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第十三章 聖女の血
6-1 新たな正装衣①
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その後、しばらくの間は、平和な日々が続いた。
思いもかけず、死んだと聞かされていた(何せ葬儀にまで参加したのだ)両親が生きていたという事実と、その隠された理由を聞かされたティアラは、驚きを隠せない状態であった。だが、刻が経ち、気持ちの整理がついて落ち着いてくると、両親に対する思慕の念が噴き出てきたのか、ルカイナとキキョウの傍から離れる事なく、共に過ごす事を望んだ。
どんなに王女としての気品に満ち、落ち着いた姫君であろうと、ティアラは十六歳になったばかりの少女である。両親に甘えるティアラをジュリナは優しく見守り、アシェイラ城の客室では、ディエラ王家の者達の久方ぶりの家族団欒が行われていた。
そんな四人の邪魔にならぬようにと、口の堅い侍従を四人の世話役につけ、レオンハルトはリュセルにも、客室のあるフロアにあまり近づかぬよう言い含めたのだった。
リュセルだとて、家族水入らずの邪魔などしたくはない。それでなくとも、生誕祭の準備と打ち合わせで忙しいのだ。そちらの方に追われていて、ディエラ組に構っていられないというのが本音でもあった。
アシェイラ神殿で行われる、”生誕の儀”。
アシェイラ城で行われる、”誕生舞踏会”。
当初、レオンハルトは、自分達の時は舞踏会のような派出なものをするつもりはなく、身内のみで晩餐会を行うつもりだったらしいのだが、貴族達の中から猛反発が起きたのだ。
彼らからすれば、第三王子であり、剣鍵、リュセル王子が帰還して初めての生誕祭で、街も国も大いに盛り上がっているというのに、その宴を質素に済まそうとするのは何事か! という事らしい。
その、思いもよらぬ大き過ぎる反発に、ジェイドが……。
「仕方ないよ、レオン。例え平民でも、舞踏会にはお前達の知り合いも招けるようにするから、彼らの面子を立てておあげ」
父王のその言葉にレオンハルトが従い、やる予定のなかった舞踏会が増えた影響により、自分達の誕生日を十四日後に控えた今
もっのすご~~~~~~~くッ…………忙しい状態に在った。
*****
「なんだか、城内がものすごく慌ただしいようだな」
仮縫い状態のリュセルとレオンハルトの正装を持参して来城したルークは、城内の慌ただしさを眺めながら呆気にとられていた。本日は剣鍵の衣装のサイズ調整も兼ねている為、一人ではなく、衣装担当の神官を数名連れている。
そんな、案内役の侍女の後を静かに追いながらの台詞に対し、すぐ後ろにいたリチャードが頷く。
「街の方の生誕祭の準備や、うち(神殿)の生誕の儀の準備は元々決まってたじゃん。準備期間もたくさんあったし。だから、こうして目処が付いてるケド……。お城の方の誕生舞踏会は、最近行われる事が決まったんだって! だ~から、急ピッチで準備を進めてるんじゃない?」
いつもの軽い口調でそう言いながら、周囲を忙しなく行き来する侍女や、小姓、使用人達の姿を見ていたリチャードは更に続ける。
「でも、今回の誕生舞踏会は特別で、剣主様と剣鍵様と親しい間柄の人は、身分に関係なく参加できるらしいね。セッちゃんとライサンに招待状が届いたらしいよ~~~~」
それを聞いたルークは、何も考えずにあっさりと頷いた。
「ああ、それなら俺にも届いた」
「はっ? なんで!?」
驚いたリチャードは、後ろからルークの肩を前後に揺らしまくる。
「知らんわッ! 揺らすな、ワカメ!」
そう怒鳴りながらもルークは、確かにリチャードの言う通りだとも思っていたのだ。ライサンは神官長として剣主剣鍵と面識はあったろうし、セフィに至っては、つい最近まで繋ぎ役の任につき、任務にも同行した経験を持つ。招待状が来るのは頷ける。
(何故、俺にまで届いたんだ?)
