勇者に付き合いきれなくなったので、パーティーを抜けて魔王を倒したい。

シグマ

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第2章 エルフの秘宝

カニパ

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 ガザミを討伐しながらビートを指導していたが、あらかた倒した所で日も暮れてきたのでショウグンガザミは倒さずに帰ることにした。
 ショウグンガザミは倒せなかったが、普通のガザミは大量に倒したので、ギルド[クリフォート]に向かう。

■■■

 デミスはまだ戻ってきていないみたいで、ルインも休みなので仕方なく他の人に報告をする。

「すみません、依頼の報告をしたいのですが」

「それではギルドカードのご提示をお願いします」

 アヴラムとビートは指示に従い、ギルドカードを提出する。

「えっと……はい、[ガザミの身]の仕入れですね。それでは仕入れてきた素材を見せてもらってもよろしいでしょうか?」

 ということなので素材を渡し、しばらくして鑑定も無事に終わり報酬が支払われた。
 新鮮で身の状態が良いので高値で買い取って貰えたが、ゴブリンの時のようなことにはならなかった。
 切り落としたハサミは、習性でもとからキズがあるので生鋏にはならないのかもしれない。
 生まれたばかりの幼体ならもしかすると新素材になってしまうかも知れないが、魔物の幼体など見たことがないので難しいだろう。

■■■

 ギルドでの報告を終えたので今日の仕事はこれで終わりなのだが、宿には帰らずギルド[レムベル]に向かう。

「すみません、ネフィリムさんはいますか?」

「ああ、昨日の方ですね。少々お待ち下さい」

 暫く待っていると、奥の部屋からネフィリムがやって来た。

「やぁやぁ、遅くまでご苦労だったね。 今日は討伐の報告かな?」

「いやそれはまだなんですけど、今日はこの後予定とかありますか?」

「おや? もしかしてデートのお誘いかい? そんなことを、こんなところで言っちゃうと周りから恨まれちゃうよ?」

「違いますよ! デートとかでは無くて、別に二人とかでもないですからね。 出来ればルインさんも誘いたいんですが、連絡つきますか? 今日はお休みみたいなので連絡がとれないんです」

「両手に花って、大胆だね君も。因みに何をするつもりなの?」

「いや本当に、そろそろ周りの目が怖いので止めてくださいよ……。えっとですね、ガザミの身を大量に手に入れてきたので、皆で一緒に食べようかなと」

 ルインがガザミの身を食べたいと言っていたと聞いたので、どうせなら皆で楽しみたいということで提案する。

「なるほど、つまりカニパだね! それは嬉しい提案だね。直ぐにルインにも連絡を入れるからちょっと待ってて。あっ、奥の応接室に入ってていいから」

 先程のやり取りで、ここに居づらくなっていることに気を使ってくれたみたいだ。

■■■

 暫くすると、慌てたルインがギルドにやって来て、応接室に入ってくる。

「ちょっとネフィ! 緊急信号って何があったの!?」

 魔石を使った会話のできる道具もあるのだがそれは貴重で個人が持てるような物ではないので、感応石を使った伝達手段で離れた場所にあるペアの感応石に信号を送ったみたいだ。
 仲の良い二人なので、緊急時の伝達手段として持っているのだろうが、まさかカニが理由でそれを使われたとはルインは思っていない。

「ルイルイ、見てよこのカニ! これ全部食べ放題だよ!」

「えっと……。はい?」

 緊急事態だと思って駆けつけたのに思わぬ返答が帰って来たので、理解が追い付いていないようだ。
 そして部屋にアヴラムとビートがいるのを見つけたので、説明を求めてくる。

「えっと、またアヴラムさんが何かをやらかしたんですか?」

「またって何ですか、何もしていませんよ。ただ、ガザミの身を大量に手に入れてきたので皆で食べようという話ですよルイルイ?」

 可愛らしいアダ名をつけられているので、思わぬ汚名を被せようとしたお返しに呼ぶ。

「ちょっと、そのアダ名を他の人には絶対に言わないでくださいよ! それでカニパってなんですか? そんなことでわざわざ緊急信号を送ってきたのネフィ? 」

 余りの馬鹿馬鹿しさに、怒るのを通り越して呆れ気味に聞いているが目が怖い。

「ごめんごめん! そんなに怒んないでよ。だってカニだよ! しかもこんなに新鮮な奴なんて、私たちの給料では滅多に食べられないんだから、テンション上がるでしょ!」

「それは……確かにそうかもしれないけど、 それでもやっぱり犯人はアヴラムさんなんですね」

「いやまぁ確かにカニパの提案はしたけど、ネフィリムさんの連絡方法は予想外だから、俺は関係ないぞ?」 

 やれやれといった感じで見てくるが、アヴラムにとっては心外である。
 別に自分から何かを引き起こそうとはしていないのだから。

「そんなことより、カニを食べるわよ!」

 我慢しきれないネフィリムが催促してくるのでルインも折れる。

「分かったわよ、それでどこで調理してもらうの?」

「それなら俺が泊まってる宿の亭主の腕は確かだぞ」

「なら先にいって準備していてください。私も慌てて来たから少し準備してから向かうので。それとネフィも仕事が終わってからきなさいよ!」

「はーい!」

 ということで、ギルド長の二人は呼ぶと面倒くさいのでそれ以外の皆で仲良くカニを食べることになった。一人忘れている気もするが……。

 皆に日頃の感謝でカニを振る舞いつつ、ビートには明日こそショウグンガザミを倒す為に英気をしっかりと養ってもらい、頑張ってもらおうと思うアヴラムだった。
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