転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね!? ~平凡に生きていくために、私は諦めないんだからっ!~

鶯埜 餡

文字の大きさ
50 / 69
十一歳

心を隠して行動しても得はない

しおりを挟む
「お前がこんなにもはやく文官になるとは思わなかった」
 馬車の中、流れる景色をバックにクリスティアン王子はしみじみと呟いた。
「ええ、私もそう思います。もう少し侍女として長く王宮にいるつもりでしたから」
 アリアは苦笑いしてそう答えた。

「ですが、侍女長や王妃殿下の心労を考えると、私が侍女としているのには難しかったのでしょう」

 侍女として過ごした一年。自分は『やられたらなんたら』とやられることを楽しんでいた部分もあったが、周りからするとど迷惑だっただろう。
 前職は結局、自分の今後の行動の踏み台になったけれど、後悔はしていない。
「そうか」
 クリスティアン王子はアリアのその様子に納得したようだった。

「これからよろしくな」
 彼はにかっと笑ってアリアに手を差し出した。
「ええ、こちらこそ。まずはどうやってフェティダ公爵の心を開くのか、楽しみにしていますわ」
 彼女の挑発ともとれる言葉に、お前なぁとあきれる王子。

 今回の行啓は五日間。フェティダ領は王都から見て南西、普通の馬車で片道一日、単騎では休憩なしで数時間の場所であるが、クリスティアン王子とスフォルツァ公爵令嬢の二人がいるため、宿泊をそれぞれ一泊し、片道に一日半かける。また、領地への滞在は一泊となっている。



「なあ」
 王都とフェティダ領の中間地点、レヴィディア領で休憩を取ることになった。野外に天幕が作られ、特設の茶会会場で足をのばしている最中、クリスティアン王子に声をかけられた。馬車の中では最初に喋って以来、本に没頭していた彼だったので、何の用だと一瞬、顔をこわばらせた。

「お前の本音はどうなんだ」
 クリスティアン王子の質問はとても抽象的なものだった。
「はぁ?」
 彼の質問に素でそんな返しをしてしまったが、考えてみても理解できなかったアリアだった。

「お前は俺の行動を止めに入りながらも、セレネ伯爵令嬢の婚約の後押しをしたり、左遷され、リーゼベルツに来たと噂されたクロード王子パートナーになったりとか、わりと汚い役割を買ってでている。お前自身の利益、例えば権力を握ったりとか、王家に取り入ったりとか関係なしにな。それは誰かに押し付けられているのか、それとも誰かに脅迫されているのか。お前はその状態で満足しているのか? 俺だったらお前の立場なんてもうコリゴリだ」

 王子の具体的な質問にアリアは少しだけ黙った。

「そうですね。まず、こんな損な役割背負しょっているのって、押し付けられたり脅迫されたりしているのか、という部分についてですが、少なくとも自発的に行動した結果です。結果的にそう見えるだけで」

 彼女の言葉に黙って聞くクリスティアン王子。本当は巻き込まれているのってあなたの両親国王夫妻のせいです、と言いたかったが、自重しておいた。

「あと今のままでよいのか、とおっしゃいましたが、私はこの先、どうなるかは分かりませんが、昔に比べたら良いと思います」
 アリアの発言にそうだな、と深く頷くクリスティアン王子。
「昔のお前は酷かったな」
 彼は昔を懐かしむように言う。

「そういえば、前にも聞きましたが、昔、本当に殿下と会っていたんでしょうか」
 アリアは前々から疑問に思ったことを聞いた。夜会の時に聞いた話で、確かに会ったことがあるとは思うのだけれど、やはり気になる。

「ある」

 王子はアリアの髪を触った。アリアはその髪の触り方に少し既視感を覚えたが、いつどこで、というところまでは思い出せていなかった。

「最初は俺らが二歳のときだったな。そのときからお前はかなり傲慢だった。あの女が王宮に顔を見せはじめたときにお前と縁を切った。似たような女を二人も相手にしたくなかったからな」
 トラウマになったぞ。苦い顔をしたクリスティアン王子はアリアを見つめながらそう言う。彼女はここでも過去の行いによって、傷つけた人間がいるのだと、改めて後悔していた。

「そんな顔をするな」
 アリアはすごいショックを受けている顔をしていたのだろう。王子が頭を撫でた。
「俺もお前と再会したとき、いきなりお前の胸ぐらをつかんだことを反省してる。まだあのときは王族としての自覚が薄かった。でも、そんな自分の未熟さに気付く前に、お前が先輩ぶった行動をとったのが気に食わなかったんだろうな。すまなかった」
 そう言う王子の口調は優しかった。

 ちょっと、今ここでそれは反則でしょう。

 アリアは気のない女にそれやっちゃダメとか、本当に好きな女にそれを見せなさいよとか、いろいろ突っ込みたかったが、それをすると二度と王子と会話できなくなるのではないか、と思うと怖くて突き放すことが出来なかった。が、それは休憩時間の終わりを告げる騎士たちによって唐突に終わった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

処理中です...