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獣人は番の愛を希う。
【攻め視点】
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「ぁ……、は………っ………。んぅ……」
激しく攻め立てれば、イイ声で鳴いてくる。容赦なく腰を動かしながら、うっとりとその声に聞き惚れた。
「もっと、だ。もっと鳴いてくれ………っ」
自分の欲求の赴くまま強く腰を叩きつけると、ビクンッと背中がしなり一際高く声が上がった。
「っぁあああ………っ!!は……げし…っ!……レイフっ……」
「………………っ!」
俺のオスを包み込むナカが気持ち良すぎて、俺の名を呼ぶ番が愛し過ぎて、腰から全身にゾクゾクとした快楽の波が広がる。
うっとりと目を細めて、薄いけれど靭やかな筋肉を持つ背中に唇を落とした。右肩にある引き攣れた酷い傷が、快楽に熟れた身体にくっきりと浮かぶ。
おれのせいで負った傷以外にも、大小様々な傷がウェンスの身体にはある。その傷を、俺は罪悪感と共に見つめた。
ベロリ、と傷に舌を這わせて執拗に舐めると、ビクビクと身体が反応して、そしてナカもキュっと強く締まる。
もっと………。もっとだ。
狭いソコに、激しく己の昂りをねじ込み容赦なく奥を抉ると、声にならない喘ぎを熱い吐息と共にと吐き出してウェンスが果てた。ナカも搾り取るかの様にうねり狭まる。
「………はっ!」
その甘いおねだりに答えるように、俺も欲を最奥に叩きつけるように吐き出した。
ウェンス。
番など面倒だと、長らく探すこともしなかった俺を………、どうか許して欲しい…………。
★☆★☆★☆
「いよいよ明日が成人の儀だな」
ワクワクと、抑えきれない興奮を尻尾全体で表現しながらテスが俺達を振り返った。
ここは、俺達が住む街から割と近くにある森の中。湖の辺りでいつもの仲間と明日の事を話していた。
「ルキナもサナも、成人の儀が終わったらそのまま国を出るんだろ?」
「勿論」
「そのつもり」
二人は『当然』というように頷く。テスは俺の方を向いて、首を傾げた。
「レイフは?」
「俺も明日、国を出る」
俺が答えると、ルキナもサナも、そしてテスも凄く変な顔になった。
「は?だってお前、番とか面倒くさいとか言ってたじゃねーか」
「国出る必要、なくない?」
「趣旨替えしたの?」
一斉に聞くなよ。俺は顔を顰めて奴らを見渡した。
「別に番を探すためじゃねぇし」
「じゃ何なのさ?」
サナが訝しげに顔を歪める。
「自分の力で、生きてみたい。傭兵でも何でも良いから、何処までやれるか試したい」
「あー………、そっち?」
「レイフ、めっちゃ鍛錬してたもんねぇ」
ルキナとサナが『納得』と頷いているのに、テスは少し心配そうな顔になった。
「それがレイフの価値観なら、別に良いけど。ただ………」
口籠り、そして俺から視線を逸して湖に向けた。
「お前が後悔することがないのを祈ってる」
テスの家は神官の家系だ。湖に住まう精霊とも意思疎通を図れる、とも言われている。
精霊に何か言われたのか………。
じっとテスを見るけど、もうテスは何も言うつもりはないらしい。
いつもの仲間と、最後のバカ話をして解散した。
「次に会えるのは、番を得て国に戻って来た時な!」
晴れやかな笑顔の仲間を見送り、俺も家に帰るべく踵を返した。
明日、成人の儀でもう一度この湖を訪れる。神官達が祝詞を上げる中、成人を迎える奴らが湖に入り身を清めると、それまで表に出ていた獣耳や尻尾が見えなくなるんだ。
消えるわけではないらしい。理屈で言えば、身体の中に収まる感じ?とか。
いつからこの儀式が始まったのかは知らねぇけど、このお陰で獣人を忌避する人間の国にも入りやすくはなった。
まぁ、良く見りゃ牙やら縦割れの瞳孔やらは残っているから、獣人とバレることもあるらしいけどさ。
サクサクと茂る草を踏み締めて帰り道を辿る。
俺はふと足を止めて、湖を振り返った。
ここは獣人の国だ。獣人同士では番えない俺達は、運命の相手を求めて旅立つ。
今、この国に住まうのは、成人前の子供か番を得て戻って来た大人、後は流れ着いてそのままで住み着いてしまった物好きな人間くらいだ。
他の奴らは、番を求めて旅立つ事に何の疑問も抱いていない。だけど、俺にはその『運命』とやらが気持ち悪くて仕方なかった。
何でだ?何故、ただ一人に縛られなといけないんだ。
俺は、俺だろ?自分の人生を自分の好きに生きて何が悪い?
その考えはこの国おいては酷く異端で、俺は早くこの国を出たくて堪らなかった。
ーーーーやっと、明日………。
グッと拳を作る。
「やっと、出ていける………」
まだ見ぬ広い世界に期待を寄せて、俺は旅の準備をするべく再び歩み始めた。
☆★☆★☆★
「忘れ物はないかい?」
父さんが優しく微笑む。我が家は母さんが獣人で父さんが人間の組み合わせの家庭だった。
「レイフが旅立つとなると、寂しくなるな……」
しょんぼりと肩を落とす父さんに、母さんは豪快に背中を叩いて励ましていた。
「子供の独り立ちって、こんなもんでしょ!人間も獣人も変わらないわよ。何時までも親元にはいないもんなの。諦めて!」
「うん…………」
頷きはしてるけど、その瞳には別れを惜しむ影がある。俺は苦笑いしながら、肩に下げた荷を持ち直した。
「じゃ、俺行くし。父さんも母さんも、あんまり無茶すんなよ」
「やぁね、しないわよ」
「こっちは心配しなくて大丈夫だよ。レイフこそ気を付けて」
見送る家族に小さく手を振ると、俺は街の端にある門を潜り外の世界へと旅立つ。
獣人の国はデカいから、街を出ても暫くはこの国の領地が続く。村や町に行き当たれば、雑用を熟し小銭を稼ぎながら旅を続けた。
今まで何気なく視界に入っていた尻尾は姿を消し、耳も人間と同じようなモノになっている。
でも、聞こえは人間より遥かに良いし、力だって比べようもなく強い。ただ今まで無意識に尻尾で取っていたバランスだけが上手く調整できなくて。
剣をいつもの通り振り回していたら、ちょいちょい蹌踉めいてしまって難儀した。
それも一年を過ぎる頃には完全にコントロールできるようになって、人間の国で『傭兵』とか『冒険者』とかをやりながら気儘に旅を続ける事ができていた。
国によっては、居心地が良くて年単位で過ごしつつ、俺は自分の人生を楽しんでいたと思う。ただ…………。ただ、どうしても気になる方角が常にあって、気付けばそちらを眺めているなんて事がよくあった。
確かめるつもりはないけど、多分その方角に俺の番が居るんだろう。強制的に意識を捉える存在を忌々しく思いながら、俺は引き剥がすように視線をずらして旅を続けた。
そうやって旅を続けて10年以上が経ったある日、人間の国の一つで魔獣のスタンピードに遭遇してしまった。その時はたまたま傭兵を生業としていて、問答無用で戦いに身を投じる事になってしまっていた。
