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1章 プロローグ

3話 女神様との出会い

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 これは夢だろうか…何かとても暖かく、気持ちがいい。

 あれからいったい、どれだけ時間がたったのだろうか…

 四島さんは、ちゃんと生まれ変われたかな…

 覚醒しかけた意識が、再び眠りにつく。

 「もしも~し、起きて下さ~い」

 誰だろうか…? 
 誰かが、起こそうとしている気がするが、とても寝心地が良く、起きる気にならない。

 「起きろって、いってんだろうがぁー!」

 ゲシッ!!

 「グハッ!!」

 なんだ!? いきなり腹部に激痛が走り、飛び起きる。

 ん!?
 痛みで飛び起きた俺の目の前には、全身黒ずくめのゴスロリ幼女と、金色のゴスロリ服を着ている少女が立っている。
 姉妹だろうか? 
 どうやら彼女達のどちらかに蹴られて、起こされたらしいことはわかった。

 しかし、ここは何処だ? 
 辺りを見わたすが、全く身に覚えの無い場所だった。
 しかも真っ白な広い空間に、純白の花だろうか? 
 辺り一面に咲き誇っている。

 そして、俺から少し離れて、四島さんが、とても安らいだ笑顔で、寝息をたてて寝ている。

 「やっと、起きましたか、全く何時まで寝てるんですか!?」

 黒ゴスロリ幼女が話しかけてくるが、状況がまったく理解できず、どう答えたら良いのか分からない。

「アライマル、少し落ち着きなさい。まだ転生したばかりで、思考が追い付いていないのよ、仕方ないわ」

 「まあそうですね、とりあえず、もう片方も、さっさと起こしますか」

 そういうと、アライマルと呼ばれたゴスロリ幼女は、四島さんに近づき、脇や脇腹をくすぐりだす。

 「こちょこちょこちょこちょ、ん?ここかあ、ここがぁええのんかぁ~」

 幼女にしか見えないが、限りなく親父臭い責め方をする。
 だが効果はあったようだ。

 「あはははは、えっ!なに?。きゃっ、やめ、やめて、くすぐったいから。アハハハハ」

 四島さんのあんな大きく笑う声、初めて聞いたなあとか思いながら、止めるべきかと考えるが。どこかほのぼのとした感じに、ついつい見いってしまっていたら、四島さんが切れた。

 「やめてって言ってるでしょーー!!」

 「グハッ!」

 四島さんのストレートパンチが、幼女の左頬にクリーンヒットし、幼女が吹き飛ぶ。
 その間に四島さんは、息を整え起き上がる。
 俺は四島さんに近づき大丈夫?
 と、聞いてみたが、平気そうだった。

 「本橋先輩、ここってどこなんですか?」

 「いやあ、俺も今起きたばかりでさ、結構まだ混乱してて、どうなっているのか、全然わからないんだ」

 「私達って、学校の屋上にいましたよね?そして確か…」

 四島さんがうつむき暗い顔をする。

 「無理に言わなくても良いよ、多分それであってると思う」

 そう四島さんと話ていると、金色のゴスロリ服を着た少女が近寄ってくる。

 「まずは、初めてましてかしら~、私はレミリア。そしてそこで倒れているのが、アライマルよ。ほら、貴方もいつまで倒れているの、さっさと起きなさい」

 レミリアと名乗った少女は、そう言ってアライマルという幼女を蹴り飛ばす。

 「グハッ!」(本日2回目)

 「何です!何なのです!? この暴力女達は? 幼女虐待です。いえ、女神虐待反対です!」

 なんか女神虐待とか言ってるが、この子、頭大丈夫だろうか?

 そんなことを思いながらも、俺達もレミリアさん達に名前を名乗る。

 「初めてまして、俺は本橋幸貴」

 「私は四島梨花です」

 そうして名乗った所で、ここが何処なのか聞いてみることにした。

 「ここってどこなんですか? 分かるようなら教えて欲しいんですが。俺達学校の屋上で色々あって、そこからの、記憶が全然ないもので」

 適当に誤魔化しながら聞く、まさか自殺したとか言えないよな。

 「貴方達は死んだのよ、そしてアライマルに拾われて、私の世界に転生したの。それでここは、私が管理している世界への入り口よ」

 レミリアさんとか言った少女も、危ない子だったようだ…
 俺達はお互いに顔を見合わせながらそう思った。

 「まあ、信じられないのも、無理はないわ。私が以前に転生させた子達も、同じような反応だったし。
 でも、自分達が死んだことくらいは理解出来ないかしら?」

 確かに、俺達は屋上から飛び降りて死んだと思う。
 仮に助かったとしても、病院のベットの上じゃないかと思うし。
 何より、今現在怪我一つない状態だ。
 屋上から飛び降りて無傷は、流石に無いだろう。

