転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね!? ~平凡に生きていくために、私は諦めないんだからっ!~

鶯埜 餡

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十一歳

嫌味は戦場で

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 フェティダ公爵――すでに捕縛され爵位は取り上げられているから前公爵と言ったほうが良いか――の口から出たあの女については詳しく聞かなかったが、おそらくフレデリカのことだろう。だけども、ディートリヒ王さえも動いていないのだから、非力なアリアが動けるはずはなく、そっとお蔵入りになった。


 そんな恐怖の食事会の数日後、アリアは休暇を取って実家に戻ってきた。
 もうすぐシーズンはじめの夜会のためにドレスの採寸を行う予定だったのだ。今年デビュタントとなるベアトリーチェと一緒に採寸を行っていた。

「ねぇ、このドレス、アリアちゃんに似合いそうじゃないかしら?」

 そういってなじみの仕立て屋が取り出したのは、日本では俗にAラインドレスと呼ばれるものだった。記憶が間違ってなければ、ゲーム内で『アリア・スフォルツァ』という人物はほとんどこのドレスを身にまとっていた。もちろん、可愛らしいベビーピンクのドレスだけど、あまりいい思い出はないから、そのドレスは却下した。

「そうなのねぇ。それは残念――――ねぇ、こんなのベアトリーチェさんはどうかしら?」

 そういって彼女に差し出したのは、プリンセスラインのドレス。
 こちらも見覚えがあった。

 このドレスって、クリスティアン殿下とハッピーエンドで、結婚するときに着用したものだったはず。

『ラブデ』のクリスティアン殿下とのハッピーエンドでは、最後のシーン、教会での結婚式を挙げてその際にお姫様抱っこをするという、スチルで彼女が着用していたものと色は違っていたが、細かい装飾が似ている気がした。

「そうですわね。このドレスですと、はやりやすたりなどはあまりないシンプルなものですので、お嬢さんがご結婚なさる時にもお作りさせていただきますよ」

 公爵家に来た針子たちの中で、一番年長の針子も彼女をうっとりとみていた。ちなみに、ユリウスの母親であるマチルダも今回、二人のためならばとお針子団の中に混ざっている。

「ねえ、クリスティアン王子殿下ってどんな方なのかしら?」
 試着している最中、不意にベアトリーチェが尋ねてきた。アリアが王宮勤めをしているし、すでに成人となる夜会を済ませているから聞いてきたのだろうが、彼女にとっては非常に心臓に悪い質問だった。

「まだ殿下は成人されていないし、王宮勤めをしているからって王族の方にはほとんど会わないわよ」

 彼女は事実を述べただけなのだが、ベアトリーチェにとって王宮イコール王族や貴族たちにしょっちゅう会える場所、というイメージがついているのか、少し拗ねていた。
 しかし、妹とは違って思い直したのか、それともそんなに王族のことはどうでもいいのか、すぐに別のドレスへ興味を示し、その話題はそこで途切れた。

 結局、ベアトリーチェは、アイボリーの生地にピンクのオーガンジーがふんわりと覆っているドレスにしたようだ。同じ色のリボンもふわりとしていて、彼女の金髪によく似合っていた。
 一方のアリアは、菫色のすらりとしたラインのドレスで、少し冷めた印象を与えるが、前回の夜会――デビュタントだった夜会ではしっかりとした印象だったので、路線を変えることがなくていいかな、と思ってしまったのだ。

 まあ、今年は面倒ごとにも巻き込まれることは確定しているわけだし、それくらいはおおめにみてくれるよね。

 クリスティアン王子の成人とクロード王子の駐在大使としてのお披露目が待っている。自分から巻き込まれにいくつもりはさらさらないが、クロード王子の方とは面識もある。
 特にあの一件を知っている令嬢たちからはなにも言われないだろうが、あの会場にいなかった令嬢たちからはいろいろ言われるんだろう、と思うとうんざりしてくる。
 せめてドレスだけでもマナー違反にならない程度に自分の好き勝手にさせて欲しい。



 アリアの懸念は大当たりし、シーズンはじめの夜会の当日。

「ねぇ、あなた。王太子殿下との婚約を破棄・・されたんですって?」

 会場につき、夜会のはじまる時間までの間のわずかなとき、目の前で派手な装いの二人組の令嬢に嘲笑われた。もちろん、アリアの知り合いでもないし、侍女仲間でもなかった。多分、そんなに爵位も高くなく、王宮勤めに出るほどの素養もないのだろう。
 下級侍女といえども、ある程度のマナーは必要で、商人の令嬢たちの良い勤め先になっているのは、ある程度マナーを持っていても雇用主に馬鹿にされることもない勤め先だからだ。

 自分から名乗ることができない連中はロクな人がいない、というのをつい最近、体験したばかりで既視感がある。
 しかし、前回と違って、周りの人目を気にしなければならない。


 ほら来た、面倒ごと。
 でも、これくらいあしらえなくてどうするのよ、悪役令嬢


 すっと息を吸い、にこやかに笑みを浮かべた。

「ええ、そうなんですの。私には全然、素養が足りないから、もっと精進してから婚約するって言われまして。それに、あなたたちと違って、私一人じゃ決められませんの」

 アリアの反論に黙らざるを得なくなった令嬢たち。

 最近では完璧令嬢として有名なアリアと比べれれば、公衆の場で自分たちの素養が上です、とは言いづらい。それに、暗に政略的なものは当たり前だから、自分の意思を押し通せるか、馬鹿が、と言ったのが通じたようで、わなわなと震えながら去っていった。

「さすがだね、君は」
 令嬢たちが去っていったあと、背後から声をかけられた。

「あら、お聞きになっていましたのね。そうなら、声をかけていただければよいのに」

 すかさず嫌味で返すと、苦笑いをして肩を竦めた相手だったが、すぐに笑顔になり、よろしくね、お嬢様、と手を差し出した。
 アリアはこちらこそ、と言ってその手をとった。

「今日はよろしくお願いいたしますわ、クロード殿下」
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