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忘れさりたい事件(中編)
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「先ほどの話しの中で一番身に危険が及ぶのは階段から突き落とす、ですね。これはいつ・どこで・どういう状況だったか説明していただけますか?」
それに答えたのはデイモンだった。
「1ヶ月ほど前、私が公務のため登校が遅れた日が有った。学園に着いたのは2限の授業中だったため人影は無く、私は授業が終わるまでサロンで待機しようと階段に足をかけたところで上から悲鳴が聞こえ、アイリーンが落ちてきたのを受け止めたのだ。 そして、ヒラリーに押されたと証言をしたのだ!」
「変ね、デイモンに公務は任せてないはずだけど……」と呟いた王妃の言葉は会場が静かだったので全体に響いた。
「それで?」
「それで、とは何だ。」
「ヒラリー嬢がやったと断言する証拠はどこに?」
「被害者本人が証言しているのだ! これ以上ない証拠だろうが!」
「………はぁ、やれやれだな」
ウォーレンが首を横に振りながら呟くと、会場中が歓声に包まれた。
「な!? なんだ!?」
分かっていないのは壇上の二人のみ。
ウォーレンがトリックを暴いた時、それが期待外れのつまらないレベルだった時に必ず呟く決め台詞のようなものだ。
それをまさか生で聴けるとは!
「陛下。自分から出てきておきながら何ですが、この任おりてもよろしいでしょうか……」
左右のこめかみを指で揉みながらウォーレンは国王に話しかける。
「そんな! ここからが良いところではありませんか!」
その言葉に反応したのは王妃だ。
「妃殿下、ならびにこの会場にいる皆さんももう真相が分かってますよね? もはや私は口にするのも恥ずかしいレベルなので、どなたかにお譲りしたく……」
「なりません! 階段から突き落とされたというのがアイリーン嬢のチャチな自作自演だとしてもそこはウォーレン様自らが暴いてくださらないと!」
「王妃様!? そんな! 酷いです!」
アイリーンが手で顔を覆う。もはや会場中の全員が泣き真似だと確信している。
「すでに妃殿下が真相を叫ばれてた気もしますが……仕方ないのでさっさと終わらせましょう。ダニング子爵令嬢、なぜ授業中にそのような場所へ?」
ウォーレンは壇上を端から端まで歩きながら語りかける。会場に居た者たちは演劇を観ているかのように錯覚した。犯人役が小物すぎるが、ウォーレンさえ居れば華やかさは十分だ。
「それは、殿下の寵愛を受ける身としてお迎えするのは当たり前ではありませんか」
「婚約者でもないあなたがわざわざ授業を抜け出してまで出迎える義務は無いはずですが」
「おい! 私とアイリーンは愛し合っているのだ、一刻も早く会いたいと思うのは当然ではないか!」
「時間が勿体ないのでそれが不貞の告白だという事は置いておきましょう。ポイントは【犯行が授業中だった】という事です」
会場の全員がうなずいている。
「ダニング子爵令嬢、あなたは授業中なら目撃者が居ないから捏造しても大丈夫だ、と思ったのですね?」
「そ、そんな酷い言いがかりです!」
「そうだぞ! 目撃者が居ない以上アイリーンの証言こそが明確な証拠ではないか!」
「残念ですが……、目撃者は大勢居るのですよ。数百人ものね」
「はぁ!? さっき授業中で人っ子ひとり居ないと話しただろうが!」
「まだわかりませんか? 授業中であるなら、ヒラリー嬢が授業を受けている事の目撃者が居るんですよ、クラスメイト30人と教師という目撃者が」
「そ……、そんなの、買収されているのだろう!」
「はぁ、また買収ですか? 先程からそればかり、もうちょっと気が利いた事を言ってください」
「それ以外考えられないだろうが!」
「いえ? 同じクラスにはアンカーソン公爵家の敵対派閥の者もいますし、そんな者は買収に応じるより醜聞として騒ぐ方を取るでしょうね」
「だ、だが、体調不良などで休んだり保健室に行くなどとすれば教室から出られるハズだ!」
「そこですよ。証人が数百人居ると言ったのは」
「は?」
「式の途中で優秀な生徒への表彰がありましたよね? 殿下は関係ないから寝てましたか? その中でヒラリー嬢が皆勤賞を受けていましたね」
「皆勤……賞? どういう事だ?」
「休みも遅刻も早退も無く、全ての授業を最初から最後まで全て受けたという証明ですよ。途中で抜け出してたら貰えません」
「そ、それこそ教師を買……、いや、何でもない」
さすがにもう買収されたのだろうとは言えない。反論も思い浮かばずウォーレンを睨み付ける事しかできなかった。
「納得いただけましたか? いただけて無くてもそれが真実なので仕方ないですね。では次は、頭からお茶をかけられた、ですね」
「そうよ! 昼食時の食堂なんだから、皆勤賞とか関係ないわ!」
「なるほど」
眩い笑顔で身体ごと観客席に向き、両手を大きく広げる。女性たちは「この胸にとびこんでおいで」というセリフを脳内再生して倒れそうだった。これには横から見ることになった王妃が悔しがった。
「卒業生ならびに在校生諸君!
