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第十三章 聖女の血
14-2 少女がくれた祝福
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バイバイと手を振るローウェンのあっさりとした対応に軽くコケながらも、リュセルは自室を後にした。
「お気をつけて、リュセル様」
心配そうに優しい緑色の瞳を曇らせるティアラに、優しく微笑みかけるのを忘れずに……。
「では皆、城を頼むよ」
レオンハルトもそう言って、同胞達の顔を見回す。
「分かってるよ」
「はい」
「承知」
「まっかせといて!」
上からジュリナ、ティアラ、アルティス、ローウェン。四者四様の返事を聞くと小さく頷き、レオンハルトも弟の後を追って自室を出て行った。
「本当に、邪鬼が攻めてくるのかな?」
レオンハルトが出て行った後、ローウェンはそう言って窓の外に目を向ける。
午後四刻半。まだ、空は明るい。きっと今頃、アシェイラ国中の国民達が、町や村の教会や集会所に集まっている事だろう。この国の女神の息子達が産まれたのと同時刻、祝いのロウソクに灯りを灯す為。
「本当のところは、わからん。しかし、可能性は高いだろう」
弟の問いにそう答えると、アルティスは僅かに目を伏せる。
「…………」
ティアラも無言のまま、不安そうに胸を押さえ込む。
「その邪鬼を浄化するのが私達の使命だろ? 何、しみったれた顔してんだい! 皆、しっかりおし!」
暗くなり、不安に苛まれかけた年少組を一喝すると、ジュリナはレオンハルトとたてた予定通りに動く事にする。
「まず、敵が攻めてくるとしたら、母上がいてこの国の要である王族達がいるこの城だ。私とティアラ、アルティスとローウェン、それぞれのペアに分かれて、昨日話したルートを見回るよ。さっさとお行き!」
ジュリナの指示に、年若い玉主玉鍵コンビは、慌てて部屋を飛び出していく。
「うん、分かった!」
「承知した」
「まったく。この期に及んで臆病風に吹かれるなんてねぇ」
呆れたようにそう言って、朱金の髪を乱暴に掻き回す姉の姿を見上げ、ティアラはクスリと笑った。
「ん? どうしたんだい、ティア」
不思議そうな顔をする姉に向かい、ティアラは見る者がうっとりとするような可憐な頬笑みを浮かべる。
「いいえ、お姉様がわたくしの半身で、本当に良かったですわ」
「?」
いきなり褒められたジュリナは、妹の微笑に見惚れながらも、その意味が分からずに首を傾げた。
*****
城の前に横付けされていた馬車にレオンハルトと乗り込んだリュセルは、アイリーンとユージンが警護をし、アントニオが御者を務めるその馬車な中で、窓のカーテンの隙間から外の景色を見つめていた。
家族、恋人、夫婦、友人。
様々な人々が、自分の大切な人達と連れだって道を歩いている。手に、美しい紋様の描かれたロウソクを持って……。皆、リュセルとレオンハルトの生誕を祝う為に教会に向かっているのだ。
(必ず守らなくては)
そう思いながら固くカーテンを握り締めているリュセルの姿を、レオンハルトは無言のままじっと見つめていた。
その時だった。
馬の不満げな嘶きが聞こえ、馬車が大きく揺れたのは。
「ッ!?」
リュセルは咄嗟に身がまえ、一方のレオンハルトは、静かな声で自分の騎士を呼んだ。
「ユージン、どうした?」
すぐに、馬車の外にいたユージンから答えが返る。
「あ、殿下、揺れましたか? すみません。子供が馬車の前に飛び出してきたみたいで、アントニオ殿がすぐに気づいて減速したおかげで大事には至らなかったようですが」
そんなユージンの説明の間にも、びっくりしたらしい子供の泣き声が外で響き渡る。
「女の子か」
リュセルはそう言うと、馬車のドアに手をかけた。
彼はあまりの事に混乱していた。
本日無事、生誕の日をお迎えになられた神子様達をお祝いし、創世の女神様に祈りを捧げる為、孫娘と一緒に教会に向かっていたのだが、少し目を離した隙に、通りがかった馬車の前に孫娘が飛び出してしまったのだ。街道には教会に向かう人々が溢れていたので、人の波に押しだされてしまったのだろう。
家紋は入っていないが、立派な馬車である。尻もちをついてしまっていた、その小さな体の前で、馬が嘶き声を響かせる。
「ルリカーーーーッ!」
彼が孫娘の名を叫ぶのと、馬車が間一髪、彼女の前で止まるのは同時だった。
「ルリカ、ルリカーーーーーーッ!」
