必要だって言われたい

ちゃがし

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episode21*必要だって言われたい※

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必架と凛太郎くんの部屋で、昨日のバースデーケーキをホールのまま、みんなでつつく。
俺を含め、朝食ビュッフェの直後でお腹いっぱいの男4人は数口食べたところですぐにフォークを置いたけれど、タルさんと必架は“デザートだけは別腹モンスター”なので、きっとこの量ならぺろりと平らげられるだろう。

「要ぇ、私と凛太郎、このあとケレムの車でスーパーに連れて行ってもらう予定なんだけど、アンタ達は行かないよね?」

フンフン♪と鼻歌でも歌い出しそうにケーキを口に運ぶ必架が、フォークの先をこちらに向けて聞いてくる。

「え、スーパー?」
「そう。地元のスーパーってさ、そこでしか売ってないものとかあるじゃん?食べ物系のお土産とかも安く売ってるだろうし。」
「あぁ…、なるほどね。」
「で、行くの?…別に行かなくてもいいでしょ?」

地元スーパーと言うレアスポットに対して少しだけ興味が湧いたけれど、必架がウィンクして合図をくれたので、状況を察することが出来た。
俺たちは海にでも行って来るよ、と答えて必架を見ると、うんうんと頷いて正解だと示してくれる。
4人がカートに乗って出かけていくのを見送って、俺たちは隣の自分たちの部屋へと戻った。

「タルさん、ちょっと遠いからタクシーで行かないといけないけど…、島の中で一番綺麗だって言われてるビーチ、行ってみません?」
「おう、いいよ。今日すげぇいい天気だしなぁ。」
「よかった、じゃあ準備しますね。」

室内に備え付けられた内線電話でフロントにコールし、タクシーを呼んでもらう。
バッグの中に四角い小箱がきちんと収められているのを確認し、タルさんにもらった螺鈿細工の黒のリングを左手の人差し指に嵌めたら準備は完了。
洗面台で髭を剃るタルさんの後姿をしばらく眺めてから、中央の部屋に備え付けられた天蓋付きのデイベッドに腰を下ろし、そこから外のプールを眺めて待つ。

「お、今日それ着けてくれてんの?」

背後からギシリとスプリングの沈む音がした。
振り返らずに待っていると、背中にぴったりと体を寄せて抱え込み、肩に顎を乗せながら、タルさんが俺の左手をそっと取って、指輪の上を親指で撫でて言う。
体重を後ろに預けてそちらを向くと、予想していた通りの顔をして笑っているタルさんがいた。

「こういう時に着けなきゃ、飾って終わりになっちゃうんで。」
「そっか、よかった。昨日着けてるとこ見なかったから、もしかしたら本棚で留守番中かなって思ってたんだよ。」
「旅行始まる前に失くしたらショックで立ち直れないなぁと思って、こっちついてから着けようと思ってたんですけど、昨日は飛行機乗ったり、初日で色々バタバタしてたんで、タイミング逃しました。」
「なるほどな。」

やっぱり似合うよ、と人差し指をまじまじと見て言うから、また少しだけ照れくさくなって、早く行こう、と急かすようなことをしてしまった。
うん、と言ったきり俺の肩口に顔を埋めて動かないタルさんの腕の中から抜け出して、振り向きざまに頬にキスをする。
すぐに表情が明るくなって、早く行こうぜ、とまるで自分が先に言いだしたみたいな態度で手を引っ張ってくるタルさんに連れられて、ホテルの客室を後にした。
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