意味わからん。
繋ぎ役の任に就きはしたが、それはつい最近の事だし、何分、現時点で、まだ剣主にしか会ってもいない。剣鍵であるリュセル王子の顔さえ知らぬ状態なのだ。
まさか、いきなりアシェイラ神殿に現れいなくなった、あの個性的なクマキチ兄弟が、自分が仕えるべき剣主剣鍵だったとはまったく知らぬルークは、ライサンから聞いた、クマキチ兄弟の本部への異動を信じてまったく疑っていなかった。
それ故に、何故自分に二人の誕生舞踏会の招待状が送られてきたのか不明だった。
「まぁ、日は浅いが、現在、繋ぎ役の任に付いている人間を無視できなかったのだろうさ」
とりあえず、そう思う事にした。
「え~~、本当、いいなぁ。ルーちゃんも、セッちゃんもライサンもさ~」
頭の後ろに両手を組んで、そう言ったリチャードを、ルークは咎める。
「無駄口を止めにしろ。そろそろ剣主様の執務室に着くぞ」
まだ二回しか来てはいないが、なんとなく分かる。
あんなにもたくさんいた使用人や貴族達の数が一気に減り、選び抜かれた使用人の姿しか見えなくなってくる。後宮に最も近い場所にあるレオンハルトの執務室が近い証拠だ。
「お初にお目にかかります、剣鍵様。セイントクロス神殿アシェイラ支部、神官長補佐と繋ぎ役の任に就いております、ルーク・ウインターと申します」
通されたレオンハルトの執務室にて、ルークはそう挨拶をすると、両膝を付き、深く頭を下げ、神子に対する最上級の礼をして見せた。
額を床に押し付けるようにして頭を下げるルークと同じように、その後ろにいたリチャードや衣装担当の神官達も頭を下げる。
「頭を上げろ」
低く甘い響きを持つ美声に導かれるようにして、ルーク達は頭を上げる。
「リュセルだ。よろしく頼む」
年頃の若い娘や成熟した女達、数多の女性を夢中にさせてしまうような、絶世の美男子がそこにいた。
月の女神の寵児、月光の奇跡、最近では、その凛々しさ、勇ましき姿から銀狼(シルバーウルフ)とまで呼ばれる事のあるこの国の第三王子。
白銀の睫毛のかかる薄い銀色の瞳で真っすぐに見つめられたルークは、他の者のように陶然と見惚れる事なく、真っすぐに見つめ返す。スーパーノーマルな上、色恋沙汰や美しいものに疎いルークにしてみれば、目の前の美し過ぎる青年は、敬い、畏れる対象であり、見惚れる対象ではないのだ。
そんなルークの、生真面目で固い、神官の模範のような表情を見返し、リュセルは内心面白くてたまらなかった。
彼がセフィの後釜として、繋ぎ目の任に就いてうまくやっている理由がよく分かる。
超がつく程お役目第一で、仕事熱心な真面目神官の彼ならば、レオンハルトのしたたるような色香と傾国の美女のような麗しき美貌に惑わされる事もないだろう。
顔を見るのは、アシェイラ神殿に潜入調査をしていた時以来だが、元気そうである。
(そういえば、セフィ殿ともしばらく会っていないよな)
ルークの顔を眺めながら、リュセルは会わなくなった盲目の神官の事を思い出していた。
「では、早速ですが、正装衣装のサイズ調整とデザインの確認を致します。剣主様もご一緒とうかがっているのですが……」
姿の見えぬレオンハルトを訝しく思い、ルークはそう尋ねる。
「あ~、レオンの奴は、まだ誕生舞踏会の方の準備の打ち合わせに参加している。すぐ来るはずだ」
打ち合わせといっても、リュセルやレオンハルトがする事は、提案された事に許可を出すか出さないか決めるだけだ。会場や招待客、その他もろもろの準備は全て、担当となった侍従がしてくれる。ジュリナとティアラの誕生舞踏会の時と同じである。
ただ、彼らでないといけないのが、衣装の準備。誕生舞踏会用に衣装を作るようで、リュセルは剣鍵としての正装衣装の他に、第三王子としての正装衣装も作られている真っ最中であった。
