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第36話 アンスル大通り
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一仕事を終え冒険者ギルドをあとにした俺は意気揚々と町中を歩く。
カケルが町にいないだけでこんなに快適だとは思わなかったぜ。すれ違う人、一人一人と握手してやりたいくらい気分が良い!
このまま宿屋に戻ってもいいが、どこか勿体なさを感じて俺はそのまま町を散策することに決めた。
ギルド通りから宿屋のある裏路地を通り過ぎ、大通りに出る。
大通りには金物屋や食料品日用雑貨店から武具商によろず屋なんてものまである。
どの店も隣の建物との間が広く取られ、町全体が広々と感じることができる。
俺も領主になったら、こんな町を作ってやろう。
そう思って町を見渡しながら歩いていると、ふいに路地から声を掛けられる。
「マシラじゃないか?用とやらは済んだのか?」
それは買い物帰りなのか両手で荷物を抱えるように持ったヴィーだった。
ヴィーの方も機嫌が良いようでいつもより声が明るい。
「おお、万事順調よ」
ご機嫌な気分の俺はヴィーの持つ紙袋をふんだくるように受け取った。
「す、すまないな」
「ケケケケ。今は気分が良いからな。これくらい構やしねえよ」
俺は受け取った荷物をマジックバッグに入れながら、ヴィーの姿を見る。
ヴィーは買った服をすぐに着たようで、白色のブラウスに黒い細身のズボンとシンプルな出立ちだが、それが良く似合っている。
赤毛の前髪は横に流してピンで留めていた。
「ギシシシ。なかなか似合ってるじゃねえか」
「そ、そうか。お前に褒められると、なんだかこそばゆいな」
少し照れくさそうにしながら嬉しそうにヴィーが顔をわずかに赤らめ、人差し指で小さく頬を掻く。
「……ねえ、私は?私はどう?」
ヴィーの後ろに隠れていたエルがふくれっ面した姿を現す。
しかし、俺はその表情よりも気になることがあった。
「なんだよ、お前も服買ったのか?」
ヒョッコリのお下がりを脱ぎ捨て新しい服を着ていたのだ。
その姿は白いブラウスに薄い青のワンピース、腰には前掛けをして町娘のような恰好だ。しかし、さすがは公爵家の令嬢様。どこか気品を漂わせていた。
「もしかして、だめ……だった?」
エルは叱られると思い、あざとく上目遣いでこちらを覗ってきやがった。
「俺のやった金で足りるんなら文句はねえけどよ……」
不覚にも「可愛いじゃねえか……」そうエルに思わされた俺は、少し腹が立ってエルのでこっぱちを指でピンッとはじいてやる。
「いたいっ。なにするのよぉ……」
「ケケケ、なんでもねえ。それより、エルも良い感じじゃねえか」
「ほ、ほんとう?ありがと」
俺に褒められて何が、そこまで嬉しいのか……
エルは笑いながら「どう?」と、くるりと回ってスカートを翻えしてみせる。
「エル!やめてください。下着が見えてしまいます」
慌ててヴィーがエルを止めた。
「あっ。ごめんなさい」
顔を赤らめ、巻き上がるスカートを押さえる。
「謝るこたぁねえよ。俺はパンツ見えた方が嬉しいからな。もっと回ってもいいんだぞ」
「もう……バカ」
「お前ってやつは……」
おっかしいな……正直は最良の策だと何処かの誰かが言ってた気がするんだけどな。
二人は明らかに俺を蔑む目をしていた。
まあ、正直に生きて得をするのは坊さんくらいかね……
俺は気を取り直して会話を続ける。
「二人とも買い物は済んだのか?」
「ええ。これから、宿に戻ろうとしてたところなの」
ヴィーと顔を見合わせ二人は頷き合う。
特に用のない俺もそれならばと今来た道を引き返そうと回れ右する。
「そうかい……なら、一緒に宿に戻るとするか」
特に用のない俺もそれならばと今来た道を引き返そうと回れ右する。
「ちょっと待て。マシラも何か買う物があって、出歩いていたんじゃないのか?」