ヒラリー嬢がダニング子爵令嬢の頭にお茶をかけたのを一度でも見たことがあったら挙手してほしい。」
そこへおずおずと一人の女生徒が手を上げた。
「ほら! いるじゃない!」 アイリーンが得意気に声を上げる。
「では、壇上にどうぞ」
「それでは、あなたの見たことを話してください」
「それが……、私は見たのではありません。私が……、私がアイリーン嬢にお茶をかけたのです!」
ザワつく会場。それもそうだろう。自ら罪を告白したのだから。
「ほう、自ら罪を告白しますか。それでは、詳細をお話しいただけますか?」
氷のような眼差しに射すくめられてボーッとしていた令嬢が我に返って話し始める。
「私がお茶をかけたのは3ヶ月ほど前のことです。私の婚約者がダニング子爵令嬢に婚約を申し込むからと、私との婚約を破棄してきたのです。『婚約者の居る男性に近づいて奪おうとするだなんてはしたない』とダニング子爵令嬢の元に行き問い詰めました。そこで酷い言葉を……」
悔しさからか涙声になっているが、淑女教育の賜物でこらえている。 嘘泣きであっても簡単に涙を見せるアイリーンとの違いを見せた。
「彼とは単なる遊びで婚約するつもりはない、婚約破棄は彼が勝手にやった事だ、女としての魅力は私の方が上だから仕方ない、私のお古で良ければまた婚約して上げたら? などと……。それで私はカッとなって机に置かれていたお茶を取ってかけてしまったのです……」
「それが事実だとしたら、酷い暴言はダニング子爵令嬢の方ですねぇ」
「そ、そんなの酷い言いがかりよ! その女が捏造してるの! ウォーレン様! 私を信じて!」
この状況で信じてくれと言えるメンタルの強さは驚きに値する。
その時、会場から多くの手があがった。
「私も同じように言われてお茶をかけました!」
「私はさすがにお茶はかけなかったけど、婚約者を奪われました!」
「私もお茶をかけてやれば良かった!」
怨嗟の声が講堂内にこだまする。
この声に焦りの色を浮かべたのはデイモンだ。
「な!? アイリーン、これはどういう事だ!?」
「し、知らない、知らないわそんな事! 全部あの女達の出まかせよ!」
そこへ令息達も声を上げた。
「お前が私に愛をささやき婚約してもいいと言ってきたから婚約破棄をしたんだぞ!?」
「散々貢がせておいて金が無くなったら捨てられたんだ!」
「お前のせいで俺たちは婚約者を失ったんだ! 次の婚約も決まらず家で肩身の狭い想思いをしてるのはお前のせいだ!」
「な……、な……?」デイモンも言葉にならないうめき声を上げる。
その令息達へ令嬢たちからの厳しい声が飛ぶ。
「あんな女に簡単に騙されたあなた方に責める資格はなくってよ!」
「自業自得ですわね」
調子づいていた令息達は黙って俯くしかなかった。
そこで騒ぎが一段落したと見て国王が声を発する。
