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第十三章 聖女の血
7-3 朱金姉妹専任のお世話役ぬいぐるみ
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普通に頷きかけたリュセルは、目を剥いてダリアのデザイン画描きを止めようとする。
「今からデザイン起こして間に合うのか!? というか、そんなものを元にデザインを起こさないでくれええええええッ!」
しかし、一瞬で自分の世界に入り込んでしまったダリアの動きは、そうそう止まらない。
相手が女性。それも華奢な少女では手荒な真似も出来ず、リュセルは困って、離れた場所にいるレオンハルトを呼ぶ。
「ちょ、オイ、レオン!」
レオンハルトは試着した薄金色の衣装のまま、弟の元へとゆっくりと近づく。
「まったく、先程から騒がしいね。どうしたんだい?」
神々しいまでに美しい姿に、リュセルのみならず、サキエも、その傾国の美に見惚れてしまう。
レオンハルトの周りにいた侍女達など、すべて骨抜きになってしまったかのような表情を浮かべ、うっとりとした熱のこもった視線を彼に送り、瞳を潤ませている。
唯一人、職人の顔になり、自分の世界に没頭するダリアだけが、そんなレオンハルトの色香に惑わされる事なくデザインを描き続けていた。
「ほう。また、デザインを描き起こしているのか」
「そうなんだ。なんだか、スイッチ入ってしまったようでな。当日まで日にちもないし、どうにかしてくれ」
弟の要望を聞きつつも、サキエに目を向けたレオンハルトは、淡々とした声音で聞いた。
「必要な衣装は四着ずつだ。既に二着ずつ選んでいるから、後は二着ずつ。きちんと仕上がるのなら問題ないが」
結果さえ出れば構わないというようなレオンハルトの言葉にサキエは頷き、書いたメモを見せた。
ー大丈夫です。こうなったダリアは速いので、今晩中には仕上がります。デザインを起こしているのは、お二人の対になった一着ずつのみですので、他の一着ずつ分を、お城の侍女のお姉様達にお手伝いいただければ、必ず仕上がりますー
「ならば問題ないだろう。好きにおし」
レオンハルトの許可を得られたサキエは、顔を真赤にしてはにかんだ。
ーはい。(ハート)ー
「お~い。俺とレオンに対する、この態度の差は一体なんだ?」
照れるサキエの乙女な顔を見下ろしながら、リュセルはつっこみを入れた。
サキエ位の年頃の少女には、うっとりとした視線と、蕩けるような態度しかとられた事のないリュセルは、かなりのショックを受けていたのだった。
そうして、様々な衣装の試着の後、誕生舞踏会の打ち合わせにレオンハルトと参加した。そんなこんなで、あっという間に日が落ち、気づけば夕食時を迎えていた。
「よお、リュセル、レオンハルト。夕食時にすまないねぇ」
自室で兄と共に夕食をとっていたリュセルの元へ、同じ城内に滞在しながらも、しばらく姿を見る事のなかった姉妹がやって来たのだ。
「ジュリナ殿、ティアラ姫」
リュセルの呼びかけに、ティアラは軽くお辞儀をして、にっこりと微笑む。
「よいのですか? お父上、お母上と共にいなくても」
気遣うような優しい声を聞いたティアラは、緩く首を振って、差し出されたリュセルの手を取り、その隣に腰を下した。
「たくさんお話出来ましたもの。もう、充分ですわ。いつまでも子供のように、二人の元で甘えている訳に参りません」
「そうですか」
ティアラの手を取ったまま、そう言うリュセルを見ていたレオンハルトは、隣にドッカリと腰を下した幼なじみに目を向ける。
「ちょうどいい。今、ダリア・シュルーナとサキエ・ケイフォスタンが滞在している。お前達も舞踏会用のドレスを仕立ててもらうといい」
