必要だって言われたい

ちゃがし

文字の大きさ
68 / 99
episode18*その愛を信じてみたい※

66

しおりを挟む

翌朝は、アラームが鳴るより少し前に目が覚めた。
0時をまわっておめでとうを伝えた後にベッドに入ったのだから睡眠時間はいつもより少ないはずなのに、隣にぬくもりを感じながら眠ったおかげで熟睡できたらしく、気分がすっきりとしている。

明るいと寝付けない要の寝室のカーテンは、暗めの色をした少し厚手の遮光カーテンだ。
いつも隙間なくびっちりと閉じられているそれを、少しだけずらして窓の外を見てみる。
梅雨入り前の少しだけ夏を先取りしたみたいなギラギラの太陽が、雲一つない青空に燦々と輝いていた。

「タルさん…、もう起きる時間ですか。」
「あ、ごめん、眩しかった?」
「いえ、大丈夫です、俺ももう起きます。」
「そっか、じゃあ俺先に戻って飯用意しとくから、準備出来たら上に来な?」
「はい、ありがとうございます。」

ベッドを抜け出して部屋を出ようとしたとき、あ、と気が付いて要の方を振り返る。
誕生日おめでとう、生まれてきてくれてありがとう、それらを伝えてからでないと今日が始まらない。
ぎゅっと抱きしめて額にキスをしながら伝えると、要は口元を手で押さえながら、照れたように笑った。

一緒に朝食を摂って、いつも通り並んで出社して、定時に上がれるようにいつもよりハイペースで仕事をこなして、就業後は同じ場所へ帰る。
それはいつもと同じように見えて、今日だけは特別な意味を持つ。
要が選んでくれたから、今こうして隣でこの日を迎えられている。
誕生日を共に過ごす相手を、家族でも友人でもなく、俺に決めてくれたから。
その事実だけで、1日胸がいっぱいになっていた。

ダイニングテーブルには、今日のメインの鶏肉と、卓上IHコンロ、マヨネーズなどで作った特製ソース、それからノンアルコールのレモンサワー。

昨夜、リクエストを受けてから一緒にスーパーへ行って、大量に買い込んだ鶏肉を唐揚げ用に漬け込んでおいたものを、卓上コンロの上で揚げながら食べる計画だ。
何だって、揚げたてが一番うまい。
俺には、要に一番うまい状態のものを食わせてやる使命がある。

「うわ、タルさんのからあげを揚げたそばから食えるって、夢の食べ方ですね。」
「ははっ、油跳ねるからそれだけは注意な。」
「はーい、つか、え、これとこれ色違いません?」
「うん、醤油と塩の2種類漬けてみた。」
「あぁっ、最高かよ…。」
「ははっ、…米は?どんくらい食う?」
「こんなん米いくらでもいけるやつですよ。」
「じゃあ、多めによそっておくな?」
「はい、ありがとうございます。」

揚げたてのからあげを要の皿にのせたら、あついあついと言いながらも嬉しそうに一口かじって、うまいって俺の好きな最高の笑顔を向けてくれる。
タルさんも食べてみてください、めちゃくっちゃ美味いですよ、と残りの半分を口に放り込まれて、あついあついって言いながら笑い合って食べた。

食後、シャワーを浴びて、明日の準備を整えてから要の部屋へ向かうと、リビングでソファに腰かけていた要がこちらを見て、隣のシートをポンポンと叩き、早く来いと催促してくる。
小走りで駆け寄って勢いよくソファにダイブすると、嬉しそうな顔で、待ちかねていたようにぎゅうっと強く抱きしめられた。
そのまま流れるようにひじ掛けの方へ押し倒されて、そこからずっと、唇を吸われ続けている。

「…っ、…要ぇ?…っふ、長くねぇ?」
「うん、…っ、だって、…気持ちいんだもん。」
「……あきねぇの?…はっ、明日唇腫れそうじゃねぇ?」
「あきるわけっ、ないでしょ、…俺タルさんとキスすんの、好きなのにっ。」
「ははっ、そうなの?…んっ、なら、いいけど。」


要が唇を離して、ハッとした顔で間近から見下ろしてくる。

「え、タルさんは飽きてるんですか?」
「いや?全然。」
「ふはっ、よかった。」

要は安心したように笑ってキスを再開すると、脇腹に手を這わせて、腰から太ももにかけてをさらさらと撫でてきた。

「タルさん、まだ傷痛いですか?」
「うん?昨日よりはだいぶマシだよ。」
「………今からシたいっていったら、怒りますか?」
「…怒んねぇよ、怒んねぇけど、要の事、満足させてやれねぇかもよ。」
「良いんです、ただ欲しいだけなので。」
「っ…、シーツの替えあんの?」
「ははっ、何の心配ですか、タオルでも敷いとけばいいでしょ。」
「じゃあ、…首触んの禁止、乳首禁止、名前呼ぶの禁止な。」
「ん~、守れたらね。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】それより俺は、もっとあなたとキスがしたい

佑々木(うさぎ)
BL
一ノ瀬(27)は、ビール会社である「YAMAGAMI」に勤めていた。 同僚との飲み会に出かけた夜、帰り道にバス停のベンチで寝ている美浜部長(32)を見つけてしまう。 いつも厳しく、高慢で鼻持ちならない美浜と距離を取っているため、一度は見捨てて帰ろうとしたのだが。さすがに寒空の下、見なかったことにして立ち去ることはできなかった。美浜を起こし、コーヒーでも飲ませて終わりにしようとした一ノ瀬に、美浜は思いも寄らないことを言い出して──。 サラリーマン同士のラブコメディです。 ◎BLの性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください *   性的描写 *** 性行為の描写 大人だからこその焦れったい恋愛模様、是非ご覧ください。 年下敬語攻め、一人称「私」受けが好きな方にも、楽しんでいただけると幸いです。 表紙素材は abdulgalaxia様 よりお借りしています。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...