「レイフっ!そっちにフィアスホースが行くぞっ」
「チッ………っ!」
バカでかい大きさの馬に蹄で踏まれてしまえば、人間なんか形も残らないくらいグズグズに潰されてしまう。
剣を水平に薙ぎ払い脚を切り捨てると、転がる巨躯を躱して後ずさった。
「コイツらを前衛に置くスタンピードとは、最悪だな」
「全くその通り、だっ!せめて肉くらい喰える奴らなら良かったのにさ!」
傭兵仲間同士、軽口を叩きながら剣を振るい魔獣の数を減らしていく。しかし額に浮かぶ汗が、互いの体力の限界を物語っていた。
切っても切っても、次から次に湧いてくる魔獣の群れ。
スタンピードで街一つ滅びる事は珍しい事でもなく、俺は目を眇め襲い来る魔獣を見据えなから、生き残れる可能性の低さに絶望した。
「っ!横っ!!」
叫び声にはっと目を向けると、牙を向くカースドックの姿があった。直ぐそこに前脚が迫っていて、剣を振るい薙ぎ払おうにも距離がなく、俺は自分の死を覚悟するしかなかった。
目を見開き固まった次の瞬間。
耳を劈く破裂音が響き、魔獣が体を傾げて地面に落ちていった。
「…………は?」
何が起きたのか分からず、死に絶えたカースドックを見つめる。
「なーいす、統括っ!!」
「惚れるわ~!カッコいー!」
「マイト、ヤナ、てめぇ等余裕だな?囮になる栄誉を授けてやるよ!」
背後で場違いなほど賑やかな声がする。そして最後に聞こえてきた声に…………。
俺は焦がれるほど甘美な痺れを感じた。
ーーーーーまさか…………。
恐ろしくて振り返る事ができない。俺の運命、俺の唯一がそこに…………。
「南部統括、指示をっ!」
「第一小隊は逃げ遅れた奴らの回収、第二小隊、マイトとヤナに続いて撹乱担当、他の奴らは適当に暴れとけ!」
「はーい!」
「承りっ!」
「うぇーい」
命をかけるとは思えないくらい軽々しい返事と共に、兵士達が駆け抜けていく。
魔獣を切り捨てながら俺に駆け寄ってきた傭兵仲間は、呆れたように奴らにを目を向けた。
「あれって、隣の魔獣討伐部隊じゃね?」
「…………知らね」
俺は『統括』と呼ばれていた人間に囚われていた意識を、無理やり仲間へと向ける。
「だが、何にせよ助かった………」
ため息が落ちる。次々に俺達の横を駆け抜ける兵士達は、驚くほど見事な連携を取り魔獣を屠っていく。と、目の端にシルバーブロンドの髪が映った。
胸を掻き毟りたく成るほどに愛おしい気持ちが湧き上り、アレが『統括』と呼ばれる存在と知れた。
吸い寄せられるように目が離せない。
ソイツは両手に持つ剣を、美しい弧を描かせて振るう。まるで舞を舞っているかの様な優雅な剣捌き。
「やーっぱ、統括は銃よか双刀だよな~」
「優雅過ぎて尊い」
「マジ、神。ヤバい、語彙喪失」
「お前に語彙とか初めからねぇ」
「確かに!」
飛び交う軽口と共に、数を減らしていく魔獣。奴らの圧倒的な強さに、傭兵仲間達も言葉なく立ち尽くす。
俺は同じ様に立ち尽くしながら、舞い続ける『統括』を、ただひたすら眺めていた。逃れられない運命に絶望を感じながら、ただただ眺める事しかできなかった。
☆★☆★☆★
「いや、本当に助かりました」
領主が頭を下げる。隣の国の兵士達は、「ついでだ、うぇ~い!」と訳の分からない叫び声を上げながら、壊れた家やら積み上がった魔獣の死骸を片付けていく。
そんな彼らを苦笑いしながら眺めていた『統括』は、領主に向き直り軽く頭を下げていた。
「こちらこそ、差し出がましい要望を受け入れて下さり助かりました」
「い……いえっ!!」
子爵位にあるはずの領主は慌てて手を振る。
「あの規模のスタンピードが、この程度の被害で治まったのです。有り難く思っております……。しかし何故手を貸してくださったのですか?」
「ああ………」
問われて、何でもないという感じで答える。
「この町の先の、魔の森を越えて我が国があるんです。ここで防がないと、森の魔獣まで増えて我が国を襲うことになる。なので陛下に奏上して遠征させて頂きました。我々の身勝手な遠征を受け入れて下さり、感謝いたします」
国を跨いでまで手を出す行為は、褒められたものではないと、『統括』は言う。
その落ち着いた微笑みを眺めながら、俺はヤツの肩を掴んで振り向かせたい衝動を抑えるのに必死だった。
「レイフ、何見てんだ?」
ひょっこりと背後から顔を出し、同僚の傭兵が領主とヤツを見る。
「あー、あれレイフを助けたヒトかぁ。銃撃一発で倒すとか、すげぇって思ったけど、それよか斬撃の方がヤバかったよなぁ」
「………だな。」
短く答える。同僚の視界を覆ってしまいたい。アレを見るのは、俺だけで良いんだ………。湧き上る番への衝動。
あんなに忌避していたのに。やはり獣人は獣人でしかないのか………。
唇を噛み締めて身を翻す。
「あ、礼を言うつもりじゃねーの?」
「領主と話をしてる。それに日が暮れる前に片付けねーと」
「あー、そっか。ま、礼は後でもいっか」
俺の様子を特別可怪しく思うわけでもなく、同じ様に踵を返して片付けている仲間に加わった。
定められた運命を受入れ難く思う側から、湧き上る愛おしさ。
あれだけ忌避していたのに、出逢ってしまえばストンと納得している自分がいる。
ーーーーーアレは、俺のために在るモノだ………。
誰かの目に映るのが許せない。誰かと言葉を交わすのが許せない。俺だけを見てほしい!そして……………。
甘美な独占欲が、ゾワゾワと全身を駆け巡る。
俺に、囚われて欲しい…………。
「酒、足りてるっすか?」
「ああ、大丈夫だ」
是非、領主の屋敷で休んで欲しいと懇願されていたが、『統括』は首を横に振った。
「俺は貴族の出ではありますが、しがない三男なので平民と変りませんから……。それに怪我人達を夜空の下に野ざらしにするのも如何かと……。俺より彼らに夜露を凌げる場を与えてください」
きっちりと断り、今この場で兵士と傭兵の飲み会に参加している。
「いや~、アンタ凄いね。あの剣捌き、惚れたわ」
遠慮もなく傭兵の一人が言うと、向こうの兵士はぱっと顔を輝かせて笑った。
「だろだろ?惚れるよな!っーか惚れるなって方が無理だよな!」
「やっべーよなぁ、統括。マジ、嫁にしてぇ」
ぽろりと出た発言に、ピクリと眉が上がる。
瞬間、あちらの副隊長に発言者はシバかれていたが。
「や、しっかしこの顔であの能力、んでお貴族様だろ。フツーに王宮勤めじゃねぇのが不思議だわ」
「それな。大体能力のある大事なご子息をこんな魔獣討伐に突っ込んでねぇで、親が職世話しそうだけど?」
「あ?」
木製のカップで酒を飲んでいたヤツは、片眉を器用に持ち上げこちらを見た。
「この俺が与えられたモン享受して喜ぶ可愛い性格にみえんの?」
その発言に、俺ははっとなる。コイツも、俺と同じなのか?
