【宝の鍵~金の王子と銀の王子~】本編 元平凡女性のイケメン王子は執着心強めな兄に溺愛される

月城はな

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第十四章 竜の末裔

9-1 もう一人の末裔

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  ガツンッ

「ッ!? 痛てーーッ!」

 自分の頭を支えてくれていた腕がどいた影響で、リュセルの後頭部は無残にも地面に衝突し、目の前に火花が散った。頭痛がひどい今の状態からすると、まさに止めをさされた形である。

「うぅ……」

 呻きながら見上げた、その先には……。

 うっとりと目を閉じた美しい金髪の青年に口づけられる赤髪の青年神官の姿があった。

(な、な、なんだと~~ッ!?)

 いきなり目の前で始まったキスシーンを凝視し、リュセルは現在の状況を忘れて興奮してしまう。何せ、同胞以外のキスシーンを見るのは初めてなのだ。それに、おそらくファーストキスになるであろうルークの反応も気になった。

(いや、でも、確かキスマークを残すようなテクニシャンな老巫女とお付き合い(勝手な想像)しているはずなのだから、初めてじゃないのか? 慣れてたりして……)

 ドキドキドキ

 顔を赤らめながら、ルークの反応を伺うと。

「……………………」

 チーーーーーーーーンッ

 彼は衝撃のあまり硬直し、白目を剥いていた。

(ぎゃあああああッ! 白目剥いとる~~~~!)

 このままでは天に召されてしまいそうだ。そうなる前にルークを助けなくてはならない。(遅過ぎる)

「ちょ、ちょっと、待て、ジル。……おいッ」

 遅まきながら、リュセルは二人を引き離す為に起き上がり、ルークとジルの体の間に両手を入れ、押して遠ざけようとした。だが、舌を入れるような深い口づけを交わしている訳でもないのに、ジルの体はルークから離れない。唇と唇を重ねている。それは、口づけというよりも、何かを確かめ、交換しているように感じられた。

(まさか、呼気を交換しているのか?)

 互いの呼吸を交換し、味わう。そうして仲間の存在を確かめるのである。相性が良ければ、番(つがい)となり、子を残せるからだ。確か、ドラゴンとはそういう生き物だった。

「って、何でこんな時に女神の記憶が出てくるんだよ! 離れろって、コラッ!」

 グググッ

 白目を剥き、精神的に瀕死状態のルークを救う為、二人を引き離そうとするが、強い力で相手を捕えているジルの手は、なかなか離れない。

「いい加減にしろ! この、馬鹿ドラゴンッ!」

 業を煮やしたリュセルは、自分の額を思いっきりジルの左側頭部にぶつけた。

 ガツンッ

 再び目の前に火花が散り、リュセルは苦悶の声を上げる。

「ううううう……」

 一方のジルはようやく口づけを解くと、リュセルの方に顔を向けて不満そうな声を上げた。

「何をする、神子」

 頭突きの影響でコブの出来たリュセルと違い、意外と石頭だったらしいジルは、ぼんやりとした表情のままペロリと唇を舐め、ルークへ視線を戻す。

「悪くない」

 一言そう感想をこぼしたジルからルークを庇うように、その視界に入らぬよう、二人の間に身を挟んだリュセルは、厳しい眼差しを金色のドラゴンに向けた。

「俺達は、もう一人の剣の神子、それと、アシェイラ神殿の神官長と合流する必要がある。彼ら二人と一緒にお前の弟がいるはずだ」

「ああ、そうだな」

 眠そうなぼんやりとした眼差しをリュセルに向けては来るが、ジルが後ろのルークを気にしている事は一目瞭然だった。

「この森の地形を変えたのはお前達だ。俺達をはぐれさせたのもお前達だ。ちょっとしたいたずらだったのかもしれないが、俺達はかなり困っているんだ。中立の立場にあるお前達には、俺達を無事合流させる責任があるとは思わないか?」

 相手が邪神と神子との戦いに介入しない、中立の立場であるドラゴンの末裔だからこそ、リュセルは彼らのした事を詰り、責任をとる事を要請した。

 ジルはおそらく、リュセルの要請を受けるだろう。ルークがこちら(神子)側にいる以上、受けざるをえまい。このまま彼を見逃してくれるかはわからないが……。

(とりあえず、レオンとセリクス神官長と合流し、相談するしかない)

 一人で目の前の金色のドラゴンに対抗するのは無謀である。

「わかった」

 少し考えた後相手が頷くと、それを見たリュセルは、ほっと胸を撫で下ろした。

「ウインター神官長補佐。あの、大丈夫ですか?」

 そう言って後ろを振り返ると、リュセルはぎょっと目を見開く。そこには、腰を抜かし、ガタガタと震えながら顔を伏せるルークの姿があったからだ。

「ちょ、ウインター神官長補佐! お前、ジル! 何したんだ!?」

 リュセルの責めるような声を聞いたジルは、ゆっくりと首を傾げる。なんともスローペースな人間……いや、ドラゴンだ。

「……何も。呼気を交換し、味わっただけ。俺達の間で普通にする事だよ。でも、もしかすると、俺のが強過ぎたのかも。初めてな上、すごく血が薄いみたいだし、その子」

 血が薄い。

 一体、何の血が薄いのか。どうして薄くなったのか。女神の記憶を引き出した今、リュセルにはわかっていた。

 遠い昔、ユラと袂を別った双子の弟。

 人の中で生き、死んだ。

 ドラゴンの長、アナスタシアが残した希望の種。

 ミラ。

 彼(ルーク)は、もう一つのドラゴンの血族。


 ミラの子孫だったのである……。

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