「本気(マジ)で!? そりゃあ、いいねぇ。いや~、それにしても、本当に急に決まったもんだよ、誕生舞踏会。準備は追いついてるのかい?」
ジュリナはそう言うと、レオンハルトの分の葡萄酒(ワイン)を奪い取り、かぶ飲みし始める。
「あ、私達はいいよ。お母様とお父様、それに、ジェイド王と晩餐は済ませたからさ」
ため息をつきつつも、ティルに二人の分の夕食を準備させようと指示を出しかけたレオンハルトにそう言って、ジュリナは止める。
「は? ち、父上も!?」
「盛り上がってたぞ~、昔話で。邪魔みたいだから、気を利かせて出てきたのさ。サンジェイラの方の報告もある事だしね」
サンジェイラという言葉にリュセルは息を呑み、レオンハルトは瞳をわずかに細めた。
「レティシア元妃は、どんな状態だったんだ?」
妹の婚約者の問いに、ジュリナは深紅の瞳を翳らす。
「手当てが早かったおかげで、腕の傷の方は大丈夫との事だよ。傷痕が少し残る程度との事だ。そう、傷の方は大丈夫なんだが……」
重々しい姉の言葉を引き継いで、ティアラは朱金色の眉根を寄せて言った。
「邪気の浄化が遅れた影響で、体がひどく衰弱してしまっているのですわ」
サンジェイラの神子、ローウェンとアルティスが国元を離れている所為で浄化を行える者がおらず、レティシアの身を苛む邪気の浄化が、しばらくの間行えずにいたのだ。知らせを聞いた二人が駆け付け、すぐに浄化を行ったが、既に遅かった。後は、体力次第だろうと、王宮典医も言っていたが、その体力がレティシアに残されていないのである。
彼女の容体は、リュセルの想像以上に悪い状態だったのだ。
「アルティスもローウェンも、片時も傍を離れず看病している。きっと持ち直すさ」
そう思いたい。
儚い希望を乗せたジュリナの声。その横でティアラも、泣きそうな顔をしながらも頷く。リュセルは何も言葉にならず、俯き加減になりながら、痛みを堪えるように固く目を閉じた。そんな弟に気遣うような瞳を向けるレオンハルト。
暗い雰囲気になりかけた場を再び盛り上げたのは、やはりジュリナだった。
「ところでな、聞きたい事があるんだが……」
重々しいジュリナの声を聞き、まだ何かあるのかと、リュセルの顔に緊張が走る。
「……………………あれ、何?」
生温い目をしたジュリナが指差す方向に、一匹のクマ。ピンク色のお目目と耳に結ばれたリボンが愛らしい、赤茶色の毛並みのぬいぐるみだ。
彼女はいつの間にか、部屋の隅に控えた小姓、ティルとクマ吉の横にいて、お行儀よく命令を待っていた。
「ああ」
忘れてた……………………。
「この城にきてから、ずっと後をついて来て世話をしてくれるんだが、クマ吉の彼女か? 新しく雇った侍女か???」
ローウェン達がサンジェイラに緊急帰国した影響で、すっかり忘れ去られていた女の子ベア。
ジュリナの言葉を聞いたリュセルは、笑いながら首を横に振る。
「いやいや、あれは、ローウェンとアルティスからの、二人への誕生日プレゼントだ。女の子のお世話役ぬいぐるみだそうだぞ」
リュセルの言葉を聞いたティアラは、緑色の瞳を輝かせた。
「まあ! ですから、わたくし達の後をずっとついていらしていたのですね」
嬉しそうな婚約者の姿が微笑ましくて、リュセルはクマ吉に友達をつれてくるよう命令する。
「クマ吉、その子を連れてきてくれ」
クマ吉はそれに頷くと、隣の赤茶ベアの手を引いて、ヨタヨタと主人達のいる方へと近づいて行く。
「この子も、クマ吉さんと同じように、リュセル様の子だと思っていましたの」
近くまで来た赤茶ベアを抱き上げ、膝の上に抱えるティアラは、本当に嬉しそうにその頭を優しく撫でる。
「いえ、その子は、あなたとジュリナ殿専用の子です。名前をつけてあげて欲しいそうですよ」
「名前……」
