誰も仲間に入れてくれない補助魔導師はソロで頑張る

Akao

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第二話

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日が傾きかけた夕方頃。ガンガルディア町の入口の門の前に立つ門番が街へ入ろうとするラルズに気付いた。ラルズの様子はぐったりしていて顔色も少し悪い。
「お帰り。早かったじゃないか。1人でクエストのためにゴウア村へ行った男。」
「ラルズでいいよ。」
「ラルズか。覚えておこう。元気がないようだがクエストが失敗したのか?」
「いや、成功も大成功。そのはずなんだけどな。」
「なるほど。クエスト用紙を無くしたのか。」
ラルズは自分を軽く嘲笑する。
「そういうこと。だけどクエストなんて星の数ほどあるし、またやればいいだけだよ。」
とラルズは言うが、門番は不服そうだ。
「そうは言うが、見たところとても疲れているじゃないか。何をするにもまずは一旦休まないといけない。疲れが影響して怪我をしたり、クエストを失敗したり、また同じようにクエスト用紙を・・・。」
「はいはい。わかったよ。」
「・・・ならいい。呼び止めてすまなかった。」
「別に。心配してくれたんだろ?」
ラルズは門を通って街の中へ入り、おぼつかない足取りでギルド施設へ急いだ。


小一時間過ぎた時、ギルド施設の中で受付嬢の前にいたラルズは掲示板から持ってきたクエスト用紙を数枚持って騒いでいた。
「じゃ、じゃあこのクエストは!?」
「ダメっすね。冒険者レベルが足りません。」と受付嬢は冷静に言う。
「なんだよそれ!あれもこれもダメって!」
「パーティリーダーの実績とか信頼度みたいなもんで、クエストをやればやるほど溜まっていくんすけど、ラルズさんはゼロなので簡単なクエストしかできませんね。」
「確かにギルド入った時同じこと言われたっけな・・・。じゃあ俺ができそうなクエストある?」
「えーっとですね。待っててください。」
受付嬢は受付から出てクエスト掲示板に移動する。掲示板をパッと見た受付嬢は戻ってきた。
「無いっす。」
「無い!?」
「無いっすよ。」
「でも無いなんてこと・・・。」
「無いんすわ。」
「無いのかよ・・・。」
「無いんすよね。」
「何回も言わなくていいから。そっちも無い無い言うの面倒だろ。」
「そういうの無いっす。」
と受付嬢きっぱり言った。
「無かったか~。」
「というか、今日の昼渡したばっかりのクエストはどうしたんすか?」
「・・・無くした。紙が無い。」
言いづらそうに小声で言った。
「無いんすか。」
「でも熊は退治したんだよ!?信じてくれ!」
「それでも報酬は無いっす。」
「待ってよ!それは無いだろ?」
「運が無かったということで。」
そう言って受付嬢は受付に戻ろうとした時、ギルド施設の扉が開いて、さっきラルズが会った門番が入ってきた。

門番は辺りを見回した。誰かを探しているようだった。
「ラルズはいるか?」
不意に名前を呼ばれたラルズは不思議そうに近づく。
「門番。どうしたんだよ?」
「この紙、ラルズのものだろ?」と門番は懐から出したクエスト用紙を見せた。それは間違いなくラルズのクエスト用紙で、さらに依頼主であるゴウア村の村長のハンコが追加されていた。
「ナイス!これだよこれ!」
門番は兜をしながらほっとしたような息をついた。
「合っていたか。ゴウア村から男が来てな。これを渡してきたんだ。ゴウア村にクエストがあって、クエスト用紙を無くしたのはラルズしかいない。」
「助かったよ!」
ラルズはクエスト用紙に手を伸ばすが、門番は用紙をまた自分の懐に仕舞った。
戸惑うラルズ。
「えっ?」
「ひとつ条件がある。私と手合わせして欲しい。」
「はぁ?」
「ゴウア村の男から聞いた。ラルズは熊を一撃で仕留めたそうじゃないか。それも素手で。だからこそ君の力が見たい。」
ラルズは呆れたように受付嬢に話す。
「クエスト用紙を盾に戦いさせるのかよ・・・。なあ、王家に仕える者がそんなんでいいのか?」
「もちろんダメっすよ。これは上に報告するしかないっすね。」
「待ってくれ!それだけは待ってくれ!」と門番は止めるように右手を突き出してとても慌てだした。本当に嫌なことらしい。