「さて、デイモンよ。ここまで明かされた真実をどう思う?」
「わ、私は被害者です! この女に騙されたんだ! ヒラリー、またお前と婚約してやるぞ、喜べ!」
ヒラリーは無表情で冷たい眼差しを返すだけだ。最早話す価値も見いだしていないのだろう。言葉を発したのは国王だった。
「お前は学園での成績の悪さと粗暴な振る舞いが王族どころか貴族としてもふさわしくない。よって、身分を剥奪し平民とする」
「な!? なぜ王子である俺が平民などに!」
「その驕った考えが理由だ。会場に居る皆もよく聞け。下々の者の事を考えられない者が権力を持てば待つのは滅亡だ。それぞれの領地の領民たちの事をこの機会に見直してみる事だな」
貴族達への言葉の後、デイモンへ言葉をかける。
「王命であった婚約もお前の勝手で破棄をする、これは反逆罪でもある。身分剥奪程度で済んだ事を感謝するのだな」
処刑の可能性も示唆されてガックリと膝を折り崩れ落ちるデイモン。
「さて、次にそこの子爵令嬢よ」
最後まで名前を覚えるつもりは無いようだ。
「お前は卒業式を台無しにしてでもデイモンと添い遂げたかったのだな。お前も平民となりデイモンど結婚する事を許す」
「いや! いやです! 平民なんて! 王子でなくなったデイモン様には何の魅力も無いもの! 私は貴族令嬢なんです! 平民になるような悪いことは何もやってないわ!!」
「ははっ! デイモンよ、お前が周りの者を見下していたのと同じように、この子爵令嬢から見下されておるぞ」
デイモンが歯ぎしりして睨みつける。
「お前は王族に嘘偽りを述べて騙し、不要な婚約破棄の原因を作った。悪いことはちゃんとやっておるわ」
「そ、それでも平民などになる程の事では……」
往生際の悪いアイリーンを見て王妃が国王へ話しかける。
「陛下、わたくしに良い案がございます。お任せいただけますか?」
それに答えたのはデイモンだった。
「1ヶ月ほど前、私が公務のため登校が遅れた日が有った。学園に着いたのは2限の授業中だったため人影は無く、私は授業が終わるまでサロンで待機しようと階段に足をかけたところで上から悲鳴が聞こえ、アイリーンが落ちてきたのを受け止めたのだ。 そして、ヒラリーに押されたと証言をしたのだ!」
「変ね、デイモンに公務は任せてないはずだけど……」と呟いた王妃の言葉は会場が静かだったので全体に響いた。
「それで?」
「それで、とは何だ。」
「ヒラリー嬢がやったと断言する証拠はどこに?」
「被害者本人が証言しているのだ! これ以上ない証拠だろうが!」
「………はぁ、やれやれだな」
ウォーレンが首を横に振りながら呟くと、会場中が歓声に包まれた。
「な!? なんだ!?」
分かっていないのは壇上の二人のみ。
ウォーレンがトリックを暴いた時、それが期待外れのつまらないレベルだった時に必ず呟く決め台詞のようなものだ。
それをまさか生で聴けるとは!