しかも、そんなに着替えてどうするんだ!? という位、お色直しがあるらしく、作る衣装は一着ではない。リュセルは誕生日当日、神子としての正装を含め、まるで着せ替え人形の如く、たくさん着替えをする事が決定していた。それはリュセルだけでなく、レオンハルトも一緒なのだが……。
それにしても、この誕生舞踏会。いくらなんでも、気合い入れ過ぎじゃないか? リュセルは内心、そう思わずにはいられない。
カイエに渡された舞踏会で踊る順の相手名簿を見た瞬間、凍り付いた自分を思い出す。
何故か婚約者を差し置いて、最初にレオンハルト、次にジェイド、その次にカイルーズ。(どうして初めの三人が男なのだ? しかも、何故身内!? どっちが女のパートを踊るのか不明)四人目でようやく、婚約者であるティアラ姫。五人目に未来の義姉たるジュリナ。六人目に、これまた、未来の義姉、ユリエ姫…………その後は延々と、貴族の令嬢の名が連なっていた。
リュセルのか弱い足で、このハードスケジュールを乗り越えられるのか? 甚だ疑問だ。レオンハルトの名簿を見たが、リュセルと似たような感じだった為、文句も言えない。
(でも、あいつの体力は、俺と違って尋常じゃない程あるからな。これくらいの相手、涼しい顔してこなすのだろう)
親しい相手への挨拶回りは、このダンススケジュールの間をぬって行く事になりそうだ。
ーあはは。が、がんばって下さいねー
そのスケジュールのハードさに、乾いた笑いを浮かべつつ、名簿を渡して去って行ったカイエを真っ白くなりながら見送った時の事を思い出し、リュセルは遠い目をした。
……、と、そんな事を思い出しつつ、とりあえず予定も押している為、レオンハルトなしで衣装合わせとサイズ調整をする事になったリュセルは、リチャードが恭しい動作で白色のケースから出した衣装を見つめていた。
思いもかけず、死んだと聞かされていた(何せ葬儀にまで参加したのだ)両親が生きていたという事実と、その隠された理由を聞かされたティアラは、驚きを隠せない状態であった。だが、刻が経ち、気持ちの整理がついて落ち着いてくると、両親に対する思慕の念が噴き出てきたのか、ルカイナとキキョウの傍から離れる事なく、共に過ごす事を望んだ。
どんなに王女としての気品に満ち、落ち着いた姫君であろうと、ティアラは十六歳になったばかりの少女である。両親に甘えるティアラをジュリナは優しく見守り、アシェイラ城の客室では、ディエラ王家の者達の久方ぶりの家族団欒が行われていた。
そんな四人の邪魔にならぬようにと、口の堅い侍従を四人の世話役につけ、レオンハルトはリュセルにも、客室のあるフロアにあまり近づかぬよう言い含めたのだった。
リュセルだとて、家族水入らずの邪魔などしたくはない。それでなくとも、生誕祭の準備と打ち合わせで忙しいのだ。そちらの方に追われていて、ディエラ組に構っていられないというのが本音でもあった。
アシェイラ神殿で行われる、”生誕の儀”。
アシェイラ城で行われる、”誕生舞踏会”。
当初、レオンハルトは、自分達の時は舞踏会のような派出なものをするつもりはなく、身内のみで晩餐会を行うつもりだったらしいのだが、貴族達の中から猛反発が起きたのだ。
彼らからすれば、第三王子であり、剣鍵、リュセル王子が帰還して初めての生誕祭で、街も国も大いに盛り上がっているというのに、その宴を質素に済まそうとするのは何事か! という事らしい。
その、思いもよらぬ大き過ぎる反発に、ジェイドが……。
「仕方ないよ、レオン。例え平民でも、舞踏会にはお前達の知り合いも招けるようにするから、彼らの面子を立てておあげ」
父王のその言葉にレオンハルトが従い、やる予定のなかった舞踏会が増えた影響により、自分達の誕生日を十四日後に控えた今