もしかしたら、コイツなら俺は…………。
ぎゅっとカップを持つ手に力が入る。
「…………」
「…………」
「…………」
「見えねぇな、確かに」
一瞬無言になった傭兵達は、次の瞬間には爆笑しながらガツガツと乾杯し始めた。
「自分の人生だぞ?自分で切り開いてこそ、だろ。そこに醍醐味があんのに、親に邪魔されるとか、ねぇわ」
ニヤリと笑って、カップを掲げる。
「そりゃそうだ。俺達も似たようなもんだわ」
「だろ?」
似た者同士と理解したせいか、そこからは無礼講とばかりに兵士達も傭兵達も遠慮なく飲み始め、夜は賑やかに過ぎていく。
そしてある程度の時間まで共に飲んでいた『統括』は、ゆったりと自然な仕草で立ち上がり、その場の雰囲気を壊さないようにそっと席を離れて行った。
ーーーいったい何処へ………。
俺はソワソワと落ち着かない気持ちになって、後を追うべく立ち上がった。
追ってどうすんだよ、と冷静な部分の自分がツッこむけど、何かに追い立てられるように気持ちが急く。
ヤツは井戸のある方へ向かい、軈てパシャっと水音が響いた。
ーーーー水浴び?
そっと覗いてみると、そこには上半身を晒した『統括』が居た。俺の心臓がドクン、と嫌な音を立てて響く。
その背中には大小様々な古い傷と、真新しい生々しい傷があった。
「統括、こちらを向いてください」
さっき兵士をシバいていた副隊長が、布を片手に声をかける。
「あぁ、ベル、わりぃな」
「いえ。それより呪詛に繋がりそうな傷はありますか?」
「いや。そうなりそうなモンは、その都度削った」
「ちょ……っ、統括!何度言ったら自分で傷、抉るの止めるんですか!」
「あー………、まぁ、戦ってる最中は気分高揚してっから、痛み少ねーんだよなぁ」
「それで、結構広く抉るから血が止まんないんですよ!」
滅茶苦茶怒られてる。確かに、呪詛を回避するために削った傷はあちこちにあり、適当に巻かれた包帯から血が滲んでいた。
その痛々しい様を言葉もなく見つめる。
俺もアイツも、与えられる運命に抗い続けた似た者同士。
だけど………。
もし俺がこうも長く放置せずに、ちゃんと番を探していたら、アイツはあんなに傷を負わなくても良かったはずで………。
そう思うと、胸を掻きむしらるたくなる程の罪悪感が湧き上がる。それ以上その痛々しい姿を見ることができなくて、俺はそっと踵を返しその場を離れたのだった。
☆★☆★☆★
朝目が覚めると、ふと寂寥感に襲われる。
「?」
訝しく思い眉を潜めると、朝番だった同室のヤツが話しかけてきた。
「昨日の陽気な奴ら、夜中に出立したってさ」
「……………は?」
何故?今日の朝に国に戻るはずではなかったのか?
混乱している俺に、そいつは朝から仕入れた情報を教えてくれた。
「何か、ここのスタンピードの影響が出たみたいで、森の向こうで魔獣が活性化してるんだと。だから、夜の内に出たらしい」
それを聞いて胸騒ぎがした俺は、慌てて着替えると領主の元へ向かった。
グダグダ考えずに、昨日の内に声を掛ければよかった!
湧き上る焦燥感に唇を噛み締めて、領主に除隊を願い出た。昨日スタンピードが起きたばかりだ。流石に理由を問われて、俺は「番が見つかった」と告げた。
領主は「は?」と目を白黒させていたけど、獣人について理解はあるようで除隊にも速やかに同意してくれた。
俺は手早く荷物を纏めると、仲間への挨拶もそこそこに飛び出す。俺はチーターの獣人だ。人型を取っていても走る能力はずば抜けて高い。
自慢の脚を必死に動かして、隣の国に向かう。安全に旅をするなら北の魔の森の切れ目を目指すべきだけど、今は少しの時間も惜しい。
途中飛び出してくる魔獣を切り捨てながら走り、漸く番の気配を感じ取れる場所に出る事ができた。
アイツは門の中に居るのだろうか?
魔獣の襲撃が頻発する南門には入国手続きのために並ぶ人影は殆どおらず、俺はそう待たされることなく手続きに臨む事ができた。
その時。
背後にピリリッと不快な刺激が走る。
はっと振り返ると、間違えようのない番の匂いが、今にも爆発しそうなほど瘴気を立ち上げている森に向かおうとしていた。
「ーーーーっ!!?」
ダメだ!今、その森に近付いては………っ!
獣のカンが警鐘を鳴らす。
俺は門番の兵士の静止を振り切り身を翻した。
行かないでくれ……っ!そこは………っ!!
森に向かい走り始めた俺を危険視したのか、兵士達が迫ってくる。追撃を躱しながら走り続けたけど、森の直前で魔獣の威嚇の叫びに脚を止めた隙きを狙われ、捕らえられた。
「コイツ、獣人か?」
「縄、引き千切られるぞ。二重に括っとけ!」
荒々しく拘束する兵士達に、別の一人が声をかけた。
「……………なぁ」
思案顔の男は俺を見下ろして首を傾げる。
「もしかして、討伐隊の中にコイツの番がいるんじゃないのか?」
「はぁ?」
縄を手に暴れる俺を押さえていた兵士が顔を上げた。
「必死だろ、コイツ。獣人って番の危機に敏感に反応ずるって聞くし、もしかして……………」
不安そうに魔の森に視線を向ける。つられて他の兵士達も視線を向けた。ふ、と押さえていた手の力が緩む。
俺はその機会を見逃さず兵士達を蹴り飛ばし、縄を引き千切りながら跳ねるように駆け出した。
間に合ってくれ!
間に合ってくれ!
間に合ってくれ!
間に合ってくれっ!
俺を、置いて逝かないでくれ……………っっ!!
走って、走って………。そして、血臭に混じる芳醇な番の、濃厚な気配に一瞬クラリと酔ったようにたち眩んた。
「っ!!死ぬ気かっ、テメェっ!!!」
グイッと腕を掴まれ後に引き飛ばされる。
と同時に血の匂いが強くなり、顔を上げた時には魔獣が『統括』の右肩に深く噛み付いているところ、だった。
ぴっと俺の顔面にまで血飛沫が飛ぶ。
食い千切らんばかりの勢いで、唸りつつ頭を振る魔獣に『統括』は動く左腕で剣を突き立てる。しかし血に狂う魔獣は、びくともしない。
俺は我に返り地面に落ちていた双刀の片割れを掴むと、力を込めて一閃させた。
魔獣を切り捨て『統括』に近寄ると、ヤツは力無く笑って俺を見た。
「一刀両断とは馬鹿力にも程がある………」
痛みに顔を歪め、その身体が傾ぐ。重く瞬く瞳には力がなく、軈て意識を飛ばしてその場に崩れ落ちていった。思わず手を差し出し、兵士としては細い体躯を支える。
あちらこちらから流れ滴る血。裂けて肉色を晒す傷。
何でだ。お前は指揮する『統括』なんだろう?
