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第3章
第33話
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私は完全に一人置いてかれた状態になった。
寂しい……まさか、東谷にリリーが連れて行かれるなんて……。昼休み、昼食は食べ終えたから良いけどこの後一人で何をすればいいというのか。
そんな中、ふと視界が彼の方に向いた。自然と。というのも、とても気になる声が割と聞こえやすい声量で教室の中を響き渡らせたからだ。
「えっ、マジ?! 西城、御伽先輩と!?」
……西城のお友達くんが、絶叫にも近い声でそう言ったのだから私は自然とそちらに視線が目に行く。周囲の皆も少しだけ、視線が西城周辺に来ていたけどすぐに関心を失って目線を戻した。
その中で、私ははっきりと西城の方を見ていた。
「ちょ、そんな大声で言うなって」
「あ、すまんすまん……」
友人をたしなめる西城を見て、私はふと思う。
……そろそろ、御伽先輩と付き合うのかなという事。
二年生の時には西城と御伽先輩は既に彼氏彼女の関係だったもんね。……間違いなく、私が付け入る隙は無いのだと察する。……でも、それで素直に諦めるという理由にはなるのだろうか。
無論、西城を困らせるだけなのはわかる。でも、これは言っておかないと行けない事なんじゃないかって。……やはり躊躇はするなあ。
「ただいま~……ん? 麻由美、どうしたの」
「えっ、ああいや何でも」
リリーが帰ってきた様だった。
何故か東谷はいないけど。そして、リリーは私の様子に少し不審な目で見ている様子だった。
「ところで東谷と何の話、していたの?」
「あー……それが、誰にも言いふらさないでって言われているから無理だね」
え、何それ。
一体どんな話をしているっていうの?!
「それ、気になるんだけどぉ!」
「無理無理。私としても話す内容は別に秘密にするほど重大って訳じゃ……これでも言っちゃってる様なものか、やっぱなし!」
何それ?! 余計に気になるんだけど! 一体リリーは東谷にどんな話をしているって言うのー!
そして、リリーの宣言通りどう聞いても絶対に答えてくれなかった。
「ふえー……何なの、あの意味深な反応は……」
西城と御伽先輩の件でも結構大変なのに、その上でリリーと東谷がやけに意味深な秘密話って……、これ一体どういう事?! 色々とここに来て何かが激しいのでは?! これ原因って一体何だって言うのか!
「……はっ」
そして、私は迷いなくその原因と思われるものに目を向ける。そこには絵本……題名『あなたの人生の本』と書かれたあのタイムリープ機能を搭載する不思議すぎる絵本。
これって……もしかしてこの絵本を活用したから?! ……と思いかけたがセーブする。
ぶっちゃけこれだけの謎能力を抱えたとしても反動がしょぼい。……反動がでかくてもそれはそれで困るんだけど。
色々と悩み事は尽きないけど、とりあえず今私が出来る事としたら順番に原因を探って解決をしていく事。
そのために絵本の能力使う訳だし、デメリットの可能性も承知な訳だしね。
「麻由美~、ご飯出来ているけど~」
「あ、はーい」
あっ、お母さんが呼んでる。行かないと。
……そうして、私は部屋を出る。……これからの事、改めてまとめなおさないと。
それから、文化祭の準備は少しずつ進行していっていた。
基本的に絵本の能力を活用しよう、となるタイミングは現状は無かった。というのも、やはりページが埋まっている事が一番の気がかりな訳で。それより前も別にそんなホイホイとは使っていないんだけど……今回は猶更慎重だったりする。
この間の事が気がかりな私はちょっとだけリリーの動きをいつもより慎重に見る様になったり、西城と少し会話できるように積極的に話しかけたりしている。
ちなみにリリーには『何か最近私をジットした目で見ている事多いんだけど……何?』と言われた事は一度ある。
とにかくだ。私は文化祭の準備を進めている間もこうした気になる事に対処をしている……自分なりに。
そんな中、私は西城に対してある日思い切った事を聞いた。
「西城くん、御伽先輩って人とどんな関係なの?」
「えっ……急にどうしたのさ?」
西城はその名前を聞いて明らかに困惑している様子だったけれど……やはり気になるのは気になる。だから、私は思い切って聞いてみる事にしたのだ。御伽先輩と西城の関係を。
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