もっのすご~~~~~~~くッ…………忙しい状態に在った。
*****
「なんだか、城内がものすごく慌ただしいようだな」
仮縫い状態のリュセルとレオンハルトの正装を持参して来城したルークは、城内の慌ただしさを眺めながら呆気にとられていた。本日は剣鍵の衣装のサイズ調整も兼ねている為、一人ではなく、衣装担当の神官を数名連れている。
そんな、案内役の侍女の後を静かに追いながらの台詞に対し、すぐ後ろにいたリチャードが頷く。
「街の方の生誕祭の準備や、うち(神殿)の生誕の儀の準備は元々決まってたじゃん。準備期間もたくさんあったし。だから、こうして目処が付いてるケド……。お城の方の誕生舞踏会は、最近行われる事が決まったんだって! だ~から、急ピッチで準備を進めてるんじゃない?」
いつもの軽い口調でそう言いながら、周囲を忙しなく行き来する侍女や、小姓、使用人達の姿を見ていたリチャードは更に続ける。
「でも、今回の誕生舞踏会は特別で、剣主様と剣鍵様と親しい間柄の人は、身分に関係なく参加できるらしいね。セッちゃんとライサンに招待状が届いたらしいよ~~~~」
それを聞いたルークは、何も考えずにあっさりと頷いた。
「ああ、それなら俺にも届いた」
「はっ? なんで!?」
驚いたリチャードは、後ろからルークの肩を前後に揺らしまくる。
「知らんわッ! 揺らすな、ワカメ!」
そう怒鳴りながらもルークは、確かにリチャードの言う通りだとも思っていたのだ。ライサンは神官長として剣主剣鍵と面識はあったろうし、セフィに至っては、つい最近まで繋ぎ役の任につき、任務にも同行した経験を持つ。招待状が来るのは頷ける。
(何故、俺にまで届いたんだ?)
意味わからん。
繋ぎ役の任に就きはしたが、それはつい最近の事だし、何分、現時点で、まだ剣主にしか会ってもいない。剣鍵であるリュセル王子の顔さえ知らぬ状態なのだ。
まさか、いきなりアシェイラ神殿に現れいなくなった、あの個性的なクマキチ兄弟が、自分が仕えるべき剣主剣鍵だったとはまったく知らぬルークは、ライサンから聞いた、クマキチ兄弟の本部への異動を信じてまったく疑っていなかった。
それ故に、何故自分に二人の誕生舞踏会の招待状が送られてきたのか不明だった。
「まぁ、日は浅いが、現在、繋ぎ役の任に付いている人間を無視できなかったのだろうさ」
とりあえず、そう思う事にした。
「え~~、本当、いいなぁ。ルーちゃんも、セッちゃんもライサンもさ~」
頭の後ろに両手を組んで、そう言ったリチャードを、ルークは咎める。
「無駄口を止めにしろ。そろそろ剣主様の執務室に着くぞ」
まだ二回しか来てはいないが、なんとなく分かる。
あんなにもたくさんいた使用人や貴族達の数が一気に減り、選び抜かれた使用人の姿しか見えなくなってくる。後宮に最も近い場所にあるレオンハルトの執務室が近い証拠だ。
「お初にお目にかかります、剣鍵様。セイントクロス神殿アシェイラ支部、神官長補佐と繋ぎ役の任に就いております、ルーク・ウインターと申します」
通されたレオンハルトの執務室にて、ルークはそう挨拶をすると、両膝を付き、深く頭を下げ、神子に対する最上級の礼をして見せた。
額を床に押し付けるようにして頭を下げるルークと同じように、その後ろにいたリチャードや衣装担当の神官達も頭を下げる。
「頭を上げろ」
低く甘い響きを持つ美声に導かれるようにして、ルーク達は頭を上げる。
「リュセルだ。よろしく頼む」
年頃の若い娘や成熟した女達、数多の女性を夢中にさせてしまうような、絶世の美男子がそこにいた。
月の女神の寵児、月光の奇跡、最近では、その凛々しさ、勇ましき姿から銀狼(シルバーウルフ)とまで呼ばれる事のあるこの国の第三王子。