何故、こうも傷を負いながら前線にその身を晒すんだ………っ!
何で俺なんかを庇って…………………っ!!
「ーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!」
人間の耳には聴こえない、獣の威嚇音を上げた。静かに轟く咆哮に、魔獣達の体がビクリと反応する。
魔獣と言えども獣。番を襲われ激怒する獣への、本能的な恐怖は持ち合わせている。
ガチガチと牙が激しく鳴り、恐れを感じて竦む魔獣に追い打ちをかけると、奴ら一斉に身を返し森へと散っていった。
「統括!」
「ウェンス統括っ!」
周りの兵士が駆け寄ってくる。グッと力を込めて奪われまいとしたけれど、丁度俺を追い掛けてきた兵士に取り押さえられ身柄を拘束されてしまった。
「…………っ!離せっ!!」
「ーーーーー止めとけ」
振り払おうと身を捩ると、静かに声かけられる。見ると、南門で番の話しをしていた兵士だった。
「暴れるな。南部統括がお前の番なのか?」
睨み上げつつ僅かに頷くと、兵士は目を眇めた。
「南部統括はここでは絶大な人気がある。庇うためとはいえ、あれほどの傷を負ったとなると、南部部隊の兵士達がお前を襲いかねない。それに…………」
仲間の兵士達に運ばれていく、俺の、大事な……番。
「この国は、獣人には厳しい。先ずは先程脱走した件を処理しとけ。じゃないとお前、この国に入る入らない以前に奴隷落ちするぞ」
「お前…………」
すん、と鼻を鳴らすと、僅かに同種の匂い。
「獣人?」
「違う。ただ曽祖父がそうだった」
「そうか………」
気を使ってくれたのだろうか………。離れていく番の気配に湧き上がる焦燥感を抱きつつ、俺は頷いた。
「分かった」
その返事を受け、ソイツは俺を連行し監獄の警備兵に引き渡した。
「ここで大人しく服罪してろ。番に関わる事だから情状酌量があるはずだ。早ければ2~3週間で出れる」
そう言い残すと、兵士は立ち去って行った。多分何らかの処理をしてくれたのだろう。ソイツの言うとおりそう長く拘留されることはなく、様々な制約は付いたものの解放され国への滞在が許される事になった。
日も落ちた街中を、番の気配と匂いを辿り、縫うように歩く。投獄中は、壁に頭を打ち付けたくなる程の罪悪感と、番を亡くすのではないかとの焦りが身を襲い、なるほどこうして番に出逢った獣人は狂っていくのだな、と狂気の中で思っていた。
『統括』は、かなり激しく魔獣に噛まれていた。あの筋肉の付きが薄い身体では、確実に骨に達しているだろう。
魔獣の傷は呪詛を含む。
皮や肉なら削れば良いが骨では、もう無理、だ。
きっと今頃は呪詛に蝕まれ、治まらぬ痛みにこの世の地獄を味わっているだろう。
呪詛を覆すには、獣人の人生を分ければいい。
そうすれば、上書きされ呪詛は消える。
あれ程忌避していた番なのに。その番を助ける手段が有ることが嬉しい。離れていかないように、縛る鎖があることが嬉しくて堪らない。
あの牢獄の中で罪悪感と焦燥感と、仄暗くも甘美な喜びが湧く自分がとても不思議で、そして獣人だしな、と納得する。
気配を辿り、一軒の古びた酒場に辿り着いた。
カウンターに座る男に、言いようもない愛しさが湧き上がる。
そうだ。俺はもう知っている。
お前が。
お前こそが、俺の唯一。
そして、あの出逢いの場面へと至る。
☆★☆★☆★
「何考えてんだ?」
気怠げに腕を持ち上げて、俺の髪を梳く。何気ない行為に胸が苦しくなるほどの充足感が湧き、甘い疼きが灯る。
髪に触れる腕を取り、優しく引き寄せると抵抗もなくすっぽりと腕の中に収まった。
「ウェンスとの出逢いを思い出していた」
「あー……………、あれな」
ウェンスには、俺が番を忌避して10年以上探していなかった事は既に話していた。
「さっさと獣人の性を受け入れてアンタをさがしてりゃ、こんなに傷負わせる事もなかったのになって」
呟く俺に、ウェンスはふと意地の悪い笑みを見せた。
「はっ!お前が10年前に探しに来てたら、俺はお前を国から蹴り出してたと思うぞ」
「?」
「貴族は民を守る義務があるのに、貴族の特権を振りかすだけで平民を蔑ろにする奴らが、俺は反吐が出るくらい嫌いだ。だから南部部隊に入ったって言ったろ?」
「ああ………」
「お前が成人した時は、俺は一部の貴族にムカついて南部部隊入りを決めた頃だ」
「……………」
「自分のやりたいことを優先してたと断言できるね。だから邪魔なるお前は、その頃に俺の前に現れたとしても、番を手に入れることはできねぇよ」
フン!と鼻を鳴らして言い切る番が、可愛くて堪らない。
「俺の10年は無駄じゃなかった?」
「俺とお前の10年は、俺達に必要な月日だったのさ。だって………」
すりっと胸元に額を擦り付ける。
「出逢った番が手に入んないと、獣人は狂うんだろ?お前が狂わないでくれて、良かったよ」
「………そうか」
目を瞑り、番を抱き締める。
「そう、か」
アンタは俺の罪を許してくれるんだな。
番を得て満ち足りたはずの心の中に、荒れてザラつく部分が確かに存在していたのに、ウェンスの言葉に癒やされていく。
「俺の番は最高だな」
「当然」
ハッキリ言い切る。駄目だ。可愛すぎて堪らない。
気付いたウェンスが、顔を上げてヒクリと口の端を歪めた。
「ちょ………、おま………」
「ーーー勃った」
「む……無理っ!俺はもう無理だぞっ」
「俺の番は最高、なんだろ?」
くるりと身体を回転させて組み敷くと、抗うように胸に手を当て押し返そうとしてくる。
「今日はルキナとかサナとかお前の幼馴染みたちが来る日だろ!」
「ああ……」
チラリと窓の外に目を向けて、明るくなっていく空を眺める。
「アイツらも獣人だ」
一つ口付ける。
「『待て』くらい、できるさ。きっと」
俺に許しを与える唇を、甘く貪る。
待たせた10年分、存分に可愛がろう。
昨晩の余韻が残る身体に指を這わせると、ピクリと愛らしい反応を見せた。
堪らずその甘い身体を貪り尽くし、あとからウェンスにしこたま怒られることになる。
そして、それを見た幼馴染み達に、爆笑されるまであと僅か。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
ウェンスの好きなもの:獣人の国の酒(酒精強)
嫌いなもの:狩りのために獣人の子供が作る罠(偶に嵌る)
レイフの好きなもの:ウェンスが好きなもの(断言)
嫌いなもの:ウェンスを見たり話しかけたりする奴ら(いつか始末しようと企み中)
またしてもヤンデレ攻め……。
さて、幸せになったレイフとウェンスは良いとして、ちょっと可哀想な副隊長ベルの幸せを祈りつつ。
今回も読んで頂き、ありがとうございました!
