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十一歳
人の口に戸を立てたい
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それから数週間後、シーズン前に開かれたセリチア王国からの駐在大使の交代式。
本来ならば、シーズンが始まったあとに盛大な夜会が開かれて新しい大使が国王に挨拶する、というのが恒例であるものの、双方からの申し入れにより、ささやかな会食形式になった。
とはいえども、新駐在大使がフィリップ王太子の弟であるクロード王子であることが判明したため、比較的大規模な会食となった。
今回はアリアも公爵令嬢として出席しなければならなく、久しぶりに着飾っていた。
「さすがはアリアちゃんね、可愛らしい」
あのディートリヒ王からの呼び出し以来、すっかりアリアと仲良くなったマーガレット。今日は彼女も公爵令嬢として会食に出席するようで、明るい色の華やかなドレスを身にまとっていた。
「マーガレットさんこそ」
彼女のいやみでない口調は楽だったものの、彼女の身内であるバルティア家の面々に見られていたらどう思われるか気になってしまった。
「そういえば、父がアリアさんに会いたいって言ってたの」
マーガレットは笑いながらちょうどアリアが気になっていたことを呟いた。
「え」
現在のバルティア公爵といえば任官後、うなぎ上りで地位を駆け上がっていった人物で、『ラブデ』内では描写されてはいなかったけれど、現実世界では頭も性格もかなりイイと評判だ。そんな人物が自分に会いたい、というのは何があるのだろうと勘ぐってしまう。
「ふふ。弟は嫌っていたけど、父はアリアさんに興味を示したのよ」
なにそれ。
怖すぎるんですけど。
怖すぎるマーガレットの言葉に後ずさってしまった。
名門だけど落ちぶれかけてる家の自分が、新進気鋭の貴族に呼ばれる、というシチュエーションを想像できなかったのだ。
しかし、その会話は突然、甲高い悲鳴で途切れた。
アリアはマーガレットとともにはしたなく見えない程度に駆け足でその悲鳴のもとへ駆けつけた。
そこにはいわゆる壁ドンをされている状態の侍女の姿があり、さっきの悲鳴はこの侍女のもののようだった。壁ドンしているほうの人物はスラリと背が高く、着ているものからかなり身分の高い金髪の男性のようだとしか分からなかった。
「どうされたのですか。ここをどこだと思われていらっしゃいますか」
アリアは警戒しながら尋ねると、覆いかぶさっているはず、すなわち加害側であるはずの男性がにこやかな笑みを浮かべてアリアたちのほうを向いた。
「良かった。話の分かる人が来てくれたようだ」
そういう彼の顔を見て、アリアは確信した。
金髪で茶色い瞳。
まさしく彼は隣国セリチアの王子であり、『ラブデ』の攻略対象の一人であるクロード王子だった。
「いやぁ、ここに来るまでの道中で何回襲われかかったことだか。しかも兄貴じゃない、別の連中もウヨウヨしてたから、正直、気が休まらなかったんだよねぇ」
それを陛下に直訴しようと思ったんだけど、なかなか取り次いでくれなくてさぁ、とやれやれという仕草をしながら言う彼。彼の服装を見る限り、あまり苦労していないようにも見えるが、おそらくそう見えさせないようにしているのだろう。
「そうでしたか。クロード殿下をしっかりと警護できていないのはこちらの落ち度です。まず、この場では私が謝罪させていただきます」
アリアの丁寧な謝罪に別にいいのに、と苦笑いするクロード王子。
「ねぇ、謝罪ついでに一つ聞きたいんだけど、アリア・スフォルツァ公爵令嬢って君、知ってる?」
彼の質問にその場が凍りつく。
A:ここは素直に私です、と名乗りでる。
B:いいえ、違います、と否定する。
C:さぁ、どなたのことをおっしゃっているんです、としらばっくれる。
三つの選択肢があったが、いずれはバレるんだからいいやと思って、名乗りでることにした。
「私がアリア・スフォルツァですが」
アリアが名乗るとクロード王子は笑みを五割増しくらいにして、手を差し出してきた。
「君かぁ、弓術の達人って」
どうやらそちらで噂が広まっていたようだ。
「いやぁ、女だてらに弓の上手い子がいるって、こないだ合同演習のときにコクーン卿が言ってたから、どんな子なんだろうって思ってさ」
先ほどまで壁ドンされてた侍女もマーガレットもただ呆気にとられていた。
もちろん、アリアも同じだった。
「だから、いつか手合わせよろしくね?」