門番はスっと立ち誠心誠意話し始める。
「私はただ君の力を見て、それを経験として活かしたいのだ。・・・王家のためにも。」
腰にある剣の武器を外して床に置いた。ガシャンと剣の落ちる音がギルド中に響いた。
「時間は取らせない。素手で勝負だ。1度でも攻撃を直に当てられれば勝ち。私は鎧を着ながらやろう。」
「・・・どうしてもっていうなら。」とラルズは戦う構えを見せた。すると周りがラルズと門番の方に注目しだした。
ギルド内には血気盛んな人間が少なくない。むさくるしい人達が騒ぎ出した。
「お?喧嘩か?」
「いいぞ!やっちまえ!」
「ヒューー!」
ギルド内はより一層騒がしくなった。
(うるさい・・・ただでさえいつも耐えられるギリギリのうるささなのに気が滅入る・・・。)
ラルズは一気に精神力が削られた。気分のせいか具合が悪くなる。
「大丈夫っすか?顔色悪いっすよ?」
「下がってろ。」と覇気が無い声で言った。

門番は構えた。「行くぞ!」という掛け声と共に攻撃を仕掛ける。鎧を来ているはずなのに動きは機敏で、素早い蹴りを繰り出した。
しかしその蹴りはラルズの横腹の手前でピタリと止まった。かと思えば門番は足を戻して普通に立った。
「いや、やめだ。乗り気じゃ無さそうだ。悪かった。」
それを聞いた周りのギルドにいる人間はまた騒ぐ。
「んだよ!期待させやがって・・・。」
「腰抜けが!」
周りの人は各々好き勝手言いながらゾロゾロとラルズ達から離れていく。
門番は申し訳なさそうに口を開いた。
「とことん自分勝手で本当に済まない。兵士失格だな、私は。これは返して・・・」
懐をまさぐるが、そこには捜し物のクエスト用紙が無かった。
「何っ!無いだと!?」
「何探してんの?」
ラルズはそう言いながら1枚の紙を右手に持って見せつけるように揺らす。
「そっ、それは!いつの間に!」と目に見えるように困惑する門番。
「なんだよ。俺のものを俺が持っててなんか悪いのか?」
それを聞いた門番は少し笑った。
「・・・完敗だよ。ありがとう。代わりのものが門番をしているが、そろそろ戻らなければならない時間だ。」
門番は振り返って立ち去ろうとする。
「じゃあな門番。」
「セヴィルカーナだ。出来ればでいいが覚えてほしい。さらばだ。」
と門番はギルドから自分の職場へと戻っていった。受付嬢はその光景をバッチリ見ていたため、気になってラルズに尋ねる。
「どうやって取ったんすか?その紙。あの人も王家の兵士として過酷な訓練を受けているはずなのに。」
「普通に取っただけだよ。」
自身に行動速度上昇魔法スピードバフを300かけてから、セヴィルカーナが蹴りをしている時に普通に取っただけなのだが、受付嬢が気付くはずがない。受付嬢目線ではまるで手品のように映っただろう。
「だからそれをどうやって・・・。」
「そんなことより早く報酬だよ。腹減って仕方ないんだ。」
ラルズは受付にその紙を置いた。
「えぇーっとはいはい。」
それを受け取った受付嬢は奥に行き、戻ってくると金の入った袋を持っていてそれを手渡した。クエスト用紙に書いてある金と同じ額だ。
「こちらっす。冒険者レベルゼロにしちゃそこそこ高い報酬っすね。」
「気分良くないなその言い方。」
と言いながら食堂へ向かおうとするラルズ。
「まあ、無事で良かったっすよ。」
「ん?なんか言った?よく聞こえなかった。」
「何でもないっすよ。用が無いなら早く出ていってください。」
「うるせえ。言われなくても。」
ラルズはギルドを足早に出ていった。

