異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!

ポンコツロボ太

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第24話 遠回りの朝

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「完っっ全に遠回りだ……」

 俺の目指すべき魔王領は大陸の東の果て。
 なのに、俺たちは森を西へ西へと歩き続けていたのだ。

 遠回りが嫌いな俺のテンションはだだ下がり。

「仕方がないだろ。ドゥーイ殿は公爵の元を離れて、アンスルの町に居を構えているんだからな」

 そう、金庫開けを頼む鍛冶師ドゥーイなるおっさんだか爺さんだかが住む場所が目的地から反対方向なのだ。

 これで金庫の中身が空なら、俺はドゥーイをブン殴る自信がある。

「だいたい、本当にそいつ、アンスルなんて町にいるのかよ」

「多分ですけど、アンスルの町で冒険者相手に商売をするって言ってたから……」

「多分かよぉ……」

 それを聞いて俺の足取りはさらに重くなる。
 やる気のないときは、やらないに限る!

「休憩だ!きゅーーーけーーーー」

 俺はそのまま地面に座り込んだ。俺にならってエルも張り出した木の根の上に腰を下ろして一息ついている。
 しかし、いぜん立ったままのヴィーの顔は何やら不満げである。
 そんなヴィーを俺は見上げる。

「なんだよ?」

「追手がかかっていう時に休憩してる暇なんてあるのか?」

「おうおう、俺を心配してくれてんのか?お優しい、ヴィーちゃんだね」

「だれがお前なんぞ心配するか!私が気がかりなのは、戦闘に巻き込まれるエルのことだ」

「大丈夫だって。ちゃんと警戒してるし、この辺りにゃ無法都市の奴らはいない……はず、たぶんな」

 昨日の追手に、他の連中がどこを探しているのか抜かり無くしっかりと聞いている。

「頼りない奴だな」

 この女は、いちいち文句を言わなきゃ死んじまうのかね。
 ぶつぶつと不満を垂れながらも、やっとヴィーも地べたに座る。

 俺は、いつも機嫌の悪いヴィーから、エルに視線を移す。どうにもエルの奴、顔色が悪い気がする。

「大丈夫か?」

「え?」

 俺が心配するのがそんなにおかしいのか?
 驚いた顔でエルが俺を見返す。

「エル、お前、顔色悪いぞ」

「えっと……」

 言い淀むエルに変わってヴィーが答える。

「お前が安酒なんか飲ませるからだ」

 なるほどね。単なる二日酔い……いや三日酔いか。

「ったく、軟弱な奴だな。しかたねえ、ちょっとついてこい」

 俺は立ち上がり、エルを呼ぶ。

「ど、どこに行くの?」

 どこに連れていかれるのかと不安げな表情のエルであるが、それでも言われた通り立ち上がって俺の後に続く。

「お前の二日酔いに効く薬草を取りにだよ。ここじゃ自分のことは自分でするんだ」

「ならば、私も行こう」

 そう言ってなぜかヴィーが立ち上がるが、俺はそれを制止する。

「お前はここで留守番だ」

「な、なぜだ!?」

「だって、お前いちいちエルをかばいたがるからなぁ。それに今はお前の文句にゃ付き合いたくない。良いから、ヴィーは座って待ってろ。いいな、だ」

 首輪の強制力で俺はヴィーを黙らせ、エルと二人で森の中に入った。
 その背後では鬼の形相でヴィーが睨み付けているが、俺にゃ知ったこっちゃない。

 俺は立ち並ぶ森の木を見る。
 ホホハズリにナガラケ、シラランカなどの広葉樹が多く、下草にカナギヤブや名も分からん雑草がワサワサ生えている。

 水辺が近いのか、ミズアゲハがユラユラと飛んでいた。
 俺はそのミズアゲハについて行くように森の中を進む。

「どこに行くの?」

「ん?もうすぐ着くぞ」

 水場独特の湿気った匂いがする。
 俺の周りを飛ぶミズアゲハも次第に増える。

「きれい……。光に反射して七色に光ってる」

 ミズアゲハの群れを見て感動する、エル。

 こんなもん羽を取っちまえばバッタと変わらん。そんなデリカシーのない言葉はケツの中にしまっておいてやろう。

 俺とエルはミズアゲハと共に湿地に出た。

「さて……と」

 俺はあたりを見回す。

「何を探しているんですか?」

「毒消し草……ハッタイって草なんだが……おお、あったあった」

 湿地の周りに生えるひと際大きな葉っぱが今回の目的のブツだ。

「へえ。これが毒消しになるんですね」

 珍しいものでも見るかのように、ハッタイの葉をまじまじとエルは見る。

 俺は茎から生える一番新しい若葉を一枚とると、エルに渡してやる。

「いいか、奥歯でしっかりガジガジするんだぞ」

「はい」

 無知とは恐ろしいものでエルは俺が教えた通りハッタイの葉を奥歯でかみつぶした。

「ん゛ん゛~!!!ぺっ!ぺ!」

 あまりの苦さにエルは後ろを向いてハッタイの葉を吐き出した。

「ギシシ。どうだ美味いか?」

「マシラのバカ!!!これ毒でしょ!!うぅ、舌がひりひりするよぅ」

「失礼な奴だなあ。こりゃ、れっきとした毒消し草だぞ。ま、生で食う奴なんていないけどな」

 本来は乾燥させて砕いて煎じて飲むのが普通だ。

「うぅぅ、だまされたよぅ」

「んな、泣くなよ。ほれ、二日酔いは治っただろ?」

「そんなの苦すぎてわからないわよ!」

 かなりご立腹のご様子。
 仕方ねえな。俺はエルの気を紛らわせるために、近くからもう一枚葉っぱを毟り取る。

「なあ、エル。これがお前の言う毒草。んで、こっちがさっきの毒消し草。違いがわかるか?」

 俺が手に持つのはどちらも同じ色、同じ形の葉っぱ。でも、片方は正真正銘の毒草だ。

「どっちも、さっきのハッタイって言う葉っぱに似てる……本当に違うの?」

「もちろん。魔法が使えるエルなら分かると思うぜ」

 俺のヒントに何か気づくことがあったのか両方の葉っぱを穴が開くほど凝視する。

「あっ!!魔素だ。ハッタイの葉っぱの方が魔素が少ない」

「あたりぃ!だいたい魔素を多く含んだ植物にゃ毒も含まれるからな。もし、森の中で迷って腹減っても魔素が多い植物は食うなよ」

「わかったわ。教えてくれてありがと」

 俺への恨みなど一瞬で消し飛んで羨望の眼差しと言ってもいいくらいのキラキラした目でこちらを見てくる。

 そのまっすぐな目が俺は苦手だ。
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