【宝の鍵~金の王子と銀の王子~】本編 元平凡女性のイケメン王子は執着心強めな兄に溺愛される

月城はな

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第十三章 聖女の血

16-3 浄化結界②

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「”ルーク・トゥーエ・セトラナス”」

 ー称えよ、光ー


 白くたおやかな両腕が、優雅に前方に伸ばされる。

 玉座の間を背後にして立ったティアラの朱金の髪が、風もないのにふわりとなびいた。

「あぁ!?」

 ジュリナの蹴りを避けたクロードは、歌うようにして響いた可憐な声を聞いて眉根を寄せた。目の前の姉姫から視線を逸らし、その後ろの妹姫に向けると、彼女は両手を動かして、空中に文字のような不可思議な紋様を描いている最中だった。


「”リューセル・トロエ・レイクナル”」

 ー求めるは、希望ー


 そこで、ようやく気づく。

「させるかッ!」

 薄紅色の可憐な唇が奏でるのは、古の言葉。

 その呪文を終わらせてはならない!

 ぼんやりとした緑の瞳を前方に向ける美姫の、細身の体目がけて飛びかかろうとするが……。

 バキッ

 見事なる右ストレートが、クロードの顔面に決まる。

「ティアの美しい体に汚い手を向けるんじゃないよ、×××(ピーー)野郎!」

 放送禁止用語を大きな声で叫んだジュリナに殴り飛ばされ、クロードの体は勢いよく吹き飛ぶ。ティアラに気を取られ、完全に油断していた。

「はんっ、もう終わりかい!? ほんと、×××(ピー)が××(ピー)で××××(ピー)な、××(ピー)邪鬼だねぇ。情けないッ!」

 吹き飛ぶクロードと凶悪な表情で放送禁止用語を連発するジュリナの存在など、まるで視界に入っていないティアラは最後の神聖呪文を口にする。


「”ルーナ・ゲート・アルタイト”」

 ー広がれ、永久(とこしえ)にー


 そう口にすると同時に、王都中に点在する、三十九の教会に上がった光の柱が消え、代わりにすべての教会敷地内に、アシェイラ神殿に現れた光の道と同じものが出現する。上空から見ると分かるその道程は、すべて、神紋の紋様を描いていた。

 完璧なるそれは、浄化結界。

 アルティスが共鳴させた各教会に、リュセルがアシェイラ神殿にて形成した結界を、ティアラが複写(コピー)したのである。

 三人の宝鍵達が、己の感知能力を駆使し、形成した、アシェイラ国民を守る為の聖なる砦だった。



「成功致しましたわ、お姉様」

 両手を祈りの形に組んだティアラは、そう言って姉の方に目を向ける。

 その時。

「くっ……、ははははははは、浄化結界!? それを作り出す為に、女神の宝を使う事をせずに、宝主のみが俺の相手をし、意識を引きつけていたという訳か!」

 ジュリナの拳をくらったにも関わらず、大した打撃も受けずに立ち上がったクロードは、そう言いながら狂ったように笑った。そして、彼はすぐに察する。おそらくそれは、クロードが相手にした鏡主鏡鍵コンビのみではない。サイレンやエルヴィスが相手しているであろう他の宝主宝鍵も同じだろうと。

 同じ戦い方をしているはずだ。

 予想外だった……。

「まさか、国民の命を優先するとはな」

 クロードの言葉通り、現代の女神の子供達が一番最初に確保したのは、アシェイラ国民の身の安全だ。

 剣主剣鍵の生誕の儀が行われている、神殿。

 この国の神子の生誕の日の祝いの場たる、教会。

 そこさえ押さえられれば、一部の例外を除き、今現在の時刻なら、国民の安全を確保する事はたやすい。一部の例外、何かしらの事情で神子の生誕の時刻に教会に行けなかった者達、その者達を守る為に、アシェイラ騎士団の戦力のほとんどが王都の街に集結させられていた。

「はっ、馬鹿か、この国の王族共は。街に戦力を集中させて、城の守りが薄くなっちまえば、元も子もね~じゃねぇか。ククク、人間は本当に阿呆だな」

 その言葉を聞いたジュリナは、呆れたような眼差しをクロードに注いだ。

「お前の方が阿呆だよ。何故、私達は神殿と教会にしか浄化結界を形成しなかったと思うんだい!?」








「そう……、城に浄化結界を張らず、騎士団の戦力を街に移したのは、わざとだ」

 場所を、結界の張られたアシェイラ神殿内から、その外に移したリュセルとレオンハルトは、前方に優雅に構える古の邪鬼と対峙していた。

「やはり、そうでしたか」

 リュセルの言葉にを聞いたサイレンは、微笑みながら頷く。

「国民を守る為、王族の身を囮にしたのですね」

「…………」

 沈黙が肯定となった。

 邪鬼達が、邪魔なアシェイラ王族を一番最初に殺そうと考えるのは分かっていた。分かっていたからこそ、それを利用したのだ。

 リュセルは、それをレオンハルトが提案した時の父と二番目の兄の顔をよく覚えている。二人共、何も言わず、ただ深く頷いた。まるで、それが当然だと言わんばかりに……。

「父上も兄上も、自分の身を省みずに、アシェイラ国民すべての盾となったんだ」

 邪鬼という、唯人に過ぎない彼らにはどうする事も出来ない脅威。それを知りつつも、死ぬかもしれない事など百も承知で、自分達は城に残り、城に勤めるすべての使用人に暇を出し、教会に向かわせた。

「これが、人間の強さだ」

 レオンハルトが持っていた剣を放り、腰に帯びていたもう一本の剣を手にするのを目の端に捉えたリュセルは、そう言ってサイレンを睨み見た。

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