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第3章 龍人族
ラーカス商会
しおりを挟むイヴリースを治療できる可能性があるということで、龍人の里に向かうことにしたのだが、たどり着くためには龍人の案内が必要である。
しかし龍人のレラは聖騎士団の監視下にあり聖都市を離れることが出来ないため、他の龍人を捜さなければいけない。
そのため一旦、ビートとユキノと合流し龍人を探すことになった。
■■■
アヴラムはギルド本部に戻りビートとユキノにイヴリースの容態を伝える。そして龍人の力を借りることで治療できる可能性があることを伝えた。
「だから龍人を探さなければいけないのだけど、協力してくれるよな?」
「うん、モチロンだ」
「イヴリースさんの事は良くわからない。でもアヴラムにとって大事な人と言うことは分かるから、勿論手伝う」
「大事な人か……いやそうだな。元気の無いイヴなんて見てられないし、早く元気になって貰おう」
情報を集めるのであればギルドの力を借りる方が早いので、一緒に話を聞いて貰っていたエアミットにもお願いをする。
「すみませんエアミット様、色々迷惑を掛けているのにも限らずもう一つお願いをしたいのですが……」
「龍人探しじゃな。よかろう私の方からギルドでも捜索の依頼を出しておこう。だがお主が自らラーカス商会の彼を頼って探した方が早いだろうがな」
「そうですかね……いやそうですね。久しく会ってはいないですが彼に頼るしか無いでしょうね」
聖騎士団を辞めて以降は一度も会っていないが、彼であれば何かを知っている可能性はある。
「すみません、それなら一度そこに向かいますのでギルドでも情報集めの件はよろしくお願いします」
「ああ、聖騎士団にしか分からない情報も知れたし幾らでも協力しよう。恐らく君が自分で見つけるだろうし、こちらの依頼は空振りになるだろうから費用もこちらで肩代わりしておこう」
「ありがとうございます。ですがその情報の出が自分だと言うことは内密にしておいて貰えますか。恐らく意味はないですがこれ以上は厄介事を抱えたくないので」
「はっは、身内に怯えないといけないとは救国の聖騎士も形無しだな」
「笑い事ではないですよ……では行ってきます」
ということで龍人の情報を探す為にアヴラム達はギルド本部を後にした。
■■■
アヴラム達はラーカス商会を訪れる。
ラーカス商会はこの国で一番大きな商会であり、これまで聖騎士団に所属していた時にいつもお世話になっていた。
そしていつも装備など様々な物を提案してきては使わされていたのだが開発が始まると、やれ調整だ何だと長くて面倒であり、聖騎士団を離れてからはなるべく近付かないようにしている。
しかし情報を得るためにはこれ以上に頼れる場所、そして人はいない。
トロイメア商会にも聞くべきかとも思ったが、家族の危機が聖騎士団から伝えられているか定かではなく政治的な話が絡んでくるので自、分から首を突っ込み一歩間違うとそれこそ大変なことになりかねないので避けることにした。
「すみません、ハヤトさんとの面会をお願いしたいのですが取り次いで貰えますか?」
「商会長は事前に面会のご予定がなければお会いすることが出来ません。本日はそのような予定は有りませんので難しいかと」
「そうですか……難しいのは分かりましたがハヤトさんと私は知り合いなので連絡だけでもしてもらえませんか?」
「……分かりました、失礼ですがお名前と目的をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「はい、私の名前はアヴラムです。目的は人探しのお願いです」
「アヴラム……アヴラムさんですか!! 失礼ですが、もしや聖騎士団に所属していた方で間違い無いでしょうか?」
「ええそうですが……それが何か?」
「そうでしたか! でしたら直ぐに取り次ぎ致しますので、奥の部屋でお待ち頂けますでしょうか?」
「そうですか、それならよろしくお願いします」
どうやら自分が訪ねてきたら直ぐに連絡するように伝えてあったみたいで、すんなり会うことができそうだ。
■■■
案内された部屋でしばらく待っていると、一人の初老の男性が入ってくる。
「やぁアヴラム君、ずいぶん久しぶりだね。いったいどこで何をしていたんだい? 心配したじゃないか」
「はは、どうせご存知なのでしょう?」
「そうだね、君が商会ギルドに入って[ゴブリンの生角]を手に入れて、奴隷を買って盗賊を捕まえたことでしょ。それとガザミを狩っていたら謎の魔物に襲われたと思ったら[エルフの涙]を手にいれたことぐらいしか知らないよ?」
「ほとんど全部知っているではないですか……」
