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第51話 エルとの朝
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ひび割れた窓から嫌になるほど燦燦とした日差しが、俺に朝が来たことを告げる。
目が覚めて、まず目についたのは不貞腐れているエルの姿だった。
エルは暖炉の前の床にちょこんと座り、話し掛けるヴィーにそっぽ向いて答えていた。
あまり見かけない光景にじっと二人のやり取りを凝視していると、困り果てたヴィーの奴と目が合う。
その目は助けてくれとすがりつく哀れな犬のようで仕方なく俺はエルに声を掛けることにした。
「何、楽しそうなことしてんだ?」
起きたことを知らせるためにエルに声をかける。
「おはよ、マシラ。怪我はどう?」
どことなく抑揚のない挨拶がエルの口から返ってきた。不機嫌なクセに怪我の具合を確かめる辺りがエルらしい。
俺は怪我の酷かった部位を確かめる。
まずは肩だ。グルグルと肩を回してやる。
矢が貫通していた傷は塞がり、わずかに引っ張られるような痛みはあるが、我慢できる。
足の方は……あの神剣で刺されただけあって、力を入れるとキーンとした神経を触られるような痛みが脳天まで突き抜ける。
まぁ、これも我慢すりゃ歩ける。大丈夫だと自分に言い聞かせ、こちらを心配そうにチラチラと伺うエルに答える。
「んー……まぁまぁってとこだな。傷はエルが治してくれたんだってな?助かったぜ」
何が不満なのか、たった一言「うん」とだけ返してきやがった。
人が礼を言ってやってんのにエ子供のように拗ねるエルにだんだんと俺は腹が立ってきた。
「何をそんなにいじけてやがんだ!!てめぇはガキか!!?」
足の痛みをおしてエルにズカズカと詰め寄るが、途中でヴィーに止められる。
「やめろ。エル、昨夜、寝たふりして私たちの会話を聞いてたみたいなんだ」
小声でエルの拗ねている理由をヴィーがヒソヒソと教えてくるが、納得がいかない。
「それがガキみてぇに、いじけるのと何の関係があるってんだ!!」
俺は唾をエルまで飛ばす勢いで怒鳴りつける。しかし、そんな俺をなだめるようにヴィーが俺の口に人差し指を押し当てる。
「しぃーっ!静かにしろっ!あのな、お前が私にユニークスキルの秘密を教えてくれただろ?どうも、それがまずかったらしい」
「はぁ、どういう事だ?エルにも教えても良いって言っただろ?お前、もしかして教えなかったのか?」
ヴィーが、エルに対してそんなことをするとは思えないが、それしかエルが拗ねる原因が思い浮かばない。
「教えてあげたさ。だけど違う、そういう事じゃないんだ。実際、エルから聞いた訳じゃないんだが、たぶん、エルは、お前から秘密を一番に聞きたかったんだと思う」
「ん?」
一瞬意味が分からず、頭の中が疑問符で一杯になる。
しかし、すぐに謎は解けた。
「なんだよ、エル!!お前、ヴィーに焼きもち妬いてんのか?」
俺の楽しい癖の一つ。そして仲間内では直せと常々言われる癖が発動する。
それは思ったことはすぐに口に出すことだ。
普通の奴ならシメシメと内心思う所を俺はいの一番に口にした。
「ち、ちがうよ。そんなのじゃないっ!!」
顔を真っ赤に否定するあたり間違いねえ。
俺はさらに近づいて、寝癖のついたエルの頭をガシガシと撫で回す。
「可愛いやつめ。ケケケ、そんなに俺の秘密を知りたかったのかぁ?」
年少のガキを相手するようにおちょくってみる。
するとエルの奴、俺の手を振り払ってプンスカ怒り出す。なんともからかいがいのあるカワイイやつだ。
「知りたくなんてないよ!ただ、仲間外れみたいで寂しかっただけ!!」
「嘘いうな。特別に俺の秘密を教えてやるよ」
「えっ!?」
知りたくない、なんて言ってたくせに興味津々な目で俺を見上げる。
そんな顔されちゃ、意地悪したくなるぜ。
俺は大袈裟にキョロキョロと周りを見渡し、エルの耳に口を寄せ小さく囁く。
「実はな、尻にメチャクチャでかいニキビが出来てんだ」
「……もうっ!!」
エルはほっぺ膨らまして怒って見せる。その姿に爆笑が止まらねえ。
「ケケケケケケケケ!!あー、エルをからかうのは楽しいぜ」
あんまりにも可笑しくて息を整えるのも一苦労だ。
そんな俺にヴィーが爪先で蹴りをいれる。
「痛ぇっ!!」
なにすんだと睨み返すせば、ヴィーがエルを見てみろと、顎で示す。
促されるように目線をエルに移すと、エルはうつむき、今にも泣きそうな顔になっていた。
「はぁ……ったくよぉ。こんなことで泣くなよ」
床にペタンと座るエルの横に俺も腰かける。
「俺の秘密なんて知って面白いかぁ……?」
エルは首を横に振る。これは一体どっちの意味なんだ?
