転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね!? ~平凡に生きていくために、私は諦めないんだからっ!~

鶯埜 餡

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十一歳

姉心と親心

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「ねぇ、お姉さま」

 今までは黙っていたユリウスに突然、呼びかけられた。どうしたのかと思って、無言で質問を促すと、可愛らしいまだ声変わり前の高い声で尋ねてくる。

「お姉さまはどうしてそこまでして、文官になりたいのですか? 僕が当主をやめて、お姉さまが当主になれば、大変な思いをしなくても済みますのに。ついでに言うと、バルティア家のご子息は確か、騎士団に入られておられますよね。次期当主としての仕事と両立できるものなんですか?」

 ユリウスの疑問にマチルダがこらっと叱り、エレノアはあらあらとおどけたように言う。アリアはそうねと考えながら話しはじめた。

「私が当主にならないのはスフォルツァ家を守るため。私たちの代に余計な火種を作らないためにも、あなたが当主になるしかないの」

 彼女が言っていることは間違ってない。仮にアリアが当主になった場合、スフォルツァ家を取り込もうとする貴族たちは多いし、それを巡ってバルティア家やフェティダ家との争いになりかねない。
 ユリウスが当主になった場合でも、公爵家と縁を結びたいと考える人は多いだろう。しかし、元々は庶子の身分であり、世間的にはマチルダの存在はあまり知られてない。だから、「この家に入るイコール正妻と愛妾のにらみ合いに巻き込まれる」と思われているからなのか、アリアという『優秀』な姉がいるからか、スフォルツァ家に近づこうとする人間はこれまでいなかった。だから、アリアではなくユリウスが当主でいた方がアリアにとっても都合がいい。

「そして、アラン――バルティア家の長男については彼の父親、バルティア公爵がどう考えているのか知らないけれど、騎士団に入ったのは間違いなく彼の意思によるものだわね。そうね、彼にはその・・才能があるわ」

 騎士として、公爵長男として。

 アリアがそう彼を思い出しながら答えると、ユリウスが目を輝かせた。
「じゃあ、僕も騎士団に入りたいです。そうすれば、お姉さまばかりにいろいろな問題を押し付けなくて済みますから」
 彼がそう言うと、マチルダもエレノアも驚いていたが、アリアは攻略対象としての彼『ユリウス』と重ね合わせてしまった。彼の発言に思わずじゃあ入って頂戴と言ってしまいそうになったが、心を鬼にした。

「ダメよ」

 姉の否定にどうしてですか、と尋ねるユリウス。どうやら、自分の立場を分かっていないらしい。

「もしあなたが騎士団に入った場合、同じ公爵家長男、いえ、次期公爵である彼と比べられることになるのよ。それに耐えられるの? それに、まだあなたは公爵としての勉強をしている最中でしょ? 騎士という職業ではないかもしれないけれど、陛下を守る存在としてならば、文官としてでも、もしくは近侍としてでもそばに行くことはできる」

 だから早まるんじゃないわよ。

 アリアの指摘にその方法を考えていなかった、という顔をするユリウス。

 甘ちゃんねぇ。

 かつての自分を思い出しながらため息をつく。

「そうね。私が文官になりたいのは誰かさんとの勝負に勝ちたいからでもないし、大馬鹿者がむかついたからでもないわね、ごく単純な理由――――私の未来は自分で切り開きたい。そして、スフォルツァ家を守りたい。そのためだけ」

 娘の言葉にあなたはそういう娘だったわね、とあきれながらも頷く母親。
「そうでしたか」
 納得したようなしていないような返事をするユリウス。

「ならば、僕もお姉さまに負けないような文官になってみせます」
 彼の宣言に苦笑する一同。アリアはこれじゃあ文官試験に落ちるわけにはいかないわね、と思わずつぶやいてしまった。



 そして、園遊会には参加せずに迎えた文官登用試験の日。

 会場にはアリアでも知っているような貴族の息子たちが多くいて、なかには見知らぬ顔ぶれもあったことから、誰かさんのように貴族に見いだされて、送り込まれた少年たちもいるのだろう。アランをはじめ、公爵家の息子たちはいないことから、今回はある意味で当たり年なのだろう。
 ちなみに女性はアリア一人だけで、事前に親たちから聞いていたのだろう。驚く様子もなく、ただその場に迎え入れられた。

「やっぱり来てたんだ、姫さんも」

 ただ一人、無敵な様子でアリアに喋りかけてきたのはその誰かさんだった。

「あら、ごきげんよう」

 すました顔で応えるアリアと彼の様子を周囲の少年たちは、まるで見知らぬ言語で語りかけられた時のように驚きの顔をしていた。
「今回の首席は俺がもらうからな」
 ウィリアムは貴族の少年たちが目の前にいても、不遜な態度を崩さなかった。ならば、とアリアも気兼ねなく言わせてもらうことにした。

「ええ、どうぞ。でしたら、こちらは女性初の宰相となってみせますわ」

 クリスティアン王太子との勝負はアリアが文官になるかならないかというものだったが、ウィリアムと勝負するのにはそんなものじゃ生ぬるい。

 それに周りの少年たちに発破をかけるのには十分だったようだ。

 たかが平民上がりの少年と公爵家の生意気姫・・・・になんか負けてられるか、そんな声が聞こえてくるような気がした。

「いいぜ。じゃあ未来の宰相の椅子を掛けての勝負をしようぜ」
 ウィリアムもそれに気づいたようで、部屋の中を見渡しながらそう言った。

 ちょうど、試験官らしき男性が部屋の中に入ってきた。
 いっせいに静かになる試験室内。

 アリアとウィリアム、そして多くの貴族の少年たちの試験しょうぶが始まった。
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