激しく攻め立てれば、イイ声で鳴いてくる。容赦なく腰を動かしながら、うっとりとその声に聞き惚れた。
「もっと、だ。もっと鳴いてくれ………っ」
自分の欲求の赴くまま強く腰を叩きつけると、ビクンッと背中がしなり一際高く声が上がった。
「っぁあああ………っ!!は……げし…っ!……レイフっ……」
「………………っ!」
俺のオスを包み込むナカが気持ち良すぎて、俺の名を呼ぶ番が愛し過ぎて、腰から全身にゾクゾクとした快楽の波が広がる。
うっとりと目を細めて、薄いけれど靭やかな筋肉を持つ背中に唇を落とした。右肩にある引き攣れた酷い傷が、快楽に熟れた身体にくっきりと浮かぶ。
おれのせいで負った傷以外にも、大小様々な傷がウェンスの身体にはある。その傷を、俺は罪悪感と共に見つめた。
ベロリ、と傷に舌を這わせて執拗に舐めると、ビクビクと身体が反応して、そしてナカもキュっと強く締まる。
もっと………。もっとだ。
狭いソコに、激しく己の昂りをねじ込み容赦なく奥を抉ると、声にならない喘ぎを熱い吐息と共にと吐き出してウェンスが果てた。ナカも搾り取るかの様にうねり狭まる。
「………はっ!」
その甘いおねだりに答えるように、俺も欲を最奥に叩きつけるように吐き出した。
ウェンス。
番など面倒だと、長らく探すこともしなかった俺を………、どうか許して欲しい…………。
★☆★☆★☆
「いよいよ明日が成人の儀だな」
ワクワクと、抑えきれない興奮を尻尾全体で表現しながらテスが俺達を振り返った。
ここは、俺達が住む街から割と近くにある森の中。湖の辺りでいつもの仲間と明日の事を話していた。
「ルキナもサナも、成人の儀が終わったらそのまま国を出るんだろ?」
「勿論」
「そのつもり」
二人は『当然』というように頷く。テスは俺の方を向いて、首を傾げた。
「レイフは?」
「俺も明日、国を出る」
俺が答えると、ルキナもサナも、そしてテスも凄く変な顔になった。
「は?だってお前、番とか面倒くさいとか言ってたじゃねーか」
「国出る必要、なくない?」
「趣旨替えしたの?」
一斉に聞くなよ。俺は顔を顰めて奴らを見渡した。
「別に番を探すためじゃねぇし」
「じゃ何なのさ?」
サナが訝しげに顔を歪める。
「自分の力で、生きてみたい。傭兵でも何でも良いから、何処までやれるか試したい」
「あー………、そっち?」
「レイフ、めっちゃ鍛錬してたもんねぇ」
ルキナとサナが『納得』と頷いているのに、テスは少し心配そうな顔になった。
「それがレイフの価値観なら、別に良いけど。ただ………」
口籠り、そして俺から視線を逸して湖に向けた。
「お前が後悔することがないのを祈ってる」
テスの家は神官の家系だ。湖に住まう精霊とも意思疎通を図れる、とも言われている。
精霊に何か言われたのか………。
じっとテスを見るけど、もうテスは何も言うつもりはないらしい。
いつもの仲間と、最後のバカ話をして解散した。
「次に会えるのは、番を得て国に戻って来た時な!」
晴れやかな笑顔の仲間を見送り、俺も家に帰るべく踵を返した。
明日、成人の儀でもう一度この湖を訪れる。神官達が祝詞を上げる中、成人を迎える奴らが湖に入り身を清めると、それまで表に出ていた獣耳や尻尾が見えなくなるんだ。
消えるわけではないらしい。理屈で言えば、身体の中に収まる感じ?とか。
いつからこの儀式が始まったのかは知らねぇけど、このお陰で獣人を忌避する人間の国にも入りやすくはなった。
まぁ、良く見りゃ牙やら縦割れの瞳孔やらは残っているから、獣人とバレることもあるらしいけどさ。
サクサクと茂る草を踏み締めて帰り道を辿る。
俺はふと足を止めて、湖を振り返った。
ここは獣人の国だ。獣人同士では番えない俺達は、運命の相手を求めて旅立つ。
今、この国に住まうのは、成人前の子供か番を得て戻って来た大人、後は流れ着いてそのままで住み着いてしまった物好きな人間くらいだ。
他の奴らは、番を求めて旅立つ事に何の疑問も抱いていない。だけど、俺にはその『運命』とやらが気持ち悪くて仕方なかった。
何でだ?何故、ただ一人に縛られなといけないんだ。
俺は、俺だろ?自分の人生を自分の好きに生きて何が悪い?
その考えはこの国おいては酷く異端で、俺は早くこの国を出たくて堪らなかった。
ーーーーやっと、明日………。
グッと拳を作る。
「やっと、出ていける………」
まだ見ぬ広い世界に期待を寄せて、俺は旅の準備をするべく再び歩み始めた。
☆★☆★☆★
「忘れ物はないかい?」
父さんが優しく微笑む。我が家は母さんが獣人で父さんが人間の組み合わせの家庭だった。
「レイフが旅立つとなると、寂しくなるな……」
しょんぼりと肩を落とす父さんに、母さんは豪快に背中を叩いて励ましていた。
「子供の独り立ちって、こんなもんでしょ!人間も獣人も変わらないわよ。何時までも親元にはいないもんなの。諦めて!」
「うん…………」
頷きはしてるけど、その瞳には別れを惜しむ影がある。俺は苦笑いしながら、肩に下げた荷を持ち直した。
「じゃ、俺行くし。父さんも母さんも、あんまり無茶すんなよ」
「やぁね、しないわよ」
「こっちは心配しなくて大丈夫だよ。レイフこそ気を付けて」
見送る家族に小さく手を振ると、俺は街の端にある門を潜り外の世界へと旅立つ。
獣人の国はデカいから、街を出ても暫くはこの国の領地が続く。村や町に行き当たれば、雑用を熟し小銭を稼ぎながら旅を続けた。
今まで何気なく視界に入っていた尻尾は姿を消し、耳も人間と同じようなモノになっている。
でも、聞こえは人間より遥かに良いし、力だって比べようもなく強い。ただ今まで無意識に尻尾で取っていたバランスだけが上手く調整できなくて。
剣をいつもの通り振り回していたら、ちょいちょい蹌踉めいてしまって難儀した。
それも一年を過ぎる頃には完全にコントロールできるようになって、人間の国で『傭兵』とか『冒険者』とかをやりながら気儘に旅を続ける事ができていた。
国によっては、居心地が良くて年単位で過ごしつつ、俺は自分の人生を楽しんでいたと思う。ただ…………。ただ、どうしても気になる方角が常にあって、気付けばそちらを眺めているなんて事がよくあった。
確かめるつもりはないけど、多分その方角に俺の番が居るんだろう。強制的に意識を捉える存在を忌々しく思いながら、俺は引き剥がすように視線をずらして旅を続けた。
そうやって旅を続けて10年以上が経ったある日、人間の国の一つで魔獣のスタンピードに遭遇してしまった。その時はたまたま傭兵を生業としていて、問答無用で戦いに身を投じる事になってしまっていた。
「レイフっ!そっちにフィアスホースが行くぞっ」
「チッ………っ!」
