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第十三章 聖女の血
7-1* 浴室での誘い①
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よ、要望!? 本当に受け付けてもらえるのか? この、レースとか、レースとか、レースとかが、嫌なのだが……。
しかし、リュセルが口を開く前に、あっさりとレオンハルトが返事を返してしまう。
「いや、何もないだろう。いい出来だ。完全に仕上がるのを楽しみにしているよ」
(さ、最後のチャンスが)
終わった…………。
チーーーーーーンッ
リュセルが魂を飛ばしている間にも、周りにいた衣装役の神官達の手によって着ていた衣装が脱がされていく。
「直しも少しだけですので、本縫いを含め、明日の夜には仕上がりますが、最終調整はいつに致しますか?」
リチャードと共に宝主の衣装を脱がせていたルークの問いに対し、レオンハルトは頷いた。
「そうだね……」
レオンハルトは脳裏に、自分の誕生日までのスケジュールを正確に並べ始める。彼にスケジュール帳など、必要ない。大量にある予定を思い出せる明晰な頭脳があるからだ。朝から晩までビッシリと並べられているスケジュールの隙間を探ったレオンハルトは、淡々とした声音で答える。
「明日の夜、二十刻から二十一刻の間なら空いている。急がせる事になるが、出来るか?」
その言葉を受け、ルークは深く頭を下げる。
「仰せのままに、剣主様」
それにレオンハルトは、鷹揚に頷く事で答えたのだった。
「では、失礼致しました」
ルークがリチャードと他の神官達を伴って執務室を出ると、外では次の衣装合わせの為、数人の侍女と小姓、王族の衣装担当と思しき高貴な女性が二人待っている状態だった。
「お待たせ致しました。こちらは終了しましたので」
昨今、貴族の令嬢の間で流行しているドレスのほとんどは彼女達の工房で作っていると言っても過言ではない。有名服飾作家(デザイナー)である。
「…………」
女性。いや、まだ少女といってもいいような年齢だろう。彼女はルークの言葉に無言のまま、にこっと笑った。
神官として女性にあまり縁のない人生を歩んできたルークは、最新の流行ドレスに身を包んだ少女を前に、少し動揺してしまう。
フリルやリボンをふんだんに使った、赤と白の交差するチェック柄の、太腿までの長さしかないミニ丈のドレス。大きなリボンが目立つドレスと同じ柄の長靴(ブーツ)。肩にかかるクルクルとした金の巻き毛がよく似合っていた。
少女は、ルークに向かって小さく会釈をすると、もう一人の、背の高い栗色の髪の少女に手を引かれて、ルーク達が出てきた執務室の中へと入室して行った。
「…………すっご~~~~いいッ! 感動! 生でサキエ・ケイフォスタンとダリア・シュルーナを見ちゃったよ!」
二人に続いて侍女や小姓が姿を消すと、リチャードが興奮したような声を上がる。
「な、なんだ? その、なんとかという名前の奴らは」
いきなり大声を上げたリチャードにビクリッとしながら、ルークは言った。
「え~~~~~~! ルーちゃんってば、知らないの~~!? おっくれてるぅ!」
ツンツン
肩口を突っつかれたルークは、リチャードの首を素早い動きで絞め上げる。
「そうか、そんなに早死にしたいのか、お前は……」
「苦し……、ルーちゃん、降参……、降参…………ッも~~、短気なんだからさ~!」
ルークの締め上げから解放されたリチャードは、城の出口目指して歩きながら話し始めた。
「さっきの金髪の女の子が、サキエ・ケイフォスタン。茶髪の娘が、ダリア・シュルーナ。”宝石細工師”と”服飾作家”(デザイナー)だよ。有名だよ~、雑誌に絵姿載ってるもん。あの二人に、今回の誕生舞踏会の衣装を依頼したんだね。さっすが、王族! 売れっ子二人も確保出来るなんてさ」
「……そうだな」
雑誌など読まないルークは、一気に先程の二人から興味が失せる。
「あら~~? 興味ない??? サキエ・ケイフォスタン。金髪の子の方には興味あったように見えたんだけどなぁ」
