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最終章?
脱出
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「……早く戻らないとな」
自分の死体を見ながらも俺は冷静だった。これが愚かな自分への罰だと理解しているからだろうか。
『セーフゾーン』へと歩きながら、俺はこれからの自分の役割をもう一度確認するために、自分の記憶をたどることにした。ここに至るまでに色々と有りすぎたため、正直なところまだ頭が整理できていない。独り、夜を歩く静けさが回想するにはちょうど良かった。
そして俺の意識は戻る。半日ほど前、その濃さゆえに体感的にはそれ以上に思われるが、確かに半日前、俺たちが10層からまずは抜け出すその少し前まで。
***
10層『回廊』、転移陣がある大広間までの一直線の廊下の左右に多数の強力なモンスターが眠る階層だ。
「ったく、しつこいねぇ!」
「もう見えてる! あそこまで走り切るんだ!」
そして俺たちはその薄暗い廊下を、全力疾走で魔物に脇目も振らず駆け抜けていた。後ろからは、凄まじい殺気を放っているエレナ・ブラッディが、大鎌を振り回し、紙のように魔物を切り伏せながらも追いかけてきている。いつか切り落としたはずの腕は金属製の義手となっていた。
俺たちが通ることで覚醒したガーゴイルやゴーレムが、後続のエレナに立ち向かってくれているおかげで、かろうじて距離は保てていた。
「このままダンジョンから出れたとしてもどうせエレナは追ってくる……どうするつもりなんだ?」
「どうにか奴から転移石を奪うか壊すか、とにかく使えなくするしかない! そして陣を破壊しながらダンジョンから脱出する!」
マサトの質問に俺はそう返す。エレナを正面から戦って勝てる相手とは思ってない、ならばこのダンジョンの転移壁を利用して、閉じ込めてしまうのが最善手だろう。
──とは言え……エレナの懐にある転移石をどうこうするというのも変わらず無理難題だが。
そんな厳しい状況について考えている俺の顔がよっぽど曇っていたのか、シズクが併走しながらも覗き込んでくる。
「あ、『代償成就』を使うのは? もちろん無傷のエレナ相手には無理だろうけど……」
「いや……俺もそれしかないと考えていた。俺が<隠密>で隠れた上で、出来るだけ代償が軽くなるような瞬間を作るしかない」
シズクの提案を俺は肯定する。
今、『代償成就』を発動させようとすると、代償として俺のステータスとスキルと転生者特典の全部持っていかれるから当然使えないが、どうにかエレナが無防備になるほどの隙を作った瞬間ならば、代償もかなり減るだろう。
「作戦は了解した。着くよ!」
ミレイが叫ぶのと同時に、視界がぱっと開けて薄暗かった廊下から一変、眩い照明が煌びやかな大広間に俺たちは出る。中心にはこれまで見たことないほどに超巨大で複雑な魔法陣が描かれていた。
「俺は隠れる! シズク、その足枷もついでに外すぞ」
俺の意味深な言葉に、シズクも意味深な笑いを浮かべる。
「そういうことね。私も本気を出そうかな、流石にアレが付いてきたらウォーカー戦も危うくなるし」
マサトとミレイは足枷のことを知らないため、ピンと来ていない表情をしているが、二人には直前で防御を取ってもらえればいいだろう。説明している暇はなかった。
「鬼ごっこはおしまい?」
既に、エレナが広間に足を踏み入れていたから。
「あぁ、返り討ちにしてやろうって話がついたのさ」
ババババッ──なんでもないように喋りながらも、ミレイがほとんど不意打ちで銃を連射する。それが戦いの火蓋を切った。
***
弾丸が激しく跳弾しながら、炸裂する空中。その弾幕を縫うように移動しながら自由自在に新たな弾幕を形成しつつ、更にエレナに接近して攻撃を仕掛けるマサト。エレナがミレイやマサトに攻撃の矛先を向けないよう、神器を駆使した超近接戦によって一手に相手を引き受けているシズク。
そんな激しい戦闘をよそに、<隠密>によって不可知の俺は解析魔法を足枷に対して発動する。リカが居なくなってしまった以上、ウォーカーの根城を突き止める役割は俺に回ってきていた。解析魔法は、リカが魔人ラウザーク戦の時に使っていたものだ。
──術者は……共和国の辺境村の、これは地下か?
術者の位置、それはつまりウォーカーの位置ということで、いつかユリウス陛下が言っていた話とも一致した。
「リューロ!!」
その時、シズクが俺の名前を呼んだ。解析結果から顔を上げれば、シズクとエレナがかつてないほどの至近距離で鍔迫り合いをしている。
「<疾走>!」
「<縛光>!!」
俺がシズクの直ぐそばまで近づいた、そのタイミングでシズクはエレナに対して拘束スキルを発動し、更に足枷を可視化する。
「全員、防御しろぉぉ!! <烈爪>!!!!」
シズクが作った千載一遇の好機、俺は<隠密>を解いて叫び、同時に鎖をぶった斬る!
カァンッ──高い音と共に、足枷が外れる。
ほんの一瞬、音が消えて、直後閃光が弾ける。
──ドガァァッン!!!!