ティアラは小首を傾げて、少しの間考え込む。(もちろん、そんなティアラの可愛らしい様を、ジュリナはデレ~~~~っとしながら見つめている)
「そうですわね。エリザベスなんて、どうでしょう?」
「エ、エリザベス……ですか?」
ず、ずいぶん、テディベアに似合わぬ、高貴かつ豪華な名だ。
「はい、愛称をべスと致します」
赤茶ベアこと、エリザベス。朱金の姉妹のお世話役クマの名前が、ここで決定した。
「”エリザベス・スワンの日記”。今、貴族の令嬢の間で流行している、恋愛小説の主人公の名前ですね」
レオンハルトが分析するように呟き、ティアラは可憐な美貌を羞恥に赤く染める。
「ええ。やっぱり、変でしょうか?」
リュセルは甘い頬笑みを浮かべ、ティアラの言葉を否定する。
「そんな事ありません。とても美しい名ですよ」
「リュセル様」
優しい声音で紡がれる婚約者の言葉を、ティアラはうっとりとしながら聞き惚れる。
「本当に、あなたは可愛らしい人だ」
暖かい腕に抱き寄せられ、ティアラはその広い胸の中に閉じ込められてしまう。
強靭な、心地よい檻の中に閉じ込められたティアラは、半身の目の前であるにも関わらず、満足そうな吐息をついてしまった。
「それにしても、リュセル」
じ~~~~~~っと、その様子を面白くなさげに見ていたジュリナは、大声でそう言って、それ以上の接触を阻む。
「なんだ?」
折角の逢瀬を邪魔されてリュセルが不満そうな顔になると、ジュリナは意地悪げに、にんまりと笑った。
「今夜、宝鍵の正装衣装の最終合わせがあるんだろう? 新しい衣装、私達にも一足先に披露しておくれよ」
「ッ!?」
女性らしい、優美な宝鍵の衣装を苦手とするリュセルへの嫌がらせだ。
「新しい衣装? わたくしも、この間の誕生日の時、仕立て直しましたのよ。リュセル様とレオンハルト様の衣装、きっと素敵なのでしょうね。とても楽しみですわ」
ティアラの嬉しそうなその声を聞いたら、顔を引きつらせながらも頷く他ない。
こうしてリュセルは、愛らしい婚約者と意地悪な未来の義姉の、今夜の衣装合わせの立ち会いを余儀なくされてしまった。
「今からデザイン起こして間に合うのか!? というか、そんなものを元にデザインを起こさないでくれええええええッ!」
しかし、一瞬で自分の世界に入り込んでしまったダリアの動きは、そうそう止まらない。
相手が女性。それも華奢な少女では手荒な真似も出来ず、リュセルは困って、離れた場所にいるレオンハルトを呼ぶ。
「ちょ、オイ、レオン!」
レオンハルトは試着した薄金色の衣装のまま、弟の元へとゆっくりと近づく。
「まったく、先程から騒がしいね。どうしたんだい?」
神々しいまでに美しい姿に、リュセルのみならず、サキエも、その傾国の美に見惚れてしまう。
レオンハルトの周りにいた侍女達など、すべて骨抜きになってしまったかのような表情を浮かべ、うっとりとした熱のこもった視線を彼に送り、瞳を潤ませている。
唯一人、職人の顔になり、自分の世界に没頭するダリアだけが、そんなレオンハルトの色香に惑わされる事なくデザインを描き続けていた。
「ほう。また、デザインを描き起こしているのか」
「そうなんだ。なんだか、スイッチ入ってしまったようでな。当日まで日にちもないし、どうにかしてくれ」
弟の要望を聞きつつも、サキエに目を向けたレオンハルトは、淡々とした声音で聞いた。
「必要な衣装は四着ずつだ。既に二着ずつ選んでいるから、後は二着ずつ。きちんと仕上がるのなら問題ないが」
結果さえ出れば構わないというようなレオンハルトの言葉にサキエは頷き、書いたメモを見せた。
ー大丈夫です。こうなったダリアは速いので、今晩中には仕上がります。デザインを起こしているのは、お二人の対になった一着ずつのみですので、他の一着ずつ分を、お城の侍女のお姉様達にお手伝いいただければ、必ず仕上がりますー
