深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

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最終章?

対峙

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「メ……イラ? 本物のメイラかい!?」

 その言葉に全員がミレイの方を向けば、確かにそこには俺たちが知っているメイラと瓜二つの人物が立っていた。モップを握って、使用人の格好をしている彼女は、突如現れた俺たちに対して思考停止してしまったのか、ただ立ちすくんでいた。

「大丈夫か? 捕まっ──」
「ひぃっっ!!!!」
「痛って……」

 とりあえず気を確かにもってもらおう、と俺が伸ばした手を、メイラは酷く怯えたような声を出しながら、ぱちんと弾く。助けに来た俺たちを跳ね除けるという意外な彼女の行動に、全員が顔を見合わせる。

 と、その時。メイラが、ばっ──と部屋の出口に向かって駆け出す。

「ウォーカー様ぁ! 奴らが……奴らが来ました!!」
「えっ……? いてっ……おい、待て!」

 俺の手を跳ね除けたことへの動揺、その隙をメイラはここぞとばかりに全速力で部屋を出ていってしまう。足止めのつもりなのか、彼女が後ろに放り投げたモップが俺の顔面にヒットしたが、大したダメージは無い。それよりもメイラを追わなければならなかった。

「なんだこれは……!?」

 真っ先に廊下に出たマサトが足を止めて、周りを見渡す。続いて部屋を出れば、その意味は直ぐに分かった。

「えぇ……広すぎやしないかい?」

 ミレイの言う通り、ただ広かった。
 廊下の突き当たりが見えないほどに。前も後ろも、どこまで続いているのか分からないほどに長い廊下、さらに扉は無数に左右にあり、一定間隔で十字路がある。逆探知の結果から、ここが辺境村の地下であることは分かっていたが、これ程に広いのは完全に予想外だった。

 その廊下の遥か前方、走るメイラの姿を捉える。

「居た! 追うぞ!」

 俺は<疾走スプリント>によって加速しながら、真っ先に駆け出す。ここまで広いということは、メイラを一度でも見失えば終わり、全力で距離を詰める。

 他の面々も少し動揺したとは言え、ここは敵地であり不測の事態は当たり前だということも理解していたのだろう。直ぐに俺の後に続く。

 右、左、右、右、直進、直進、左、右、右。

 細かくターンをしながらメイラは走り続ける。迷いなく曲がるその様子から考えられるのは、彼女が相当この道に慣れているか、もしくはそもそも正解の道なんて存在しないのか、答えは分からない。

 左、右、直進、直進、左、右、そして左にメイラが曲がった。同時に、バタンっ! ──とドアの音と共にメイラの姿が消える。
 同じように曲がれば、すぐ側にひとつの木製のドアがあった。

「ここか、開けるぞ」

 マサト、ミレイ、シズクの三人は覚悟はとっくに決まっていると頷く。

 俺はドアを開けた。


***


 部屋は先の書斎と全く同じ間取りだった。左右に本棚があり、ドアから入って正面に木製のデスクと椅子がある。ドアを開けるが、まだ部屋には入らない。そんな中、まず目が捉えたのは、メイラが椅子に腰掛ける人物に何かを報告し終わり、後ろに下がる場面だった。

「チッ……よりによってアズサの居ないこのタイミングか」

 不機嫌そうに、椅子に深く座りながらかつかつとデスクを叩く太った中年の男。

 マサトの記憶を魔人リンに見せられた時に一瞬だけ写った奴と同じ……ということはこいつがウォーカー本人。

 ウォーカー着ている値の張りそうなシャツは腹のところでボタンが弾けそうなほどパツパツで、まさにその外見は私服を肥やすことしか考えないタイプの領主の姿そのものだった。あまりにも情けない姿、到底これが大国の全権を握っている男とは思えないほどに。

 ──という評価こそがこの男の狙いなのだろうな。

 ウォーカーの特徴を知っている上でここに居ると確信して来ているから、俺はこの男を警戒していられるだけだ。

 醜悪な領主として紹介されたならば、もしくはただ道ですれ違うだけだったとしても、俺はこの男を軽んじるだろう。社会階級として敬う立場にあるだけで、人間性も腕力も遥かに自分より劣っていると、頭の中で位置付けるに違いない。

 ほんの数秒、そんな分析をしていれば突如として空気がゴォゴォと震え始めた。

 ──な、なんだ!?

 前を見る、がウォーカーもメイラも何かした様子は無い。それどころか俺の方を向いて……いる?

「ウォーカーぁぁぁあ!!! <超加速ハイパーアクセ──」

 シズクか! 後ろで、シズクが今まで聞いたことの無いほどに荒々しい叫び声を上げながら、スキルを発動させている! まだ踏み込んでいるだけにも関わらず、床のヒビが前に向かって伸びていく。

「……クニヒコ、場所を変えるぞ」
「分かってますって。ハイ、<消失ヴァ二ッシュ>」

 その矢先、聞き覚えのある、背筋が凍るような声が後ろから聞こえた。

 次の瞬間には景色が変わっていた。
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