轟音と共に、豪風と酷熱が一気に放出された。
「……痛ぁぁあ!!」
どこが上かどこが下か、目が焼かれてわけも分からぬままに体が強制的に吹っ飛ばされる。逆らいようのない風圧によって内臓がぐしゃぐしゃになるような激痛が走り、背中から強く壁に打ち付けたせいで背骨が折れた。
「がはっ……」
口から血が出る。折れた骨がどこかに刺さっているのだろう。全身の皮膚は爛れて、真っ赤な筋肉が外界に晒されている。鼓膜が破れたのか耳は聞こえない。
──だが、それでも<治癒>は後回しだ。
前を見れば、俺と同じようにモロに食らったであろうエレナが、ちょうど反対の壁にもたれかかっていた。
「『代償成就』……<逃亡>とレベル10を代償に……エレナの持っている転移……いや、全ての転移石をこの手に」
かつん、石と石がぶつかり合うような音が手の中で鳴る。見れば、三つの石がそこにはあった。
──念の為、全て、と言い換えておいて良かった。
俺はそれらを握り潰した。
***
ダンジョン最下層の転移陣、それを俺は一回しか使えないという制限を含めて書き換え、更に転移先も直接ウォーカーの元へと飛ぶように設定し直す。『魔道の極み』のお陰で、スラスラと魔法陣の内容は理解出来たのだ。
「覚悟はいいか?」
転移陣に乗った俺は、そう全員に問う。ひとたび魔法陣を発動させれば、一気にウォーカーの根城へと飛ぶのだ。俺の声は震えていた。
「大丈夫、<治癒>のお陰で万全だし」
「当然だ……ユリウス様には俺たちが地上から出た時点で報せが入るようになっているはず。だから、そちらも心配は無い」
「アタシも大丈夫だ。ユリウス様に忠義を果たすため、どんな奴が来ても覚悟は出来てる」
三人とも躊躇いもなく、頷く。
視界の端に、ボロボロの体のままシズクのスキルによって拘束されているエレナがこちらを睨んでいるのが見えた。
「分かった。じゃあ行くぞ……<転移>」
***
転移特有の真っ白な光が消え、目が徐々に慣れてくる。不完全な視界で、どこに転移したのかを周りを見渡せば、そこは小さな書斎だった。左右に本棚があり、正面には艶のある木製のデスクが置かれてある。ただ、そこには誰も座っていない。
「えっ……!?」
そんな中、左でミレイが声を上げた。
「メ……イラ? 本物のメイラかい!?」
そこには、使用人のような格好をして、掃除用具を片手に持つメイラが居た。
自分の死体を見ながらも俺は冷静だった。これが愚かな自分への罰だと理解しているからだろうか。
『セーフゾーン』へと歩きながら、俺はこれからの自分の役割をもう一度確認するために、自分の記憶をたどることにした。ここに至るまでに色々と有りすぎたため、正直なところまだ頭が整理できていない。独り、夜を歩く静けさが回想するにはちょうど良かった。
そして俺の意識は戻る。半日ほど前、その濃さゆえに体感的にはそれ以上に思われるが、確かに半日前、俺たちが10層からまずは抜け出すその少し前まで。
***
10層『回廊』、転移陣がある大広間までの一直線の廊下の左右に多数の強力なモンスターが眠る階層だ。
「ったく、しつこいねぇ!」
「もう見えてる! あそこまで走り切るんだ!」
そして俺たちはその薄暗い廊下を、全力疾走で魔物に脇目も振らず駆け抜けていた。後ろからは、凄まじい殺気を放っているエレナ・ブラッディが、大鎌を振り回し、紙のように魔物を切り伏せながらも追いかけてきている。いつか切り落としたはずの腕は金属製の義手となっていた。
俺たちが通ることで覚醒したガーゴイルやゴーレムが、後続のエレナに立ち向かってくれているおかげで、かろうじて距離は保てていた。
「このままダンジョンから出れたとしてもどうせエレナは追ってくる……どうするつもりなんだ?」
「どうにか奴から転移石を奪うか壊すか、とにかく使えなくするしかない! そして陣を破壊しながらダンジョンから脱出する!」
マサトの質問に俺はそう返す。エレナを正面から戦って勝てる相手とは思ってない、ならばこのダンジョンの転移壁を利用して、閉じ込めてしまうのが最善手だろう。
──とは言え……エレナの懐にある転移石をどうこうするというのも変わらず無理難題だが。
そんな厳しい状況について考えている俺の顔がよっぽど曇っていたのか、シズクが併走しながらも覗き込んでくる。
「あ、『代償成就』を使うのは? もちろん無傷のエレナ相手には無理だろうけど……」
「いや……俺もそれしかないと考えていた。俺が<隠密>で隠れた上で、出来るだけ代償が軽くなるような瞬間を作るしかない」
シズクの提案を俺は肯定する。
今、『代償成就』を発動させようとすると、代償として俺のステータスとスキルと転生者特典の全部持っていかれるから当然使えないが、どうにかエレナが無防備になるほどの隙を作った瞬間ならば、代償もかなり減るだろう。