分からねえが会話を続ける。
「お前が知りたがってた気配探知の有効範囲なんだがな……」
何だか、エルに負けた気分になってきた。
「覚えてたの?」
エルが再び顔を上げる。
「覚えているも何も、そんな事聞いてきたのはエルが初めてだ」
「そ、そうなんだぁ……。へえ……」
「ああ。教えちまうと俺にゃ損しかねえからあの時は黙ってたがよ、今でも知りたいか?」
エルは一時思案し、首を横に振る。
「いい。マシラの迷惑になりたくないから……」
そう言いつつも、その顔には知りたいと書かれているのが見え見えで可笑しい。
「ケケケ。遠慮すんな。俺の気配探知の有効範囲は、その日の調子にもよるが、だいたい俺を中心に歩幅で五百歩ほどだ。もう少し遠くも測れるが精度が落ちる。
いいか、このことは誰にも言うなよ」
「うん、わかったわ。マシラの信頼の証だと思って誰にも言わないわ。約束する」
昨日のヴィーとの会話を真似してエルが答えた。
その顔は光が射すように明るい。
はぁ……こりゃ、完全に俺の負けか……
頭をぼりぼりかきむしっていると「ゴホン」と咳ばらいをわざとらしくして、ヴィーが自分の存在をアピールする。
それなら、言うことは一つしかない。
「もちろんヴィーにも…………内緒だぞ!」
「なっ!!」
もちろん今までのエルと俺の会話はヴィーにも聞こえていただろう。だからこそ、ヴィーが期待したのは昨日の夜のように「ヴィーになら言ってもいいぞ」の一言。
しかし、思い描いていたものとは真逆の言葉にヴィーが絶句する。
その驚いた顔を見てエルは大喜びで俺に答える。
「もっちろん!!」
エルのヤツ冗談も分かって来やがった。
「ちょっと待ってくださいよ、エルぅ……」
二人がじゃれつく姿を見て、ほほえましく思っちまう俺は、どこかが変になってきているのだろうか……
目が覚めて、まず目についたのは不貞腐れているエルの姿だった。
エルは暖炉の前の床にちょこんと座り、話し掛けるヴィーにそっぽ向いて答えていた。
あまり見かけない光景にじっと二人のやり取りを凝視していると、困り果てたヴィーの奴と目が合う。
その目は助けてくれとすがりつく哀れな犬のようで仕方なく俺はエルに声を掛けることにした。
「何、楽しそうなことしてんだ?」
起きたことを知らせるためにエルに声をかける。
「おはよ、マシラ。怪我はどう?」
どことなく抑揚のない挨拶がエルの口から返ってきた。不機嫌なクセに怪我の具合を確かめる辺りがエルらしい。
俺は怪我の酷かった部位を確かめる。
まずは肩だ。グルグルと肩を回してやる。
矢が貫通していた傷は塞がり、わずかに引っ張られるような痛みはあるが、我慢できる。
足の方は……あの神剣で刺されただけあって、力を入れるとキーンとした神経を触られるような痛みが脳天まで突き抜ける。
まぁ、これも我慢すりゃ歩ける。大丈夫だと自分に言い聞かせ、こちらを心配そうにチラチラと伺うエルに答える。
「んー……まぁまぁってとこだな。傷はエルが治してくれたんだってな?助かったぜ」
何が不満なのか、たった一言「うん」とだけ返してきやがった。
人が礼を言ってやってんのにエ子供のように拗ねるエルにだんだんと俺は腹が立ってきた。
「何をそんなにいじけてやがんだ!!てめぇはガキか!!?」
足の痛みをおしてエルにズカズカと詰め寄るが、途中でヴィーに止められる。
「やめろ。エル、昨夜、寝たふりして私たちの会話を聞いてたみたいなんだ」
小声でエルの拗ねている理由をヴィーがヒソヒソと教えてくるが、納得がいかない。
「それがガキみてぇに、いじけるのと何の関係があるってんだ!!」
俺は唾をエルまで飛ばす勢いで怒鳴りつける。しかし、そんな俺をなだめるようにヴィーが俺の口に人差し指を押し当てる。
「しぃーっ!静かにしろっ!あのな、お前が私にユニークスキルの秘密を教えてくれただろ?どうも、それがまずかったらしい」
「はぁ、どういう事だ?エルにも教えても良いって言っただろ?お前、もしかして教えなかったのか?」
