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第31話 現実

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◆◆◆◆◆

「おい、小林ぐずぐずするな!早く、中に入れ。このクズ野郎が!」

大きな体の男に突き飛ばされて、俺はトイレの床に転がってしまった。

「ぐっ」

痛みに俺が声をあげると、四人の男たちがニヤニヤと笑みを浮かべる。そして、男たちによってトイレの鍵が閉められた。


◇◇◇


問題を起こしたくない。

スタッフからは、俺の過去が知られていない地域の施設への引越しを勧められている。そんな状態で問題を起こせば、ここから離れないといけなくなる。

嫌だ。

ここから離れたくない。離れたら、弘樹さんに会えなくなる。弘樹さんの近くから離れたくない。俺は弘樹さんに何の恩返しもできていないのに。

大丈夫。耐えられる。弘樹さんの為なら。あの人と心を一つにするためなら、どんな事だって耐えられる・・俺なら。


◇◇◇


夕暮れどき。人気のない公園の片隅の公衆トイレは、酷く薄暗く不気味だった。多目的用のトイレを占拠した男たちは、俺と同じ中学生なのに体格が違いすぎた。抵抗のしようもない。

「すげーよな、小林。人殺しの癖にさあ、堂々と中学に通ってきて授業うけてさぁ?どんな性格してるわけ?怖すぎだろ、お前」

「まじ怖すぎだろ。大体、父親を殺した奴が捕まらない時点で、世間は狂ってるよな?そう思うだろ、皆?」

男たちがにやにや笑いながら会話をする。俺は黙って彼らの話を聞き流す。無価値な奴等の会話など、聞きたくない。

「お前、親から虐待されていたらしいな。しかも性的なやつを?本当は喜んで、親父とばこばこやってたんじゃねえの?で、親父に飽きたから、殺したってのが本当のところだろ?殺人を犯した奴が無実って、おかしいだろ。罰も与えないで世間に出すってのは、間違ってる。そう思うだろ、皆?」

俺の犯罪は、動機から顛末まで世間に知れ渡っているみたい。プライバシーなんて、世間にはないらしい。

一番巨体の男がのそのそと俺に近づき、しゃがみこむと俺の体に触れてきた。気持ち悪い。

「だから、俺たちがお前に罰を与えてやるわけ。お前が二度と犯罪を起こさないように痛めつけるのは、世間の為でもあるわけだ。治安維持ってやつだ。まあ、頭が軽い小林には理解できないだろうがな?」

何が罰だ。

ただ、虐めたいだけだろ?お前たちも親父と同じだ。弱い人間はより弱い人間を虐めたがる。

「なあ、小林?親父にいっぱいテクニックを仕込まれたんだろ?男の癖に厭らしい体つきしてるじゃねーか」

リーダー格の男には、異常な性癖があるようだった。情欲に濁った目が俺を見つめている。この虐めが性的なものを帯びる事は明らかだった。

俺は、笑いそうになった。

地獄は終わらないんだな。親父を排除しても終わらない。世間は弱くて悪い奴らばかり。いつの間にか、俺は涙ぐんでいた。

「なに泣いてるんだよ、お前?殺人犯が泣き落としとか姑息すぎ。それより、俺たちを楽しませろよ?」

男たちが俺を羽交い絞めにする。ズボンを剥ぎ取られ、シャツは前を肌蹴させられた。男たちの手が胸を這う。

「うぁ・・ううっ」

「ほら、喜べ。乳首を弄ってやるから。もっと声出せよ、小林」

「男でも感じるのか、ここって?」

男たちが嬉々として、胸の突起を弄ってくる。その手が下肢にも這わされる。下着も剥ぎ取られ、じかに牡を掴んできた。

「いたいっ・・やめて!」

四人の男たちに、俺は完全に押さえ込まれていた。涙がぼたぼた溢れてきた。悔しい。どうして、俺はこんな目に遭うんだろう?

