異世界で愛され幸せに生きる話【改訂版】

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sideルーファス


腕の中ですやすやと眠るモモを見て、笑みがこぼれる。

長い睫毛が、頬にふわりと影を落としている。

その小さな唇が、安堵したようにかすかに動くたび、胸の奥がじんわりと温かくなる。

……愛おしい。

この感情が、出会った瞬間から俺を支配している。

まるで最初から、モモを愛するように定められていたかのようだ。

きっと、これは運命なのだろう。

神が俺にモモを託したのは、偶然ではない。

この手で守り、この胸に抱くことを、最初から決められていたのだ。

しかし、先ほどモモが話してくれたことを思い出すと、胸が締め付けられる。

あの小さな体に、どれほどの痛みと孤独を抱えてきたのか。

「食べることが怖い」と言っていた。
「怒られるから」と怯えた瞳で言っていた。

——どれほど、怖かっただろう。

食事を恐れるほどの恐怖を知る子供が、この世にどれほどいるだろうか。

それでも今、俺の腕の中で眠るモモの表情は穏やかだ。

そのことが、たまらなく嬉しい。

食が細く、体も弱い。

この小さな手首の細さは、ただの華奢さではない。

守られてこなかった証拠のようで、見ているだけで胸が痛くなる。

……俺が、守らなければ。

自分のことを話してくれたということは、少なくとも俺を「怖くない」と感じてくれたのだろう。

そのことが、どんな栄誉よりも誇らしい。

だが、今日だけでも何度か見せた怯えの表情——あれは癖のようなものなのかもしれない。

神も言っていた。「モモは精神的に不安定だ」と。

実際に触れてみて、それがどれほど深い傷なのかを思い知らされた。

あの怯えた瞳を二度と見たくない。

この城の者には、モモに対して最大限の注意を払うよう伝えねばならない。

一つの言葉でさえ、この子を傷つける刃になり得る。


白い頬は透けるようで、触れれば溶けてしまいそうな儚さがある。

小さな胸が上下しているのを見るだけで、安心してしまう。

それにしても、歴代の神子は皆こうなのだろうか。
いや、違う。

もし皆が同じであったとしても——間違いなく、モモが一番可愛い。

全てが小さく、繊細で、そしてどこか寂しげだ。
まるで、触れることすら許されない聖なる存在のように。

だが俺は、そんなモモを「守りたい」と思ってしまった。

誰よりも近くで、誰よりも深く。

——モモが他の誰かに微笑むところを見たくない。
——モモの名を呼ぶのは、俺だけでいい。

そんな独占欲を抱くなど、これまで一度もなかった。
王子として、理性と秩序を何よりも重んじてきたはずなのに。

だが今は……この子を閉じ込めてしまいたいと思っている。

この部屋に、俺だけの世界として。

外の誰にも触れさせず、俺だけの手で笑わせてあげたい。

——その瞳が、俺だけを映すように。

「……早く、俺のものになればいい」

囁くように呟き、モモの額にそっと唇を落とす。
柔らかい感触が伝わり、胸の奥が熱くなった。

モモが小さく寝返りをうつ。
その仕草すら可愛くて、思わず笑ってしまう。

「おやすみ、モモ。
君の明日が、どうか穏やかでありますように。」

その祈りとともに、もう一度抱きしめる。

この温もりを手放したくないと、心の底から思いながら——。
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