転生巫女は『厄除け』スキルを持っているようです ~神様がくれたのはとんでもないものでした!?〜

鶯埜 餡

文字の大きさ
25 / 35

25.遠い過去の真実

しおりを挟む
 そのあと、魔王に抱きかかえられるようにして自室に戻ったけれど、すべてを知っちゃったからか、今までのようには動けなく、ぎこちない動きしかできなかった。
「不安か」
 私がソワソワしているのに気づいたのか、魔王は私にやさしく問いかけてきた。もちろん元凶はコイツだけれど、すがるのもまた、コイツしかない。
 コクリと頷くと、だろうなと頭を撫でてきた。
「大丈夫だ。は威嚇以外のことはしない」
“今は威嚇以外しない”ということは、この先もなにかするつもりなのだろう。
 でも、それを考えていたって仕方がない。私はその不確かな保障に黙るしかできなかった。

「そういえば聞きたかったんですけれど、そもそもなんで私が『厄除け』を持っているってわかったんですか」
 しばらくして、私は思いだしたことを尋ねた。
 いい加減にはぐらかさないでほしい。そう思って尋ねると、目を細めて私の頬を撫でる。ひんやりとした手は私の心のような感じだった。
「お前が使ったからだ」
 えーっと、ごめんなさい。もうちょっとわかりやすく説明して欲しいな。
「ヒトの世界では、様々な分野で魔術の行使記録をたどるだろう? それと同じもんだ。私の場合にはそれを簡単に行える権能、すなわち道具ツールを持っている」
 私の視線で気づいたのだろう。魔王はすらすらと説明してくれたのだが、ウェイト。
 なんかいきなり特殊用語、というか専門用語ださないで。
「権能?」
「まあ、魔王ならではの特権と認識しておけ」
 苦笑いしながらも、目の前の男は説明してくれる。
 いい人なんだか、悪い人なんだか。

「私の場合には二つ、魔王ガープとしての権能を持っている。擬態と毒性付与で、どちらも他の魔王にはなかった・・・・ものだ。そして時間操作、スキル制作、魔界への鍵と呼ばれる三つの権能のようにほかの魔王にも持っているものも持ち合わせている」

 魔王の言葉に再びウェイトをかける。
 え、ちょっと待ってくださいよ。いくら創造主と対する存在であっても、なんでもできすぎじゃないの!?
 私の質問に呆れたように見てくる魔王。
「その通りだな。そもそも創造主の分身が“原初の魔王”だからな。だからなんでもできすぎて当然だ」
 いまだになんかよくわからないけれど、すごいことに巻きこまれちゃったんだなぁ、私。
 呆けてた私はふと気づく。
「そういえば今更ですけれど、そもそも魔王ってもう封印されてしまったんじゃなかったんですか? なんであなただけ・・は封印を解くことができたんですか」
「簡単な質問だ」
 へ?
 間抜けな声を出した私に、魔王はにやりと笑う。

「そもそも魔王はすべて封印されたという根本が違っている」

 ぱーどぅん?
 もうちょっとよく説明くださいな。
 私のまったくわかってない表情に仕方ないというそぶりを見せながら説明を始めてくれた。
「たしかに創造主とその代理人のヒトに敗れて封印された原初の魔王の方が数は多い。だが、いまだに封印されてない魔王だっている。私の場合はともに戦った原初の魔王の一人、ボティスが身代わりになったおかげで封印を免れたようなものだ」
 もっとも大半の魔力は失ったのだがなと魔王は自嘲するが、いや、十分あなたの魔力ってすごいですよねと私は思ってしまった。
 だって、城を丸ごと魔界へ持ってくるなんていう芸当、普通だったら、できないはずだからね?
「だからほかの魔王に仕えているはずの魔物は世界に点在しているだろう? それに魔王が姿を見せないのは、ヒトに興味を示さなくなっただけだ。興味がないから創造主の代理人との争いの数は大きく減っただけで、虎視眈々と世界を支配するのを企んでいるだろうね」
 はっはぁ。
 なんだかよくわからないけれど、とりあえず人間を攻撃する魔物がまだ生きている理由だけはよくわかったよ。