慌てて放心状態の彼女の元へ駆け寄り、その体を抱き締める。瞬間、手にしていた小さな黒猫ノンちゃんぬいぐるみが地面に落ち、みるみるうちに大きな目に涙が溜まった。
「うわあああああああんッ」
派手な泣き声を上げた少女、ルリカは、祖父の体にしがみ付いて震える。
「大丈夫ですか!?」
その時、長い髪を一つに束ねた凛々しい女騎士が馬から飛び降りて、彼らの元へと駆け寄ってきた。
「アイリーン、女の子に怪我は?」
そしてもう一人、金髪の青年騎士も馬を降りて、女騎士に声をかける。
「手を少しすりむいているようだな」
少女の体を目視した彼女は、そう言って、懐から出したハンカチをルリカの手に巻く。
「そうか」
そう言いながらも、金髪の青年騎士ことユージンは、太陽の傾き加減を見て眉をひそめた。やばい。そろそろ行かねば、間に合わない。
一方、ルリカを抱いた彼は、自分の孫娘が止めた馬車が、騎士を三人も護衛につけた、とんでもなく身分高い貴人の馬車である事を悟り、真っ青になった。
「大変申し訳ございません、申し訳ございません!」
そう言いながら、土下座をして額を地面に擦りつける。
「いえ、そんな事なさらなくていいので、危ないから少し離れて下さい」
困ったようにアイリーンが言った時、馬車の戸が開いた。
その時、まるで聖なる月の光が降臨したようだった……。
「うわああああ……!」
大声で泣いていたルリカも、驚きに目を見開いて泣く事を忘れる。それは、ルリカだけではない。教会に向かって歩いていた者、一連の騒ぎを遠巻きに見ていた者、皆、一様にポカンと口を開きっぱなしにする。
「大丈夫か? 小さなお嬢さん」
女神のように美しい衣装を身にまとった、奇跡のように美しい青年が、馬車に轢かれかけた少女の体を抱き上げていた。
白、金、銀、褐色。その色を身にまとう事が許されるのは、この国ではたった二人だけ。その場にいた誰もが彼の正体を悟り、慌ててその場に膝をつき、深く頭を下げた。神子に対する最上級の礼の仕方は神官達しか知らぬ為、彼らがとった礼は、王族に対する最上級の礼のやり方だ。
「お兄さん、綺麗ね。だあれ?」
そんな中、怖れを知らぬ幼い少女の声が大きく響く。
「俺はリュセルという、小さなお嬢さん」
「あたしの名前は”小さなお嬢さん”じゃないわ! ルリカよ」
少女の名を聞いたリュセルは、驚きに目を見開いた。
「ルリカ……」
母と同じ名。
「恐れながら、剣鍵様。剣鍵様のお母上、亡きルリカ様のような芯の強い女性になって欲しいと、息子夫婦がこの子につけたのです」
額を地面に押しつけながらそう言った祖父の言葉を聞いて、ルリカは目を輝かせた。
「けんじょうさま? お兄さん、けんじょうさまなの!?」
「こ、これ、ルリカ!」
遠慮のない孫娘の言葉に、彼は度肝を抜かれる。
「ああ、そうだよ」
リュセルが優しく微笑みかけると、ルリカは薄汚れたエプロンのポケットから、しおれかけた黄色の花を出した。
「?」
よく民家の庭先や道端で目にする小さな草花だ。不思議そうな顔をするリュセルに、少女は満面の笑みでそれを口にした。
「お誕生日、おめでとう。けんじょうさま!」
リュセルはそれに泣きそうな顔で笑うと、母と同じ名の少女の小さな体を強く抱き締めた。
「けんじょうさま?」
不思議そうな幼い声を聞いて我に返ったリュセルは、ゆっくりと少女の体を地面の上に下ろした。
「ありがとう、ルリカ」
それを見守っていたアイリーンは、少し慌てたような声で言った。
「リュセル王子、お時間が……」
生誕の儀の時刻が迫っている。
「ああ、わかった」
そう答えると、少女の頭を一撫でし、リュセルは彼らに背を向けた。
一瞬の奇跡のような邂逅の終焉に、その場に居合わせた人々は己の幸運に感謝しながら、弟神子の姿を最後まで目に焼きつけようと、瞬きすらも惜しむ。
そうして、お付きの騎士が馬車の戸を恭しく開け、弟神子は中に乗り込もうと段に足をかける。そんな彼を出迎えるように伸ばされた、白く優美な手。一瞬だけ見えた胡桃色に、人々の心臓は更に高鳴り、体が震えた。
「アイリーン。お前はこの場に残り、この場を収拾しなさい」
主の言葉に頭を下げ、アイリーンはユージンに目くばせする。
「この場が収まったらすぐに追いかける。殿下達を頼むぞ」
「了解」
馬車の戸が閉まり、ゆっくりと動き出すと、アイリーンは夢見心地な表情をしている人々を元に戻す為、奔走し始めた。
「まったく、お前が出て行けば、大変な事になるという事がわからんはずがないだろう?」