 「まさかここは天国? なわけないよなぁ…」

 「はぁ~、だから言ったでしょ。ここは私が管理している世界の入り口だって、貴方結構物分かり悪いわね」

 「先輩、私もまだ半信半疑ですけど、とりあえず信じて見ませんか? 私達が死んだのは、本当だと思いますし。仮に助かったとしても、病院のベットの上だと思うんですよ。こんな場所で怪我一つなく動けるとはとても思えませんし」 

 四島さんも同じようなことを考えてたか。

 「梨花の方が物分かりが良いわね、話が早くて助かるわ」

 しかし、本当に生き返ったとして、場所もレミリアさんの管理する世界の入り口? だったか。
 だとしたならばだ。
 このレミリアさんていう人と、俺達を生き返らせたって言う、アライマルとかいう幼女は何者なんだ? 
 パット見は、ただの可愛い少女達なのだが…

 「君達はいったい何者なんだ?」

 「あら、言うのを忘れたかしら? 私達は女神なのよ。アライマルはまだ見習いだけどね。どう? 少しは落ち着いて、現実を受け入れられるように、なったかしら?」

 ハハハ、駄目だこれは……ただでさえ、生き返ったとか言うだけでも、理解が追い付かないのに、更に女神様降臨ときた……

 「その様子じゃ駄目みたいね~梨花はどうかしら?」

 「先輩、とりあえず、話だけでも聞きましょう。本当か嘘かは後でも判断出来ますし。それに死んで生き返ったのが本当なら、きっと私達の常識では考えられないと想いますから」

 そうだな、四島さんの言うとおりかもしれない。
 何にしても生き返ったとしたら、この先どうやっていけば良いのかも、考えないといけないし。

 そうだ、そもそも、何故彼女達は、俺達を生き返らせたのか、聞くならまずそこからだよな。

 「四島さんの言うとおりだな。確かに俺達の常識では、考えられないと思うし、話を進めようか。それで聞きたいことがあるんだけど、何故、俺達を生き返らせたんだ?」

 「まあ誰でも良かったわけだけど。強いて言えば魂の質かしら、他の魂よりも穢れが少なくて質が良かったのよ。
 質が高い程、違う世界に転生させた時に、多くの能力を与えられる者なの。
 それでね、私の管理している世界が、ちょっと不味いことになっててね。貴方達に手伝ってほしいのだけれど」

 なるほど。
 何かゲームのような話しだが、女神っていうくらいだし。まさか俺達に、勇者になって、魔王を倒せとか言う気だろうか? まさかな……

 「まさか俺達に勇者になって、魔王を倒せとか言うじゃないだろうな?」

 まさかとは思ったが、一応聞いてみることにした。

 「おしい!その逆よ逆。まあ、最終的にだけど、出来れば貴方達には、魔王軍を率いて、勇者を倒してほしいのよ」

 はぁ~~!?
 俺達に勇者を倒せだと?…アライマルの方を見るが、ウンウンとうなずいている所を見ると、どうやら本気らしい。

 そんなこと出来るかーーと叫びたくなるが、少し冷静に考えよう…もう既に理解を越えた現実の後に、そんなことを言われたからか、少しは落ち着いて考えられるようになった。

 ゲームとかで考えたら、勇者が魔王を倒すより、魔王が勇者を倒す方が簡単ではないか? そんな気がする…が、これはゲームではないわけで。
 現実だとするならば、どちらも難易度はたいして変わらないのでは?

 第一何の能力もない俺達がどうやって? 
 まずそこだよな。
 まさか勇者がそんなに弱いわけがないし。
 いやまてよ、さっきレミリアさんは、質が良いほど能力を与えられるとか言っていたな、ならば勝算があるのか?

