転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね!? ~平凡に生きていくために、私は諦めないんだからっ!~

鶯埜 餡

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十一歳

頭を回転させる理由

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 鹿狩りの王宮におけるおもな役割はシーズンオフ前の交流イベントになる。『ラブデ』では出てこなかったが、その存在はたしか、クリスティアン王子かウィリアムあたりの口から出ていたはず。
「だからといってねぇ」
 アリア・・・が実際に出たことはない。去年もおととしも、それ以前もこの鹿狩りには縁がなかった。だから、正直文字通り連絡役にしかなれないだろう。そんな心配をしていたアリアだったが、その夕方には解決することができた。

「どういうこと!?」
「だーかーらー、とりあえず前回より前に他国の王族が来たときの手引書マニュアルだ。これがあればあんたが悩んでいることは解決するんじゃねぇのか?」

 秘書室に大量の資料を持ってきたのは式典課に配属されたウィリアムだった。どうやら彼はアリアとベアトリーチェがこの鹿狩りの担当になったことを聞き、いろいろ持ってきてくれたらしい。
「それはそうだけど、あなたにメリットはあるの?」
「メリットがなきゃ手伝っちゃいけねぇのかよ。あんたが困ってるからただ助けた。それだけだ」
 アリアではなく『ラブデ』のヒロインであるベアトリーチェを直接手伝うことならわかる。しかし、彼は「あんた」と言った。ということは、ヒロインであるベアトリーチェのためという可能性は薄い。
 そこをぼかして指摘すると、そう断言された。
「……――そうだったの。それはありがとう」
「ふぅん。あんたもちゃんと礼が言えるんだな」
「失礼な」
 滅茶苦茶失礼なことを言ってきたウィリアムだが、まあ半分それは正しいのかもしれない。今までは公爵、それも筆頭公爵だからということで誰かが手伝ってくれるのを期待していたかもしれないと思ってしまった。
「なにか私にできることがあるのならば手伝うから、これと引き換えになるようなこと考えておいて」
 さすがにもらいっぱなしというのは性に合わない。そうアリアが言うと、ああわかった、なにか考えておくと言って、秘書室から足早に去っていった。

 今日は忙しいようだ。ほかの秘書課の面々が帰ってきてない。たしか自分が帰ってくるもの以外で出張の予定も入っていなかったはずだから、鹿狩り関連やシーズンオフ前の夜会で忙しいのだろう。
「なるほどねぇ」
 そのあと特別誰かに呼ばれることもなかったので、ひたすら資料を読みこんでいた。ほとんどの場合にはずいぶん前からの申し出があったようだが、中には今回と同じように急に決まった事例もあったようだ。
 それを参考に何枚かの紙にまとめ、明日ベアトリーチェと会ったときに彼女にも考えを出してもらえるように資料を一緒に挟みこむ。その作業をしていると、ことの重大さのわりに単純作業だからか、眠たくなって、そのまま机の上に突っ伏してしまった。

「…………――――不用心だな」
 誰かがアリアのわきに立ったが、ぐっすりと寝ているせいで気づかないアリア。その人物はアリアの書いたメモをすっと抜きとり盗みみる。
「やっぱり試験次席の頭はしっかりとしてるもんだ」
 その人物はため息とともにメモを戻す。
「……まあ、厄介なバックがついている以上、今の状態ではお前を殺すことはできない」
 秘書室を出るときにその人物はそう呟いたが、聞きとがめるものはいなかった。

 翌日の朝、ベアトリーチェと安全なところで合流したアリアは昨日書いたものを見せる。
「すごい」
 彼女は友人のきれいにまとめられたものを見て、感動していたが、これと同じことをあなたもするのよと言われ、肩を落とした。
「なんで私が?」
「あなたが選ばれたからよ」
「どういうこと?」
 どうやら自分が選ばれた理由に気づいていないようだった。そうねと前置きしてから無難な解答で説明する。王太子が絡んでいるかもしれないが、彼のことは黙っているべきだ。
「実際に聞いたわけではないからあくまでもこれは憶測だけど、多分、この鹿狩りと夜会で王太子殿下の婚約者候補を選びだすつもり。なぜなら殿下のまわりで家柄よし頭よしを兼ね揃えている女性を探さなきゃいけない。なぜなら、私はそもそも婚約者候補からすでに外れているから。かといって、私以上の功績をたてられるうえ、王家を傀儡にしない女性は少ない。おそらく王妃殿下はあなた以外にも何人か推薦したでしょうけれど、その中で一番わかりやすいのは顔の柔らかさと普段の性格。あなたなら『私以上の好印象を残せる』と踏んだようね」
「でも、それがなんでこのイベントのつなぎ役に?」
「このイベントは貴族の交流のために行われる。ということは、その差配の仕方によっては『この人ならば王妃になっても安心して王宮の女主人としてみていられる』と思われるでしょ? もちろん、あなたが王妃になるのが嫌であっても、王家に選ばれたのならば仕方ないでしょ?」
 だから、あなたにもしっかりと考えてもらわないといけないのよ。
 そうアリアは力説すると、わかったわと深く頷いて真剣に提案を絞りだした。どうやら昨日のあの叱咤激励で頭の回転を良くさせたようだ。
 結局、夕方まで二人で一日中提案を出しあい、まとめあげた。
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