転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね!? ~平凡に生きていくために、私は諦めないんだからっ!~

鶯埜 餡

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十一歳

道中

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 アリアは少し精神的なダメージによってめまいを感じたが、もう出発する時間だからと気をとりなおし、馬車に入った。休憩後の馬車の中では一人、アリアは悩んでいた。

 いやまあ、私もあそこで突き放すことができたならばよかったんだけれどねぇ。

 さすがに一国の王太子を突き飛ばすなんていう芸当なんてできやしない。悪役令嬢、いや悪女だったころの自分ならばできたんだろうが。考えても生産性のないことを堂々めぐりしていたが、この旅の間ずっと続くと思うと疲れてしまう。次に止まるのはフェティダ領に入る直前の宿場町。
 そこに着くまで秘書課の人についてでも考えようと思った。ほんと十数日しかあってない人たち。ジョルジュ・オルニア伯爵とパウル・マッキントン男爵、ともに悪い噂を聞いたことはない。だからといってすぐに信用できるかどうかでいえば信用できない。なにせ二家ともスフォルツァ家と(一方的な)対立関係にあるバルティア家の血縁者。こちらが歯牙にかけてないだけで、あちらがなんと思っているかわからない。

 早く王太子が国王についてほしいわね。

 現王に対してたいへん不敬であることを承知しつつもそう感じる。もっとも、今感じたことをディートリヒ王に直接言ったところで、お前ならばそう考えるだろうなとか言われそうだが。
 彼、クリスティアン王子が何事もなく王位に就いた場合、問題になるとすれば王妃のことだろうが、アリアには彼の妻になるつもりはさらさらないし、何より『ベアトリーチェ・セレネ』という切り札がある。彼女の意思も重要だけど、そこは目の前の本人になんとかしてもらうしかない。彼女さえ王妃になれば自分の役目あくやくれいじょうは終わる。あとは好き勝手に生きさせてもらおう。できれば、縁の下の力持ちとして、ね。



 宿場町に着いた時にはすでにあたりは暗くなっていた。先に護衛たちが荷物を運び入れている間に王子とアリアは先に食事をとることにした。

「美味いな。王宮にもこの食事を出してもらいたいくらいだ」
 この地方の特産である畜産物をふんだんに使われた食事は、王都の食事内容に劣らないものだった。
「ええ」
 アリアもそれに同意する。前世でもソーセージやチーズなどの食事は当たり前だったが、前と比べてさまざまなものが乏しいこの世界、いやアリア・スフォルツァという人生で畜産加工品を食べる機会は少なかった。だから、ソーセージに似た肉加工品やクリームチーズに似た乳加工品が並べられているこの環境テーブルは前世の記憶を持つ彼女にとってかなり嬉しいものだった。
 本来ならば毒見が必要だが、この宿の主人に悪いということであえて毒見を作らなかった。そのかわり主人も同席してもらい、主人にも同じ料理を味わってもらうということで一種の保障にすることにした。同席している主人や料理人は二人の言葉に恐縮しつつも、喜んでいるかのように感じられた。

「で、明日についてだが」
 食事が終わり、主人と料理人が席を外したのを見計らって、クリスティアン王子が切りだした。
「このままフェティダ領に入り、そのままフェティダ公爵の屋敷に行く。よほど何事もなければ二回の休憩を入れても、夕方までには着くだろう」
「そうだわね」
 アリアは予定通りねと頷く。前世でもそうだが、この旅行でも早いときは前倒しせず定刻になるまで待つ、反対に遅いときには休憩時間を減らす、出発を早めるなどをすると事前に言われていた。
「そのまま公爵との懇談に臨む。そのときお前にも同席してほしい」
 彼のその願いにアリアはなぜかと思ったが、その答えはすぐに彼から告げられた。

「彼は確かお前と同じ年にデビュタントしていたから、面識はあるだろ?」
 が、その理由にはアリアには否定せざろうえなかった。
「残念なことに、私は彼と全然喋ったことがないから、それにはお応えできないわ」
 彼女が首を少し振りながらそう言うと、クリスティアン王子はまさかと驚く。
「あら、そんなに驚くようなことではないと思うけど。だって、そもそもスフォルツァ家が古参の家柄に対して、フェティダ家は併合する際に土地の住民をなだめるために公爵家となった、いわば新興公爵家のひとつ。それにあの件に対して、私はある意味で成功しているけど、彼は失敗している」
 クリスティアン王子はなるほどなとすぐに納得してくれた。彼にも分かっているだろう、あのときの食事会のことを。彼自身は参加してなかったものの、ある程度は聞いているはずだ。
「だから、私と彼が同じ席についた場合、王家からのプレッシャー、王家からのとして認識してしまう可能性があるわね」
 もちろん、それでいいならば喜んで席につくわよ?
 アリアはすっと目を細めてそう忠告する。すると、なにかに思い当たったようで、即答せずに考えるクリスティアン王子。
「そうだな。こちらとしては友好関係を結びたいのが第一義だ。お前という存在がどのように捉えられるか分からない以上、同席させるというのはあまり得策ではないな」
 彼は自分の意思を折り曲げることにしたようだった。それを見たアリアは残念そうに眉を下げながら、私も殿下の力になりたかったのだけれどと呟く。
「ええ、そうしてもらえるといいわね。もちろん、彼が望めばまた別の話だけれど」
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