「なっ!」
事実なだけに、ルークは顔を赤くしてリチャードを振り返る。
「ま、ライサンには内緒にしておいてあげるよ。女の子に見惚れた事はね!」
「見惚れてない! ああ、見惚れていないぞ!」
わかりやすい嘘をつくルークに、リチャードは肩をすくめて答えた。
「はいはい」
「馬鹿な事言ってないで帰るぞ! 明日までにご衣裳を仕上げなくてはならないんだ! 気合い入れとけ!」
「はあ~~~~~い」
部下の間伸びしたまぬけな返事を聞くと同時に、ルークはこめかみをヒクヒクさせながら、その頭を叩いてやったのだった。
*****
宝鍵の正装衣装を含め、十一着の衣装を試着したリュセルは、夜にはヘロヘロな状態になっていた。
神子としての正装衣は、既に仕上がりつつあったものを一着だったから良かった。問題はその後の、サキエとダリアの用意した衣装の試着だ。
依頼があったと同時に、ダリアは数十着の衣装のデザインを考え出し、それから更にサキエと話合って、デザインを二十着に絞り込んだ、選ばれたデザインの服を城の衣装担当の侍女達が縫い、作ったのである。城の侍女達なら、いちいち測らなくとも、リュセルとレオンハルトの服のサイズは熟知済みだ。
先に出来た十着を本日は試着し、あ~でもない、こうでもないと、サキエやダリア、城の侍女達が議論するのを聞いていた。
王族としての正装衣を一着、デザインに規定のない略装たる宮廷衣を一着、とりあえず選び、ほっとしたところである。
「あ~、明日も、朝から着せ替え人形か」
自室に備え付けられた浴室にある湯浴みの湯に浸かりながら、リュセルはため息をつく。本日は乳白湯だ。
「サキエもダリアも、年齢の割に頑固だからな。妥協という事を一切しないからねぇ。まぁ、それがプロなんだろうが」
髪も体も既にティルに洗ってもらい、リュセルはそう呟きながら寛いでいる状態だった。
「何をぶつぶつと言っているんだい、お前は」
その時、ようやく同じように、体と髪を洗い終えたレオンハルトがリュセルの横に滑り込んでくる。
チャプッ
わずかな水音をさせて湯の中に身を沈めたレオンハルトは、長い胡桃色の髪を髪留めで束ね上げている状態だ。いつもの入浴スタイルである。
リュセルは横目に、そんな兄の艶姿(?)を見ながら、ふと気になっていた事を口にした。
「ローウェンとアルティスは、どうしたんだろうな」
あれ以来、連絡が一切ない。
「こちらから連絡しようにも、私達では忙しくて無理だからね。暇なジュリナに頼んでおいたよ。明日にでも様子を見に行ってくれるそうだ」
「そうか」
おそらく、ローウェンもアルティスも、連絡もとれないような状況にあるのだろうが。
(そんなに悪いのか。レティシア元妃は……)
一度だけ会った事のあるレティシアは、美しく、儚げで、優しい女性だった。
自身の子、アルティス以外のサンジェイラの王子や王女達も、我が子のように可愛がっている様子がよく分かった。
あの、優しい女性(ひと)が。
リュセルが暗い顔をしていると、その様子を黙って見ていたレオンハルトは、不意に目の前にある濡れた銀糸の髪を撫でた。
「レオン?」
不可思議そうな表情を浮かべた弟を、安心させるように微笑む。
「ローウェンとアルティスがついているのだ。きっと、大丈夫だ」
美しい、典雅なる微笑。その頬笑みだけで、リュセルの心を覆う暗い気持ちは霧散する。
「そうだな」
そう言いながら、レオンハルトの方へ顔を向け、近づけた。兄の薄い唇に、触れるだけの口づけを与える。
「んッ」
一度唇を離すと、再び唇を重ね、今度は貪るような口づけを交わし合う。
口内を蹂躙し、蹂躙されながら、柔らかな兄の舌に舌を絡め、絡め合い、注がれる甘い唾液を導かれるままに嚥下した。
「おいで」
そして、久方ぶりにリュセルの体を慰めるつもりなのか、湯殿の淵に背を預けたまま、レオンハルトはそう言う。
その甘美なる誘いに、リュセルの体は素直に発情し、瞳は期待に濡れる。
「しかし、明日も忙しい訳だ……しな」
動揺したように視線を揺らす弟に、兄は再度誘いをかける。今度は、少々強引に……。
