転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね!? ~平凡に生きていくために、私は諦めないんだからっ!~

鶯埜 餡

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十一歳

存在意義

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 秘書アリアとしての最初の仕事は意外なものだった。

「なんでお前が?」

 それはこちらの台詞だと言ってやりたい、アリアは目の前の人物に文句を言うところだった。だけども相手は王族。内心舌打ちするだけにとどめておいた。
「私が選ばれたのは相手が同じ・・公爵家であり、新人文官としての勉強かねての同行となります」
 アリアの返答にため息をつくクリスティアン王子。隣にいるクレメンスはじっと王子を見ていた。
「分かった」
 これは彼女でも断ることができなかった『王命』。クリスティアン王子もそれは分かっているようで、面倒だなと言いつつも、拒否しなかった。

「いつの出立だったか」
 彼はかたわらにいるクレメンスに尋ねると、無表情で明後日ですと返ってきた。どうやら彼は何か不満らしい。何か理由があるのかと思って切り込むと、その通りだと返ってきた。

「今回殿下とアリア嬢が行くのは、リーゼベルツ王国内で一、二を争う危険地域。すでに二人は成人されていますし、お二方ともコクーン副騎士団長の手ほどきを受けているので、腕は確かでしょう」

 珍しく素直にクレメンスが心配をしている。
「もちろん、騎士団から精鋭たちを連れていくうえ、宿なども安心安全な場所を選んでいます。それでも何か物足りないような気がして」
 陛下が直接赴かれた方が、彼も面会を拒むことはできないはずなのに。そういう彼の言葉にアリアも考える。

 今回行くのはフェティダ領。

 その名を冠するフェティダ家が治める場所。しかし、元はリーゼベルツではなかった場所だ。あるとき、時のリーゼベルツ国王が一方的に併合したらしく、併合時には土着の民たちが猛反発したという。その経緯のおかげか、今でも内部反乱分子が残っているという噂はたえずあり、この十年近くはさらに、そこを治めるはずのフェティダ家でさえ、王家に弓を引く、という事態に陥っている。

 ディートリヒ王や先王がなぜ行幸せず、クリスティアン王子やアリアに押し付けるような形をとったのか。

「自分ではなく俺にフェティダを託した――――?」

 クリスティアン王子の考えになるほどとアリアを見るクレメンス。アリアにはその託され方がイマイチ理解できなかった。
「まあ、そう考えるのが妥当でしょうねぇ」

 やだわぁ。なにそれ。
 そんな負の遺産なんていらない。やるなら歴代国王たちあなたたちで何とかしなさいよ。

 アリアの心の声が漏れたのか、苦笑しながら説明するクリスティアン王子。
「少なくとも筆頭公爵であるスフォルツァ家と近年、力をつけているバルティア家はすでに、お前とアランという二人がこの王宮にいる。だから、よほど王家われわれが失態を犯さない限りは見限らないだろう。それと比較して、他の公爵たちは現状維持で良いだろうと考えているものの、南の難所、フェティダ領だけはどうしても押さえておきたい。しかし、それをするだけの材料が父上にはないのだろう」

 彼の説明にようやく納得できた。
「でも、迷惑よねぇ」
 とはいえども、ただ一つ理解できていないものがある。

 なぜこのタイミングなのか。
 アリアという文官を手に入れたけれど、まだまだその力は弱い。公爵家の力に頼らなくてもよくなるくらいまで待ってもらえなかったのか。

「今だから、じゃありませんかねぇ」
 今度はクレメンスがアリアの思考を読んで答えてきた。クリスティアン王子も確かにそうかもな、と頷いている。

 どういうこったい。

「アリア嬢の力というものはすでに侍女たちの間で広まっている。ということは、その近親者たちも知っている可能性もある。しかし、それが政治の世界では通用するのか、という部分は未知数。私たちはある程度、理解していますが、文官としての力を使わない状態でのアリア嬢の力、それを国王は示せ、と言っているのではないのでしょうか」

 クレメンスの意訳に納得することにした。面倒くさい王族の事情に巻き込まれたアリアは、だったらと一つ賭けをしてみることにした。

「ねぇ、殿下」
 少し猫なで声でクリスティアン王子にささやく。なんだと訝しげに問うクリスディアン王子。

「まだ、ベアトリーチェ・セレネ伯爵令嬢のことが好きですよね?」

 アリアの問いかけに顔を赤くする王子。どうやら図星だったようだ。
「でしたら、この『交渉』がうまくいったあと、ご褒美にそれをねだってみるのはどうかしら?」
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