戒している横で、例の装置を両手に持ったまま、自分達の元を決して離れなかった子供が、喜声を上げて、出迎えに現れた人物に飛びついて行った。
「ご苦労でしたね、マーリン」
マーリンという名だったのか。その子供の頭を撫でながら穏やかにそう告げた青年の顔を見て、ジュリナは目を見張った。
「ナイト侯爵。まさか、お前が反女神組織、ヒューマンの親玉だったとはな」
「これはこれは、ジュリナ姫。お久しぶりでございます。姫様におかれましては、ご機嫌麗しゅう」
「麗しいわけあるか、こんな状態!」
ジュリナの怒鳴り声を耳にしたクラウンは、小さく微笑む。
「それもそうですね。旅の間、ご不便おかけして申し訳ありませんでした。お部屋の方をご用意しておりますので、どうぞごゆっくりとおくつろぎ下さい」
丁寧に案内するつもりらしいが、実質的にはその部屋に監禁するつもりなのだろう。
「何が目的だい? 女神の子供の皆殺しか?」
ジュリナの深紅の瞳に射抜かれたクラウンは、わざとらしく体を震わせた。
「そんな恐ろしい事、考えてもおりませんよ。私達の望みはただ一つ。創世神話を失くし、女神への信仰を皆が捨て、あなた方に女神の力を手放して欲しいのです。つまりは、三国に伝わる神宝を……」
「この大地は人のモノ! 汚れた神の力など、いらナイっ」
クラウンの言葉を引き継いで忌々しげにそう吐き捨てるマーリンに向かい、ジュリナは静かに尋ねる。
「じゃあ、今だ世界各地に残る邪気の浄化はどうするつもりだい?」
「邪気…………。それも、この大地から女神の力が消えれば、自然に消滅するのでは?」
なんの根拠もないそれを、この屋敷に集うヒューマンのメンバー達は信じて疑っていないようだった。
「それに、邪気などというたわいもないもの、人間の力だけでも打ち倒せるわっ」
「まあまあ、ワトスン」
クラウンが宥めるが、聞こえたワトスンの言葉に対して、ジュリナは呆れたように両手を広げる。
「馬鹿か?」
「なんだと、貴様」
ワトスンは嫌いな女神の子供を前にして一気に頭に血が昇ったのか、ジュリナの肩を掴んだ。
「誰に手を触れていると思ってるんだよ、下朗」
その、人では持ち得ないような迫力ある美貌の中、血のように紅い瞳が間近で鈍く光るのを見たワトスンは圧倒され、弾かれたように彼女のなめらかな肌から手を放す。
情けない様子の同胞の様子を見たマーリンは眦をきつく上げると、ジュリナを睨みつけた。
「ソんな口、聞ける立場かっ!?」
「ッ!」
持っていた小箱のネジにマーリンが手を伸ばす。そして、それを視界に入れたリュセルの瞳が恐怖に見開かれた。
「壊れてシマエ」
ニタリと笑ってマーリンが小箱の蓋を開くのを、最後まで見ている事が出来なかった。
「ーーーーーーっ、ううああああああああぁぁぁッッ」
「リュセルッ!」
崩れ落ちる体を支える為、腕を伸ばしたジュリナよりも早く、リュセルはその腕に抱かれていた。
「止めなさい、マーリン」
「ナイトサマ。な、なんで?」
クラウンの制止を促す言葉を聞いたマーリンは、動揺に瞳を揺らしながらも渋々装置を止める。
「……はっ、はっ、はぁはぁ」
その美貌に大量の汗をにじませ、肩で荒い息を吐くリュセルの、弱々しくも背筋がゾクリとする程の壮絶なる色香に、マーリンとクラウン以外のヒューマンメンバーは、金縛りにあったかのように動きを止める。
「大丈夫ですか? リュセル王子殿下」
その場に跪いたクラウンは、座り込むリュセルを腕に捕えながら優しく微笑む。
「ああ……、反女神主義たる我らを魅了してしまうとは、本当に罪な方だ」
そう言うと、そのままリュセルの顔を仰向かせて、苦悶に歪んでも尚美しい月の美貌を覗きこむ。
「これが、女神の子供が女神から授かった美の恩恵ですか。それにしても……、ふふふ、娘たるジュリナ姫よりも艶っぽいのは何故でしょうね」
元の顔立ちは男性的で凛々しいのに、かすかに漏れ出る色香は何なのか。彼特有のものか。それとも、彼の半身が開花させたのか。
息も絶え絶えにぐったりしている、クラウンの腕に抱かれたままのリュセルをどうにか助けられないかとジュリナは唇を噛むが、あの子供が例の装置を持っている以上、それは不可能に近い。それに、リュセルの体調は、ジュリナが思っていた以上に悪いようだった。
「おや? 熱があるようですね。可哀そうに。早く休ませた方が良いようです」
そう言うと、クラウンはワトスンに目くばせする。
「チッ」
ワトスンは軽く舌打ちをし、クラウンの求めに応じてリュセルの腕を掴み、肩に回すと、ふらつくその体を支えて立ち上がった。
「ほら、行くぞ。ふらふらすんな」
「リュセル! お前達っ」
リュセルを支え、歩きながら遠ざかるワトスンの後姿を忌々しげに見送ったジュリナは、クラウンを睨みつける。
「あの王子は、あなたに対する牽制です。もし、何かしようものなら、王子の身の保障は致しかねますよ」
「…………」
怒りに燃える深紅の瞳を平然と見返しながら、クラウンはにっこりと笑った。
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