 俺は一人唸りながら、冷静に考える、四島さんは結論が出たのか、ずっとこっちを見ているようだ。

 「いくつか聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」

 「えぇ、どうぞ」

 「まず一つ目は、俺達の能力についてだ。さっき魂の質が良いほど、能力を与えられるとか言っていたよな。詰まりそれを加味した上で君達は、俺達が勇者を倒せると、思っているわけだ?」

 「えぇ、まあそうね。ただいきなりは無理でしょうけど? 最低でも1年はレベルを上げたり、魔法や技の技術をあげてかないと、厳しいとは思うは。それに仲間も増やさなきゃならないかしら? 二人きりで挑むのはどれだけ経験を積んでも無謀ね」

 レベルや魔法もあるのか、まるっきりゲームだな。

 「二つ目。これは単純な事だけど、仮に俺達が勇者を倒したら、困る人達がいるのでは?」

「それはいるでしょうね、勇者がいなくなればモンスターが増えるわけだし。まあそれが私の目的だけど?」

 え? 
 今、何か凄いことをサラっと言わなかったか?
 モンスターを増やすのが目的だと?
 レミリアさんて自分で女神とか言って無たような?
 女神がモンスターを増やしてどうすんだーーーて、突っ込んだら、きっと負け何だろうか? 
 そんな気がする……が、言いたいという好奇心は、押さえられかったようだ…

 「それじゃ…三つ目。レミリアさんて、女神様だと思ったんだけど、女神様がモンスターを増やして、どうすんの?」

 聞いた途端に、アライマルが大笑いし、レミリアさんがアライマルを蹴り飛ばした。
 「グハッ!」(本日3回目)

 やはり聞いたら負けだったか…しかし、聞いてしまったものは仕方ない。レミリアさんもため息をつきながら答える。

 「はぁ~確かに私はこれでも、光の女神と言われているは。貴方達人間の常識が間違ってるだけで、別に女神達からしたら、おかしなことでもないのよ?」

 やっぱりそうなのか、まあ俺の知識なんて他人の受け売りだしな。
 それで知った気で当たり前のように聞いて、実は違うのよってことじゃ、ため息も吐かれるわな。

 「この世界にはね、貴方達が知らないだけで、いくつもの世界があるのよ。その世界は大体一人の女神か魔神が管理しているわ。貴方達の世界のように、管理者のいない共有世界と言うのもあるけれど。
 そして女神が管理してる世界でも、魔王やモンスターは女神が産み出すの。
 まあ雑魚モンスターに限っては、産み出すと言うよりは、一定時間で湧くように設定するだけなんだけど」

 なるほど、おかしなことでないのはわかったが。

 「それでも、俺達は人間だし、世界が違うとはいえ、同じ人間が困るようなことはしたくないんですが?」

 俺達の感覚では当たり前のように思うが、これもズレているのか、聞かなくてはな。

 「えぇ、分かっているは。だから無理に勇者を倒せとは言わないは。それにさっきも言ったけど、すぐには無理だろうし。最終的に、そうあれば良いとは思うけどね。
 貴方達に、一番やって欲しいのは、時間稼ぎなのよ。
 今の勇者達のペースで、狩られていけば。およそ5年後くらいには、悪魔やモンスター達が枯れて、ほぼ世界中が平和になるわ。そうなる前に、私がとびきりの魂を見つけて、魔王を復活させるわ。
 ただ、5年で必ず見つかる保証はないし。5年後に魔王だけ復活しても、手下が全滅してたら巻き返しも難しいでしょ? 
 だから勇者達の行動を少しでも妨害して、それまでの時間稼ぎをやって欲しいのよ。私達が能力を与えれば、それくらいは余裕で出来ると思うし。それくらいなら、貴方達が気にする程、人々も困らないわ。
 最も私が貴方達の魂を手に入れてたら、間違いなく、魔王に転生させて、無事解決だったんだけどね。
 タッチの差でアライマルに、先に回収されちゃって。人間で転生させて、連れていくしかなかったのよ、この子は見習いだから、人間にしか転生させられないの」 

 何故かアライマルが笑顔で、よく分からない踊りを踊っている。
 かなり嬉しそうだし、触れない方がよさそうだな。

 しかし、一歩間違えてたら魔王で転生してたとか、嫌なことを聞いたが。ということは、アライマルには感謝しないといけないのか。

 「では、最後ですが、四つ目。もし手伝うのを断ったら、俺達はどうなりますか?」

 「何ですとおぉぉぉ!」

 いきなり、アライマルが叫び出した、そしてまた蹴られる。

 「アライマル、ちょっとうるさい!」

 「グハッ!」(本日四回目)