「陛下。自分から出てきておきながら何ですが、この任おりてもよろしいでしょうか……」
左右のこめかみを指で揉みながらウォーレンは国王に話しかける。
「そんな! ここからが良いところではありませんか!」
その言葉に反応したのは王妃だ。
「妃殿下、ならびにこの会場にいる皆さんももう真相が分かってますよね? もはや私は口にするのも恥ずかしいレベルなので、どなたかにお譲りしたく……」
「なりません! 階段から突き落とされたというのがアイリーン嬢のチャチな自作自演だとしてもそこはウォーレン様自らが暴いてくださらないと!」
「王妃様!? そんな! 酷いです!」
アイリーンが手で顔を覆う。もはや会場中の全員が泣き真似だと確信している。
「すでに妃殿下が真相を叫ばれてた気もしますが……仕方ないのでさっさと終わらせましょう。ダニング子爵令嬢、なぜ授業中にそのような場所へ?」
ウォーレンは壇上を端から端まで歩きながら語りかける。会場に居た者たちは演劇を観ているかのように錯覚した。犯人役が小物すぎるが、ウォーレンさえ居れば華やかさは十分だ。
「それは、殿下の寵愛を受ける身としてお迎えするのは当たり前ではありませんか」
「婚約者でもないあなたがわざわざ授業を抜け出してまで出迎える義務は無いはずですが」
「おい! 私とアイリーンは愛し合っているのだ、一刻も早く会いたいと思うのは当然ではないか!」
「時間が勿体ないのでそれが不貞の告白だという事は置いておきましょう。ポイントは【犯行が授業中だった】という事です」
会場の全員がうなずいている。
「ダニング子爵令嬢、あなたは授業中なら目撃者が居ないから捏造しても大丈夫だ、と思ったのですね?」
「そ、そんな酷い言いがかりです!」
「そうだぞ! 目撃者が居ない以上アイリーンの証言こそが明確な証拠ではないか!」
「残念ですが……、目撃者は大勢居るのですよ。数百人ものね」
「はぁ!? さっき授業中で人っ子ひとり居ないと話しただろうが!」
「まだわかりませんか? 授業中であるなら、ヒラリー嬢が授業を受けている事の目撃者が居るんですよ、クラスメイト30人と教師という目撃者が」
「そ……、そんなの、買収されているのだろう!」
「はぁ、また買収ですか? 先程からそればかり、もうちょっと気が利いた事を言ってください」
「それ以外考えられないだろうが!」
「いえ? 同じクラスにはアンカーソン公爵家の敵対派閥の者もいますし、そんな者は買収に応じるより醜聞として騒ぐ方を取るでしょうね」
「だ、だが、体調不良などで休んだり保健室に行くなどとすれば教室から出られるハズだ!」
「そこですよ。証人が数百人居ると言ったのは」
「は?」
「式の途中で優秀な生徒への表彰がありましたよね? 殿下は関係ないから寝てましたか? その中でヒラリー嬢が皆勤賞を受けていましたね」
「皆勤……賞? どういう事だ?」
「休みも遅刻も早退も無く、全ての授業を最初から最後まで全て受けたという証明ですよ。途中で抜け出してたら貰えません」
「そ、それこそ教師を買……、いや、何でもない」
さすがにもう買収されたのだろうとは言えない。反論も思い浮かばずウォーレンを睨み付ける事しかできなかった。
「納得いただけましたか? いただけて無くてもそれが真実なので仕方ないですね。では次は、頭からお茶をかけられた、ですね」
「そうよ! 昼食時の食堂なんだから、皆勤賞とか関係ないわ!」
「なるほど」
眩い笑顔で身体ごと観客席に向き、両手を大きく広げる。女性たちは「この胸にとびこんでおいで」というセリフを脳内再生して倒れそうだった。これには横から見ることになった王妃が悔しがった。
「卒業生ならびに在校生諸君!