バカでかい大きさの馬に蹄で踏まれてしまえば、人間なんか形も残らないくらいグズグズに潰されてしまう。
剣を水平に薙ぎ払い脚を切り捨てると、転がる巨躯を躱して後ずさった。
「コイツらを前衛に置くスタンピードとは、最悪だな」
「全くその通り、だっ!せめて肉くらい喰える奴らなら良かったのにさ!」
傭兵仲間同士、軽口を叩きながら剣を振るい魔獣の数を減らしていく。しかし額に浮かぶ汗が、互いの体力の限界を物語っていた。
切っても切っても、次から次に湧いてくる魔獣の群れ。
スタンピードで街一つ滅びる事は珍しい事でもなく、俺は目を眇め襲い来る魔獣を見据えなから、生き残れる可能性の低さに絶望した。
「っ!横っ!!」
叫び声にはっと目を向けると、牙を向くカースドックの姿があった。直ぐそこに前脚が迫っていて、剣を振るい薙ぎ払おうにも距離がなく、俺は自分の死を覚悟するしかなかった。
目を見開き固まった次の瞬間。
耳を劈く破裂音が響き、魔獣が体を傾げて地面に落ちていった。
「…………は?」
何が起きたのか分からず、死に絶えたカースドックを見つめる。
「なーいす、統括っ!!」
「惚れるわ~!カッコいー!」
「マイト、ヤナ、てめぇ等余裕だな?囮になる栄誉を授けてやるよ!」
背後で場違いなほど賑やかな声がする。そして最後に聞こえてきた声に…………。
俺は焦がれるほど甘美な痺れを感じた。
ーーーーーまさか…………。
恐ろしくて振り返る事ができない。俺の運命、俺の唯一がそこに…………。
「南部統括、指示をっ!」
「第一小隊は逃げ遅れた奴らの回収、第二小隊、マイトとヤナに続いて撹乱担当、他の奴らは適当に暴れとけ!」
「はーい!」
「承りっ!」
「うぇーい」
命をかけるとは思えないくらい軽々しい返事と共に、兵士達が駆け抜けていく。
魔獣を切り捨てながら俺に駆け寄ってきた傭兵仲間は、呆れたように奴らにを目を向けた。
「あれって、隣の魔獣討伐部隊じゃね?」
「…………知らね」
俺は『統括』と呼ばれていた人間に囚われていた意識を、無理やり仲間へと向ける。
「だが、何にせよ助かった………」
ため息が落ちる。次々に俺達の横を駆け抜ける兵士達は、驚くほど見事な連携を取り魔獣を屠っていく。と、目の端にシルバーブロンドの髪が映った。
胸を掻き毟りたく成るほどに愛おしい気持ちが湧き上り、アレが『統括』と呼ばれる存在と知れた。
吸い寄せられるように目が離せない。
ソイツは両手に持つ剣を、美しい弧を描かせて振るう。まるで舞を舞っているかの様な優雅な剣捌き。
「やーっぱ、統括は銃よか双刀だよな~」
「優雅過ぎて尊い」
「マジ、神。ヤバい、語彙喪失」
「お前に語彙とか初めからねぇ」
「確かに!」
飛び交う軽口と共に、数を減らしていく魔獣。奴らの圧倒的な強さに、傭兵仲間達も言葉なく立ち尽くす。
俺は同じ様に立ち尽くしながら、舞い続ける『統括』を、ただひたすら眺めていた。逃れられない運命に絶望を感じながら、ただただ眺める事しかできなかった。
☆★☆★☆★
「いや、本当に助かりました」
領主が頭を下げる。隣の国の兵士達は、「ついでだ、うぇ~い!」と訳の分からない叫び声を上げながら、壊れた家やら積み上がった魔獣の死骸を片付けていく。
そんな彼らを苦笑いしながら眺めていた『統括』は、領主に向き直り軽く頭を下げていた。
「こちらこそ、差し出がましい要望を受け入れて下さり助かりました」
「い……いえっ!!」
子爵位にあるはずの領主は慌てて手を振る。
「あの規模のスタンピードが、この程度の被害で治まったのです。有り難く思っております……。しかし何故手を貸してくださったのですか?」
「ああ………」
問われて、何でもないという感じで答える。
「この町の先の、魔の森を越えて我が国があるんです。ここで防がないと、森の魔獣まで増えて我が国を襲うことになる。なので陛下に奏上して遠征させて頂きました。我々の身勝手な遠征を受け入れて下さり、感謝いたします」
国を跨いでまで手を出す行為は、褒められたものではないと、『統括』は言う。
その落ち着いた微笑みを眺めながら、俺はヤツの肩を掴んで振り向かせたい衝動を抑えるのに必死だった。
「レイフ、何見てんだ?」
ひょっこりと背後から顔を出し、同僚の傭兵が領主とヤツを見る。
「あー、あれレイフを助けたヒトかぁ。銃撃一発で倒すとか、すげぇって思ったけど、それよか斬撃の方がヤバかったよなぁ」
「………だな。」
短く答える。同僚の視界を覆ってしまいたい。アレを見るのは、俺だけで良いんだ………。湧き上る番への衝動。
あんなに忌避していたのに。やはり獣人は獣人でしかないのか………。
唇を噛み締めて身を翻す。
「あ、礼を言うつもりじゃねーの?」
「領主と話をしてる。それに日が暮れる前に片付けねーと」
「あー、そっか。ま、礼は後でもいっか」
俺の様子を特別可怪しく思うわけでもなく、同じ様に踵を返して片付けている仲間に加わった。
定められた運命を受入れ難く思う側から、湧き上る愛おしさ。
あれだけ忌避していたのに、出逢ってしまえばストンと納得している自分がいる。
ーーーーーアレは、俺のために在るモノだ………。
誰かの目に映るのが許せない。誰かと言葉を交わすのが許せない。俺だけを見てほしい!そして……………。
甘美な独占欲が、ゾワゾワと全身を駆け巡る。
俺に、囚われて欲しい…………。
「酒、足りてるっすか?」
「ああ、大丈夫だ」
是非、領主の屋敷で休んで欲しいと懇願されていたが、『統括』は首を横に振った。
「俺は貴族の出ではありますが、しがない三男なので平民と変りませんから……。それに怪我人達を夜空の下に野ざらしにするのも如何かと……。俺より彼らに夜露を凌げる場を与えてください」
きっちりと断り、今この場で兵士と傭兵の飲み会に参加している。
「いや~、アンタ凄いね。あの剣捌き、惚れたわ」
遠慮もなく傭兵の一人が言うと、向こうの兵士はぱっと顔を輝かせて笑った。
「だろだろ?惚れるよな!っーか惚れるなって方が無理だよな!」
「やっべーよなぁ、統括。マジ、嫁にしてぇ」
ぽろりと出た発言に、ピクリと眉が上がる。
瞬間、あちらの副隊長に発言者はシバかれていたが。
「や、しっかしこの顔であの能力、んでお貴族様だろ。フツーに王宮勤めじゃねぇのが不思議だわ」
「それな。大体能力のある大事なご子息をこんな魔獣討伐に突っ込んでねぇで、親が職世話しそうだけど?」
「あ?」
木製のカップで酒を飲んでいたヤツは、片眉を器用に持ち上げこちらを見た。
「この俺が与えられたモン享受して喜ぶ可愛い性格にみえんの?」
その発言に、俺ははっとなる。コイツも、俺と同じなのか?