「こんなことは人から集めた表面的な情報でしかないよ。僕は君から直接色々と教えて欲しいかな」
「分かりました、ですがその前にお願いしたいことがあるのですが良いですか?」
「いいよ、その代わり色々と話を聞かせて貰うよ」
「ええ、その位であればいくらでも」
「ではそのお願いしたいこととは何かな?」
「その前に聖騎士団がネームド討伐に向かったことはご存知で?」
「ああその話ね……まぁ大体はね。結果も知っているけど身の程知らずもいいところだよ」
「それなら話が早いです。実はその遠征に自分の知り合いが巻き込まれまして重症を負ったのですが治療が出来ないんです」
「そうか……でもそれは僕にもどうしようもないのではないかな?」
「いえ治療をしてもらうという話ではなくて龍人を紹介して貰いたいのです」
「それはまたどうしてだい?」
「ご存じかと思いますが、[エルフの涙]があるのですがそれを使って龍人につたわる秘術を使えば治療出来る可能性があるそうなのです。ですので龍人の里に行きたいと思っているので聖騎士団のレラ様ではない龍人を探しているのですが、どなたかご存知ないでしょうか?」
「そうか……そうだね確かに僕はレラさんではない龍人を一人知っているかな」
「本当ですか! なら是非とも教えて下さい!」
「それは構わないのだけど、分かっているだろ?」
「そうですね……では聖騎士団を辞めてからの話で良いですよね?」
「ああ、それで構わないよ」
「では……」
ということで焦る気持ちはあるが、聖騎士団を辞めてからのことを一から話した。
■■■
「そうかそれで君たちがアヴラム君を支えているんだね。宜しくねビート君、ユキノ君」
「うん」「はい」
「いやーやっぱり君は面白いね、僕が見込んだだけあるよ。だけど何でもっと早く僕を頼ってこなかったんだい?」
「それは面倒なので……どうせまた新商品の実験台にしようとしてるでしょ?」
どこで何をしていたのかなどの話を求められるだけでなく、新しい商品を次から次に持ってこられては試させられるのは面倒極まりない。聖騎士団に所属していた時は協力するように上から言われていたので断れなかったが今は違う。
「そんな嫌がらなくても、僕は君が魔王を討伐するのを手助けしたいだけなんだから」
「なら勇者を支援してあげてくださいよ。聞きましたよ、自分が聖騎士団を辞めてから支援を渋っているって」
「ああ、確かにそうだね。それはお金は無限にあるわけでは無いからということもあるけど、期待出来ない人を担ぎ上げた組織にお金を垂れ流すほど勿体無いことはないさ。でもまぁ完全に手を切ることはないだろうけどね」
「ですが勇者の方が魔王を倒せる可能性は高くないのですか? 彼は大聖剣を持っていますし」
「そうか君にはあの剣はそう見えるのか……いや、推測で話すのは良くないね。確かに勇者であれば魔王を討伐してくれるかもしれない。でもそれは絶対ではないだろ?」
「……確かにそうですが自分が魔王を倒せる保証も無いですよ?」
「そうだね、だけど君は僕がこの世界に来てから一番可能性のある男だと思っているよ」
「この世界に来てって、ハヤトさんは子孫とかでは無くて召喚勇者だったのですか!?」
「いや、僕は勇者にはなれなかった男だよ。というより正規の召喚ですら無かったからね。まぁ僕の話は置いといて龍人の話を聞きたいのだろ?」
ハヤトの話も気になるが、確かに今は龍人を探す方が先決だ。
「そうでしたね、ところでハヤトさんは龍人の里の場所を知っているのではないですか?」
「そうだね、確かに知っているよ。だけどその場所に行くためには龍人の案内がなければいけないんだ。だから残念だけど僕が案内することは出来ないね」
「そうですか……では知っている龍人の居場所を教えて下さい!」
「教えるのはいいけど案内してくれるかどうかは君次第だね」
「どういうことですか?」
「ちょっと気難しいところがあってね、自分が認めない相手には気を許さないんだ。こればっかりは君に頑張って貰うしかないかな……ごめんね」
「いえいえ龍人の情報が貰えるだけでもありがたいです。頑張って気に入られてみせますよ」
そして龍人の情報を貰らいアヴラムはラーカス商会を後にしようとするが、ハヤトに止められる。
「ああちょっと待って、君に渡しておきたい物があるから」
「やっぱり……」
「まぁまぁ、今回は試すとかでなく装備を取り上げられた君を助ける為だから。素直に受け取ってくれよ」
「そうですか、それなら有難いですね。有難う御座います」
ということでハヤトから剣と幾つかアイテムを貰い、紹介してもらった龍人がいるという場所に向かうことになった。
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