ヒラリー嬢がダニング子爵令嬢の頭にお茶をかけたのを一度でも見たことがあったら挙手してほしい。」
そこへおずおずと一人の女生徒が手を上げた。
「ほら! いるじゃない!」 アイリーンが得意気に声を上げる。
「では、壇上にどうぞ」
「それでは、あなたの見たことを話してください」
「それが……、私は見たのではありません。私が……、私がアイリーン嬢にお茶をかけたのです!」
ザワつく会場。それもそうだろう。自ら罪を告白したのだから。
「ほう、自ら罪を告白しますか。それでは、詳細をお話しいただけますか?」
氷のような眼差しに射すくめられてボーッとしていた令嬢が我に返って話し始める。
「私がお茶をかけたのは3ヶ月ほど前のことです。私の婚約者がダニング子爵令嬢に婚約を申し込むからと、私との婚約を破棄してきたのです。『婚約者の居る男性に近づいて奪おうとするだなんてはしたない』とダニング子爵令嬢の元に行き問い詰めました。そこで酷い言葉を……」
悔しさからか涙声になっているが、淑女教育の賜物でこらえている。 嘘泣きであっても簡単に涙を見せるアイリーンとの違いを見せた。
「彼とは単なる遊びで婚約するつもりはない、婚約破棄は彼が勝手にやった事だ、女としての魅力は私の方が上だから仕方ない、私のお古で良ければまた婚約して上げたら? などと……。それで私はカッとなって机に置かれていたお茶を取ってかけてしまったのです……」
「それが事実だとしたら、酷い暴言はダニング子爵令嬢の方ですねぇ」
「そ、そんなの酷い言いがかりよ! その女が捏造してるの! ウォーレン様! 私を信じて!」
この状況で信じてくれと言えるメンタルの強さは驚きに値する。
その時、会場から多くの手があがった。
「私も同じように言われてお茶をかけました!」
「私はさすがにお茶はかけなかったけど、婚約者を奪われました!」
「私もお茶をかけてやれば良かった!」
怨嗟の声が講堂内にこだまする。
この声に焦りの色を浮かべたのはデイモンだ。
「な!? アイリーン、これはどういう事だ!?」
「し、知らない、知らないわそんな事! 全部あの女達の出まかせよ!」
そこへ令息達も声を上げた。
「お前が私に愛をささやき婚約してもいいと言ってきたから婚約破棄をしたんだぞ!?」
「散々貢がせておいて金が無くなったら捨てられたんだ!」
「お前のせいで俺たちは婚約者を失ったんだ! 次の婚約も決まらず家で肩身の狭い想思いをしてるのはお前のせいだ!」
「な……、な……?」デイモンも言葉にならないうめき声を上げる。
その令息達へ令嬢たちからの厳しい声が飛ぶ。
「あんな女に簡単に騙されたあなた方に責める資格はなくってよ!」
「自業自得ですわね」
調子づいていた令息達は黙って俯くしかなかった。
そこで騒ぎが一段落したと見て国王が声を発する。
「さて、デイモンよ。ここまで明かされた真実をどう思う?」
「わ、私は被害者です! この女に騙されたんだ! ヒラリー、またお前と婚約してやるぞ、喜べ!」
ヒラリーは無表情で冷たい眼差しを返すだけだ。最早話す価値も見いだしていないのだろう。言葉を発したのは国王だった。
「お前は学園での成績の悪さと粗暴な振る舞いが王族どころか貴族としてもふさわしくない。よって、身分を剥奪し平民とする」
「な!? なぜ王子である俺が平民などに!」
「その驕った考えが理由だ。会場に居る皆もよく聞け。下々の者の事を考えられない者が権力を持てば待つのは滅亡だ。それぞれの領地の領民たちの事をこの機会に見直してみる事だな」
貴族達への言葉の後、デイモンへ言葉をかける。
「王命であった婚約もお前の勝手で破棄をする、これは反逆罪でもある。身分剥奪程度で済んだ事を感謝するのだな」
処刑の可能性も示唆されてガックリと膝を折り崩れ落ちるデイモン。
「さて、次にそこの子爵令嬢よ」
最後まで名前を覚えるつもりは無いようだ。
「お前は卒業式を台無しにしてでもデイモンと添い遂げたかったのだな。お前も平民となりデイモンど結婚する事を許す」
「いや! いやです! 平民なんて! 王子でなくなったデイモン様には何の魅力も無いもの! 私は貴族令嬢なんです! 平民になるような悪いことは何もやってないわ!!」
「ははっ! デイモンよ、お前が周りの者を見下していたのと同じように、この子爵令嬢から見下されておるぞ」
デイモンが歯ぎしりして睨みつける。
「お前は王族に嘘偽りを述べて騙し、不要な婚約破棄の原因を作った。悪いことはちゃんとやっておるわ」
「そ、それでも平民などになる程の事では……」
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