【宝の鍵~金の王子と銀の王子~】本編 元平凡女性のイケメン王子は執着心強めな兄に溺愛される

月城はな

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第十三章 聖女の血

13-2 誕生舞踏会②

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 そう言いながらユージンが出したのは、綺麗に包装された小箱。開けると、月と星を模ったカフス釦が二対、同じものが入っていた。一見して、一介の騎士が買うにしては高級過ぎる品物だという事がよく分かる。

「俺達三人から、殿下とリュセル王子への誕生日の贈り物です。受け取って下さい」

 代表してそう言ったユージンに、リュセルは目を向け嬉しそうに笑う。

「ありがとう、ユージン、アイリーン、アントニオ。とても嬉しいよ」

 リュセルの言葉を聞き、三人はほっとしたように表情を和ませる。

 そうしてしばしの歓談の後、リュセルは次に挨拶に行く者達の元へと急いだのだった。

「お忙しそうだな、リュセル王子。この後、生誕の儀も夕刻あるはずなのに、大丈夫なのだろうか」

 心配そうにそう言ったアイリーンの言葉に対し、ユージンもアントニオも大きく頷いた。



 そうしてリュセルが向かった先は……。

 テテテテテッ

「エリザベスとダンスを踊ったか? クマ吉」

 一目散に駆け寄ってきた自分のお世話役のぬいぐるみの小さな体を抱き上げると、リュセルはクマ吉と一緒にいたカイエやティルに目を向けた。

「ん? なんだ、これ。はは、俺へのプレゼントか? クマ吉」

 手にしていた縫い目がデコボコな灰色狼のぬいぐるみをリュセルに渡しながら、クマ吉は照れくさそうにモジモジした。

 リュセルの通り名をイメージして作ったのだろう。狼というよりも犬のような、小さな可愛いぬいぐるみだ。首につけた首輪には星が飾られている。これは、レオンハルトのイメージか?

「ありがとう、クマ吉」

 クマ吉は更に照れくさそうに、顔をモコモコの両手で隠した。

「これは、僕とカイエ様からです。リュセル殿下」

 そう言ってティルが渡したのは、大きな花束。

「僕だけのお給金じゃ、ろくな贈り物が選べなくて……。そしたら、カイエ様が一緒に選んで買おうって言って下さったんです」

「大切なのは贈る人の気持ちだとは思うのですが、やっぱり花束は豪華な方がいいですからね。二人で連盟にしちゃいました」

 ティルの照れくさそうな言葉を引き継いで、カイエもそう言って笑う。

「ありがとう、二人共」

 心を込めてお礼を言ったリュセルに、ティルとカイエは嬉しそうな顔をする。

「そういえば、カイエはいつものようにカイルーズの傍に控えてなくていいのか?」

 クマ吉とエリザベスを両腕に抱きながらリュセルがそう尋ねると、カイエは視線だけで婚約者であるユリエと幸せそうに踊るカイルーズを指し示した。

「今、私が傍にいるのは野暮ってものですよ。こんな時位、二人きりにして差し上げねばね」

「そうだよな~。俺がユリエ姫と踊っていた時、カイルーズの嫉妬に満ちた視線が非常に痛くて楽しかったからなぁ」

「リュセル王子……」

 リュセルの笑いながらのその台詞に、この兄弟の陰険なやりとりに毎度巻き込まれているカイエは、げんなりとしたような声を出した。



 そして、次にリュセルが向かった先は……。

(え~と、彼らはどこにいるんだ?)

 こんな華やかな場所に慣れていない彼らの事、きっと、ユージン達のように隅の方のテーブル席にでもいるのだろう。そんな風に勝手に予測をつけて探していたリュセルの耳に、非常に楽しそうな声が届く。

「は~い、タネも仕掛けもありませんよ~~!」

 1、2、の3ッ

 そんな掛け声と共に、神官服の袖下からたくさんの白ウサギが飛び出てくる。

(セリクス神官長~~~~ッ!)

 驚愕に目を見開く先で、人ゴミの中心にいる白髪の神官長は、次々に神がかり的な手品を披露する。

 おお~~~~ッ!

 という歓声や拍手に包まれるライサンは、いつものように微笑んでいて、彼が一体何を考えているのかまったくわからない。

「な、な、何してるんだ、あの人は」

 リュセルが呆気に取られていると、ライサンを探していたらしいルークが疾風のようにやって来て、彼の頭を殴り飛ばした。

 ドカッ

「この、馬鹿上司! こんな場所まで来て、手間かけさせんじゃない!」

 持っていたステッキの先から花を出していたライサンの襟首を引っ張って、セフィの待つ部屋の隅へと移動する。


「あ……、見つかりましたか?」

 テーブル席に座り、静かに果実水を飲んでいたセフィは、ルークとライサンが戻ってきたのを感じ取り、ほっとしたような声を出す。

「ああ。貴族の令嬢や紳士相手に手品を披露してやがった。まったく、少し目を離すとこれだ!」

「お飲み物はいかがですか?」

「……ッ!あ、その……、珈琲をもらおう」

 ブチブチと文句を言いながら椅子に腰かけたルークは、給仕役の侍女に話しかけられて挙動不審になる。そんな風に冷たい珈琲を受け取ったルークを横目で見つつ、自分も紅茶を受け取ると、ライサンはため息をつく。