背後から両手を羽交い絞めにされ、大きく足を割り開かれる。萎えた牡を、男たちが強引に擦り上げていく。俺は摩擦だけを感じて、痛みに悲鳴をあげた。

「なんだよ、たたねーじゃねか。お前は、男が好きなんだろ?早く射精しちゃえよ・・な?」

リーダー格の男が、俺の牡を激しく擦って亀頭に爪を立て刺激を強める。

「痛い、やめろ!!痛いんだっ・・あうっう!!」

爪が頂上に食い込んでいく。痛みに涙が溢れるのに、徐々に快感が立ち上ってくる。

「お、たってきた!やっぱ、やらしー体だな。親父にいっぱい触られたんだろ?こんな風にさぁ?」

「やめろ・・くうう!」

いつの間にか先走りに濡れたそこは、あっけなく男たちの前ではじけた。男たちが、馬鹿にしたように俺を笑う。

「男の手でいってやんの!早っ」

「男に抱かれるのを、待ってたんじゃねーの?早く突っ込んじまおうぜ。抵抗するなよ、小林?四人の相手をしっかりしてもらうからな」

こいつらは、男を抱く事に何の抵抗も感じていない。慣れているのかもしれない・・人を襲う事に。男でも女でも、欲望を満たせればどうでもいいのかもしれない。他人の意思なんて無視して。