「来い」
その命令に、リュセルは渋々といった風に、レオンハルトの前に移動した。
「いや、今夜は背中を向けなさい」
「あ、ああ」
忙しさにかまけていたばかりに、久方ぶりになる逢瀬である。こうして、湯浴み場で愛されるのも、どれ位振りだろうか。
「クク、何を固くなっているんだ? もっと脚を広げてご覧」
リュセルの体に後ろから手を回しながら、艶めかしい動きで脚を弟の脚に絡め、器用に広げさせる。
自分の恥部は、幸い、白く濁った湯の所為で見えないが、脚を無理矢理に広げさせられたリュセルは、軽く顔を引きつらせる。
(湯……、湯が濁ってて良かった)
しかし、何も見えぬからこそ、次に何が行われるか分からない。
レオンハルトに導かれるまま、兄の裸の胸に背中を密着させて、後頭部を肩上に預けたリュセルは、レオンハルトの手の動きが見えず、動揺してしまう。見えるのも嫌だが、見えないのも不安で嫌だ。
「あっ……ん、っ」
そして、不意に訪れた刺激に、リュセルは盛大に声を洩らす。
チャプチャプと卑猥な水音をさせ、自身を弄び、愛撫する兄の慣れた手管に、リュセルは荒い息を吐きながら、たくましい兄の腕に縋った。
「私が触れた時には既に反応していたよ。素直ないい子だ……。リュセル」
右手で弟自身を弄び、左手で喉元を撫でながら、その首裏に舌を這わす。
「は、や、……そこ、あっ、だめ…………っ」
リュセルは、見えない手に受ける愛撫に夢中になりながら、こんな事して、明日のハードスケジュールはこなせるのか。と頭の片隅で考えていた。
「あっ……、はぁっ、はん……ッ」
場所が浴室の所為か、リュセルの喘ぎ声がよく響く。それに重なるようにして響くのが水音だ。
リュセル自身に濃厚な愛撫を加えるレオンハルトの手の動きによって生じるその音は、ひどく淫猥で、はしたないもののように感じられる。白く濁った湯の中、リュセルは大きく脚を広げさせられたまま、快感という名の熱い激流に流され、当の昔に理性を手放していた。
「気持ちいいかい?」
自分のもたらす悦楽に喘ぐ弟の耳たぶに唇を押し当てたレオンハルトは、低く掠れた声音でそう尋ねる。
「んっ……、んんぁ、ぁあん」
しかし、リュセルが口を開く前に、あっさりとレオンハルトが返事を返してしまう。
「いや、何もないだろう。いい出来だ。完全に仕上がるのを楽しみにしているよ」
(さ、最後のチャンスが)
終わった…………。
チーーーーーーンッ
リュセルが魂を飛ばしている間にも、周りにいた衣装役の神官達の手によって着ていた衣装が脱がされていく。
「直しも少しだけですので、本縫いを含め、明日の夜には仕上がりますが、最終調整はいつに致しますか?」
リチャードと共に宝主の衣装を脱がせていたルークの問いに対し、レオンハルトは頷いた。
「そうだね……」
レオンハルトは脳裏に、自分の誕生日までのスケジュールを正確に並べ始める。彼にスケジュール帳など、必要ない。大量にある予定を思い出せる明晰な頭脳があるからだ。朝から晩までビッシリと並べられているスケジュールの隙間を探ったレオンハルトは、淡々とした声音で答える。
「明日の夜、二十刻から二十一刻の間なら空いている。急がせる事になるが、出来るか?」
その言葉を受け、ルークは深く頭を下げる。
「仰せのままに、剣主様」
それにレオンハルトは、鷹揚に頷く事で答えたのだった。
「では、失礼致しました」
ルークがリチャードと他の神官達を伴って執務室を出ると、外では次の衣装合わせの為、数人の侍女と小姓、王族の衣装担当と思しき高貴な女性が二人待っている状態だった。
「お待たせ致しました。こちらは終了しましたので」
昨今、貴族の令嬢の間で流行しているドレスのほとんどは彼女達の工房で作っていると言っても過言ではない。有名服飾作家(デザイナー)である。
「…………」
女性。いや、まだ少女といってもいいような年齢だろう。彼女はルークの言葉に無言のまま、にこっと笑った。
神官として女性にあまり縁のない人生を歩んできたルークは、最新の流行ドレスに身を包んだ少女を前に、少し動揺してしまう。