「作戦は了解した。着くよ!」
ミレイが叫ぶのと同時に、視界がぱっと開けて薄暗かった廊下から一変、眩い照明が煌びやかな大広間に俺たちは出る。中心にはこれまで見たことないほどに超巨大で複雑な魔法陣が描かれていた。
「俺は隠れる! シズク、その足枷もついでに外すぞ」
俺の意味深な言葉に、シズクも意味深な笑いを浮かべる。
「そういうことね。私も本気を出そうかな、流石にアレが付いてきたらウォーカー戦も危うくなるし」
マサトとミレイは足枷のことを知らないため、ピンと来ていない表情をしているが、二人には直前で防御を取ってもらえればいいだろう。説明している暇はなかった。
「鬼ごっこはおしまい?」
既に、エレナが広間に足を踏み入れていたから。
「あぁ、返り討ちにしてやろうって話がついたのさ」
ババババッ──なんでもないように喋りながらも、ミレイがほとんど不意打ちで銃を連射する。それが戦いの火蓋を切った。
***
弾丸が激しく跳弾しながら、炸裂する空中。その弾幕を縫うように移動しながら自由自在に新たな弾幕を形成しつつ、更にエレナに接近して攻撃を仕掛けるマサト。エレナがミレイやマサトに攻撃の矛先を向けないよう、神器を駆使した超近接戦によって一手に相手を引き受けているシズク。
そんな激しい戦闘をよそに、<隠密>によって不可知の俺は解析魔法を足枷に対して発動する。リカが居なくなってしまった以上、ウォーカーの根城を突き止める役割は俺に回ってきていた。解析魔法は、リカが魔人ラウザーク戦の時に使っていたものだ。
──術者は……共和国の辺境村の、これは地下か?
術者の位置、それはつまりウォーカーの位置ということで、いつかユリウス陛下が言っていた話とも一致した。
「リューロ!!」
その時、シズクが俺の名前を呼んだ。解析結果から顔を上げれば、シズクとエレナがかつてないほどの至近距離で鍔迫り合いをしている。
「<疾走>!」
「<縛光>!!」
俺がシズクの直ぐそばまで近づいた、そのタイミングでシズクはエレナに対して拘束スキルを発動し、更に足枷を可視化する。
「全員、防御しろぉぉ!! <烈爪>!!!!」
シズクが作った千載一遇の好機、俺は<隠密>を解いて叫び、同時に鎖をぶった斬る!
カァンッ──高い音と共に、足枷が外れる。
ほんの一瞬、音が消えて、直後閃光が弾ける。
──ドガァァッン!!!!
轟音と共に、豪風と酷熱が一気に放出された。
「……痛ぁぁあ!!」
どこが上かどこが下か、目が焼かれてわけも分からぬままに体が強制的に吹っ飛ばされる。逆らいようのない風圧によって内臓がぐしゃぐしゃになるような激痛が走り、背中から強く壁に打ち付けたせいで背骨が折れた。
「がはっ……」
口から血が出る。折れた骨がどこかに刺さっているのだろう。全身の皮膚は爛れて、真っ赤な筋肉が外界に晒されている。鼓膜が破れたのか耳は聞こえない。
──だが、それでも<治癒>は後回しだ。
前を見れば、俺と同じようにモロに食らったであろうエレナが、ちょうど反対の壁にもたれかかっていた。
「『代償成就』……<逃亡>とレベル10を代償に……エレナの持っている転移……いや、全ての転移石をこの手に」
かつん、石と石がぶつかり合うような音が手の中で鳴る。見れば、三つの石がそこにはあった。
──念の為、全て、と言い換えておいて良かった。
俺はそれらを握り潰した。
***
ダンジョン最下層の転移陣、それを俺は一回しか使えないという制限を含めて書き換え、更に転移先も直接ウォーカーの元へと飛ぶように設定し直す。『魔道の極み』のお陰で、スラスラと魔法陣の内容は理解出来たのだ。
「覚悟はいいか?」
転移陣に乗った俺は、そう全員に問う。ひとたび魔法陣を発動させれば、一気にウォーカーの根城へと飛ぶのだ。俺の声は震えていた。
「大丈夫、<治癒>のお陰で万全だし」
「当然だ……ユリウス様には俺たちが地上から出た時点で報せが入るようになっているはず。だから、そちらも心配は無い」
「アタシも大丈夫だ。ユリウス様に忠義を果たすため、どんな奴が来ても覚悟は出来てる」
三人とも躊躇いもなく、頷く。
視界の端に、ボロボロの体のままシズクのスキルによって拘束されているエレナがこちらを睨んでいるのが見えた。
「分かった。じゃあ行くぞ……<転移>」
***
転移特有の真っ白な光が消え、目が徐々に慣れてくる。不完全な視界で、どこに転移したのかを周りを見渡せば、そこは小さな書斎だった。左右に本棚があり、正面には艶のある木製のデスクが置かれてある。ただ、そこには誰も座っていない。
「えっ……!?」
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