「四つん這いになれよ、犬みたいに」

俺は抵抗したが、あっさりと体をひっくり返された。そして、腰を高くあげさせられた。

「前と後ろ同時に犯してやる。尻は?ははっ、見ろよ!あっさり指を飲んじまったぜ?がばがばだなぁ!」

「うく・・いたぃ、抜いて!」

乾いた指が強引に蕾に沈む。ぎしぎしと直腸を犯し、内部を広げてゆく。

「何が痛いだよ?こんなの平気だろ」
「あぁあ、痛いっ・・やめろ!!」

指がさらに増やされ、激しく出し入れが始まる。痛みしかない。涙がどんどん溢れていく。痛いのに、痛いだけなのに・・。

「見ろよ!こいつ勃起してきてるぜ。痛いって言いながら!」

「変態な体だな!早く突っ込んでやれよ!喜んで腰振るんじゃないか?」

指が突然引き抜かれる。ひくつく蕾に押し付けられる塊に、俺は逃げようとした。上半身を押さえつける力が増す。四人の男に敵うはずもない。蕾が押し開かれる。

「ぐっ、いやぁ・・あああぁ!!」

太い塊が直腸を割り開き入ってくる。

「くっ!」
「ひぃ・・いぃ、やめて・・」

激しい痛みに眩暈がした。なのに、俺の体は男の牡を飲み込んでいく。乾ききったそこに、押し込まれる圧迫感に息が止まる。

「くっ、一気に入ったな。やっぱ、ちょい・・広がってるかな尻が??」

「そりゃ、処女のようにはいかねーだろ?まあ、これなら犯しても罪悪感はないよな。小林は、男のペニスが好きなんだろ?前のお口からも、いっちゃう?」

いきなり男が俺の顎を掴むと、口に指を入れてきた。強引に押し広げると、牡を突きこんできた。喉に当たる勢いで入れられ吐き気がした。

「ぐっ・・うっ、ふぐっう」

涙がとめどなく溢れる。苦しい。全身が痛くて苦しい。なのに、俺は勃起している。俺はやっぱり変態だ。

「うわー、悲惨。前と後ろ犯されてるのに、ペニスがパンパンだ!」

腰を掴む男が、強引に体内の牡を動かしだす。肉のぶつかる音が個室に卑猥に響く。抜いては最奥を貫き、律動を繰り返し俺を犯してゆく。

唾液が溢れた口でも、抜き差しを繰り返され顎が痺れ吐き気がピークに達する。

「ぐっ・・う!」

いきなり、咥内に欲望が吐き出された。俺は吐きそうになって、男に無理やり顎をつかまれる。
「飲み込め!」
「うぐっ・・!!」

苦い味が喉に落ちてゆく。
気持ち悪い。

「ぐっ・・んん、あぁああああ!」

牡を口から吐き出した俺は、狂ったように悲鳴をあげていた。背後から激しく体を揺さぶられる。何度も突き込まれるそれが、熱い液体を体内に注いだ。

「くっ」

男が果てて、蕾から牡を抜き出す。その蕾が弛んだ内に、新たな塊が突き込まれる。俺は泣き声をあげて、懇願していた。

「やめてっ・・もう、やっあぁ・・んあぁつ・・・!!」

最奥に突きこまれ、俺は二度目の欲望を吐き出していた。蕾が切れて血が溢れているのに、俺の体は感じている。

惨めさに歯軋りした。その口もまた無理やり開かされる。突き込まれる牡が、また喉の奥を容赦なく犯す。親父に何度もされたそれを、今度は他人にさせられている。

噛み切ってやりたい、ペニスを。でも、そうしたら今度は本当に少年院行きかな?それとも、また無罪?

「うぐぅ・・・・ううう・・・・・」

そんなことできない。

俺は弘樹さんに恩返しするまで、ここで住みたい。恩返ししたあとは、どうなってもいい・・死んでもいい。だけど、今は駄目だ。

男たちの荒い息遣いを肌に感じながら、俺は犯され続けた。それしか、俺には選べないから。


◇◇◇


気を失っていた。
携帯の音で俺は目覚める。

「誰・・?」

トイレの個室には、もう誰もいなかった。俺は犯された状態のまま、放置されたようだった。音源を捜すと、脱がされたズボンから携帯音が鳴っていた。俺はズボンを引き寄せると、スマホを取り出した。

「弘樹さん!」

俺は目を見開いてスマホの画面を見つめる。どうしよう。想う人からの電話を、無視する事なんてできない。こんな穢れた状態でも・・。

「弘樹さん?」
『要か?』

弘樹さんの声は、少ししわがれ聞こえた。もっとも、俺の耳がおかしいのかもしれないけど。

『要・・ああ、俺の声聞き取りにくいか?ちょっと風邪を引いてしまって』

「大丈夫です。ちゃんと聞こえるよ」

大丈夫・・俺はちゃんと会話できる。下肢から何人もの人間の精液が流れ出て、俺はびくりと震えた。でも、電話越しの弘樹には気づかれなかったようだ。

『要・・その、元気か?』
「うん、元気だよ?」

『学校に通いだしたんだよな?事件前と同じ学校に通ってるって聞いたけど・・その、大丈夫なのか?』

「平気だよ、弘樹さん。みんな優しくしてくれて、気も使ってくれるから」

『・・そうか。そうだな。いや、悪かった。突然連絡して・・その・・』

弘樹さんの様子がおかしい事が、なんとなく分かった。弘樹さんの声が不安定に揺れる。どうしたの、弘樹さん?何が不安なの?俺にできることある?

「弘樹さん?」

『妻のはるかが旅行中で、今日帰ってくる予定だったんだ。でも、天気の関係で飛行機が飛ばないらしくて・・だから、今夜は家に一人なんだ。昨日は、正美が家に泊まったけど・・今朝、無理やり正美を帰した。あいつ変な顔していたな・・』

「?」

『わ、悪い。俺はどうかしてるな。どうして、要に連絡しているんだろう』

「何かあったの?」

『なんでもないんだ。お前が元気そうでよかったよ。じゃあな』

電話はあっさりと切れた。

明らかにおかしい。俺の事を避けていた弘樹さんが、電話を掛けてきた。なのに、まるで。

俺に傍にいて欲しいの?
そうなの、弘樹さん?

俺は慌ててズボンを履こうとして、痛みに顔を顰めた。こんな体で、会いに行ってもいいのかな?

でも、でも!

幸い多目的用のトイレの手洗いでは湯が出たので、タオルで体を拭った。トイレの外に出ると雨が降っていたけど、俺は構わず走り出していた。

体中痛かったけど、それでも平気だった。弘樹さんが俺を求めている。俺は、彼の役に立てるだろうか?

恩を返さないと。弘樹さんの為に生きている。そう思わないと、何のために生きているのか分からなくなる。

俺は弘樹さんの為に生きているんだ!


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