毒魔法使いの異世界探訪!

しぼりたて柑橘類

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一章.魔法使いと人工キメラ

三話目-大きな一歩と新たな家族

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 迎えた翌朝。


 朝日が昇り、その光で目を覚ます。
 全身が痛い。

 その痛みで昨日のことが夢でないことを再確認した。

 台所の床は寝るのには全くもって向かない。よく覚えておこう。
 

くしゃみをひとつして、ベットで寝ている客人に声をかける。                 

 「朝ですよー。 起きてください」
 「……あさ……ごはん……」
 
 この人本当は、起きてるんじゃないだろうか?
  
 
「朝ごはん作るから起きてくださいね」
  「……寝言だから気にしないで欲しいけど……温かいのが欲しいなぁ……ぐーぐー……コーンスープ?とか……」
 
 完全に覚醒している。間違いない。


 いくら田舎とは言えども、インスタントの味噌汁やスープのもとのようなものががないわけではない。たまーに売りに来る業者が町から来るのだ。
 
 便利さからついつい買ってしまったものの独り暮らしには多過ぎる量だった。

 ……ん?
 何であいつこれを知ってるんだ?漁ったのか? 
 
 まあ聞いたところで知らない振りをするだろう。

 まあ良いか。お湯を沸かして、パンを焼こう。
セシリアさんをとっとと起こすためにも。

 そうこうしているうちにセシリアが、わくわくしながら食卓の前でフォークとスプーンを握って朝食を待っていた。
 素晴らしい健康優良児の模範である……。
 
こいつ本当に何歳なんだろう……。 


 体型からは自分と同じぐらいの年なのだろうと察することが出来るが、やる事成す事すべて幼児のそれである。
 皿を目の前に置くと、いきなり食べ始めようとした。
 
「あ、 ちょっと待った!」
「どうしたの? 早く食べさせてよお腹すいたんだけど!」

 
 そういえば昨日は色々とありすぎて忘れていたっけ。
 
 仮に文化圏が違っていても、「エルフ村ではエルフに、ドワーフ村ではドワーフになれ」。
 押し付けるようで申し訳ないが、やってもらおう。


「食前の挨拶がまだですよ」
「え? なにそれ?」
「食べる前の“いただきます”。 これは忘れちゃいけませんよ」
「ごめんなさい。 初めて知ったわ……。 教えて!イーヴォ!」
  
 驚いた。昨日の事で何かありそうだとは思っていたが、 セシリアには何か他にも有ったようである。 
  
まるっきり別の国といえど、ここまで文化が違うなんてことがあるか?

 何はともあれ、教える必要が増した。
 

「手のひらを胸の前で合わせて、“いただきます”っていうんです」
  「食べ終わったときは同じように“ごちそうさまでした”って言ってください 」
 
 「これってこの村の特有のものなの?」

 「多分、他のところでも同じようなものはあると思いますよ」

「あら、そうなのね」

 「“いただきます”と“ごちそうさまでした”っていうのは食べ物に対する感謝とか、命を貰いましたありがとうございます……  みたいな意味です」
 
 「へぇ!そうなんだ!」

 そしてセシリアは元気よく「いただきます!」
と言い、昨日の夕食と同じような勢いで朝食をがっつき、はち切れんばかりの大声で「ごちそうさまでした!」と、言うのだった……。


 その間わずか五分とちょっと。

 僕は自分の取り分を昨日のように横取りされないよう、急いで食べた。


 僕も朝食を摂り、いよいよ壮大な旅路の幕開けである。
 昨日のうちに、テントやマッチ、通帳等はまとめておいたので僕の準備はあまり時間がかからなかったが……問題はセシリアである。

 彼女は相当寝相が悪いらしく、ここまで触れていなかったが真っ黒な長髪に凄まじい寝癖がついていた。本当にこればっかりは筆舌し難いものがある。
 うねり、逆立ち、一種の作品のようだった。

 また、セシリアが着ていたのはボロボロの色褪せた服だったため、これでは旅にも支障が出るだろうと思った僕は、

「風呂に入って来てください、着替えは僕の母の物を着ても良いですよ。セシリアさんの分も着替えを用意しないといけませんからね」
 
と言うと、
 
「ごめん。もう、いくつか目星つけてた」
 
どこまでこの家に適応しているのだろう。そして素晴らしい索的能力である……。
 
今後、何が起こってもプラスに考えないとやっていけなさそうだ。
 するとセシリアから、
 
「ねぇ……年も離れてないんだし改まらなくても良いわよ。 堅っ苦しいわよあんた……」
 「良い? もう改まるのはなしね!はい 練習、練習!」

 考えもしなかったが、まあ、このままでは生活にも差し支えるだろう。
 僕は微笑みながら
 
「これからよろしく……セシリア!」

 と言った。

 「意外にもぐいぐい来るわね……」
 「やれといったのはそっちでしょう?」
 「まあそうね。 よろしく、イーヴォ!」

 そう言い残し、風呂場に向かっていった。

 
 暇な時間で僕は、村の掲示板を見に外へ出た。
 少しだけでも情報収集は必要だろう。

 掲示板には『スライムゼリー半額! ゴブル商店』『貴方もこれで立派な魔法使い! 通信教育はライブラへ!』などと広告が貼られている。

 そんな中で、「今年も年にゾノーの黒龍祭を開催! 対象店舗の一部商品を買って福引をひこう!」
 と、次に向かう町の情報も書いてあった。

 さすがに詳しい街の様子は書かれていないようだが……。


 
「さあ!今度こそ出発よ!」
 と、家の方から元気な声が聞こえてきた。
 
 おそらくもうお風呂から上がったのだろう。
 
 家へ戻ると、少し着飾ったセシリアがリュックを引っ提げて待っていた。


「どこに行ってたのよ! もう行くわよ!」

「うん。 ……そうだね」

 ドアに鍵をかける。
 しばらくの別れだ。
 いや、もう戻ってこれるかわからんが……我が家よ……。
 
 僕たちは、村から最寄りの町“ゾーノ”へと向かうことにした。 

「ところでどうやって行くの?」

「ゾノーまでは平原が広がってるだけだから徒歩で行ける……よ」

  「あんたもその口調いい加減慣れないの?」

  「さすがに無理で……だね」

 「あ! 今ですって言った! いけないんだ!」
 
 「言ってない……よ」
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