うっかりクロード王子の言葉に頷いてしまったアリアは後から後悔したが遅く、リーゼベルツの貴族の間でその話が広まっていたのに気づいたのは、その日の夜行われた食事会のときのことだった。
本来ならば、シーズンが始まったあとに盛大な夜会が開かれて新しい大使が国王に挨拶する、というのが恒例であるものの、双方からの申し入れにより、ささやかな会食形式になった。
とはいえども、新駐在大使がフィリップ王太子の弟であるクロード王子であることが判明したため、比較的大規模な会食となった。
今回はアリアも公爵令嬢として出席しなければならなく、久しぶりに着飾っていた。
「さすがはアリアちゃんね、可愛らしい」
あのディートリヒ王からの呼び出し以来、すっかりアリアと仲良くなったマーガレット。今日は彼女も公爵令嬢として会食に出席するようで、明るい色の華やかなドレスを身にまとっていた。
「マーガレットさんこそ」
彼女のいやみでない口調は楽だったものの、彼女の身内であるバルティア家の面々に見られていたらどう思われるか気になってしまった。
「そういえば、父がアリアさんに会いたいって言ってたの」
マーガレットは笑いながらちょうどアリアが気になっていたことを呟いた。
「え」
現在のバルティア公爵といえば任官後、うなぎ上りで地位を駆け上がっていった人物で、『ラブデ』内では描写されてはいなかったけれど、現実世界では頭も性格もかなりイイと評判だ。そんな人物が自分に会いたい、というのは何があるのだろうと勘ぐってしまう。
「ふふ。弟は嫌っていたけど、父はアリアさんに興味を示したのよ」
なにそれ。
怖すぎるんですけど。
怖すぎるマーガレットの言葉に後ずさってしまった。
名門だけど落ちぶれかけてる家の自分が、新進気鋭の貴族に呼ばれる、というシチュエーションを想像できなかったのだ。
しかし、その会話は突然、甲高い悲鳴で途切れた。
アリアはマーガレットとともにはしたなく見えない程度に駆け足でその悲鳴のもとへ駆けつけた。
そこにはいわゆる壁ドンをされている状態の侍女の姿があり、さっきの悲鳴はこの侍女のもののようだった。壁ドンしているほうの人物はスラリと背が高く、着ているものからかなり身分の高い金髪の男性のようだとしか分からなかった。
「どうされたのですか。ここをどこだと思われていらっしゃいますか」
アリアは警戒しながら尋ねると、覆いかぶさっているはず、すなわち加害側であるはずの男性がにこやかな笑みを浮かべてアリアたちのほうを向いた。
「良かった。話の分かる人が来てくれたようだ」
そういう彼の顔を見て、アリアは確信した。
金髪で茶色い瞳。
まさしく彼は隣国セリチアの王子であり、『ラブデ』の攻略対象の一人であるクロード王子だった。
「いやぁ、ここに来るまでの道中で何回襲われかかったことだか。しかも兄貴じゃない、別の連中もウヨウヨしてたから、正直、気が休まらなかったんだよねぇ」
それを陛下に直訴しようと思ったんだけど、なかなか取り次いでくれなくてさぁ、とやれやれという仕草をしながら言う彼。彼の服装を見る限り、あまり苦労していないようにも見えるが、おそらくそう見えさせないようにしているのだろう。
「そうでしたか。クロード殿下をしっかりと警護できていないのはこちらの落ち度です。まず、この場では私が謝罪させていただきます」
アリアの丁寧な謝罪に別にいいのに、と苦笑いするクロード王子。
「ねぇ、謝罪ついでに一つ聞きたいんだけど、アリア・スフォルツァ公爵令嬢って君、知ってる?」
彼の質問にその場が凍りつく。
A:ここは素直に私です、と名乗りでる。
B:いいえ、違います、と否定する。
C:さぁ、どなたのことをおっしゃっているんです、としらばっくれる。
三つの選択肢があったが、いずれはバレるんだからいいやと思って、名乗りでることにした。
「私がアリア・スフォルツァですが」
アリアが名乗るとクロード王子は笑みを五割増しくらいにして、手を差し出してきた。
「君かぁ、弓術の達人って」
どうやらそちらで噂が広まっていたようだ。
「いやぁ、女だてらに弓の上手い子がいるって、こないだ合同演習のときにコクーン卿が言ってたから、どんな子なんだろうって思ってさ」
先ほどまで壁ドンされてた侍女もマーガレットもただ呆気にとられていた。
もちろん、アリアも同じだった。
「だから、いつか手合わせよろしくね?」
うっかりクロード王子の言葉に頷いてしまったアリアは後から後悔したが遅く、リーゼベルツの貴族の間でその話が広まっていたのに気づいたのは、その日の夜行われた食事会のときのことだった。
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