「いんや。ただ、ブラブラ歩いてただけだ。お前らが宿に戻るってんなら俺も帰るかな」
それを聞いたヴィーは俺と並んで宿屋の方へと歩き出した。
しかし、それに続かない者が一人いた。
「そうだ!ねえ、マシラも用が終わって時間があるなら、三人で町の中、歩いてみない?まだあっちの広場の方には行ってないし」
エルは名案でも浮かんだかのようにパチンと手を叩いて、広場につながる道をゆびさした。
「私はかまわないが……」
ヴィーが、どうするか俺が決めろと、視線を送ってくる。
エルも再びぶりっ子全開の上目遣いで「行きましょ」と、俺を見てくる。
別にエルに絆されたわけじゃねえが、エルの案に乗ってみることにした。
「ま、宿に戻ったところですることはねえしな。行ってみるか」
「やった」
小さく喜びの声を上げてエルが先頭を跳ねるように歩く。その様子を見てヴィーが「ふふふ……」と笑みをこぼした。
「何がおかしいんだよ」
「いや。あんなに楽しそうなエルを見るのは久しぶりで……つい、な」
「お前はエルの保護者かよ……」
「……そうだな。そう思っていたのかもしれないな。エルの母君が生きておられたころは、毎日ああやって笑っていてくれたんだ。私は心のどこかで、エルのあの時の笑顔を取り戻したいと思っていたんだろうな……母親でもない、私が……」
楽しそうに先頭を歩くエルを見つめるヴィーの顔は少し曇っているように見えた。
「けっ!しみったれた話は嫌いだ。だいたい、お前がエルの母親代わりなんて年的に無理があるだろ?良いとこ姉妹って感じだな」
「……そうか?」
俺にエルと姉妹と言われ少し嬉しそうにヴィー笑う。
「あんまり似てねえけどな。ケケケ」
二人で話をしていると先を歩くエルが振り返る。
「早く行こうよー」
道の先で笑顔で手招きしていた。
「しかし、こうやって笑うエルを見るのが、まさか盗賊に誘拐された先だったなんて思いもしなかったよ」
「ギシシシ。俺に感謝しろよ」
「はっ!誰がマシラなんぞに感謝するものか」
そういってヴィーは歩く速度を速めてエルに追いつく。
一瞬だけ見えたヴィーの横顔は、いつもの機嫌の悪い顔ではなく穏やかな笑顔をしていたように見えた。
カケルが町にいないだけでこんなに快適だとは思わなかったぜ。すれ違う人、一人一人と握手してやりたいくらい気分が良い!
このまま宿屋に戻ってもいいが、どこか勿体なさを感じて俺はそのまま町を散策することに決めた。
ギルド通りから宿屋のある裏路地を通り過ぎ、大通りに出る。
大通りには金物屋や食料品日用雑貨店から武具商によろず屋なんてものまである。
どの店も隣の建物との間が広く取られ、町全体が広々と感じることができる。
俺も領主になったら、こんな町を作ってやろう。
そう思って町を見渡しながら歩いていると、ふいに路地から声を掛けられる。
「マシラじゃないか?用とやらは済んだのか?」
それは買い物帰りなのか両手で荷物を抱えるように持ったヴィーだった。
ヴィーの方も機嫌が良いようでいつもより声が明るい。
「おお、万事順調よ」
ご機嫌な気分の俺はヴィーの持つ紙袋をふんだくるように受け取った。
「す、すまないな」
「ケケケケ。今は気分が良いからな。これくらい構やしねえよ」
俺は受け取った荷物をマジックバッグに入れながら、ヴィーの姿を見る。
ヴィーは買った服をすぐに着たようで、白色のブラウスに黒い細身のズボンとシンプルな出立ちだが、それが良く似合っている。
赤毛の前髪は横に流してピンで留めていた。
「ギシシシ。なかなか似合ってるじゃねえか」
「そ、そうか。お前に褒められると、なんだかこそばゆいな」
少し照れくさそうにしながら嬉しそうにヴィーが顔をわずかに赤らめ、人差し指で小さく頬を掻く。
「……ねえ、私は?私はどう?」
ヴィーの後ろに隠れていたエルがふくれっ面した姿を現す。
しかし、俺はその表情よりも気になることがあった。
「なんだよ、お前も服買ったのか?」
ヒョッコリのお下がりを脱ぎ捨て新しい服を着ていたのだ。