「ならば問題ないだろう。好きにおし」
レオンハルトの許可を得られたサキエは、顔を真赤にしてはにかんだ。
ーはい。(ハート)ー
「お~い。俺とレオンに対する、この態度の差は一体なんだ?」
照れるサキエの乙女な顔を見下ろしながら、リュセルはつっこみを入れた。
サキエ位の年頃の少女には、うっとりとした視線と、蕩けるような態度しかとられた事のないリュセルは、かなりのショックを受けていたのだった。
そうして、様々な衣装の試着の後、誕生舞踏会の打ち合わせにレオンハルトと参加した。そんなこんなで、あっという間に日が落ち、気づけば夕食時を迎えていた。
「よお、リュセル、レオンハルト。夕食時にすまないねぇ」
自室で兄と共に夕食をとっていたリュセルの元へ、同じ城内に滞在しながらも、しばらく姿を見る事のなかった姉妹がやって来たのだ。
「ジュリナ殿、ティアラ姫」
リュセルの呼びかけに、ティアラは軽くお辞儀をして、にっこりと微笑む。
「よいのですか? お父上、お母上と共にいなくても」
気遣うような優しい声を聞いたティアラは、緩く首を振って、差し出されたリュセルの手を取り、その隣に腰を下した。
「たくさんお話出来ましたもの。もう、充分ですわ。いつまでも子供のように、二人の元で甘えている訳に参りません」
「そうですか」
ティアラの手を取ったまま、そう言うリュセルを見ていたレオンハルトは、隣にドッカリと腰を下した幼なじみに目を向ける。
「ちょうどいい。今、ダリア・シュルーナとサキエ・ケイフォスタンが滞在している。お前達も舞踏会用のドレスを仕立ててもらうといい」
「本気(マジ)で!? そりゃあ、いいねぇ。いや~、それにしても、本当に急に決まったもんだよ、誕生舞踏会。準備は追いついてるのかい?」
ジュリナはそう言うと、レオンハルトの分の葡萄酒(ワイン)を奪い取り、かぶ飲みし始める。
「あ、私達はいいよ。お母様とお父様、それに、ジェイド王と晩餐は済ませたからさ」
ため息をつきつつも、ティルに二人の分の夕食を準備させようと指示を出しかけたレオンハルトにそう言って、ジュリナは止める。
「は? ち、父上も!?」
「盛り上がってたぞ~、昔話で。邪魔みたいだから、気を利かせて出てきたのさ。サンジェイラの方の報告もある事だしね」
サンジェイラという言葉にリュセルは息を呑み、レオンハルトは瞳をわずかに細めた。
「レティシア元妃は、どんな状態だったんだ?」
妹の婚約者の問いに、ジュリナは深紅の瞳を翳らす。
「手当てが早かったおかげで、腕の傷の方は大丈夫との事だよ。傷痕が少し残る程度との事だ。そう、傷の方は大丈夫なんだが……」
重々しい姉の言葉を引き継いで、ティアラは朱金色の眉根を寄せて言った。
「邪気の浄化が遅れた影響で、体がひどく衰弱してしまっているのですわ」
サンジェイラの神子、ローウェンとアルティスが国元を離れている所為で浄化を行える者がおらず、レティシアの身を苛む邪気の浄化が、しばらくの間行えずにいたのだ。知らせを聞いた二人が駆け付け、すぐに浄化を行ったが、既に遅かった。後は、体力次第だろうと、王宮典医も言っていたが、その体力がレティシアに残されていないのである。
彼女の容体は、リュセルの想像以上に悪い状態だったのだ。
「アルティスもローウェンも、片時も傍を離れず看病している。きっと持ち直すさ」
そう思いたい。
儚い希望を乗せたジュリナの声。その横でティアラも、泣きそうな顔をしながらも頷く。リュセルは何も言葉にならず、俯き加減になりながら、痛みを堪えるように固く目を閉じた。そんな弟に気遣うような瞳を向けるレオンハルト。
暗い雰囲気になりかけた場を再び盛り上げたのは、やはりジュリナだった。
「ところでな、聞きたい事があるんだが……」
重々しいジュリナの声を聞き、まだ何かあるのかと、リュセルの顔に緊張が走る。