そうお小言を言いながらも、弟をあえて止めなかったレオンハルトは、リュセルの白皙の美貌を見上げる。
「しかし、レオン。女の子が泣いているというのに、紳士がその横を平然と通り過ぎていく訳にはいかんだろう」
フェミニストらしい言葉を返しながら、リュセルは兄の肩に手を置き、その麗しの美貌を見下ろした。
「お気をつけて、リュセル様」
心配そうに優しい緑色の瞳を曇らせるティアラに、優しく微笑みかけるのを忘れずに……。
「では皆、城を頼むよ」
レオンハルトもそう言って、同胞達の顔を見回す。
「分かってるよ」
「はい」
「承知」
「まっかせといて!」
上からジュリナ、ティアラ、アルティス、ローウェン。四者四様の返事を聞くと小さく頷き、レオンハルトも弟の後を追って自室を出て行った。
「本当に、邪鬼が攻めてくるのかな?」
レオンハルトが出て行った後、ローウェンはそう言って窓の外に目を向ける。
午後四刻半。まだ、空は明るい。きっと今頃、アシェイラ国中の国民達が、町や村の教会や集会所に集まっている事だろう。この国の女神の息子達が産まれたのと同時刻、祝いのロウソクに灯りを灯す為。
「本当のところは、わからん。しかし、可能性は高いだろう」
弟の問いにそう答えると、アルティスは僅かに目を伏せる。
「…………」
ティアラも無言のまま、不安そうに胸を押さえ込む。
「その邪鬼を浄化するのが私達の使命だろ? 何、しみったれた顔してんだい! 皆、しっかりおし!」
暗くなり、不安に苛まれかけた年少組を一喝すると、ジュリナはレオンハルトとたてた予定通りに動く事にする。
「まず、敵が攻めてくるとしたら、母上がいてこの国の要である王族達がいるこの城だ。私とティアラ、アルティスとローウェン、それぞれのペアに分かれて、昨日話したルートを見回るよ。さっさとお行き!」
ジュリナの指示に、年若い玉主玉鍵コンビは、慌てて部屋を飛び出していく。
「うん、分かった!」
「承知した」
「まったく。この期に及んで臆病風に吹かれるなんてねぇ」
呆れたようにそう言って、朱金の髪を乱暴に掻き回す姉の姿を見上げ、ティアラはクスリと笑った。
「ん? どうしたんだい、ティア」
不思議そうな顔をする姉に向かい、ティアラは見る者がうっとりとするような可憐な頬笑みを浮かべる。
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「?」
いきなり褒められたジュリナは、妹の微笑に見惚れながらも、その意味が分からずに首を傾げた。
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(必ず守らなくては)
そう思いながら固くカーテンを握り締めているリュセルの姿を、レオンハルトは無言のままじっと見つめていた。
その時だった。
馬の不満げな嘶きが聞こえ、馬車が大きく揺れたのは。
「ッ!?」
リュセルは咄嗟に身がまえ、一方のレオンハルトは、静かな声で自分の騎士を呼んだ。
「ユージン、どうした?」
すぐに、馬車の外にいたユージンから答えが返る。
「あ、殿下、揺れましたか? すみません。子供が馬車の前に飛び出してきたみたいで、アントニオ殿がすぐに気づいて減速したおかげで大事には至らなかったようですが」
そんなユージンの説明の間にも、びっくりしたらしい子供の泣き声が外で響き渡る。
「女の子か」
リュセルはそう言うと、馬車のドアに手をかけた。
彼はあまりの事に混乱していた。
本日無事、生誕の日をお迎えになられた神子様達をお祝いし、創世の女神様に祈りを捧げる為、孫娘と一緒に教会に向かっていたのだが、少し目を離した隙に、通りがかった馬車の前に孫娘が飛び出してしまったのだ。街道には教会に向かう人々が溢れていたので、人の波に押しだされてしまったのだろう。
家紋は入っていないが、立派な馬車である。尻もちをついてしまっていた、その小さな体の前で、馬が嘶き声を響かせる。
「ルリカーーーーッ!」
彼が孫娘の名を叫ぶのと、馬車が間一髪、彼女の前で止まるのは同時だった。
「ルリカ、ルリカーーーーーーッ!」
慌てて放心状態の彼女の元へ駆け寄り、その体を抱き締める。瞬間、手にしていた小さな黒猫ノンちゃんぬいぐるみが地面に落ち、みるみるうちに大きな目に涙が溜まった。
「うわあああああああんッ」
派手な泣き声を上げた少女、ルリカは、祖父の体にしがみ付いて震える。
「大丈夫ですか!?」