その姿は白いブラウスに薄い青のワンピース、腰には前掛けをして町娘のような恰好だ。しかし、さすがは公爵家の令嬢様。どこか気品を漂わせていた。
「もしかして、だめ……だった?」
エルは叱られると思い、あざとく上目遣いでこちらを覗ってきやがった。
「俺のやった金で足りるんなら文句はねえけどよ……」
不覚にも「可愛いじゃねえか……」そうエルに思わされた俺は、少し腹が立ってエルのでこっぱちを指でピンッとはじいてやる。
「いたいっ。なにするのよぉ……」
「ケケケ、なんでもねえ。それより、エルも良い感じじゃねえか」
「ほ、ほんとう?ありがと」
俺に褒められて何が、そこまで嬉しいのか……
エルは笑いながら「どう?」と、くるりと回ってスカートを翻えしてみせる。
「エル!やめてください。下着が見えてしまいます」
慌ててヴィーがエルを止めた。
「あっ。ごめんなさい」
顔を赤らめ、巻き上がるスカートを押さえる。
「謝るこたぁねえよ。俺はパンツ見えた方が嬉しいからな。もっと回ってもいいんだぞ」
「もう……バカ」
「お前ってやつは……」
おっかしいな……正直は最良の策だと何処かの誰かが言ってた気がするんだけどな。
二人は明らかに俺を蔑む目をしていた。
まあ、正直に生きて得をするのは坊さんくらいかね……
俺は気を取り直して会話を続ける。
「二人とも買い物は済んだのか?」
「ええ。これから、宿に戻ろうとしてたところなの」
ヴィーと顔を見合わせ二人は頷き合う。
特に用のない俺もそれならばと今来た道を引き返そうと回れ右する。
「そうかい……なら、一緒に宿に戻るとするか」
特に用のない俺もそれならばと今来た道を引き返そうと回れ右する。
「ちょっと待て。マシラも何か買う物があって、出歩いていたんじゃないのか?」
「いんや。ただ、ブラブラ歩いてただけだ。お前らが宿に戻るってんなら俺も帰るかな」
それを聞いたヴィーは俺と並んで宿屋の方へと歩き出した。
しかし、それに続かない者が一人いた。
「そうだ!ねえ、マシラも用が終わって時間があるなら、三人で町の中、歩いてみない?まだあっちの広場の方には行ってないし」
エルは名案でも浮かんだかのようにパチンと手を叩いて、広場につながる道をゆびさした。
「私はかまわないが……」
ヴィーが、どうするか俺が決めろと、視線を送ってくる。
エルも再びぶりっ子全開の上目遣いで「行きましょ」と、俺を見てくる。
別にエルに絆されたわけじゃねえが、エルの案に乗ってみることにした。
「ま、宿に戻ったところですることはねえしな。行ってみるか」
「やった」
小さく喜びの声を上げてエルが先頭を跳ねるように歩く。その様子を見てヴィーが「ふふふ……」と笑みをこぼした。
「何がおかしいんだよ」
「いや。あんなに楽しそうなエルを見るのは久しぶりで……つい、な」
「お前はエルの保護者かよ……」
「……そうだな。そう思っていたのかもしれないな。エルの母君が生きておられたころは、毎日ああやって笑っていてくれたんだ。私は心のどこかで、エルのあの時の笑顔を取り戻したいと思っていたんだろうな……母親でもない、私が……」
楽しそうに先頭を歩くエルを見つめるヴィーの顔は少し曇っているように見えた。
「けっ!しみったれた話は嫌いだ。だいたい、お前がエルの母親代わりなんて年的に無理があるだろ?良いとこ姉妹って感じだな」
「……そうか?」
俺にエルと姉妹と言われ少し嬉しそうにヴィー笑う。
「あんまり似てねえけどな。ケケケ」
二人で話をしていると先を歩くエルが振り返る。
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道の先で笑顔で手招きしていた。
「しかし、こうやって笑うエルを見るのが、まさか盗賊に誘拐された先だったなんて思いもしなかったよ」
「ギシシシ。俺に感謝しろよ」
「はっ!誰がマシラなんぞに感謝するものか」
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