深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

文字の大きさ
56 / 124
絶え間

経緯

しおりを挟む
「当時の私は教国のごく一般的に英雄の一員だった。普通に訓練を受けて、普通に教育を受けて、普通に魔物を倒していた」

 ごく一般的に英雄の一員、少しおかしな表現だが実際にそうだったのだろう。沢山の転生者が英雄として魔物を討伐していることがその頃の日常だったのだから。

 それからシズクは懐かしむように目を細めながら、その頃の輝かしく楽しく、それでいて危険も孕む冒険の日常を語ってくれた。西のクラーケンを人魚の王と協力して倒したとか、氷のドラゴンを逆に氷漬けにしたとか、帝国の転生者と手柄の奪い合いになったが最終的に意気投合したとか。その話の中では、俺の知っている英雄であるラーン様やパータロル様がただの気さくな友人として登場していて、改めてシズクが百年前の人物であることを実感した。

「まぁ、そんなある日、ミラと教王に呼び出されてね」
「ミラって……聖女の?」
「……?」

 教国の転生者でミラと言えば聖女ミラだろう、と確信を持って聞いた質問だったが、シズクは首を傾げる。が、直ぐに何か思い当たることがあったようで、ぽん、と手を叩いた。

「あー!! そうか、そう言えばそんな風に呼ぶ人が何人かいたっけ!」
「あぁなるほど、その頃は聖女って呼び方は広まっていなかったのか」
「うん。彼女の転生者特典は確かに『聖なる盾』だったけど、本人も聖女は大袈裟だって恥ずかしがってたもん。あ、ミラとは同じ教国の転生者でしかも女の子同士ってことで、仲良かったんだ」

 嬉しそうにミラと友達だったことを宣言するシズクだったが、それも一瞬ですぐに暗い表情になって話を続けた。

「まぁ、そんなわけで彼女と私と、あと2,3人で教王に言われた通り、『不敗のユーラ』が居るっていう場所、『龍頭の迷宮』の裏の2層に向かったんだけどね」
「『不敗のユーラ』……」

 確か伝承通りでは、聖女ミラと『不敗のユーラ』は相討ちになったと。

  ──ん? ていうか、ココ?

「でもね、そこに居たのは『不敗のユーラ』だけじゃなかった。一面に広がる魔兎、魔人、デッドウルフその他把握出来ないほど多数の魔物」
「罠、か」
「そう。魔兎の変異種、明らかに人の手が加わっている魔人、高い知性を持つデッドウルフ、逆に知性の欠片も無い実験体のような四天王。流石に気付いたよ、魔物が人工的に作られているって、全部嘘だったんだって、これは私たちを処理するための罠だったんだって」

 少し想像してみる。あの青々とした草原を覆い尽くす真っ赤な目を光らせる魔兎が一斉に襲いかかってくる。さらにその合間合間に魔人が多様かつ捉えようのない攻撃を仕掛けてき、さらにデットウルフが死咆を無限に撃ち込んでくる。うん、分かりやすく絶望だ。

「まぁでも健闘はしたよ。私の転生者特典……はもう察しているかな? 『奪力ステータススティール』……制限と条件はあるものの相手から能力を奪えるもの。それとミラの盾があれば……」

 シズクの話の途中だが、俺はそこであることに気付いた。というか、その疑問を思い出したの方が近いか。

 ── のだ。

 『不敗のユーラ』は人のスキルとステータスを一部、一定時間奪うスキルを持っていたとされている。そして、さっきユミ相手にシズクが使った<奪力ステータススティール>。偶然とは思えない共通項だ。

「『不敗のユーラ』の力とシズクの力は、その……」

 言い淀んでしまう、なんと言っていいか分からないから。でも、シズクは俺の言いたいことが分かったらしく、頷いた。

「あぁ多分だけど、『不敗のユーラ』に学習させる予定だったんだろうね」
「予定だった……ってことは」
「うん、失敗させたよ。だって私が生きてるでしょ?」

 逆に言えば、シズクしか生き残られなかったということだ。その場で何があって、シズクが何を思って生きているのか。仲間を失ってここまで生き残ってきた俺には、痛いほど分かった。

「そうか……つらかっ」
「なにか来る! 伏せて!」
「……っ!?」

 シズクは、俺の頭を押さえつけ伏せさせる。と、同時に真っ白な光が俺とシズクを包み込んだ。そしてその中心に浮び上がる魔法陣。

 ── これは……。

 知っている。これは、こんな転移魔法を使えるのは、リカ・ローグワイスただ1人だ!
 光が発生して数秒後、やはり予想通り、ローブをぶかぶかに着た小柄な少女が出てくる。リカは出てくるなり俺を見て、少しほっとした様子で挨拶をしようとして、

「おー、リュー……っお前、まさか……?」

 だが、俺の後ろに居るシズクを見た途端、呆然と立ち尽くした。そして、それはシズクも同じだった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

処理中です...