その時、長い髪を一つに束ねた凛々しい女騎士が馬から飛び降りて、彼らの元へと駆け寄ってきた。
「アイリーン、女の子に怪我は?」
そしてもう一人、金髪の青年騎士も馬を降りて、女騎士に声をかける。
「手を少しすりむいているようだな」
少女の体を目視した彼女は、そう言って、懐から出したハンカチをルリカの手に巻く。
「そうか」
そう言いながらも、金髪の青年騎士ことユージンは、太陽の傾き加減を見て眉をひそめた。やばい。そろそろ行かねば、間に合わない。
一方、ルリカを抱いた彼は、自分の孫娘が止めた馬車が、騎士を三人も護衛につけた、とんでもなく身分高い貴人の馬車である事を悟り、真っ青になった。
「大変申し訳ございません、申し訳ございません!」
そう言いながら、土下座をして額を地面に擦りつける。
「いえ、そんな事なさらなくていいので、危ないから少し離れて下さい」
困ったようにアイリーンが言った時、馬車の戸が開いた。
その時、まるで聖なる月の光が降臨したようだった……。
「うわああああ……!」
大声で泣いていたルリカも、驚きに目を見開いて泣く事を忘れる。それは、ルリカだけではない。教会に向かって歩いていた者、一連の騒ぎを遠巻きに見ていた者、皆、一様にポカンと口を開きっぱなしにする。
「大丈夫か? 小さなお嬢さん」
女神のように美しい衣装を身にまとった、奇跡のように美しい青年が、馬車に轢かれかけた少女の体を抱き上げていた。
白、金、銀、褐色。その色を身にまとう事が許されるのは、この国ではたった二人だけ。その場にいた誰もが彼の正体を悟り、慌ててその場に膝をつき、深く頭を下げた。神子に対する最上級の礼の仕方は神官達しか知らぬ為、彼らがとった礼は、王族に対する最上級の礼のやり方だ。
「お兄さん、綺麗ね。だあれ?」
そんな中、怖れを知らぬ幼い少女の声が大きく響く。
「俺はリュセルという、小さなお嬢さん」
「あたしの名前は”小さなお嬢さん”じゃないわ! ルリカよ」
少女の名を聞いたリュセルは、驚きに目を見開いた。
「ルリカ……」
母と同じ名。
「恐れながら、剣鍵様。剣鍵様のお母上、亡きルリカ様のような芯の強い女性になって欲しいと、息子夫婦がこの子につけたのです」
額を地面に押しつけながらそう言った祖父の言葉を聞いて、ルリカは目を輝かせた。
「けんじょうさま? お兄さん、けんじょうさまなの!?」
「こ、これ、ルリカ!」
遠慮のない孫娘の言葉に、彼は度肝を抜かれる。
「ああ、そうだよ」
リュセルが優しく微笑みかけると、ルリカは薄汚れたエプロンのポケットから、しおれかけた黄色の花を出した。
「?」
よく民家の庭先や道端で目にする小さな草花だ。不思議そうな顔をするリュセルに、少女は満面の笑みでそれを口にした。
「お誕生日、おめでとう。けんじょうさま!」
リュセルはそれに泣きそうな顔で笑うと、母と同じ名の少女の小さな体を強く抱き締めた。
「けんじょうさま?」
不思議そうな幼い声を聞いて我に返ったリュセルは、ゆっくりと少女の体を地面の上に下ろした。
「ありがとう、ルリカ」
それを見守っていたアイリーンは、少し慌てたような声で言った。
「リュセル王子、お時間が……」
生誕の儀の時刻が迫っている。
「ああ、わかった」
そう答えると、少女の頭を一撫でし、リュセルは彼らに背を向けた。
一瞬の奇跡のような邂逅の終焉に、その場に居合わせた人々は己の幸運に感謝しながら、弟神子の姿を最後まで目に焼きつけようと、瞬きすらも惜しむ。
そうして、お付きの騎士が馬車の戸を恭しく開け、弟神子は中に乗り込もうと段に足をかける。そんな彼を出迎えるように伸ばされた、白く優美な手。一瞬だけ見えた胡桃色に、人々の心臓は更に高鳴り、体が震えた。
「アイリーン。お前はこの場に残り、この場を収拾しなさい」
主の言葉に頭を下げ、アイリーンはユージンに目くばせする。
「この場が収まったらすぐに追いかける。殿下達を頼むぞ」
「了解」
馬車の戸が閉まり、ゆっくりと動き出すと、アイリーンは夢見心地な表情をしている人々を元に戻す為、奔走し始めた。
「まったく、お前が出て行けば、大変な事になるという事がわからんはずがないだろう?」
そうお小言を言いながらも、弟をあえて止めなかったレオンハルトは、リュセルの白皙の美貌を見上げる。
「しかし、レオン。女の子が泣いているというのに、紳士がその横を平然と通り過ぎていく訳にはいかんだろう」
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