「そんなに真赤になってしまって。いくら女性に免疫がないからって、そんなんでどうするんですか」

「う、うるさい! 少し暑いだけだ! ああ、そうだともッ」

「おやおや、そんなに暑くもないですよ。今日は……」

 言い合う上司二人に戸惑い、セフィはオロオロしながら仲裁しようとする。

「ちょっと、あの、お二人共」(汗)


「相変わらずだな……」

 変わらない三人の光景を眺めていたリュセルは、ついそう呟いてしまった。

「は! け、剣鍵様!」

 慌てて立ち上がり、その場に跪いて神子に対する最上級の礼をしようとした三人をリュセルは慌てて制する。

「それはここではしなくていい。これから数刻後に、神子としてあなた達の前に立つ事になるが、今はただ、友人として俺の前にいてくれないか?」

「ふふ、はい。わかりました」

 戸惑うルークの腕を引き、立ち上がらせると、ライサンは元いた場所に腰かける。

「それにしても久しぶりだな、セフィ殿。元気にしていたか?」

 久方ぶりに会う盲目の神官に向かい、リュセルは若干興奮気味に話しかける。

「はい。剣鍵様もお元気なご様子ですね。何よりです」

 にこっと笑って答えるセフィとリュセルは久方ぶりの会話を楽しむ。

 そんな二人の様子を、穏やかに微笑んではいるが、探るような視線で見るライサンに、不本意ながらも彼と付き合いが長いルークは気づいてしまった。

(セリクス?)

 ルークの目には、神官と神子、平民と王子という身分の垣根を越えて親しく友人のように話す光景は、微笑ましいものとしてしか映らない。

 何故、そのような厳しい眼差しを向けるのか?

「それにしても、本当に今回、衣装替えが多いんだ。婚姻式の花嫁じゃあるまいし、男がこんなに着替えてどうするんだ」

「ふふふ、お疲れ様です。その衣装は、えっと、三着目ですか?」

 リュセルが今着ている衣装は、赤銅色の上着と同色の下衣、黒のリボンタイの宮廷衣である。

「違う、四着目だ」

「…………」

 リュセルの答えを聞いたセフィは、顔を引きつらせたまま無言になった。

 誕生舞踏会での何着もの着替えの他に、リュセルには、着るのも不本意な程麗しいデザインの、剣鍵としての神子衣装を着るという義務が残っている。

(死にそうだ)

 ドヨ~~ンっとなってしまったリュセルを元気づける為に、セフィは慌ててライサンに話を振る。

「そ、そうそう、剣鍵様。私達からも贈り物があるんですよ。ね、ねぇ、セリクス神官長」

「え?」

「お気に召していただけると嬉しいのですが。」

 驚きに目を見張るリュセルの前に、ライサンは紙袋に入れてきたそれを出す。

「こ、こ、これは!」

 ま、眩しい! 眩し過ぎる!

「カップル限定で作られた、黒猫ノンちゃんとシャム姫のペアティーカップ&ソーサー!」

 カップル限定でしか買えぬ為、リュセルが買うのを断念した代物だ。しかも、綺麗に透明のリフィルで包装されたカップの中には、おいしそうなカスタードムースが……。

「中のムースは私の手作りです。よろしければ、剣主様と一緒にお召し上がりくださいね」

「ありがとうございます、セリクス神官長、ウインター神官長補佐、そして、セフィ殿おおおおおおっ!」

「うわああああああ、止めて下さい! 私は神官です~~~~!」

 感激と感動のあまり、傍にいたセフィに抱きついたリュセルに、抱きつかれた当人は悲鳴を上げる。

 にこにこにこにこ

 そんな様子を微笑ましそうに見つめるライサンの瞳に、先程までの厳しい感情は一切見られない。

(どうしたんだ、セリクスの奴。更年期か?)

 ライサンに対して失礼な事を考えていたルークは、先程のリュセルの台詞の中に引っかかりを覚えた。

(ん? カップル限定……?)

 このティーカップ&ソーサーを黒猫堂に買いに行ったのは、自分とライサンだ。ライサンがカップの中にムースを入れる為、店ではラッピングを頼まず、わざわざセフィが包装した。
 これを購入した時の、店員のニマニマした表情と隠しきれない好奇心いっぱいの視線を思い出したルークは、一気に顔色を悪くする。

 カップル限定の黒猫ノンちゃんとシャム姫のペアカップ&ソーサー。カップル限定。つまり、カップル……、恋人同士か夫婦でないと買えない代物。

「だああああああああっ!」
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