もしかしたら、コイツなら俺は…………。
ぎゅっとカップを持つ手に力が入る。
「…………」
「…………」
「…………」
「見えねぇな、確かに」
一瞬無言になった傭兵達は、次の瞬間には爆笑しながらガツガツと乾杯し始めた。
「自分の人生だぞ?自分で切り開いてこそ、だろ。そこに醍醐味があんのに、親に邪魔されるとか、ねぇわ」
ニヤリと笑って、カップを掲げる。
「そりゃそうだ。俺達も似たようなもんだわ」
「だろ?」
似た者同士と理解したせいか、そこからは無礼講とばかりに兵士達も傭兵達も遠慮なく飲み始め、夜は賑やかに過ぎていく。
そしてある程度の時間まで共に飲んでいた『統括』は、ゆったりと自然な仕草で立ち上がり、その場の雰囲気を壊さないようにそっと席を離れて行った。
ーーーいったい何処へ………。
俺はソワソワと落ち着かない気持ちになって、後を追うべく立ち上がった。
追ってどうすんだよ、と冷静な部分の自分がツッこむけど、何かに追い立てられるように気持ちが急く。
ヤツは井戸のある方へ向かい、軈てパシャっと水音が響いた。
ーーーー水浴び?
そっと覗いてみると、そこには上半身を晒した『統括』が居た。俺の心臓がドクン、と嫌な音を立てて響く。
その背中には大小様々な古い傷と、真新しい生々しい傷があった。
「統括、こちらを向いてください」
さっき兵士をシバいていた副隊長が、布を片手に声をかける。
「あぁ、ベル、わりぃな」
「いえ。それより呪詛に繋がりそうな傷はありますか?」
「いや。そうなりそうなモンは、その都度削った」
「ちょ……っ、統括!何度言ったら自分で傷、抉るの止めるんですか!」
「あー………、まぁ、戦ってる最中は気分高揚してっから、痛み少ねーんだよなぁ」
「それで、結構広く抉るから血が止まんないんですよ!」
滅茶苦茶怒られてる。確かに、呪詛を回避するために削った傷はあちこちにあり、適当に巻かれた包帯から血が滲んでいた。
その痛々しい様を言葉もなく見つめる。
俺もアイツも、与えられる運命に抗い続けた似た者同士。
だけど………。
もし俺がこうも長く放置せずに、ちゃんと番を探していたら、アイツはあんなに傷を負わなくても良かったはずで………。
そう思うと、胸を掻きむしらるたくなる程の罪悪感が湧き上がる。それ以上その痛々しい姿を見ることができなくて、俺はそっと踵を返しその場を離れたのだった。
☆★☆★☆★
朝目が覚めると、ふと寂寥感に襲われる。
「?」
訝しく思い眉を潜めると、朝番だった同室のヤツが話しかけてきた。
「昨日の陽気な奴ら、夜中に出立したってさ」
「……………は?」
何故?今日の朝に国に戻るはずではなかったのか?
混乱している俺に、そいつは朝から仕入れた情報を教えてくれた。
「何か、ここのスタンピードの影響が出たみたいで、森の向こうで魔獣が活性化してるんだと。だから、夜の内に出たらしい」
それを聞いて胸騒ぎがした俺は、慌てて着替えると領主の元へ向かった。
グダグダ考えずに、昨日の内に声を掛ければよかった!
湧き上る焦燥感に唇を噛み締めて、領主に除隊を願い出た。昨日スタンピードが起きたばかりだ。流石に理由を問われて、俺は「番が見つかった」と告げた。
領主は「は?」と目を白黒させていたけど、獣人について理解はあるようで除隊にも速やかに同意してくれた。
俺は手早く荷物を纏めると、仲間への挨拶もそこそこに飛び出す。俺はチーターの獣人だ。人型を取っていても走る能力はずば抜けて高い。
自慢の脚を必死に動かして、隣の国に向かう。安全に旅をするなら北の魔の森の切れ目を目指すべきだけど、今は少しの時間も惜しい。
途中飛び出してくる魔獣を切り捨てながら走り、漸く番の気配を感じ取れる場所に出る事ができた。
アイツは門の中に居るのだろうか?
魔獣の襲撃が頻発する南門には入国手続きのために並ぶ人影は殆どおらず、俺はそう待たされることなく手続きに臨む事ができた。
その時。
背後にピリリッと不快な刺激が走る。
はっと振り返ると、間違えようのない番の匂いが、今にも爆発しそうなほど瘴気を立ち上げている森に向かおうとしていた。
「ーーーーっ!!?」
ダメだ!今、その森に近付いては………っ!
獣のカンが警鐘を鳴らす。
俺は門番の兵士の静止を振り切り身を翻した。
行かないでくれ……っ!そこは………っ!!
森に向かい走り始めた俺を危険視したのか、兵士達が迫ってくる。追撃を躱しながら走り続けたけど、森の直前で魔獣の威嚇の叫びに脚を止めた隙きを狙われ、捕らえられた。
「コイツ、獣人か?」
「縄、引き千切られるぞ。二重に括っとけ!」
荒々しく拘束する兵士達に、別の一人が声をかけた。
「……………なぁ」
思案顔の男は俺を見下ろして首を傾げる。
「もしかして、討伐隊の中にコイツの番がいるんじゃないのか?」
「はぁ?」
縄を手に暴れる俺を押さえていた兵士が顔を上げた。
「必死だろ、コイツ。獣人って番の危機に敏感に反応ずるって聞くし、もしかして……………」
不安そうに魔の森に視線を向ける。つられて他の兵士達も視線を向けた。ふ、と押さえていた手の力が緩む。
俺はその機会を見逃さず兵士達を蹴り飛ばし、縄を引き千切りながら跳ねるように駆け出した。
間に合ってくれ!
間に合ってくれ!
間に合ってくれ!
間に合ってくれっ!
俺を、置いて逝かないでくれ……………っっ!!
走って、走って………。そして、血臭に混じる芳醇な番の、濃厚な気配に一瞬クラリと酔ったようにたち眩んた。
「っ!!死ぬ気かっ、テメェっ!!!」
グイッと腕を掴まれ後に引き飛ばされる。
と同時に血の匂いが強くなり、顔を上げた時には魔獣が『統括』の右肩に深く噛み付いているところ、だった。
ぴっと俺の顔面にまで血飛沫が飛ぶ。
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「一刀両断とは馬鹿力にも程がある………」
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あちらこちらから流れ滴る血。裂けて肉色を晒す傷。
何でだ。お前は指揮する『統括』なんだろう?