ヴィーが、エルに対してそんなことをするとは思えないが、それしかエルが拗ねる原因が思い浮かばない。
「教えてあげたさ。だけど違う、そういう事じゃないんだ。実際、エルから聞いた訳じゃないんだが、たぶん、エルは、お前から秘密を一番に聞きたかったんだと思う」
「ん?」
一瞬意味が分からず、頭の中が疑問符で一杯になる。
しかし、すぐに謎は解けた。
「なんだよ、エル!!お前、ヴィーに焼きもち妬いてんのか?」
俺の楽しい癖の一つ。そして仲間内では直せと常々言われる癖が発動する。
それは思ったことはすぐに口に出すことだ。
普通の奴ならシメシメと内心思う所を俺はいの一番に口にした。
「ち、ちがうよ。そんなのじゃないっ!!」
顔を真っ赤に否定するあたり間違いねえ。
俺はさらに近づいて、寝癖のついたエルの頭をガシガシと撫で回す。
「可愛いやつめ。ケケケ、そんなに俺の秘密を知りたかったのかぁ?」
年少のガキを相手するようにおちょくってみる。
するとエルの奴、俺の手を振り払ってプンスカ怒り出す。なんともからかいがいのあるカワイイやつだ。
「知りたくなんてないよ!ただ、仲間外れみたいで寂しかっただけ!!」
「嘘いうな。特別に俺の秘密を教えてやるよ」
「えっ!?」
知りたくない、なんて言ってたくせに興味津々な目で俺を見上げる。
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俺は大袈裟にキョロキョロと周りを見渡し、エルの耳に口を寄せ小さく囁く。
「実はな、尻にメチャクチャでかいニキビが出来てんだ」
「……もうっ!!」
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「ケケケケケケケケ!!あー、エルをからかうのは楽しいぜ」
あんまりにも可笑しくて息を整えるのも一苦労だ。
そんな俺にヴィーが爪先で蹴りをいれる。
「痛ぇっ!!」
なにすんだと睨み返すせば、ヴィーがエルを見てみろと、顎で示す。
促されるように目線をエルに移すと、エルはうつむき、今にも泣きそうな顔になっていた。
「はぁ……ったくよぉ。こんなことで泣くなよ」
床にペタンと座るエルの横に俺も腰かける。
「俺の秘密なんて知って面白いかぁ……?」
エルは首を横に振る。これは一体どっちの意味なんだ?
分からねえが会話を続ける。
「お前が知りたがってた気配探知の有効範囲なんだがな……」
何だか、エルに負けた気分になってきた。
「覚えてたの?」
エルが再び顔を上げる。
「覚えているも何も、そんな事聞いてきたのはエルが初めてだ」
「そ、そうなんだぁ……。へえ……」
「ああ。教えちまうと俺にゃ損しかねえからあの時は黙ってたがよ、今でも知りたいか?」
エルは一時思案し、首を横に振る。
「いい。マシラの迷惑になりたくないから……」
そう言いつつも、その顔には知りたいと書かれているのが見え見えで可笑しい。
「ケケケ。遠慮すんな。俺の気配探知の有効範囲は、その日の調子にもよるが、だいたい俺を中心に歩幅で五百歩ほどだ。もう少し遠くも測れるが精度が落ちる。
いいか、このことは誰にも言うなよ」
「うん、わかったわ。マシラの信頼の証だと思って誰にも言わないわ。約束する」
昨日のヴィーとの会話を真似してエルが答えた。
その顔は光が射すように明るい。
はぁ……こりゃ、完全に俺の負けか……
頭をぼりぼりかきむしっていると「ゴホン」と咳ばらいをわざとらしくして、ヴィーが自分の存在をアピールする。
それなら、言うことは一つしかない。
「もちろんヴィーにも…………内緒だぞ!」
「なっ!!」
もちろん今までのエルと俺の会話はヴィーにも聞こえていただろう。だからこそ、ヴィーが期待したのは昨日の夜のように「ヴィーになら言ってもいいぞ」の一言。
しかし、思い描いていたものとは真逆の言葉にヴィーが絶句する。
その驚いた顔を見てエルは大喜びで俺に答える。
「もっちろん!!」
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