フリルやリボンをふんだんに使った、赤と白の交差するチェック柄の、太腿までの長さしかないミニ丈のドレス。大きなリボンが目立つドレスと同じ柄の長靴(ブーツ)。肩にかかるクルクルとした金の巻き毛がよく似合っていた。
少女は、ルークに向かって小さく会釈をすると、もう一人の、背の高い栗色の髪の少女に手を引かれて、ルーク達が出てきた執務室の中へと入室して行った。
「…………すっご~~~~いいッ! 感動! 生でサキエ・ケイフォスタンとダリア・シュルーナを見ちゃったよ!」
二人に続いて侍女や小姓が姿を消すと、リチャードが興奮したような声を上がる。
「な、なんだ? その、なんとかという名前の奴らは」
いきなり大声を上げたリチャードにビクリッとしながら、ルークは言った。
「え~~~~~~! ルーちゃんってば、知らないの~~!? おっくれてるぅ!」
ツンツン
肩口を突っつかれたルークは、リチャードの首を素早い動きで絞め上げる。
「そうか、そんなに早死にしたいのか、お前は……」
「苦し……、ルーちゃん、降参……、降参…………ッも~~、短気なんだからさ~!」
ルークの締め上げから解放されたリチャードは、城の出口目指して歩きながら話し始めた。
「さっきの金髪の女の子が、サキエ・ケイフォスタン。茶髪の娘が、ダリア・シュルーナ。”宝石細工師”と”服飾作家”(デザイナー)だよ。有名だよ~、雑誌に絵姿載ってるもん。あの二人に、今回の誕生舞踏会の衣装を依頼したんだね。さっすが、王族! 売れっ子二人も確保出来るなんてさ」
「……そうだな」
雑誌など読まないルークは、一気に先程の二人から興味が失せる。
「あら~~? 興味ない??? サキエ・ケイフォスタン。金髪の子の方には興味あったように見えたんだけどなぁ」
「なっ!」
事実なだけに、ルークは顔を赤くしてリチャードを振り返る。
「ま、ライサンには内緒にしておいてあげるよ。女の子に見惚れた事はね!」
「見惚れてない! ああ、見惚れていないぞ!」
わかりやすい嘘をつくルークに、リチャードは肩をすくめて答えた。
「はいはい」
「馬鹿な事言ってないで帰るぞ! 明日までにご衣裳を仕上げなくてはならないんだ! 気合い入れとけ!」
「はあ~~~~~い」
部下の間伸びしたまぬけな返事を聞くと同時に、ルークはこめかみをヒクヒクさせながら、その頭を叩いてやったのだった。
*****
宝鍵の正装衣装を含め、十一着の衣装を試着したリュセルは、夜にはヘロヘロな状態になっていた。
神子としての正装衣は、既に仕上がりつつあったものを一着だったから良かった。問題はその後の、サキエとダリアの用意した衣装の試着だ。
依頼があったと同時に、ダリアは数十着の衣装のデザインを考え出し、それから更にサキエと話合って、デザインを二十着に絞り込んだ、選ばれたデザインの服を城の衣装担当の侍女達が縫い、作ったのである。城の侍女達なら、いちいち測らなくとも、リュセルとレオンハルトの服のサイズは熟知済みだ。
先に出来た十着を本日は試着し、あ~でもない、こうでもないと、サキエやダリア、城の侍女達が議論するのを聞いていた。
王族としての正装衣を一着、デザインに規定のない略装たる宮廷衣を一着、とりあえず選び、ほっとしたところである。
「あ~、明日も、朝から着せ替え人形か」
自室に備え付けられた浴室にある湯浴みの湯に浸かりながら、リュセルはため息をつく。本日は乳白湯だ。
「サキエもダリアも、年齢の割に頑固だからな。妥協という事を一切しないからねぇ。まぁ、それがプロなんだろうが」
髪も体も既にティルに洗ってもらい、リュセルはそう呟きながら寛いでいる状態だった。
「何をぶつぶつと言っているんだい、お前は」
その時、ようやく同じように、体と髪を洗い終えたレオンハルトがリュセルの横に滑り込んでくる。
チャプッ
わずかな水音をさせて湯の中に身を沈めたレオンハルトは、長い胡桃色の髪を髪留めで束ね上げている状態だ。いつもの入浴スタイルである。
リュセルは横目に、そんな兄の艶姿(?)を見ながら、ふと気になっていた事を口にした。
