【宝の鍵~金の王子と銀の王子~】本編 元平凡女性のイケメン王子は執着心強めな兄に溺愛される

月城はな

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第十二章 月華の乙女

16-3  懺悔②

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(あ~、暇、退屈。やってらんね)

 その日も、一日のスケジュールの大半が懺悔室当番になっていたリチャードは、カーテンの向こうから聞こえる相手の仕事の愚痴に適当に相槌を打っていた。

(みんな会議中なのに、僕だけず~~っとここにいなくちゃなんないって、何これ! 何の苦行!? も~~~~、頼むよ、ルーちゃん~~!)

 ルークが復帰してくれないと、リチャードの懺悔室当番を解いてくれる人がいない。

(こんな暗い所に一日中閉じこもってなくちゃいけないなんて、最悪だよん。せめて懺悔にくる神官がいたいけな可愛い子ちゃんならいいのにさ~)

 少年趣味(ショタコン)なリチャードの好みのタイプの子は神学生に多く、神官になってしまうと年齢的に無理なのだ。

(ルーちゃんも昔は可愛かったのに、今じゃあんな鬼神官だもんな~。夢精して泣いてたあの頃のルーちゃんが懐かしいな~~~~)

 一昨日散々ライサンに言い訳という名の説明をしたが、ルークに自慰を教えたのはリチャードだが、それ以上の事はしていない。年上の先輩として、きちんと後輩に性の知識を教えてあげただけなのだ。

(第一、ライサンの役目じゃないの? これって~~~! ライサンが代表生徒として忙しくしてたから、代わりに僕が教えてあげたのにさ。ただでさえ僕ら(神殿の人間)って、そういう事に関する知識を教わる機会って少ないのにさ)

 あの頃は、今よりもルークのライサンに対する態度は強固だった。それ故にあの子は、兄変わりであるライサンよりも自分を頼ったのだろう。

(ルーちゃんも、あれで態度が軟化したってんだから、笑っちゃうよね)

 そんな事を考えている間に、いつのまにかカーテン向こうの懺悔者が変わっていたらしい。気配でそれを察知したリチャードは、いつものように優しく声をかけた。

「我ら皆、創世の女神、セイントクロスの母の尊い子。懺悔をなさい。女神の名のもと、すべてを許します」

 そして

「……………………」

 無言。

 しばらくしても返事を返してこない相手に、リチャードは穏やかに問いかける。

「いかがしました?」

 話すのを迷っているのだろうか。まあ、よくある事だ。そして、また考え事の続きでもしようかと思っていたリチャードの耳に、いきなりそれは飛び込んできた。

「実は」

「はい」

 適当に相槌を打つと、カーテン越しの懺悔者は重々しい口調で言った。

「兄が…………鬼畜王なのです」

 キチクオウ……………………????

 リチャードの思考は一瞬停止する。

「その上、恥知らずで、ものすごくエロいんです」

 まだ、続くのかい!?

 恋愛系に関する懺悔はたまに来るが、こんなのは初めてだ。リチャードは退屈していた事を忘れて、その懺悔内容にのめり込む。

「エロいとは? どれ位エロいのですか?」

「エロエロ魔人とでも思って下さい。もう、焦らしのテクが半端ないです」

 ん……? この話内容によると、この懺悔者は、兄がエロ過ぎて困り、それを懺悔しているようだが、もしや、兄弟で事に及んでいるという事か!?

 そんな風に、ウキウキわくわくして、カーテン向こうの懺悔者の話に夢中になっていた為、リチャードはそれに気づくのが遅れた。

「…………」

 懺悔の聞き役用の部屋の扉を開き、リチャードに近づいた彼は、隙だらけのリチャードの口を片手で塞いだ。



「俺の体が淫乱なのかと悩んだ時期もありました。でも、違う、俺は悪くない。すべてあいつが悪い! あの鬼畜王がエロいのがいけないのです。そんな兄に代わり、弟の俺が懺悔します。ごめんなさい」

 リチャードの異変に気づかぬまま、そう懺悔を続けたリュセルの耳に、次の瞬間、冷たい美声が届いた。

「ほう」

 !!!!!!!????????

 リュセルは驚愕に目を見開くと、一気にカーテンを捲った。

 そこに在ったのは、麗しの美貌。

「お前がそんな風に考えていたとはね。少し甘やかし過ぎたようだ」

 にっこり笑ってそう言った、何故かそこにいた兄の美貌を見つめ、リュセルは絶句する。

「剣鍵様……」

 その横には、気絶したリチャードを抱えた、微妙な顔のセフィの姿。

「寄宿舎に戻るよ、そこを出なさい」

 レオンハルトの命令に、リュセルはまるで油の切れたロボットのようなぎこちない動きで頷く。

「み、見つかったか? 月華の乙女」

 怯えの混じった弟の掠れた声に、否の答えを返し、レオンハルトは言った。

「仕方ない。彼を尋問するしかあるまいよ」

 唯一残った神官査、リチャードを尋問するという兄に同意し、リュセルは誤魔化すように答える。

「そ、そそそそうだな、それがいい! そうしよう!」

 弟のその言葉に、レオンハルトは呆れたようなため息をついたのだった。

 まったく、少し目を離すとすぐこれだ。困ったものである。
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