異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!

ポンコツロボ太

文字の大きさ
25 / 57

第25話 朝食の調達

しおりを挟む
エルから送られる羨望の眼差しに俺はたまらなく恥ずかしい気持ちになって森の中へ足早に戻った。

 その道中、エルが俺の隣に並んで歩く。

「ねえ、マシラ。他にも教えて」

 会った時とは違って、エルは人懐っこい目で俺を見上げるように見る。
 何となく、その目に俺も答えてやりたくなった。

「そうだな……気配探知なんてどうだ?」

「知りたい!どうやるの?」

「簡単だ。自分の魔力を薄く外に広げてやるんだよ。あんまり濃い魔力を出すなよ、薄くだ。じゃなきゃ逆に敵に感知されちまうからな。……見てろよ」

 俺は立ち止まって、気配探知のスキルを使う。
 俺を中心に魔力の波が半球状に広がった。

「わ、すごい。魔力の薄い膜みたいなのが私を通り過ぎた」

「今回はエルにも分かりやすいように、ちと濃い目に魔力を飛ばしたからな。どれだけ魔力を薄めて放出できるかが腕の見せどころだ」

 やってみろと目でエルを促す。

 エルは緊張した面持ちで「やってみる!」とエルは目を閉じて体の中で魔力を練る。

 それを体全体を使って外に放出した。
 エルの魔力が俺の体を透過したのが、ゾクリとした気配でわかる。

「ケケケ。濃すぎだな。そんなんじゃ、敵にここにいますって知らせてるみたいなもんだ」

「はぁ……やっぱり上手くいかなかったかあ……」

「ま、魔法使いにゃ、なかなか難しいと思うぜ。お前らはバカでかい出力でバンバン魔法出してなんぼだからな。俺のように繊細な作業は向いてねえんだよ。べー」

「もう、いじわる」

 そう言ってむくれるエルに俺は内心、驚いていた。普通、気配探知だけでなく、どんなスキルだって教えてすぐに出来るもんじゃない。
 それをエルは出力の問題だけで、気配探知は完璧と言ってもいいできで使いやがった。

 かぁ~……これが才能ってやつかね。うらやましいぜ、ちくしょう……

 俺は心の中で一つ愚痴を垂れる。
 
 なれない魔力の使い方をしたからか、それとも毒消しが効いてきたのか分からないが、突如「キュルルル」とエルの腹の虫が鳴いた。

「す、すみません」

 顔を真っ赤にして下を向いて謝る、エル。

「なにが?」

「だって、お腹が鳴っちゃって……」

「だから、それの何がいけないんだって?」

「え?でも……不快にさせたかも知れないから……」

「エルよ……屁でもこいたならまだしも、たかだか腹が鳴ったくらいで謝るな!人間、誰だって腹が減りゃ、腹が鳴るもんだ。んな当たり前のことで、いちいち謝ってたら、いつかお前は頭の下げすぎで、首から上が取れちまうぞ」

「じゃ、じゃあ、どうすれば良いんですか?」

「簡単だ!俺なら、お前のせいで腹減ってんだぞ、ってつらするんだよ。それで、飯が出てくりゃおんの字よ。な?」

 なんなら屁だって、俺は相手のせいだと言って見せる。
 
「私、そんな厚かましいことできません」

「軟弱な奴だなあ。……それで、腹が減ってんのか?」

「……うん、少し」

「ケケケケ。んじゃ、ちと遅いが朝飯の調達だ」

 俺は、もう一度気配探知を行う。今度は小動物まで見つけられるように魔力の膜をより薄く精度を上げる。

「すごい。私のとは全然違う……」

「こんなもんは慣れだ。それよりも見つけたぞ、こっちだ」

 気配探知に反応があった大木まで向かう。

「ねえ、マシラの気配探知はどのくらいの広さまでわかるの?」

「ん~、そりゃ内緒だ」

 エルは「なんで」と少し、ふてた顔をしているが、気配探知は俺の生命線と言っても過言ではない。
 それをおいそれとに教えるわけがない。

「そんなふててねえで、ついてこい」

 そう言って俺は一番太いホホハズリの木の幹に手をかけ、ひょい、ひょいと木に登る。自分の伸長と同じ高さくらいの枝に一旦、腰掛けエルを呼ぶ。

 エルはどうすれば良いのか分からないようで、手を胸の前でモジモジとさせてその場にとどまっていた。

「なにしてんだ。ほれ、お前も来いよ」

「でも……」

「でも、じゃねえ!腹減ってんなら自分の飯くらい自分で用意するのは当たり前のことだ。腹減ったってピーチクパーチク口開けて待ってりゃエサを運んでくれるなんて思うなよ」

「そ、そんなこと思ってない!」

「それじゃ、さっさと来いよ」

 エルは、おっかなびっくり木に手を掛けるが、そのまま動こうとしない。
 しかたなく俺は枝から飛び降り地面に降り立つと、木にしがみつくエルの腰を掴んで、無理やり木登りをさせてやる。

「えっえっえっ!ちょちょちょちょっと!!!きゃーーー!!」

「叫んでないで、そこの枝に登れよ!」

 ペシッ!

 ちょうど目の前にあったエルの形のいいケツを叩いて気合を入れてやるれば「きゃっ!!」と小さい悲鳴をあげて、一番低い場所に伸びる太い枝の上にどうにかエルがよじ登る。

「ケケケ。やれば出来るじゃねえか」

「ひどい!私、木に登るのなんて初めてなのにぃ……」

 俺も再び木を登り、すぐさま半泣きのエルより高い位置にある枝に到達する。

「ほれ、腹ペコちゃん。さっさとここまで登って来いよ」

 俺のスパルタが効いたのかエルは、どうにかこうにか枝に手をかけ、幹に開いたうろに足かけ、俺と同じ高さまでやってくる。

「はぁ……はぁ……た、たかいよぉ。こ、これ降りる時どうするのぉ」

 もうすでに地表は随分と下にある。下手に落ちれば死んでもおかしくはない高さだ。
 だが、今はそんな事はどうでもいい。

「お前、降りる時の事なんて考えるなよ。ほれ、見てみろ。あそこにある鳥の巣がわかるか?」

「うん、見える」

「ありゃ、白頭雉はくとうきじの巣だ。白頭雉はくとうきじはな、同時に何か所も巣を作って卵を産むんだよ。そんで、その中の一つの巣だけ大事に温めるんだ」

「じゃあ、他の巣は?」

「囮みたいなもんなんだろ。大事な一個を守るために他は捨てるんだと。そのお陰で俺らは美味い卵にありつける。……よっと」

 俺はぐいっと木の幹を支えに巣から卵を一つ取る。

「ほれ、エルもやってみな」

 エルのヤツも、自分の立つ枝から身を乗り出して巣に手を伸ばす。しかし、俺よりも身長の低いエルでは、なかなか巣に手が届かない。

「んーーー届かない……キャッ!!!」

 もう少しで手が届くかと思ったら、エルは足を滑らせて木から落ちた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

処理中です...