白銀の睫毛のかかる薄い銀色の瞳で真っすぐに見つめられたルークは、他の者のように陶然と見惚れる事なく、真っすぐに見つめ返す。スーパーノーマルな上、色恋沙汰や美しいものに疎いルークにしてみれば、目の前の美し過ぎる青年は、敬い、畏れる対象であり、見惚れる対象ではないのだ。
そんなルークの、生真面目で固い、神官の模範のような表情を見返し、リュセルは内心面白くてたまらなかった。
彼がセフィの後釜として、繋ぎ目の任に就いてうまくやっている理由がよく分かる。
超がつく程お役目第一で、仕事熱心な真面目神官の彼ならば、レオンハルトのしたたるような色香と傾国の美女のような麗しき美貌に惑わされる事もないだろう。
顔を見るのは、アシェイラ神殿に潜入調査をしていた時以来だが、元気そうである。
(そういえば、セフィ殿ともしばらく会っていないよな)
ルークの顔を眺めながら、リュセルは会わなくなった盲目の神官の事を思い出していた。
「では、早速ですが、正装衣装のサイズ調整とデザインの確認を致します。剣主様もご一緒とうかがっているのですが……」
姿の見えぬレオンハルトを訝しく思い、ルークはそう尋ねる。
「あ~、レオンの奴は、まだ誕生舞踏会の方の準備の打ち合わせに参加している。すぐ来るはずだ」
打ち合わせといっても、リュセルやレオンハルトがする事は、提案された事に許可を出すか出さないか決めるだけだ。会場や招待客、その他もろもろの準備は全て、担当となった侍従がしてくれる。ジュリナとティアラの誕生舞踏会の時と同じである。
ただ、彼らでないといけないのが、衣装の準備。誕生舞踏会用に衣装を作るようで、リュセルは剣鍵としての正装衣装の他に、第三王子としての正装衣装も作られている真っ最中であった。
しかも、そんなに着替えてどうするんだ!? という位、お色直しがあるらしく、作る衣装は一着ではない。リュセルは誕生日当日、神子としての正装を含め、まるで着せ替え人形の如く、たくさん着替えをする事が決定していた。それはリュセルだけでなく、レオンハルトも一緒なのだが……。
それにしても、この誕生舞踏会。いくらなんでも、気合い入れ過ぎじゃないか? リュセルは内心、そう思わずにはいられない。
カイエに渡された舞踏会で踊る順の相手名簿を見た瞬間、凍り付いた自分を思い出す。
何故か婚約者を差し置いて、最初にレオンハルト、次にジェイド、その次にカイルーズ。(どうして初めの三人が男なのだ? しかも、何故身内!? どっちが女のパートを踊るのか不明)四人目でようやく、婚約者であるティアラ姫。五人目に未来の義姉たるジュリナ。六人目に、これまた、未来の義姉、ユリエ姫…………その後は延々と、貴族の令嬢の名が連なっていた。
リュセルのか弱い足で、このハードスケジュールを乗り越えられるのか? 甚だ疑問だ。レオンハルトの名簿を見たが、リュセルと似たような感じだった為、文句も言えない。
(でも、あいつの体力は、俺と違って尋常じゃない程あるからな。これくらいの相手、涼しい顔してこなすのだろう)
親しい相手への挨拶回りは、このダンススケジュールの間をぬって行く事になりそうだ。
ーあはは。が、がんばって下さいねー
そのスケジュールのハードさに、乾いた笑いを浮かべつつ、名簿を渡して去って行ったカイエを真っ白くなりながら見送った時の事を思い出し、リュセルは遠い目をした。
……、と、そんな事を思い出しつつ、とりあえず予定も押している為、レオンハルトなしで衣装合わせとサイズ調整をする事になったリュセルは、リチャードが恭しい動作で白色のケースから出した衣装を見つめていた。
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