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第2章 エルフの秘宝
再びトロイメア商会へ
しおりを挟むアヴラムとビートは[エルフの涙]の情報を手にいれる為に[トロイメア商会]を訪れた。
「こんにちはー!」
流石に前回で顔を覚えられたので、受付嬢も直ぐに対応してくれる。
「あっアヴラム様! 本日ははどうされたのでしょうか?」
「実は相談したいことがあるんですけど、ギルスさんはいますか?」
「商会長ですね。確か今は別件で外出しているので他の方をお呼びしますので、奥の部屋でお待ち頂けますか?」
「そうですか、分かりました」
ギルスがいないと聞いてビートが安心した表情をした。
人にとっては良い香りだけど獣人にはそれほど合わなかったのだろう。
■■■
案内された部屋で待っていると、アヴラムにゴブリンの角を売ってくれた人がやって来た。
名前はフォッシルというらしい。
フォッシルは何のことか分からないだろうが、アヴラムは変な誤解をしていたので一応謝ることにする。
「……すみません」
「はて、何のことでしょうか?」
「いえこちらのことですので、お気になさらず……」
「それで何か相談したいことがあるのでしたでしょうか?」
経緯はざっくりだが、[エルフの涙]を手にいれる必要があることを伝えた。
「そうですか[エルフの涙]を……」
「やっぱり難しいのですかね?」
「レジェンダリーアイテムですからね。難しくなければ誰かが手にいれてますからね。まぁ効果が効果なので、手にいれて自分でひっそりと使ってるかもしれないですけど」
「そうですよね……」
まぁそれは分かっていたことだから、少しでも何か手掛かりとなりそうなエルフの情報を求めてここにやって来たのだ。
「まぁ俺も[エルフの涙]の情報が簡単に手に入るとは思っていません。なので何でも良いのでエルフの情報が欲しくてここに来たのです」
「エルフですか……それもまた難しい話ですね」
「手掛かりになれば何でもいいんです。嘘でもなんでもエルフに関係してそうな話があれば集めて欲しいのですが」
「そうですか……嘘を伝えるなど信頼問題になりますので出来れば無いようにしたいですね。アヴラム様のお願いですし、全力で集めてみせましょう!」
「本当ですか!」
「勿論ですとも。我が商会の名に懸けてお約束いたしますよ」
「くれぐれも無茶はしないでくださいよ……」
「はっは、もしかして噂を気にしているのですかね? もちろん犯罪は犯しませんから安心してください」
「……お願いします」
噂は嘘だとは思っているが、万が一でも犯罪を犯して情報を手に入れたならば、その情報は使う気にはなれないだろう。
■■■
情報を探すことを約束してくれたが、他に気になることがまだあるようで忠告される。
「情報の事は我々に任せていただきたいのですが、ビート殿の装備を調達しておいていただけないでしょうか? 流石に今のままではいざと言うときに危険でしょうから」
確かにこれからどんな場所にいけないのか分からないし、アヴラムと違って防具にも頼らなければ危険な場合もある。
「分かりました。確かに装備は揃えたいと思っていたので、そうします。ですがこの街にある武器屋の装備品では心許ないので、商会で取り扱っているモノを見せて貰えませんか?」
「そうでしたか。確かにアヴラム様のご慧眼に叶う商品はなかなかないでしょうな。分かりました、それでは担当の者を呼んで来ますので私はこれで失礼します」
「お願いします」
商会の扱う商品がどれ程のモノなのか気になる。
(自分で使うものもあればいいんだけどな……)
■■■
コンコンコン!
「失礼します。フォッシルから紹介されました、グローリア・バーズと申します。武器や装備品をお探しとの所でしたので、保管庫までご案内致しますので付いてきていただけますでしょうか?」
「分かりました」
「ほらビート、お前の装備を選ぶんだから一緒に行くぞ」
今日は朝が早かったので、うとうとしているビートを起こす。
「う、うんワかった」
ビートを目にしたバーズが質問をしてくる。
「今回お探しのモノはそちらのビート様のモノでしたでしょうか?」
「そうだな。ついでに良いものがあれば自分の装備も揃えたいとは思ってるけど、お金がそこまであるわけじゃないから、余裕があればだな」
「そうでございましたか。ちなみに、ご予算はどのくらいでしょうか?」
「聖金貨10枚以内に押さえてくれたら大丈夫だ」
アヴラムの有り金は大体それぐらいで、街の武器屋を見る限りではそんなに高くなかったので問題無いだろうが、一応は上限を提示した。
「充分で御座いますね。それでしたら私どもで取り扱っております最高級品を御用意出来るかと」
アヴラムはそういわれて、この商会は自分達でも戦うから武器にもこだわりがありそうなことを思い出す。
「高いやつもとりあえず見せてもらいますけど、ビート用の装備は最初は直ぐにボロボロになるので、良いもの一つと訓練用のモノも揃えてください」
「かしこまりました」
商売人の顔をしているバーズの顔を見て不安になる。
(お金が無くなりそうだな……)
■■■
アヴラム達はバーズに案内されて、武器庫にやって来た。
要望を幾つか伝えると、直ぐに条件に合うモノを見繕って貰えた。
アヴラムは片手で扱える曲剣タイプの長剣を一本見繕って貰った。
これまでは2本で1対の短い双剣を使用していたが、業物といっても聖剣と比べるとどうしても見劣りしてしまうので、一撃を重くするために変更した。
防具はお金の不安もあるし、今は必要ないので今回は買わないことにした。
一方のビートには、両刃の長剣を購入し、防具は動きやすさを重視したものをしっかりと揃えてもらった。
長剣とはいってもアヴラムにとってはちょっと短いぐらいである。
また暫くは練習用に使うために、似たような物だが質の劣る防具も数を揃えて貰った。
街で見た装備よりかなり質が良いので値段が心配だったが、そこは流石は商人で出精値引きで聖金貨10枚きっかりで良いらしい。
本当かどうかは分からないが、個人的には満足だったのでお金を払い商会を後にした。
後にはしたものの懐がやはり寂しいので、このままでは魔王討伐など言ってられないだろう。
(働かなければいけないないよな……)
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