何故、こうも傷を負いながら前線にその身を晒すんだ………っ!
何で俺なんかを庇って…………………っ!!
「ーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!」
人間の耳には聴こえない、獣の威嚇音を上げた。静かに轟く咆哮に、魔獣達の体がビクリと反応する。
魔獣と言えども獣。番を襲われ激怒する獣への、本能的な恐怖は持ち合わせている。
ガチガチと牙が激しく鳴り、恐れを感じて竦む魔獣に追い打ちをかけると、奴ら一斉に身を返し森へと散っていった。
「統括!」
「ウェンス統括っ!」
周りの兵士が駆け寄ってくる。グッと力を込めて奪われまいとしたけれど、丁度俺を追い掛けてきた兵士に取り押さえられ身柄を拘束されてしまった。
「…………っ!離せっ!!」
「ーーーーー止めとけ」
振り払おうと身を捩ると、静かに声かけられる。見ると、南門で番の話しをしていた兵士だった。
「暴れるな。南部統括がお前の番なのか?」
睨み上げつつ僅かに頷くと、兵士は目を眇めた。
「南部統括はここでは絶大な人気がある。庇うためとはいえ、あれほどの傷を負ったとなると、南部部隊の兵士達がお前を襲いかねない。それに…………」
仲間の兵士達に運ばれていく、俺の、大事な……番。
「この国は、獣人には厳しい。先ずは先程脱走した件を処理しとけ。じゃないとお前、この国に入る入らない以前に奴隷落ちするぞ」
「お前…………」
すん、と鼻を鳴らすと、僅かに同種の匂い。
「獣人?」
「違う。ただ曽祖父がそうだった」
「そうか………」
気を使ってくれたのだろうか………。離れていく番の気配に湧き上がる焦燥感を抱きつつ、俺は頷いた。
「分かった」
その返事を受け、ソイツは俺を連行し監獄の警備兵に引き渡した。
「ここで大人しく服罪してろ。番に関わる事だから情状酌量があるはずだ。早ければ2~3週間で出れる」
そう言い残すと、兵士は立ち去って行った。多分何らかの処理をしてくれたのだろう。ソイツの言うとおりそう長く拘留されることはなく、様々な制約は付いたものの解放され国への滞在が許される事になった。
日も落ちた街中を、番の気配と匂いを辿り、縫うように歩く。投獄中は、壁に頭を打ち付けたくなる程の罪悪感と、番を亡くすのではないかとの焦りが身を襲い、なるほどこうして番に出逢った獣人は狂っていくのだな、と狂気の中で思っていた。
『統括』は、かなり激しく魔獣に噛まれていた。あの筋肉の付きが薄い身体では、確実に骨に達しているだろう。
魔獣の傷は呪詛を含む。
皮や肉なら削れば良いが骨では、もう無理、だ。
きっと今頃は呪詛に蝕まれ、治まらぬ痛みにこの世の地獄を味わっているだろう。
呪詛を覆すには、獣人の人生を分ければいい。
そうすれば、上書きされ呪詛は消える。
あれ程忌避していた番なのに。その番を助ける手段が有ることが嬉しい。離れていかないように、縛る鎖があることが嬉しくて堪らない。
あの牢獄の中で罪悪感と焦燥感と、仄暗くも甘美な喜びが湧く自分がとても不思議で、そして獣人だしな、と納得する。
気配を辿り、一軒の古びた酒場に辿り着いた。
カウンターに座る男に、言いようもない愛しさが湧き上がる。
そうだ。俺はもう知っている。
お前が。
お前こそが、俺の唯一。
そして、あの出逢いの場面へと至る。
☆★☆★☆★
「何考えてんだ?」
気怠げに腕を持ち上げて、俺の髪を梳く。何気ない行為に胸が苦しくなるほどの充足感が湧き、甘い疼きが灯る。
髪に触れる腕を取り、優しく引き寄せると抵抗もなくすっぽりと腕の中に収まった。
「ウェンスとの出逢いを思い出していた」
「あー……………、あれな」
ウェンスには、俺が番を忌避して10年以上探していなかった事は既に話していた。
「さっさと獣人の性を受け入れてアンタをさがしてりゃ、こんなに傷負わせる事もなかったのになって」
呟く俺に、ウェンスはふと意地の悪い笑みを見せた。
「はっ!お前が10年前に探しに来てたら、俺はお前を国から蹴り出してたと思うぞ」
「?」
「貴族は民を守る義務があるのに、貴族の特権を振りかすだけで平民を蔑ろにする奴らが、俺は反吐が出るくらい嫌いだ。だから南部部隊に入ったって言ったろ?」
「ああ………」
「お前が成人した時は、俺は一部の貴族にムカついて南部部隊入りを決めた頃だ」
「……………」
「自分のやりたいことを優先してたと断言できるね。だから邪魔なるお前は、その頃に俺の前に現れたとしても、番を手に入れることはできねぇよ」
フン!と鼻を鳴らして言い切る番が、可愛くて堪らない。
「俺の10年は無駄じゃなかった?」
「俺とお前の10年は、俺達に必要な月日だったのさ。だって………」
すりっと胸元に額を擦り付ける。
「出逢った番が手に入んないと、獣人は狂うんだろ?お前が狂わないでくれて、良かったよ」
「………そうか」
目を瞑り、番を抱き締める。
「そう、か」
アンタは俺の罪を許してくれるんだな。
番を得て満ち足りたはずの心の中に、荒れてザラつく部分が確かに存在していたのに、ウェンスの言葉に癒やされていく。
「俺の番は最高だな」
「当然」
ハッキリ言い切る。駄目だ。可愛すぎて堪らない。
気付いたウェンスが、顔を上げてヒクリと口の端を歪めた。
「ちょ………、おま………」
「ーーー勃った」
「む……無理っ!俺はもう無理だぞっ」
「俺の番は最高、なんだろ?」
くるりと身体を回転させて組み敷くと、抗うように胸に手を当て押し返そうとしてくる。
「今日はルキナとかサナとかお前の幼馴染みたちが来る日だろ!」
「ああ……」
チラリと窓の外に目を向けて、明るくなっていく空を眺める。
「アイツらも獣人だ」
一つ口付ける。
「『待て』くらい、できるさ。きっと」
俺に許しを与える唇を、甘く貪る。
待たせた10年分、存分に可愛がろう。
昨晩の余韻が残る身体に指を這わせると、ピクリと愛らしい反応を見せた。
堪らずその甘い身体を貪り尽くし、あとからウェンスにしこたま怒られることになる。
そして、それを見た幼馴染み達に、爆笑されるまであと僅か。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
ウェンスの好きなもの:獣人の国の酒(酒精強)
嫌いなもの:狩りのために獣人の子供が作る罠(偶に嵌る)
レイフの好きなもの:ウェンスが好きなもの(断言)
嫌いなもの:ウェンスを見たり話しかけたりする奴ら(いつか始末しようと企み中)
またしてもヤンデレ攻め……。
さて、幸せになったレイフとウェンスは良いとして、ちょっと可哀想な副隊長ベルの幸せを祈りつつ。
今回も読んで頂き、ありがとうございました!
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