食堂の中でラルズは机に座り今か今かとステーキを待ちわびていた。そしてついにそれが来た。
「へい!うちの看板メニュー!極厚ステーキでい!」
「うっはぁぁぁ~~あ!」
ラルズの求めていた時間が来た。フォークをステーキにぶっ刺して厚さもお構い無しに頬張る。久しぶりの食事の喜びと口いっぱいに広がる肉の味に包まれた。
その様子を見ていた筋肉質の大男が近寄る。
「ガッハッハ!にいちゃん!良い食いっぷりだな!」
「そうか?俺もそう思ってたんだよ。」とラルズは気分良くニヤリと笑う。
「見ねえ顔だな、相席いいか?」
「ああ!今の俺は気分いいからな。」
「おい嬢ちゃん!俺にビールとブラキアを5つくれ。」
食堂の女店員は「わかりました。」と言って厨房に向かった。
「こんな時間にビール?」
「こんな時間だからこそだ。にいちゃんも俺ぐらいになるとわかるさ!」
「そんなもんか。ところでブラキアってな何?」
「鶏肉を小さく切ってそれをメルカの果汁と炒めたもんだ。酸味が良くて酒と合うぜ!おお、きたきた!」
先程の女店員が注文通りの品を持ってきた。男は大きな笑みを浮かべてそれを見ていた。そしてビールの入ったカップを掴み、ごくごく飲んで「かぁーーーーーっ!美味い!」と言った。

するとその時、食堂に4人の人間が入ってきた。最初に入ったのは腰に大剣を携えて大きな赤い鎧を身につけた男、次に身長ほどの杖と紫の服を身につけた女、上裸で身体中に古傷だらけで顎髭を携えた短髪の男、最後に白いロングヘアと白い鎧と白い肌で薄く笑みを浮かべているイケメンの男だ。
「お、おい!あれ!」
届いた酒なんて目もくれず興奮する男。ラルズは不思議がった。
「誰?」
「知らないのか?冒険者レベルがこの街で1番高いパーティだぜ!あの赤い鎧の男がリーダーだ!ここで食いもんすんのか・・・。」
「まあするんじゃないの。」
その4人は適当な席に座った。そしてやってきた店長となにか話していた様子で、しばらくすると店長はその場から離れて厨房に入った。
「おい!みんな店長におすすめされた極厚ステーキ頼んでるぜ!意外だ・・・。」
「何が?というかなんで聞こえてんの?俺全然分かんなかったんだけど。」
「だけどベミーちゃんは野菜炒めか。ベミーちゃんっていうのはあの魔法使いのねえちゃんだ。そういえば最近太ったって噂があるからな!ダイエット中かもしれねえな!」
「やめとけ、そんな事言うの。聞いてたらどうすんだよ。」
「おい貴様ら。」
遠くからベミーと呼ばれた女が2人を睨む。そして威圧感を醸し出しながら近づいた。顔は怒りの形相を浮かべている。
「黙れ。二度とそのことを話すな。」
そう言い残すと自分の席へ帰っていった。
「さすがベミーちゃんだ。人に大して厳しくよく怒るらしい。まさか本当に怒る姿が見られるなんてなあ!」
「それ抜きで怒るだろ・・・。巻き添えで怒られて損した気分なんだが。」
男は自分に運ばれたビールをぐっと勢いよく飲み「かぁーーーーっ!」と声を出した。
「ベミーちゃんに怒られただけでビールが美味い!」
ドン引きしたラルズは、自分のステーキが乗った皿を持ってバレないように違う空いた席に座った。ビールを飲んだらああなるのか、飲まないようにしようと思った。
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