転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね!? ~平凡に生きていくために、私は諦めないんだからっ!~

鶯埜 餡

文字の大きさ
47 / 69
十一歳

第三の目標

しおりを挟む
 そして、試験から数日後、一通の手紙が届いた。
 王家の紋章であるスミレの紋章が付いており、アリアに直接渡されたことから、明らかに試験の結果だと分かった。

「合格したのね」
 いつもの三人が立ち会いながら、開封したあと、最初にかけられた言葉がそれだった。
「はい」
 アリアはしっかりと頷いた。恒例なのかどうかはしらないが、ご丁寧に順位までついている。

 二位。

 多分、一位は彼だろう。鼻が高い貴族の子息たちの目の前で、首席をとってやると豪語していたくらいだし、なによりあのグループディスカッションの場で公爵令嬢であるアリアに物怖じなく意見を言っていたぐらいだ。試験官たちの印象も良いだろう。

 今は悔しくない。
 でも、これがこの先、どのように影響してくるか分からない。

 宰相という文官最高のポスト。

 これを手に入れるのにはどのようにすれば良いのだろうか。もちろん彼とは違って、金だってあるし、家家柄だって上なんだから、それを使ってのし上がることだってできる。だけども、それじゃあ面白くない。

「自分の力、か」
 今の彼女にとって足りないものはなんだろうか。しばらくの間はそれを探るべく、王宮に上がることになる。それを見つけだす時間は限られている。
「早くしなくちゃね」
 アリアの合格、二位についたことを喜ぶ三人を横目に、彼女は新たに決意した。

 転生して前世の記憶が蘇ったとき、悪役令嬢としての役割を捨てることを決めた決意。
 公爵令嬢として王宮侍女として王宮に入ったときにした、どんな運命に負けないという決意。

 そして、今。家族のためでもないし、世間のためでもない決意をアリアはする。

 絶対に私は実力だけであいつウィリアムに勝ってやる。
 女性文官というものがどごまで受け入れられるかわからないから未知数だけど、やる価値はある。そう自分に言い聞かせたかった。

 少し悔しそうな表情をつくり、ちょっと部屋にこもりますと言って、自室に戻ったアリアは一人きりになった。

 だれの協力も得られないかもしれない。それでも。

 アリアの中には最初に目指すべき目標があった。


 王太子の側近、という立場。


 すでにクリスティアン王太子の側にはクレメンスがついているが、彼の立場は『教育係』だ。そうではなく、王太子の参謀、それにつければ宰相という臣下が就ける最高位だって現実味をおびる。
 ここからは前世の記憶を整理するために記録した手帳はいらない。誰からも見られないよう引き出しの鍵をかけた。そして、自分でさえもなんかの拍子に取り出してしまわないように鍵はすべての荷物の奥に入れておいた。



 それから数日後。
 王宮の大広間にアリアは立っていた。今までは公爵令嬢としてここに来ていたが、今回は違う。

「以上、六名を本年の合格者とし、明日より各部署の配属とする」
 人事部の最高官、首席事務官がアリアを含む合格者の名前を読みあげる。やはり一位合格はウィリアム・ギガンティア、式典前には彼女を見てニヤリと笑ったていた。今は悔しかったが、なんらかの自分のミスで負けたんだから仕方ないことだと割りきり、精一杯の無表情で押し通した。



「スフォルツァ公爵令嬢、ようこそ秘書課へ」
 アリアが配属されたのは王族や公爵家への連絡を行うエリートたちの集団、ではなく、王族や公爵家へのパイプ役をする雑用集団パシリだった。

 まぁ、王族の側近になるというのには最短距離なのかもしれないけどね。

 最終的な目標は臣下における最高位の宰相。そして、当面の目標はクリスティアン王太子の側近になること。
 ナイス人事部、と配属先を言われたときには思ってしまったくらいだった。

「ええ、よろしくお願いします」
 アリアの前にいるのは二人の同僚、秘書課長ジョルジュ・オルニア伯爵とパウル・マッキントン男爵だった。二人ともアリアより家格は下だが、一切、問答無用で敬語を使っていないし、むしろ身分に関係なく話してもらえるのは助かる。
 ジョルジュに手を差し出されたアリアはそれをしっかりと握る。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

処理中です...