 レミリアさんこえぇーー~

 「まあ、簡単な話よ。別に脅すつもりは無いけれど。手伝わないと言うなら、もう一度ここで死んで、アライマルのエサになるだけよ。私達も役に立たない者にかまっている暇はないし、目的があって転生させただけで、善意で転生させたわけじゃないからね?」

 なるほど。
 ある選択肢は、手伝うか、死か。
 断って新しい世界で、気ままに暮らすというのは、むしがよすぎか。

 「話は大体わかりました。レミリアさん達を手伝うか、ここで死ぬか、少し二人で話をさせてもらってもいいですか?」

 選択肢があるようには思えないが、それでも勝手に一人では決められない、四島さんに聞かなくてわ。

 「えぇ、どうぞ~」

 四島さんの手を引き、レミリアさん達から少し離れて話す。

 「手伝う以外の選択肢は無いようには思うけど、四島さんは、どう思う?」

 「そうですね、それしか無いと思います」

 「ただ一つ気がかりなのが、話を聞く限り。勇者達の行動を妨害すれば良いってことだけど、その妨害をする過程の上で、もしかしたら、悪事を働かなければ、行けないかもしれない、ということかな?」

 「やり方次第だとは思いますが、誰かを使って、自分達は手を汚さないとか? まあ勇者達に私達のことがばれたら、直接狙われそうですし、間接的な妨害が、多くなるんじゃないかとは思いましたが。
 いずれにしても、手を汚す覚悟は必要だと思いますね」

 1年くらいは準備期間見たいな猶予はくれるらしい。
 ことも言っていたが、何時かは手を汚す覚悟はしないといけないだろうな。
 四島さんは平気なのか?

 「四島さんは平気なの、そういうこと?」

 「本橋先輩、私の考えを素直に言ってもいいですか?」

 どうしたんだろうか、あらたまって何か他にあるのだろうか?

 「あぁ、いいけど?」

 「私、正直、どうでもいいんですよ、そんな些細なこと」

 「えっ?」

 思わず声に出して驚いてしまった。
 どうでもいい? 
 悪事に加担することが? 
 いったいどうしたんだ、四島さんわ……

 「だって、そうじゃないですか? 別の世界にいって、本橋先輩と二人で、新しい人生をやり直せるんですよ? こんなに嬉しい事がありますか?
 それに比べたら、どこの誰かもわからない、勇者の一人や二人、喜んで亡きものにでもしますよ」

 本気で言っているのか四島さんは、確かにそれは俺もかなり嬉しいが。
 まあでも確かにそう言う考え方もあるか。
 先のことばかり考えていても仕方ないしな。
 まず今をどうするか。
 いや、どうしたいかか。
 先のことは、とりあえず置いておくか。

 「四島さんの言うとおりだな、ありがとう。お陰で決心がついたいよ。しかし、ちょっと嬉しくも、恥ずかしいと言うのはこういうことなのかな?」

 がらにもなく照れる。いや本当に、四島さん見たいな可愛い女性にそんな事言われたら、彼女いない歴=年齢の俺なら、普通に照れるだろ?

 「それじゃ、決まりということで、いきましょ先輩!」

 そういうと、四島さんは俺の手を引っ張り、レミリアさん達の所へ戻る。
 四島さんて、実は結構積極的な人なのかな。
 外見だけで勝手に性格を判断していたが、これは間違いだと思った。
 四島さん絶対肉食系だ……

 「その様子だと、結論は出たのかしら?」

 「えぇ、レミリアさん達を手伝うことにするよ」

 そういうとアライマルが、ガッツポーズを決め、また踊りだす。
 その踊り好きなんだなあ、喜びの舞とかだろうか?

 「そう、それは良かったわ。それじゃ、説明も長くなるし、お茶をしながら話ましょうか」

 レミリアさんが手を前にだし、一瞬光ったかと思ったら、目の前に椅子とテーブルが現れた。 おぉ~今のが魔法てやつか?

 「さぁ、どうぞ、座って」

 レミリアさんに促され、席に座る。アライマルは、まだ踊ってる…放置でいいか。

 「それじゃ、これから行く世界の説明や、貴方達が設定するスキルの説明をするわね」

  「よろしくお願いします」

こうして俺達は、新たな世界へ旅立つ決意をする。そして俺は、今度こそ真っ当な人世を歩みたいなと、僅かばかりの期待を胸に、女神様の話を聞くことにした。


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