思いが重なるとき

やぼ

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世継ぎ

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マヤは、食事に遅れたことを母春菜と
祖父や母の叔母である範子に詫びて
広いダイニングテ-ブルの席に着いた。

古い家なので
今風なお洒落とは言い難いが
アンティークな家具が置いてある
古風なリビングを通り過ぎると

会議室のような部屋に出た。
ダイニングテ-ブルの椅子は
一体、何脚あるのだろう?

マヤと春菜は、祖父の向かい側に
座らされた。

お腹が空いていたマヤが
いただきます!と箸を持とうとすると
「マヤ、まだよ。おじいちゃんが
箸を持ってからでしょ。」

春菜の言葉に、 しまったと
マヤは、罰悪そうに

「そうだった。ごめんなさいママ。」
と母に謝った。

すると無言の祖父がおもむろに箸を持って
食べはじめた。

それを確認して、マヤも箸を持った。
こんな緊張するお昼ご飯は初めてだ。

黙々と母も叔母の範子も食べている。
こんな食事美味しくないなあと
箸を止めたマヤだった。

それを見てる訳でもないのに
「躾がなってないな。マヤのことは
これから範子に任せるからな」

いつの間にか食事を終えていた祖父が
母に言い残して席を立った。

「ママ、どういう意味なの?
私のことって何?」

すると、すかさず叔母の範子が

「あのね、マヤちゃん。これから
ママとあなたは、この家で暮らすの
それがおばあちゃんの遺言でも
あるのよ。ママはこの家の大切な跡取りなの
戻ってきて貰わないと困るのよ」

範子の話に、驚いたマヤは
母を見た。

「ごめんね。マヤ。もうおじいちゃんも
叔母さまも、みんな歳を取ってるから
ママがこの家を支えていかなきゃ
いけなくなったの。ママはずっと逃げて
たんだけど、おばあちゃんの手紙に
春菜、お願いしますって、書いてあって
だから…」

「わ、私は大丈夫だよ。そうなんだ。
あはは。凄いね。ママ、もうお金の
心配しなくていいんでしょ。
だってこんなにお金持ちなんだから。

へえ~
これからここに住むんだ。私達。
良かった、良かった。」

マヤは、自分でも何を言ってるのか
分からなかったが、兎に角、悲しみに
沈んでる母を元気にしてあげたかった。

「さ、これからママにはお勉強して貰う
ことが沢山あるのよ。マヤちゃんも同じ。
二人のことは、私が責任持って、指導させて
貰うわね。」

独身だという祖父の妹である範子は
祖父のグループ会社の副社長だった。

母は、何だか元気がない。
きっとこの家を出るまで、自由など
なかったに違いない。
これからの生活を憂えてるのだろう。

夜になると
大人達の家族会議がはじまった。

マヤは、ひとり庭にでた。
今夜は、満月だった。

綺麗なお月様を見上げてると
庭に誰かが立っていた。

よく見ると祖父だった。
「おじいちゃん、会議は終わったのですか?」

「いや、もう俺の出る幕じゃないからな
範子に任せてるよ。」

「範子おばさまは、やり手なんですね。」

「マヤは若いのに、やり手なんて
言葉を知ってるのか。ははは」

祖父の初めて聞く笑い声だった。

「範子は、厳しいぞ。おばあちゃんとは
違うからな、甘くはないよ。マヤは
大丈夫かな?春菜は、お前のママは
もうげっそりした顔をしてたぞ」

ハッハッハ、祖父の高らかな笑いが
この広い庭に響いていた。

姉さんを亡くして気落ちしてた
兄さんが二人が帰って来てくれたから
元気を取り戻したように見えるのよ。
春菜、マヤちゃん。どうかお願い!
ここで私達と暮らしてくれる。

昼間、範子に言われた言葉を
思い出していたマヤだった。

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