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episode20*その過去に触れられない
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「要、意外と運転上手いな。なんか安定してて落ち着く。」
「これでも一応10年近く営業やってますからね…。」
「そっかぁ、そうだよなぁ…大変だな。」
「最初はね、でももう慣れました。」
「エライ。」
「えらいの?…ふっ。」
「うん、俺駅の近くとかのごちゃごちゃしてるとこ運転すんのホント無理だからさ。」
「あぁ~、確かにね、神経使いますよね。」
「うん、だからそういうの頑張ってんのエライ。」
「そっか、俺えらいわ。」
「うん。………要、飴舐める?」
「なんの?」
「純露。」
「純露!ははっ、おじいちゃんのチョイスじゃないっすか。」
「だってたまに入ってる貴重な紅茶味がうまいんだもん。」
「あぁ~、たしかにあれね、美味いですね。」
「うん、数少ない紅茶の為に買ってるようなもんだな、これは。」
「じゃあ、俺ノーマルの方舐めます。…あ。」
「え、待って、口開けるタイミング早い。このフィルムねじねじタイプなんだから、そんなすぐには取り出せないのよ。」
「ははっ、そっか。………わっ!タルさん、見て、海!」
「いやいや、忙しいな、おい。」
「わぁ、すげぇ、海だぁ…、色汚ねぇ。」
「汚ねぇってなんだよ、失礼な…、あ、ホントだ、きったねぇ。」
「ほらね!沖縄の海の写真見た後だから余計汚くみえますわ。」
「や、もっと先に行ったらきれいだから。喫茶店の窓から見えるのはちゃんと綺麗な海だから。」
「そうなんですか?じゃあ期待しときますね。」
「ん、うん…、うん、俺の記憶の中ではね?今はどうだかわかんねぇけど。」
「ははっ、もっと自信持ってよ。」
「うん。」
「そういえば、海と言えばマシューが、今度働いてるホテル遊びに来なよって言ってましたよ。あいつが予約したらちょっと安く泊まれるみたいです。全室スイートらしいですよ。」
「マジで?絶対行くしかねぇな、それは。」
「ですよね、沖縄とか修学旅行でしか行った事無いしすげぇ楽しそう。」
「いつ行きたい?」
「んー、タルさんの誕生日。」
「え、知ってんの?俺の誕生日。」
「うん、9月でしょう?」
「あ、知ってんだ。」
「普通は恋人の誕生日だったら知りたくなるもんなんですよ。」
「いやぁ…、めんぼくない。」
「ふふっ、まぁ、こうやって俺が行きたかったところに連れていってくれるからいいですけどね。」
そんな会話が落ち着いたタイミングで、もうすぐ着くよ、とタルさんが言った。
あれが俺が通ってた高校、と指さして懐かしそうにした後、すぐにこのカーブの先だよ、と付け足す。
改装されたばかりなのか新しそうに見えるタルさんの母校の校舎を眺めながら、カーブを曲がったところで目的の喫茶店にたどり着いた。
小さな看板の古い喫茶店。潮の香りと、ほんのりと漂うコーヒーの匂い。
小説を読みながら何度も頭の中で想像した光景が、目の前に広がっていた。
「要、意外と運転上手いな。なんか安定してて落ち着く。」
「これでも一応10年近く営業やってますからね…。」
「そっかぁ、そうだよなぁ…大変だな。」
「最初はね、でももう慣れました。」
「エライ。」
「えらいの?…ふっ。」
「うん、俺駅の近くとかのごちゃごちゃしてるとこ運転すんのホント無理だからさ。」
「あぁ~、確かにね、神経使いますよね。」
「うん、だからそういうの頑張ってんのエライ。」
「そっか、俺えらいわ。」
「うん。………要、飴舐める?」
「なんの?」
「純露。」
「純露!ははっ、おじいちゃんのチョイスじゃないっすか。」
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「じゃあ、俺ノーマルの方舐めます。…あ。」
「え、待って、口開けるタイミング早い。このフィルムねじねじタイプなんだから、そんなすぐには取り出せないのよ。」
「ははっ、そっか。………わっ!タルさん、見て、海!」
「いやいや、忙しいな、おい。」
「わぁ、すげぇ、海だぁ…、色汚ねぇ。」
「汚ねぇってなんだよ、失礼な…、あ、ホントだ、きったねぇ。」
「ほらね!沖縄の海の写真見た後だから余計汚くみえますわ。」
「や、もっと先に行ったらきれいだから。喫茶店の窓から見えるのはちゃんと綺麗な海だから。」
「そうなんですか?じゃあ期待しときますね。」
「ん、うん…、うん、俺の記憶の中ではね?今はどうだかわかんねぇけど。」
「ははっ、もっと自信持ってよ。」
「うん。」
「そういえば、海と言えばマシューが、今度働いてるホテル遊びに来なよって言ってましたよ。あいつが予約したらちょっと安く泊まれるみたいです。全室スイートらしいですよ。」
「マジで?絶対行くしかねぇな、それは。」
「ですよね、沖縄とか修学旅行でしか行った事無いしすげぇ楽しそう。」
「いつ行きたい?」
「んー、タルさんの誕生日。」
「え、知ってんの?俺の誕生日。」
「うん、9月でしょう?」
「あ、知ってんだ。」
「普通は恋人の誕生日だったら知りたくなるもんなんですよ。」
「いやぁ…、めんぼくない。」
「ふふっ、まぁ、こうやって俺が行きたかったところに連れていってくれるからいいですけどね。」
そんな会話が落ち着いたタイミングで、もうすぐ着くよ、とタルさんが言った。
あれが俺が通ってた高校、と指さして懐かしそうにした後、すぐにこのカーブの先だよ、と付け足す。
改装されたばかりなのか新しそうに見えるタルさんの母校の校舎を眺めながら、カーブを曲がったところで目的の喫茶店にたどり着いた。
小さな看板の古い喫茶店。潮の香りと、ほんのりと漂うコーヒーの匂い。
小説を読みながら何度も頭の中で想像した光景が、目の前に広がっていた。
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