「……………………あれ、何?」
生温い目をしたジュリナが指差す方向に、一匹のクマ。ピンク色のお目目と耳に結ばれたリボンが愛らしい、赤茶色の毛並みのぬいぐるみだ。
彼女はいつの間にか、部屋の隅に控えた小姓、ティルとクマ吉の横にいて、お行儀よく命令を待っていた。
「ああ」
忘れてた……………………。
「この城にきてから、ずっと後をついて来て世話をしてくれるんだが、クマ吉の彼女か? 新しく雇った侍女か???」
ローウェン達がサンジェイラに緊急帰国した影響で、すっかり忘れ去られていた女の子ベア。
ジュリナの言葉を聞いたリュセルは、笑いながら首を横に振る。
「いやいや、あれは、ローウェンとアルティスからの、二人への誕生日プレゼントだ。女の子のお世話役ぬいぐるみだそうだぞ」
リュセルの言葉を聞いたティアラは、緑色の瞳を輝かせた。
「まあ! ですから、わたくし達の後をずっとついていらしていたのですね」
嬉しそうな婚約者の姿が微笑ましくて、リュセルはクマ吉に友達をつれてくるよう命令する。
「クマ吉、その子を連れてきてくれ」
クマ吉はそれに頷くと、隣の赤茶ベアの手を引いて、ヨタヨタと主人達のいる方へと近づいて行く。
「この子も、クマ吉さんと同じように、リュセル様の子だと思っていましたの」
近くまで来た赤茶ベアを抱き上げ、膝の上に抱えるティアラは、本当に嬉しそうにその頭を優しく撫でる。
「いえ、その子は、あなたとジュリナ殿専用の子です。名前をつけてあげて欲しいそうですよ」
「名前……」
ティアラは小首を傾げて、少しの間考え込む。(もちろん、そんなティアラの可愛らしい様を、ジュリナはデレ~~~~っとしながら見つめている)
「そうですわね。エリザベスなんて、どうでしょう?」
「エ、エリザベス……ですか?」
ず、ずいぶん、テディベアに似合わぬ、高貴かつ豪華な名だ。
「はい、愛称をべスと致します」
赤茶ベアこと、エリザベス。朱金の姉妹のお世話役クマの名前が、ここで決定した。
「”エリザベス・スワンの日記”。今、貴族の令嬢の間で流行している、恋愛小説の主人公の名前ですね」
レオンハルトが分析するように呟き、ティアラは可憐な美貌を羞恥に赤く染める。
「ええ。やっぱり、変でしょうか?」
リュセルは甘い頬笑みを浮かべ、ティアラの言葉を否定する。
「そんな事ありません。とても美しい名ですよ」
「リュセル様」
優しい声音で紡がれる婚約者の言葉を、ティアラはうっとりとしながら聞き惚れる。
「本当に、あなたは可愛らしい人だ」
暖かい腕に抱き寄せられ、ティアラはその広い胸の中に閉じ込められてしまう。
強靭な、心地よい檻の中に閉じ込められたティアラは、半身の目の前であるにも関わらず、満足そうな吐息をついてしまった。
「それにしても、リュセル」
じ~~~~~~っと、その様子を面白くなさげに見ていたジュリナは、大声でそう言って、それ以上の接触を阻む。
「なんだ?」
折角の逢瀬を邪魔されてリュセルが不満そうな顔になると、ジュリナは意地悪げに、にんまりと笑った。
「今夜、宝鍵の正装衣装の最終合わせがあるんだろう? 新しい衣装、私達にも一足先に披露しておくれよ」
「ッ!?」
女性らしい、優美な宝鍵の衣装を苦手とするリュセルへの嫌がらせだ。
「新しい衣装? わたくしも、この間の誕生日の時、仕立て直しましたのよ。リュセル様とレオンハルト様の衣装、きっと素敵なのでしょうね。とても楽しみですわ」
ティアラの嬉しそうなその声を聞いたら、顔を引きつらせながらも頷く他ない。
こうしてリュセルは、愛らしい婚約者と意地悪な未来の義姉の、今夜の衣装合わせの立ち会いを余儀なくされてしまった。
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