 私は事の大きさに驚いていたのだけれど、魔王はかなりマイペースで、私のまとめてあった髪をあのときと同じように髪留めを外して、梳かした。
 それされると、まとめるのが大変なんだけれどと思いつつも、なされるがままになっていた。
「しかし、キミのスキルはなかなかだね」
「はぁ……」
 どういう意味じゃい。
 たしかに『厄除け』はギルドで指定されるSSSランクだけれど、過去に何人も持っていたのだから、ユニークかどうか聞かれればそんなにユニークではないものだ。
 首をちょこんと傾げると、お前は自分の価値をわかっていないのだなと呆れられてしまった。
役に立たない・・・・・・『洗浄』と『厄除け』、それに……いや、言わないでおこうか。五つ・・のスキル所持者ホルダーなんて何十年、いや何百年ぶりだろうね。一応、スキルの保持に貴賤関係ないっていうけれど、正直、平民上がりでそれって、よっぽど前の生で善行をなしてきたのだろうかねぇ」
 ごめん、さっきからこの人の言っていることがよくわからないんだけれど。
 だれか説明して……と思ったけれど、だれも周りにいないんだったよ。
「ククク。私が言っている意味がわからないのならば、それでいい。戻れることがあるのならば、あちらで聞いてみなさい」
 魔王は私の様子に目を細めるが、答えを言ってくれる気配がない。
 ええい、もう自棄で大きなため息吐いてやれ。なんかもう、この人の前で取り繕う気がなくなってきた。

「それとキミのアンクレット、この城に来た以上、もう必要ない・・・・・・だろうから外しておくよ」

 迂闊にスキルを使わないようにねという魔王のウィンクに、はいぃ!?と目を剥いてしまった。やっぱ、これってなにかのまじないの道具でしたかぁ!!
「このアンクレットは私ではない召喚者がキミにつけたものだ」
 私の心の叫びに今度は気づかなかったようで、外れたアンクレットを拾い上げた魔王は独身女性にこんな鎖つけるなんて、悪趣味でしかないよねぇと憮然としていた。
 いや、だったら外さないでそのままにしておいてよ。
 また面倒なことに巻きこまれそうで怖いんだから。
 というか、あなたもこの前、鎖をつけてましたよね!?


 それから魔界時間で五日後、最近の定番になっている魔王の私室でのおやつタイムを過ごしていた。
「なかなかアルキスは善戦しているようだね」
「それって、人間側が苦戦しているということですか」
「そういうことだな」
 昨日までの四日間はなにもそういった話は聞いていなかったから、どうやら今朝、もしくはさっきまでに入ってきた情報のようだ。
 なんか複雑。
 もちろん人間たち、いやレヴィヨン王国の人たちには勝ってほしいけれど、そもそも魔王の“願い”をきちんと聞いていなかったような気がする。“創造主の代理人に対抗できるのならば、どういう形だっていい”というようなことを言っていたような気がするけれど、それはいったいどんな形なのだろうか。
 場合によっては……いや、それでも私には人間、レヴィヨン王国の人たちに勝ってもらいたい。
「ねぇ、キミは私が世界を征服した暁には何が欲しいのかい?」
「なにもいりません」
 私の逡巡に魔王は気づいたようで、私の望みを訪ねてくるが、私にはそんなものはない。
「ふぅん、そうなんだ。つまらないな」
 心底つまらなさそうに鼻を鳴らした魔王だけれど、仕方ないでしょ。
「つまらなくて結構です」
「はい、これ」
「なんですか?」
 ツンとした私に魔王は猫を餌付けするように果物の乗った皿を私の前に差しだす。魔王の皿に乗っているのはモリノンの実かぁ。なんだか今日は私はあまり食欲がなくて、甘酸っぱい赤い果実をさっき食べたけれど、これも食べるかぁ。
「モリノンの実だよ」
「それは見ればわかりますが……」
「大丈夫、毒は入ってないから」
「はぁ、そうですか」
「つまらないな」
「仕方ないですよね」
 どちらかというと物理的におなかがいっぱいで、もういいやとなっているんだよねぇ。私の反応の薄さに魔王はじゃあと食事以外の提案をしてきた。
「“外”を覗いてみるかい?」
 その提案はちょっとした禁断の果実だった。

「ヒトどもが我々相手に戦っている有様を」

 どこかの城の大佐のように“人がごみのようだ”とか言うのかなとちょっと考えてしまったけれど、少しでもいいから情報を得たい。
 そう思って魔王の手を握った瞬間、私たちがちょうど今いたところの真下辺りでズッドーンという鈍い音が響き渡った。
「なにが起こった?」
 いや、私にもさっぱり。
 魔王の問いかけに私は首を振る。

 もう一度、鈍い音が響いた後に私たちが立っている場所から十五メートルほど離れた場所に大きなくぼみができていた。
「なんだ、あれは?」
 私に聞かれたってわかるはずないでしょうが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

処理中です...