「ローウェンとアルティスは、どうしたんだろうな」
あれ以来、連絡が一切ない。
「こちらから連絡しようにも、私達では忙しくて無理だからね。暇なジュリナに頼んでおいたよ。明日にでも様子を見に行ってくれるそうだ」
「そうか」
おそらく、ローウェンもアルティスも、連絡もとれないような状況にあるのだろうが。
(そんなに悪いのか。レティシア元妃は……)
一度だけ会った事のあるレティシアは、美しく、儚げで、優しい女性だった。
自身の子、アルティス以外のサンジェイラの王子や王女達も、我が子のように可愛がっている様子がよく分かった。
あの、優しい女性(ひと)が。
リュセルが暗い顔をしていると、その様子を黙って見ていたレオンハルトは、不意に目の前にある濡れた銀糸の髪を撫でた。
「レオン?」
不可思議そうな表情を浮かべた弟を、安心させるように微笑む。
「ローウェンとアルティスがついているのだ。きっと、大丈夫だ」
美しい、典雅なる微笑。その頬笑みだけで、リュセルの心を覆う暗い気持ちは霧散する。
「そうだな」
そう言いながら、レオンハルトの方へ顔を向け、近づけた。兄の薄い唇に、触れるだけの口づけを与える。
「んッ」
一度唇を離すと、再び唇を重ね、今度は貪るような口づけを交わし合う。
口内を蹂躙し、蹂躙されながら、柔らかな兄の舌に舌を絡め、絡め合い、注がれる甘い唾液を導かれるままに嚥下した。
「おいで」
そして、久方ぶりにリュセルの体を慰めるつもりなのか、湯殿の淵に背を預けたまま、レオンハルトはそう言う。
その甘美なる誘いに、リュセルの体は素直に発情し、瞳は期待に濡れる。
「しかし、明日も忙しい訳だ……しな」
動揺したように視線を揺らす弟に、兄は再度誘いをかける。今度は、少々強引に……。
「来い」
その命令に、リュセルは渋々といった風に、レオンハルトの前に移動した。
「いや、今夜は背中を向けなさい」
「あ、ああ」
忙しさにかまけていたばかりに、久方ぶりになる逢瀬である。こうして、湯浴み場で愛されるのも、どれ位振りだろうか。
「クク、何を固くなっているんだ? もっと脚を広げてご覧」
リュセルの体に後ろから手を回しながら、艶めかしい動きで脚を弟の脚に絡め、器用に広げさせる。
自分の恥部は、幸い、白く濁った湯の所為で見えないが、脚を無理矢理に広げさせられたリュセルは、軽く顔を引きつらせる。
(湯……、湯が濁ってて良かった)
しかし、何も見えぬからこそ、次に何が行われるか分からない。
レオンハルトに導かれるまま、兄の裸の胸に背中を密着させて、後頭部を肩上に預けたリュセルは、レオンハルトの手の動きが見えず、動揺してしまう。見えるのも嫌だが、見えないのも不安で嫌だ。
「あっ……ん、っ」
そして、不意に訪れた刺激に、リュセルは盛大に声を洩らす。
チャプチャプと卑猥な水音をさせ、自身を弄び、愛撫する兄の慣れた手管に、リュセルは荒い息を吐きながら、たくましい兄の腕に縋った。
「私が触れた時には既に反応していたよ。素直ないい子だ……。リュセル」
右手で弟自身を弄び、左手で喉元を撫でながら、その首裏に舌を這わす。
「は、や、……そこ、あっ、だめ…………っ」
リュセルは、見えない手に受ける愛撫に夢中になりながら、こんな事して、明日のハードスケジュールはこなせるのか。と頭の片隅で考えていた。
「あっ……、はぁっ、はん……ッ」
場所が浴室の所為か、リュセルの喘ぎ声がよく響く。それに重なるようにして響くのが水音だ。
リュセル自身に濃厚な愛撫を加えるレオンハルトの手の動きによって生じるその音は、ひどく淫猥で、はしたないもののように感じられる。白く濁った湯の中、リュセルは大きく脚を広げさせられたまま、快感という名の熱い激流に流され、当の昔に理性を手放していた。
「気持ちいいかい?」
自分のもたらす悦楽に喘ぐ弟の耳たぶに唇を押し当てたレオンハルトは、低く掠れた声音でそう尋ねる。
「んっ……、んんぁ、ぁあん」
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